女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可)   作:異種百合推進委員会

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ゆめをえがく(※もじどおり)

「あの、ギルネリア様」

「なーにー?」

「退屈じゃないですか?」

 

 ジスタが恐る恐る聞いてくるけどあたしは首を横に振る。雨の季節もすっかり終わり、晴れた朝にいーぜる?立てて椅子を置いて、真剣な顔で筆を走らせているジスタを眺めているのは、全然飽きが来ない。彼女が描く村の風景は、精密で、でも何処かぼんやりとしている。悪い意味じゃない、あたしのセンスじゃ良い言葉は浮かばないけど、ふわふわして、優しい気分になれるのだ。きっと、先代様が望んだ絵の効果っていうのは、こういうことなんだと思う。

 

「あーっ! ジスタ居ないと思ったらこんなとこに!」

「わっ、スタン!?」

 

 村一番のワルガキであるスタンがこっちを見つけるなり走ってくる。メアリよりちょっと小さいくらいなのに落ち着きがなくて、今でもジスタを追っかけ回している一人だ。

 

「スタン、ジスタの邪魔しちゃ駄目よ」

「ギルネリアも居る、珍しい」

「そう?」

「だっていつもレイとかと一緒に居て、こっち来ねーじゃん」

 

 言われてみれば確かに。ただ、どちらかと言えば逆な気もする。ジスタの方が、一人で居るのを好んでいるような。

 じゃあなんで今日は一緒に居るのかというと、ニルに新しい道具を作ってもらったジスタがご機嫌だったからだ。

 

「で、何やってんの」

「お絵描きよ」

「絵?」

 

 露骨につまらなさそうな顔をする。うん、知ってた。

 

「絵、って描いてて楽しいのか?」

「た、楽しい、よ」

 

 間髪入れずに答えたことにちょっと驚く。それに、敬語じゃないジスタって初めてかも。この子の目線からだとタメ口で話せる相手が居ないって思うのは分かるけど。スタン相手なら普通なんだ。へえ。

 

「だから、おとなしくしてなさい」

 

 ジスタは落ち着きなく視線を揺らしていたけど、ふっと息を吐いて再びキャンバスに向き合う。筆はめったに動かない。でも、動いたら迷いはない。小さな筆が、広い景色を押し縮めていく。

 

「うお……」

 

 スタンもあたしと同じように、ジスタの絵を後ろから眺めていた。さっきまでのつまらなさそうな表情から一転して、拳を握りしめて筆先を目で追っている。心動かされ、筆を持った彼女の絵が、今度は種族を超えて人の心を動かしているみたいだ。

 

 数秒、筆が止まる。その間あたし達の息も止まる。完成品が素晴らしいものになることは間違いないけれど、きっとこの絵が一番輝いているのは今だ。スタンだけじゃない、村中のみんなに今を見せてあげたいという気持ちになるけれど、同時にこの幸運を独り占めしてしまいたいとも思ってしまう。

 

 日が真ん中に近づいてきた頃、ようやくジスタは筆を置いた。安堵したように大きく息を吐いて、後ろにいたあたしとスタンを見て翼を震え上がらせる。

 

「スタンずっと居たの!?」

「えっと、え」

「夢中になって覗き込んでたわよ」

「ち、ちげーし! 他にすること無かっただけだし!」

「へー、おかあさんのおひるの手伝いもサボってるのに?」

「なんでギルネリアがそれ知ってんだよ!」

「そりゃマーサに愚痴られたことがあるからよ。ご近所付き合いって意外といろんな情報が入ってくるものよ?」

 

 マーサというのはスタンの母親である。狭い村だし、歩き回っていればだいたいのことは耳に入ってくるのだ。これでも手が回るからウケは良いのよ。見かけたら連れ戻してくれって頼まれてるのにスルーしてるけど。

 

「それで、絵を見た感想は?」

「ちょっ、ギルネリア様!?」

 

 慌てふためくジスタもスルーで。スタンは誤魔化すのか、正直に言うのか。いたずら心が楽しんでいる。

 

「えーいや、別にー……」

 

 なんだかんだと言い訳しようとしていたスタンも、良い逃げ道が見つからなくて言葉を詰まらせる。

 

「……絵とか良く分かんねーけど、すげーって思った」

 

 ジスタは目を丸くしていた。

 

「あーもう! 絵なんて殆ど見たことないのに感想なんて言えねえよ!」

「あらそう? 十分言えたじゃない、ねえジスタ」

「えっ!? えと、そうですね……」

 

 あたしどころかジスタだって、最初に見た絵は、魔族の誰にも見向きもされない壁画なんだ。

 

「何も、知らなくても。魅入られるというか、心を動かされるのが、絵の魅力だと、思う……ます。も、もちろん! 知識とかあったら、より楽しめると思います、けど」

 

 この子は、絵を語る時はとても饒舌になる。きっと、自分が得たものを、誰かと共有したくて仕方ないんだ。

 

「知識とか、経験とか。全部無視して、引き込まれるのが。ボクはそれで、引き込まれたから。知識が無いとダメ、なんてことはないです」

 

 喋り過ぎた、と青ざめるジスタを前に、熱量をそのままぶつけられた少年は口をもごもごさせる。

 

「あの、さ」

「は、ひゃい!」

「俺でも絵って、描けるかな」

「……! 描ける、描けます! 絶対!」

 

 うんうん、イイ話にまとまりそうだ。ってところで。

 ぎゅ、っとスタンの首根っこを掴む。

 

「でも、お絵描きの前にまずはお手伝いにいきましょうね」

「えっ、離せ、はーなーせー!」

 

 やんちゃ少年の声が木霊し、ジスタもつられて笑っていた。




じすたはいがいとこえがおおきい

かんそうひょうかおまちしております
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