女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可) 作:異種百合推進委員会
「そう、ミランダに聞きたいことがあったのよ」
今日は珍しいことにミランダのおうちにお邪魔している。別に避けてるわけじゃないんだけど、みんなが集まるってなるとどうしてもレイのおうちの方が広いから、そっちばかりになるのだ。あたしが単にレイと遊ぶのが好きってのもあるけど。
今日来たのはクリムの様子を見てみたかったから。ミランダに迷惑かけてないか確認も兼ねていたのだが、意外なことにおとなしくしているようで。というよりむしろ好んでミランダの蔵書を読み耽っていると言うのだから驚きだ。いや貴族だし教養があるってのは分かるんだけどね。全然イメージが無かったから。と、話を戻して。
アズキから貰った本を読んでいたミランダは、顔を上げてメガネのズレを直した。
「聞きたいことですか?」
「うん、ミランダの方が詳しいかな、って」
割と昔から気になってたこと。
「勇者って何なの?」
勇者。あたしの認識では、何年かとか何十年かに生えてくる、魔法みたいな力を持った人間。一番最近に見たのは、えーとあれ、レイも言ってた閃光の勇者? びゅんびゅんと動き回ってた奴。どういう理屈で出て来るのかそういえば知らないな、とふと思ったのだ。
「勇者、ですか……」
「あっ、機密とかなら別に言わなくても良いわよ。魔族に情報流したーってなっても困るでしょ」
「ああいえ、そこは問題無いのですが……」
ミランダにしては珍しく歯切れが悪い。駄目なら駄目と言ってくれればおとなしく引き下がるつもりだったのだが、そこも濁されてしまうとにっちもさっちもいかない。
「人間の間でも、勇者が何なのかよく分かっていないのです」
「え、そうなの。って謝ることじゃないわよ」
申し訳なさそうに頭を下げるミランダにあたしの方が慌ててしまう。ミランダでも知らないってことはよっぽど不思議な技術でも使っているんだろうか。
「いいえ、勇者を意図的に作り出す、というと語弊がありますが。突然変異的に現れるもので、人間でもコントロールできるものではないのです」
「あー、百年に一人の天才的な」
あたしとか魔王様みたいなものと考えればなんとなく分かるような気もする。
「才能というのは近いかもしれませんね。我々は勇者が持つ力のことを、神が与えた
「まあ、話聞いてると確かに神様から貰ったものに思えるわよね」
あたしは特に神様とか信じたことないけど。昔は宗教も流行ったけど、色々ゴタゴタがあって今はだいぶひっそりやってるみたいなのよね。人間と魔族の戦争を始めた原因でもあるんだからなんとかしてほしいものだわ。
「ミランダ、茶を淹れたが飲むか?」
話の最中、乱暴なノックとともにクリムが顔を見せる。お茶淹れられるんだこの子。イメージに合わなさ過ぎる。どう考えても優雅にティータイムするより川の水飲んでる方が似合う。
「あら、いただきましょうか」
「あ、あたしにもちょーだい」
「まだ居たのかオジョー」
なんでい、あたしが居たら悪いんかい。しっしっと客人する態度じゃないクリムにあたしも唇を尖らせる。
くすくす笑いながらミランダが手元の本を本棚に戻した。
「興味深い点としては、過去の記録では、別世界から来たと供述する勇者が居たということですわ」
「別世界? 何それ、死後の世界とか?」
死後の世界からやってきた、って蘇ったって言う方が近いんじゃないかしら。それとも御伽話みたいな場所からやってきたとか?
「さあ……ただ、その勇者は発明家として名を馳せたと言われているので、もしかするとその世界の技術を取り入れていたのかも、と。まあ推測の域を出ませんが」
「発明家として、ねえ。勇者って魔王様倒しに来る奴ばっかでもないのね」
「むしろ少数だと思いますわ?」
「あ、そうなんだ」
ってことはあたしが思ってるより勇者ってのは数が多いのか。一人見かけたら三十匹居ると思え、ってのは虫の話だ。
「能力を持っていても、使命を与えられるわけではございませんから。国としては積極的に登用したいと思っているようですが」
「勇者部隊、とか作られたら面倒そうなのに」
「十分な報酬を与えられないとか、平民生まれが多いので貴族や騎士からの反発が大きいとか、勇者は皆我が強いので纏まらないとか。様々理由はあるようですが」
「最後の理由が一番面白いわね」
『奈落の英傑』で部隊行動しろって言われたら何かしら事故りそうな気はするし、人のことは言えないかもしれないけど。
「勇者の多くは、流れの傭兵やモンスター退治などに落ち着くそうですから。もしかしたらこの村にもふらりと姿を現すかもしれませんわね」
「そういうの、フラグって言うのよ」
ただでさえ結構な魔窟と化してる(あたし調べ)のに、これ以上この村を混沌とさせるつもりだろうか。
「だって勇者の研究はしたことが無いんですもの、うふふふ……」
「切り捨てられないよう気を付けなさいね」
「持ってきたぞ……何の話をしてるんだ貴様ら」
何処まで本気なのか分からないミランダの笑みに呆れながら、やってきたお茶に口をつけた。
ちょっと苦かった。
ゆうしゃはふたりぐみすらつくれない
かんそうひょうかおまちしております