女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可) 作:異種百合推進委員会
「にーひゃっく!」
数え終わったので林の中に入る。秋の到来を教えるように、葉っぱも少しずつ赤くなり始めている。パキッと枝を踏んだら乾いた音を立てた。足音で近付いてるのがバレるなあ、飛んでいこうか。でも飛んだら飛んだで枝に引っ掛かって切り傷だらけになりそうだ。ここはやっぱり走って追いかけるしかなさそう。
さてと、先ずは誰が見えるかな。木のうろや枝の上なんかに隠れている可能性は高いけど。たぶん、何人かは待ち構えてると思うのよね。視界を広く取って、見えたら逃げようとするタイプが居るはず。
「ほら居た」
見慣れた赤白服。あたしが気付いたのと殆ど同じタイミングでアズキも走り出す。見逃したら後々面倒だから、ここで捕まえよう。
体を浮かせ、近くの木の幹を蹴る。枝に引っ掛からないよう低空で真っ直ぐ体を浮かす。姿勢の制御は翼でやって、木の幹を蹴り繋いでいって進路を矯正しながら加速をつける。幾らアズキが速くても、この追いかけっこは鬼有利だ。
「そうれっ」
「うおっと!?」
一回目のタッチは身を屈めて避けられた。向こうの木を蹴って二度目のチャレンジは飛び上がって避けられる。これで空中、体は動かせない。なんてことはない。アズキにだって立派な翼があるのだから。身を翻し、翼をはためかせてその場から飛び立とうとする。
その翼の影に隠れた。
何処か一箇所でも触れば良いあたしに対して、アズキはぶつからないようあたしを視認しなければならない。あたしのよりも大きな翼はその分視界を狭めてしまう。そのラグで反応を鈍らせる。
「つーかまーえたっ」
「うひゃう!」
翼の付け根あたりを掴むとアズキから可愛らしい悲鳴があがる。何を隠そう、アズキは付け根が弱い。知ったところでいたずらにしか使えないけど。
転げないようにゆっくり降り立って、正面に移動すると、悔しそうに角を触っている。
「……いやぁ困った。簡単に捕まってしまいやした」
「ふっふっ、あたしを舐めちゃ困るよ」
最近はずっと動いてなかったからだいぶ落ちてるとは思うけど、身体能力だけでも魔王様やマジュサ他『奈落の英傑』みたいな化け物組以外にならだいたい勝てる。アズキも動ける方だけど、流石に年季が違うわね。
「本気だったんですけどね。時間的にもしかして某が最初ですかい?」
「そうね、最初に見つけたから」
「そりゃ残念です」
アズキを解放して、次の獲物を探す。楽なのはたぶんクリム。厳しいのはレイとジスタかな。残り二人はどうやってくるか読めない。見つけさえすれば捕まえるのは難しくないと思うんだけど。
目を細めて探していると、一際大きな木の下に佇むレイを発見する。まだこっちには気が付いていない。枝を登り、音を立てないよう慎重に近づいていく。幹の反対側、レイの死角から一気に近寄って捕まえよう。息を止めて、さんにぃいち。
「捕まえ……ってすかった!?」
「……っと危ないな」
すんでのところで身をよじられて躱される。完全に不意をついたと思ったんだけど。すぐさま飛びのいて距離を取り、林の中を駆けていく。アズキにも匹敵する速さだけど、反射速度はレイの方が速そうだ。
今追い掛けるのは、無駄に時間を使わされそうだ。一旦スルーしよう。
じゃあ誰を狙おうか。ジスタはたぶん後になるほど捕まえにくくなるから、今のうちに見つけておきたい。あと隠れてる組を探さないとなあ。じろじろとうろとか隙間を覗いては見るものの、中々見つからない。どうしたもんかと考えていると、視界の隅に別の影が映る。
「クリムみーつけた」
だっしゅだっしゅ。レイやアズキよりも足は遅い。落ち葉で柔らかい地面も走り慣れていないようだ。サクッと追いついた。
「ぜえ……ぜえ……全力で走ったのに普通に追い付かれたんだが……」
膝に手を当てて肩で息をしているクリムにタッチ。これで二人目。あたしに追っかけられて息切れするのはまだまだ未熟ね。
「ちゃんと後でお水飲みなさいね」
「ぜえ……言われなくても……分かっている」
分かっているなら、よし。
さっき追い掛けてる最中に誰か隠れてそうな場所も見つけたから、後で捕まえに行かなきゃだけど。それよりも先に。
「ジスタを見つけないとねー、厄介だし」
「レイじゃないのか?」
「逃げ足ならたぶんジスタの方が上よ」
罠とかにはあっさり引っ掛かるけれど。ジスタの身のこなしは、あたしのとこに一人で伝令任せられるくらいだもの。前に捕まえようとした時、あたしでも魔法使わないと逃げられたからね。
そう考えると人海戦術とはいえ、ジスタを追いかけ回して捕まえるこの村の子供達って結構ヤバいのでは。流石にジスタが手加減しているだけかな。本当に嫌なら木の上に逃げてるもんね。前までは実際、絵を描くときは樹上に逃げていたし。
「まあ、ジスタは見つけさえすれば策はあるから」
「そうやってアテが外れたときの姿が見物だなッ!」
悔し紛れに捨て台詞を捨てて行ったクリムを見送って。さあ後半戦だと気合を入れ直す。
まだ六分の二だけど。
あずき、あうとー
かんそうひょうかおまちしております