女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可)   作:異種百合推進委員会

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おへやかいぞう(※かんさつから)

「なあギルネ」

「んー?」

「ニルヴァートだったか、お前の新しく来た部下。台所を覗き込んでからピタリとも動かないんだが」

「ああ、クセみたいなものよ。気にしないであげて」

 

 レイの言う通り、ニルは挨拶もそこそこに台所へ向かうと、そのまま観察モードに入ってしまった。メアリが料理している間もまばたき一つしないでかまどとかを睨みつけている。彼女は集中し始めると数時間くらい平気で固まってしまうから、もしかしたらメアリはやりにくいかもしれない。ごめんね。

 

「お前の家に台所を作るんだったか」

「そう! ニルは色々作れるからお願いしたの。お皿とか花瓶も作ったりするのよ」

 

 本人が物作りが好きなのもあって、城に居た頃の家具なんかは殆ど全部ニル製だ。椅子や机から鞄まで、あたしの生命線はニルだと言っても過言じゃないかもしれない。

 

「ギルネリア様、概ね終わりました」

 

 観察を終えたニルが戻ってくる。ちゃっかりメアリの焼いたチキンパイが乗ったお皿も一緒に抱えていた。

 

「どう? 出来そう?」

「材料の調達が少し難しいかもしれませんが、技術的には可能です」

「良かったー!」

 

 ニルでもお手上げだったら本当に手詰まりだった。いや、この村の大工としてラッドさんは居るけど、あのおうちまで連れて行く訳には行かないし。ニルを修行に出すっても引き受けてくれるか分からないし。

 

「じゃあお茶にしましょ。ニルもこっち座って」

「畏まりました」

 

 執事服のネクタイを少し緩めてニルが座る。あたしと身長はそんなに変わらないのに、座るとあたしよりちょっと下に頭が来る。つまり足が長いのよね、羨ましい。

 

「礼儀正しくて、お前の部下か疑わしくなるな」

「えっレイそれどーゆー意味よ」

 

 あたしが礼儀なってないってこと? なってないか。割と上はちゃんと立てる方なつもりだけど、あたしより上って魔王様くらいしか居ないもん。それに、部下にきちんとしろって言ったことも無いしね。殆どタメ口の子も居るし、プルメオとか。

 

「いや、アズキの初対面があれだったし。お前の部下だからやんちゃなのが多いかと思ってな」

「えー、あたしの部下に乱暴なのって居ないわよ」

「そうですね。私を含め、ギルネリア様の配下は荒事が苦手な者の方が多いでしょう」

「そうなんですか? アズキさんとか、凄く活発ですけど」

「あの子の方が例外寄りなのよ」

 

 あたしは強さで部下を選ばないし。だって、強さで言ったらあたし居る時点でだいたい必要ないもの。他の『奈落の英傑』みたいに積極的に部隊率いるわけでも無いしね。

 そういう意味だと、あたしの部下は他の面子に比べて圧倒的に少ない。大抵は部下の部下、って感じに広がって百人くらいは居るものだけど、あたしの場合は五人。ジスタ含めても六人だ。その中で武闘派ってタイプはアズキだけ。

 

「そもそも、あたし部下みんな連れて仕事したことあったっけ?」

「記憶には無いですね。ギルネリア様は基本お一人で任務に赴かれますから」

「よね。アズキ連れてったり、とかヘレネ連れてったりはしたことあるけど」

 

 あたしに来る仕事は、基本的にあたしにしか出来ない仕事だったからそれも理由だろう。

 

「みんな、意外と忙しいしね」

「忙しい?」

「他のとこからヘルプ受けるのよ。今回だって、あたし居ない間いろんなとこにバラけてるもん」

 

 アズキは前線、ニルは西方復興。プルメオは何してるか知らないけど北方で任務に着いてるって言ってた。ヘレネとディアンヌは魔王城の方に居るって言ってたけどこないだは出会えなかったな。

 

「私達は一芸に尖った者です。例えば、私は工作の技術を。魔族の中では下働きがやる事でしか無かったものに、ギルネリア様は価値を与えてくださいました」

「前に、似た話を聞いたな。戦う力以外は軽視されがちなんだったか」

「はい。私のように戦準備に使える者はまだ重宝されていた方です。平時に彩りを与える為の才能は、より酷い扱いを受けていましたから」

「そうか……」

 

 レイは何か納得したような顔をして頷いている。どういう感情なのかは分からないけど、レイ的に感じ入るところがあったのかもしれない。

 

「長話も良いけど、パイも冷めちゃう前に食べないと」

「ああ、そうですね。失礼しました。では、頂きます」

 

 チキンパイを一口齧ると、小粒に切られた鶏肉とパイ生地が絡み合ってとても美味しい。やっぱりメアリの作るご飯は絶品だ。あたしもこんな料理が作れるようになりたいなあ。

 

 隣で同じように口に入れたニルは、カッと目を見開いて固まった。十秒くらい、顎だけを動かして表情が全く変わらない。

 

「あ、あの……お口に合いませんでしたか?」

 

 不安に思ったメアリが話し掛けると、ようやくニルはぱちぱちと目を瞬かせた。

 

「いえ……このように美味な料理は初めてだったもので」

「凄いでしょ。メアリはあたしの師匠だもんね」

「なるほど。ギルネリア様が台所が欲しいと言った理由がよく分かりました。料理というのはここまで心を動かすものだったのですね」

 

 もしかしてあたしよりも感動してる?

 

 涙を流しそうな様子のニルを見て、これはニルに下手な料理は出せないぞ、とあたしは気を引き締めるのだった。




まかいのきゅーおーえるがしんぱいです

かんそうひょうかおまちしております
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