女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可)   作:異種百合推進委員会

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あらしをよぶおんな(※たいばつはきんし)

 めきゃ、と骨が折れる音がした。木剣をお腹に受けたクリムヒルトが吹き飛ばされる。ごろごろごろと、肋骨がいったかな。普段レイが鍛錬に使っている場所だから広いのは良いけど、その分拾いに行くのは手間が掛かりそうだ。

 

「これで何回目だ?」

「十回はやったんじゃない?」

 

 顔がひきつったレイの質問に適当に答える。最初から数えてなかったけど、腕を三回、肋を三回はやられてるし、そのくらいじゃないだろうか。視線の先ではアズキが魔法陣を出しながらクリムヒルトを引っ張って立ち上がらせていた。

 

「降参しやすか?」

「だ……れが……」

「じゃ次、行きやすよ」

「ま、待ってくれ。呼吸が」

「もう傷は治ってんで」

 

 ボロ布みたいに投げ飛ばす。鬼で、とは言ったけどいやぁ、酷いなこれ。

 

 昔あたしとアズキで考えた鬼級トレーニング。それは、アズキの治癒魔法で治せばいくらでもボコボコにできるよね? っていう悪魔みたいな産物だ。蓄積する疲労とかはどうしようもないけど、不慮の事故みたいなものは全部治して続行しちゃう。

 

「ちなみに翌日冷静になったらお蔵入りになった」

「当たり前だ」

「ぐえ」

 

 脇腹を小突かれる。正直、実力差があるとただのイジメだしねこれ。アズキが腕を振れば、何処かしらの骨が折れる。すぐに治すから休憩もなし。全身バキバキの痛みだけ残ったまま、なんとか逃げたり打ち返したりしないといけない。イジメどころか虐待だ。

 その代わり、やんちゃな部下を懲らしめるときの言葉としてはよく使われるようになった。やっぱりみんな鬼は嫌なようだ。

 

「心折るには良いと思ったんだけど……逆効果だったかしら」

 

 ところが、クリムヒルトは意外と折れ切ってない。痛みと怖さで涙目になりながらも、降参の一言は言わない。根性だけは人一倍にあったらしい。結果が嬲り殺しみたいな光景だから根性は報われてないが。

 

「うふふふ、可愛らしくて良いですね」

「可愛いのかなあ、これ」

「見ている方が辛くなるんだが」

 

 対岸の火事である野次馬三人はそれぞれ感想をぽつりぽつり呟きながら眺めている。メアリにはショッキング過ぎて見せたくないから、それまでに終わってくれると良いんだけど。

 

「お、やっと一太刀受けた」

「そのまま崩されて蹴り飛ばされたな」

 

 なんとか対応しようと、動きの最適化が始まってるみたい。これじゃもしかしてただのスパルタ特訓なのでは?

 

「騎士団でやったら九割はその日にやめるぞ」

「魔王軍もそう思います」

 

 もしあたしがクリムヒルトの立場なら二回目で音を上げると思う。痛いの嫌だし、強くなりたいわけでもないし。あ、木剣が飛んでった。

 

 アズキは剣をその場に落とすと、大きく伸びをする。

 

「今日はこのくらいにしておきやしょう」

「お、終わった……」

 

 クリムヒルトは一瞬安堵したような顔をして。

 

「わっ私の体力についていけなかったようだなッ」

 

 ここまで来てまだ大言吐けるのは尊敬の域だわ。もう柄を握る握力も残ってないくらいに疲労して、座り込んだ足はずっとぷるぷる震えているのにその台詞が言えるんだ。ここまで来たら本物と認めないといけないでしょう。本物の馬鹿ね。

 

「お望みなら明日でもまた受けて立ちますよ。一本も取れないんじゃ恥ずかしくてしょうがないでしょう」

「そ、その言葉覚えておけよ。この傷が癒えたら貴様なんてけちょんけちょんなんだからなッ」

「その傷与えたのもアズキでしょうに」

「外野はうるさいッ!」

 

 捨て台詞を吐きながら立ち上がろうと腰を浮かして、うめき声を上げて倒れる。精神以上に肉体の方が限界らしい。ぐうだのぷうだの言いながら助けは求めない。凄い。

 

「いやまぁ、たいしたモンですよ」

「ふぎゃぶっ!? もっと優しく……じゃなくて敵の情けなどあばばばば」

 

 アズキが苦笑いしながら彼女を担ぎ上げると。痛みで奇声をあげている。アズキの背が高いから、大人が子供を抱き上げる、っていうかエール樽を担ぎ上げてるみたいになってる。

 

「ミランダさんが引き取るってことで良いんでしたよね」

「ええ、お任せくださいませ。わたくしもそろそろお暇させていただこうと思っていましたので」

「では、お嬢。某は()()をミランダさんの家まで運んできやす」

「ん、行ってらっしゃい。気を付けてね」

 

 歩いていくアズキの後ろ姿はなんとなく楽しそうだ。

 

「アズキの方が気に入っちゃったみたいね。あの子、反骨心ある子好きだし。なんだかんだ喧嘩は好きだから」

 

 ボコされても自分に向かってくるのとか嬉しくて仕方ないだろう。あたしがアズキに出会ったときも似たような感情を持ったから間違いない。

 

「まあ……トラブルメーカーを押さえ込んでくれるならどちらでも良いさ」

「案外手が付けられないとこまで育ったりして」

「……それまでには常識を学んでほしいものだ」

 

 この村で得られるものが常識なのかどうかはさておいて。

 

「そういやあの子に聞こうとして忘れてたこと思い出したわ」

「なんかあったのか?」

「いや、どうしてあんなにレイを目の敵にしてたのかなーって」

 

 レイはしばらく考え込んだ後、肩をすくめた。

 

「何も分からん」




めんたるにはじしんがあります

かんそうひょうかおまちしております
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