女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可) 作:異種百合推進委員会
不審者女もといクリムヒルトの荷物から封蝋がされた手紙を見つけると、レイがざっと目を走らせる。横から覗き込んだけど読めなかった。
「なんです騒がしい」
「あら、また初めて見る顔ですわ」
騒ぎを聞きつけたアズキにミランダもやってきて、とりあえずクリムヒルトを椅子に縛ってお話し合いということになる。縛り付けられた張本人はとても不服そうだが、たぶんこの子と話しても進展は無いんだよなあ。
「で、長い話できるようになったわよ」
「分かった分かった。順に説明するからせっつくな」
レイは頭が痛そうだ。まあ、無駄に暴れる子の相手をしたくない気持ちはよく分かる。マジュサに匹敵する喧嘩っ早さだもの、
「先ず、ガスコーニュ伯というのは私の遠い親戚で、キピタに屋敷を持つ貴族だ」
「レイ、親戚に貴族居るんだ」
「姓持ちだからな。貴族と関わりの無い家は姓を名乗ることは許されん」
話によると、レイのひいひいお婆さんがガスコーニュって人の娘さんで、ひいひいお爺さんと結婚した時にアルトリウスという姓に変わったらしい。ちなみにアルトリウスっていうのはその時のガスコーニュさんの名前だそうだ。
「前にも話したがうちはそれなりに大きな紡績商でな。ガスコーニュ家との繋がりは今も残っている。私も、何度か父に連れられて伯の屋敷に行ったことがある」
「そこでこの子に出会ったと」
「ああ……父が話している間、伯の子の面倒を見た記憶はある」
それがどうしてこうなったと聞けば、私にも分からんと返ってくる。まあ子供はいつだってふぁんたすてぃっくな成長するものだ。
「でも、お貴族様の娘ってことはこの子も貴族でしょ? なんで一人でこんな所に?」
「それに関してなんだが、この手紙を読んでみろ」
いや渡されてもあたし読めない。
「アズキ、パス」
「はぁ……えぇと、なんです。『近頃首都で不穏な動きがあり、私達も無関係とは言えない。そこで親愛なるアルトリウス家であり、優れた騎士である君に、我が子を頼みたい』」
「なんか重い話になってない?」
「『追伸、使用人でも何でも良いから、この機会に性根を叩き直してやってほしい』」
「重い話じゃなかったわ」
要するに、政情不安にかこつけて放逐されたのね。うっ全く関係ない筈なのにあたしの胃にもダメージが。
「……送り返すわけにはいかないよな」
「レイの気持ちはすっごくよく分かるけど、この子放り出した方が色々ヤバいと思う」
事あるごとに襲われても嫌だし、逃げて何処かにあたしのことチクられても困る。かと言って野垂れ死にしたらそれはそれでレイの責任問題だ。
「……この家に」
「メアリの居る場所にこんな危険な奴置いておけないわ」
「……お前の家に」
「うん。その、やめた方が良いと思うし、この子も大人しくしてないと思う」
魔族に対して正しく敵対心持ってるわけだし、一応あたしのおうちって軍事機密だし。
村の人に預けるのもどうかとなれば、残ったのは一つしか無かった。
「ミランダに押し付けましょう」
「ミランダに任せよう」
「承知いたしましたわ。ふふ、人間の被験体が欲しいと思ってましたの」
「……丁重にな」
レイですら実験台に使うなとは言わなかった。いやミランダの言う被検体って何? あたしの時くらいの実験ならまだ良いけど、なんかやばいものとか飲ませたりしないわよね。意外と常識が分かるのは知ってるけど、こう、雰囲気が怖い。
ともかく、こっちでの処遇は決まったから後は。
「ええいさっきから私を置いて話して。そんなに私が怖いのかッ!」
「この芸術的な鼻っ柱をどうへし折るかよね」
縛り付けられているのに何処からその自信が出るのやら。身の程を思い知らせるというか、とりあえず誰彼構わず噛み付くのはどうにかさせないといけない。
「レイやる?」
「この過信、折れるのか……?」
気持ちは分かる。全能感に満ち溢れて実力差分かってない感じは無駄に頑丈で折れないタイプの自尊心だ。
「ギルネ、どうにかできないか」
「あたしがやると折る前に殺しちゃうと思う」
いやだってちょっと加減間違えたらポキっていきそうなんだもん。怖すぎて触れない。
あたしもレイも駄目。ミランダも無理だろうし、となったら残ってるのは。
「アズキ、
「はあ、某やれと言われればやりやすが……お嬢、本当に良いんですかい?」
「だってこんなに根拠のない自信しか無いんだもの。鬼でやらないと折れないわよ。ああでも、アズキがもう十分って思ったらやめても良いわよ」
「その……鬼、ってなんなんだ?」
見ていれば分かるわ。
「レイさん、すいやせん。木剣も幾つか借りたいんですが」
「あ、ああ。それは構わないが」
アズキはクリムヒルトを縛っていたあたしの闇魔法を素手で引きちぎる。うーん、そんなこと出来るの魔族でもそんなに居ないんだけど。
「あー、小娘。某が相手いたしやしょう。この首取れたなら、お嬢にでもレイさんにでも挑んでくだせえ」
「フッ、先ずは手下を使って力調べということか」
「まあ、そんなとこです。でも……」
アズキは片手で軽々とクリムヒルトの体を持ち上げる。
「泣いても叫んでも、止めませんで」
えいえい、おこった?
かんそうひょうかおまちしております