女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可)   作:異種百合推進委員会

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はたらかざるもの(※じっとてをみる)

「それでこちらに?」

 

 ニルの言葉に頷く。村のはずれにある簡易テント。建てたのはもちろんニル。空き家を借りる案もあったんだけど、利便性を考えるとここの方が都合が良いらしい。うーん、それならここにもっとちゃんとした家を建てても良いのかなって思ったけど、一時的な拠点に力を入れるのは嫌だと言われてしまったので仕方がない。ちゃんと夜にはおうちに帰っておいで、って言ってもあんまり変わらないと言われたらそれまでだけど。

 ちなみにニルは普段の執事服ではなくて、物を作る時のツナギ姿だ。元々ボーイッシュでしゅっとしてるのでどっちの格好も似合う。本人はフォーマルで動きやすいからって理由で執事服を好んでいるみたいだけど。

 

「ほう! 貴様がアズキの同族かッ! 私はクリムだッ!」

 

 一応、クリムには苗字を名乗らせないようにとレイと相談して決めていた。人間で苗字持ち、っていうのはそれなりに偉い人だからね。突然村に増えたりしたらパニックになってしまう。名前も短くクリムとだけ呼ぶようにした。あんまり意味は無いと思うけど一応ね。

 

「お初にお目にかかります。ニルヴァート・クロッツェと申します」

「なんだ、アズキやオジョーよりずっと礼儀を知っているではないか」

 

 ぴく、とニルの眉が動くので手でまあまあとなだめておく。クリムの物言いなんてジジイ共に比べればかわいいものだ。それに、こういうコミュニケーションの取り方もいずれミランダやレイが治すだろう。あたし? あたしはクリムの言う通り礼儀なんて知らないから他の人におまかせする。

 

「それで、私に何をさせようと言うのだ?」

「んー、ほら、ニル前に木材がたくさん必要になるって言ってたじゃない?」

「いや知らんが」

 

 クリムには言ってないからね。

 

「ええ。私一人では手に余るので、アズキの力を借りようと考えていたのですが」

「はい、ここに都合の良い労働力が居ます」

「……なるほど?」

 

 木材が必要になる。ってことは木を切り倒す必要がある。ってことは斧を振り回す人が要る。ということで体力だけは有り余っているけどやる仕事の無いクリムを連れてきたというわけです。

 

「私に木こりの真似事をしろということかッ」

「このような箱入り娘には出来ないのでは?」

 

 ニルの言葉に今度はクリムが眉をひそめる。

 

「私を甘く見るなッ、余裕に決まっているだろう。この斧を使えばいいなッ!」

 

 うんうん、クリムにも仕事が出来て良いことだ。そこにあった手斧を乱暴に掴んでずしずし林の方へと歩いていく。

 

「大丈夫でしょうか」

「倒木にだけ気を付けたら良いんじゃない」

「いえ、あの斧。薪割り用なので伐採は難しいかと」

「ちょ、クリム、ストーップ!」

 

 いや薪割り斧でも無理じゃないけどさ。初心者にやらせるものではない。慌ててクリムを引き止める。あっぶなー。やっぱアズキが来るまで待った方が良いか。今ミランダとお話してるから先に来たんだけど。刃物の扱いはあの子が一番上手だ。

 

「むう、この斧じゃないのか」

「そうですね。こちらの斧……いえ、この辺りの木なら鋸の方が良いでしょう」

「おい待て今何をやった」

 

 ぱっぱっと何もない空間から斧や鋸を取り出す姿にクリムが目を点にしてツッコミを入れる。

 

「ああ、これは私の魔法ですよ。たいしたものではありません」

「刃物を創る魔法だとッ」

「違いますが」

 

 ニルの否定通り、彼女の魔法は今の場所と別の場所とを繋げる空間魔法だ。言葉だけ聞けば凄い便利な魔法に聞こえるが、実際のところは、事前に準備した場所に繋げているだけらしい。何処からでも物を取り出せる倉庫を一つ持ってるくらいの感覚だ。人も移動させられるらしいけど、現在地とを繋ぐものだから自分を移動させることは出来ない。間違いなく便利ではあるんだけどね。

 

「それとその服装ではささくれや林中の生物に対して無防備過ぎますね。着替えた方がよろしいでしょう」

「なんで先に言わん!」

「言う前にあなたが一人で行ってしまおうとしたからですが」

「なにおう」

「はいはい、二人ともステイステイ」

 

 薄々予想ついてたけど、相性悪いわねこの二人。アズキに上手いこと手綱取ってもらわないと危ないかも。ニルが。腐ってもアズキの喧嘩指導を受けているクリムとニルじゃあ勝負にならない。もしかしてこの仕事やらせるのは失敗だったかしら。友人と部下で血が流れるのあたしは絶対に嫌よ? その場合、クリムを罰しなきゃいけなくなるからレイも無関係じゃないし、大変なのでやめてほしい。

 

「申し訳ありやせんお嬢! 少しミランダさんとの話が長引いてしまいやして」

 

 一触即発の状況にのほほんとアズキがやってくる。まさにナイスタイミングとばかりに二人はアズキに向かって叫んだ。

 

「アズキ。この無礼無鉄砲な小娘をちゃんと躾けてください」

「アズキ、この失礼な奴を黙らせろッ!」

 

 同時に飛んできた言葉に対してアズキはきょとんとして。

 

「ちょっとの間に仲良くなったようで良かった良かった」

 

 仲良くない! と二人の声が村外れの空に響いた。




なかよくけんかしな

かんそうひょうかおまちしております
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