女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可)   作:異種百合推進委員会

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あきをたのしむ(※しょくよく!)

「ついに! ついに我が家にも台所ができました!」

 

 ぱちぱちと拍手が上がる。まあおうちだから居るのはアズキとジスタと、今回の立役者であるニルだけなんだけど。

 

「ギルネリア様たっての要望だった為、先んじて実装させていただきました」

「ニルありがとー! これで普段からちゃんと料理したものが食べられるわ!」

 

 その辺の果物丸かじりとか猪丸焼きとかから解放されるのである。喜びもひとしおだ。最近はレイのおうちに入り浸って殆どここで食べてなかったとかは言ってはいけない。

 

「完成を祝して、あたしからみんなに一品振る舞いたいと思います! 今から作るのでちょっと待っててね」

「某も何か手伝いましょうか?」

「ううん、料理独り立ちの練習でもあるから、あたしに任せてちょうだい」

 

 それだけ言って、あたしは台所に向かう。石造りのかまどはがっしりしていて、薪も入れやすいように広く作られている。火打ち石も用意されているから、火を消してしまっても問題無い。洞窟の壁には穴を通して換気口を作っているようだ。どういう技術なんだろう。説明されてもきっとよく分からないけど。

 作業場は木組みでかまどから少し離れた位置に用意されている。汲み上げた水を保管しておく樽もちゃんとあって、水回りも溝から外に流れていく形みたい。二十日と少しくらいしか経っていない筈なんだけど、完璧な仕事だ。

 

「よし、作るか!」

 

 作りたい料理は決まっている。ずっとずっと昔、アズキやニルより出会う前。それどころか、あたしがまだ『奈落の英傑』でも虚無の魔女でもなかった頃。食べ物なんて気にしていなかった頃に、唯一覚えている味。

 再現できるのかな。たぶん無理だろうな。見た目だけそれっぽく出来ても、たぶん味は変わってしまう。それでも試してみたかった。

 火打ち石でかまどに火をつける。

 

「えーとボウルは、ここか」

 

 挽き割り小麦をボウルに注ぐ。お塩を少々。水を混ぜながらコネ回す。もちもちにまとまって来たら、等分に千切っていく。千切った生地は円状に広げて、木苺のジャムを塗りたくる。そしたら今度はダレンのとこから貰った羊乳チーズを乗せる。上からもう一枚生地をかけて挟み込んだら下ごしらえは完成だ。

 

 本当は植物油だった気がするんだけど用意が面倒なのでラードを揚鍋に注いで火にかける。

 

「わっ」

 

 油が跳ねそうになったので距離を取る。あ、待てよ。手を闇魔法でコーティングしたら安全なんじゃない? あたし天才かも。

 手袋みたいに覆って、恐る恐る鍋の縁をちょっとつついてみる。うん、熱くない。これなら問題無いな。

 

 適温になったらさっき作った包みをぽいぽい入れていく。金色になったら取り出して揚げ網の上にほいっと並べてしまえば完成。

 

「えっと、名前なんだっけな。せあか? せあな? なんかそんな感じの名前だったわよね」

 

 兎にも角にもできあがったので三人を呼ぶ。お皿に取り分けて、サトから以前貰った蜂蜜を用意。たぶんかけたら美味しい。

 

「おお、お嬢流石でございやす!」

「わぁ、ほかほかですね」

「素晴らしい出来ばえです」

「ふふん、そうでしょう。と言いたいところだけど、料理なんだから食べてから褒めてちょうだい! あ、でも熱いから気を付けてね」

 

 ナイフで切り分けると中からチーズがとろっと出てくる。一口食べてみた。うん、我ながら美味しい。木苺やチーズの酸味と生地の塩味がマッチングして、仄かな甘みがより伝わってくる。

 ただ、美味しくできたのは良いけど、あの時の味とはやっぱり違うな。材料も違うだろうし当然だけど。あれは、こんなに美味しくなかったけど、それでもずっと心に残っている。思い出補正って奴ね。

 

「初めて見る料理ですね。なんて言うんですか?」

「それがね、あたしも忘れちゃったのよ。随分昔のことだったから」

「メアリ様から教わったものではないのですか?」

「違うわ。これはね……フェルトノールが、先々代の魔王様が昔作ってくれたものなの」

「先々代様……ですか?」

「そうね。あなた達はまだ生まれてなかったかもしれない」

 

 フェルトノールが死んだのももう三百年近く前のことだ。アズキもニルもまだ二百年生きていないから、噂でしか知らないだろう。それに、これを作ってくれたのは、まだ彼が魔王になる前の話だ。

 

「その時はもっと酷い出来だったんだけどね。料理なんてやった事もないのに無茶するから油が跳ねて火傷しそうになってたわ」

 

 あたしはそれ見て笑ってたっけ。今にして思うとあんまり笑い事じゃないな。あたしもぱちってする度にびっくりしてたし。マコラの阿呆は完全に呆れていた。あー、マコラなら名前ちゃんと覚えてるかな。いやでもあいつに聞くのは死んでも嫌だ。

 

「せっかくだから、あたしの思い出の味をみんなに知ってほしかったの」

 

 だけど、本音を言うとメアリやレイには見せたくなくて、だから今まで作らなかった。いや、二人が嫌いとか、二人に過去を話したくないわけじゃないんだけど。そういう話をしてしまうと、嫌でも、感じてしまう。

 

 人間の寿命が、魔族よりずっと短いことを。




せあだす というそうです

かんそうひょうかおまちしております
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