女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可)   作:異種百合推進委員会

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あきをたのしむ(※げいじゅつ?)

「メアリも髪の毛伸びたわねー」

 

 椅子に座ったメアリの髪を後ろからぽふぽふ叩く。初めてであった時からもう季節一つ分は過ぎているから、ちょうど良かったメアリの髪も、だんだん本人が邪魔そうにしている様子が見られるようになってきた。今は髪紐で一つにまとめているけど、それでも揺れるのが気になってしまうらしい。

 

「そろそろ切ろうかなあ、とは思ってるんですけど」

「レイに任せると怖い?」

 

 向かいに座っているレイは編み棒を動かしながら不服そうに鼻を鳴らす。

 

「私が下手だと言いたいのか」

「だってやったことないでしょ?」

「確かにやったことないが」

 

 やっぱりね。レイの髪の毛はかなり長いし、手入れこそちゃんとしてるけど。散髪というのを任せるには不安だ。

 

「そういうお前はどうなんだ」

「あたしは全く出来ないわ」

「威張るな。私と同レベルじゃないか」

 

 てへ、と舌を出すと呆れられた。だってあたし包丁握るまでそもそも刃物を殆ど触ってこなかったんだもの。髪を切るなんてことができるわけない。

 

「それじゃあお二人はどうしてたんですか?」

「レイは一度も切ってないでしょ」

「お前はアズキ辺りに任せてたのか?」

「せいかーい」

 

 アズキは散髪がとても上手だ。下の兄弟達の面倒を見ている内に覚えた技術の一つだと本人は言っていたが。ついでに言えばニルも出来るし、こっちにはまだ来てないけどヘレネとディアンヌも出来る。時々他人の髪型で遊ぶのが流行ったりもしていた。実験台になるのは大抵あたしだったけど。

 

「あれ? でも何年も一人だった、って言ってましたよね。その間は自分でやったりしなかったんですか?」

「んー、年に一度はどうにかなったから」

 

 奈落会議の季節、魔王城に戻った時に適当な使用人を捕まえて髪を切らせていた。あたしの悪名はだいたい知れ渡っているので、死んだ顔をして準備するような子だったときは内心で謝ったこともある。逃さなかったけど。

 

「まあ、何年かに一度だったけどね。あたしも最近気付いたけど、人間に比べると魔族って髪が伸びるのちょっとゆっくりっぽいし。意外となんとかなったわ」

 

 メアリの髪の毛を手で梳いてあげる。切るならアズキやニルに任せた方が良いんだけど、二人とも忙しそうにしてるしなあ。それに、これから寒くなってくるから、あまり涼しげにしちゃうのも勿体ない。

 

 あ、良い事思いついた。あたしはメアリの髪紐を解くと、机の上にある予備の編み棒を一本手に取る。訝しげな視線を向けたレイに構わず、くるりくるりと髪を巻き上げて編み棒をメアリの後ろ髪に差し込んだ。

 

「んー、思ったより棒が太かったわね」

「ほう、お前そんなこと出来たのか」

「え、え、どうなってるんですか?」

 

 困惑するメアリにレイが手鏡を渡してあげる。机の置き鏡と合わせて後ろがどうなってるか見せてあげると、メアリがびっくりした声を上げた。

 

「ぎゅぎゅっとヘアアレンジー」

「わっ、かわいい!」

「でしょ? 本当はもっと細い方が無理なく出来るんだけど」

 

 あといろんな留め方が出来る。ヘレネがこういうヘアスタイル弄るのが好きで、あたしも幾つか教えてもらったものだ。

 

「ちょっと練習すれば、自分一人でも出来るようになるから、いい感じに使えるんじゃない?」

「ありがとうございます!」

 

 流石に編み棒をそのまま使い続けるわけにはいかないので一旦解放。後でニルからヘアスティックを何本か貰おう。

 

「さて、お次は……」

 

 おもちゃにされる気配を察したのかレイの肩がぴくりと跳ねる。

 

「……私は別に困ってないぞ?」

「いや、あたしが触りたいだけ」

「せめて言葉を取り繕え」

「お願い! ちょっとだけ、ちょっとだけだから!」

 

 せっかくこんなに長くてきれいな髪を持ってるのに遊ばないなんて勿体無い。

 

「はあ……私は手を止めないから、やりたければ勝手にやれ」

「やった!」

 

 メアリに髪紐を返して、レイの後ろに回る。髪に指を通すと、すっと通り抜けた。えー、ほんとにきれいな髪でちょっとズルい。

 

 どんな髪型が似合うかな。おさげにしてみるか、そしたら優等生って感じの見た目になりそう。眼鏡も掛けたらどっかの秘書で見たって感じの。でもやっぱり、かっこいい感じの髪型の方が似合う気がする。だって背が高いし、スタイルも良い。

 そんなことを考えながらさくさくと髪を編んでいく。服が編めるんだからレイはもしかして髪も編めるんじゃない。普段からとは言わずとも、ふとした時に髪型を変えてみたら結構印象が変わりそうだ。

 横髪を三つ編みにしてハーフアップにくるくる巻きつける。それからハーフアップの先っぽと後ろ髪を編み込んでいく。最後に先端をちょっとだけ残したら。

 

「どう!」

「いやどうと言われても……メアリも無言で鏡をこっちに向けるな」

 

 もちろんあたしは手鏡スタンバイ済みである。

 

「……良いんじゃないか」

「思ったより反応が渋い」

「お洒落なんて言われてもよく分からんからな。強いて言うなら、お前の方が似合うんじゃないか? こういうのは」

「そう? 髪が伸びたら試してみようかしら」

「その時はお揃いだな」

「えー! じゃあ私も伸ばします!」

 

 短くするより伸ばしてお揃いなんて無茶な話だと思いつつ。嬉しくてあたしは笑顔がほころびてしまうのだった。




かみがたはふあんたじー

かんそうひょうかおまちしております
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