女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可) 作:異種百合推進委員会
こもり始めてからそろそろ一週間が経とうとしていた。最初の頃はニルとやっていた村の観測も、今では朝にちょちょっと見るだけになってしまっている。ああ、暇だ暇だと嘆いたときにそれは起きた。
閉じた入り口の前に何者かの気配。どうもモンスターではないようだ。アズキ達も気がついたのか部屋から出てきた。
「お嬢」
「ん、あたしとアズキで見に行きましょう」
レイがあたしを売った。なんて発想は、一瞬も浮かばなかった訳では無いがすぐにありえないとかき消した。そもそも、レイはここを知らない。知っていて、教えたとして一人で誰かが来るとも思えない。そしてやっぱりレイがあたし達を裏切るとは思えない。
裏口からおうちの上層に出て、閉じた入口部分を見下ろす。
「……騎士?」
「でしょうね」
青色で装飾された鎧を来た男が、入り口の壁を背にして座り込んでいる。遠目からでも分かるが出血が酷い。血の足跡が彼が何処から来たのかを雄弁に教えている。なんだか、穏やかじゃない。
「降りるわ」
「御意に」
翼を広げ、騎士の
「なっ……ま、魔族!? なんでこんなところに!?」
騎士はあたし達の姿を認めると悲鳴を上げ、足を引きずって逃げようとする。どうも腿の辺りに噛みちぎられた後がある。このままだと出血が止まらず、命は無いだろう。
「アズキ」
目で合図する。アズキが魔法陣を開き、抉れた腿を治療する。抜けていった血までは戻らないが、これ以上酷くなることはないだろう。目を白黒させる騎士の前に立つ。
「はぁい。おとなしく質問に答えてくれれば何もしないわ」
「ま、魔族の言うことが信用できるか」
「じゃあちょっとだけ痛いことするわ」
逃げられないように重力魔法で縛り付ける。うーん、やってることが悪役。でも懇切丁寧に納得させるより少し脅したくらいの方が話が早い。
「うご、け……」
「その傷、何処で負ったの?」
騎士の目に恐怖が浮かぶ。言おうと言わまいと殺される、って観念したのかもしれない。重力をもうちょっと強めにする。あたしの質問は騎士の内情に関係ないんだから。出来ればさっさと教えてほしい。殺す気もないのに痛めつけるのは流石に良心が痛む。
「うぐ、がっ」
「さあ、早く教えてくれない?」
「がっ……
「そのドラゴンは今何処に?」
「何が、目的だ」
「勘違いしないでほしいのだけど、あたし達にとってもモンスターは敵なのよ。それを知りたいと思うことは普通でしょ?」
「……お、俺は命からがら逃げてきたんだ。見つからないと思ったら、急に」
話している最中で、ズシンと、轟音が響いた。森の一部がなぎ倒されていた。遠目だが、巨大なモンスターと、近くを飛ぶ影。ワイバーンだろうか。それと相対する人影が幾つか見える。まだ戦いは続いている最中らしい。あれがドラゴン。何回か相手にしたことはあるけれど、ワイバーンやグリフォンと違ってちょっと骨の折れる相手だ。
それにしても、ドラゴンなんて巨体がこうも見つからなかったとは。
「急に、出てきたんだ。どこにも居なかったのに」
「透明化、幻影」
「しかも、手下を呼び出して」
騎士はガクガクと震えている。不意を討たれて怯え、戦いの最中に逃げ出したといったところだろうか。騎士としては落第なのだろうが。そうでもしなければこの人は生き残ってはいないだろう。
「どうしやすか、お嬢」
「んー……」
真面目な話、ここであたしが出てきてしまったらレイの気遣いが水の泡だ。騎士とやらが何人死のうがあたしには関係ないし、何ならドラゴン相手に全滅しました、ってなった方が都合は良いだろう。この騎士を始末してしまえばあたしを報告する奴は誰も居ない。一応魔王軍なわけだし、人間の戦力は削れるだけ削っておいたほうが良いに決まってる
それでも、人がたくさん死んだらレイが悲しむだろう。万が一にもレイが死んだら、メアリが悲しんでしまうだろう。
「ニル」
「はい」
名前を呼ぶとニルはすぐに姿を見せる。いつあたしに呼ばれても良い用に控えていたみたい。まあ、あたしもそれが分かってたから呼んだんだけど
「この人を村まで運んであげて」
「承知いたしました」
「……は、は?」
「運び方の快適性は保証しかねます。ご容赦ください」
ニルは大きな素材を運ぶための荷車に騎士を乗せて縛り付ける。プルメオ謹製の荷車は魔族用に空中使用も可能な優れものだ。ただし乗り心地は最悪だけど。
騎士の悲鳴が離れていくのを聞きながら、首をこきりと鳴らす。アズキも応えて体を伸ばした。
「アズキ、行くわよ」
「合点。ここに来てから全力出せずに鈍るとこでしたから」
目的地、あのドラゴンが戦っている場所。目標。レイとクリム、それとついでに騎士の皆様も救出。
「あたしは静かに暮らしたいのに。邪魔する馬鹿には死んでもらわないとね」
ひきこもれないひと
かんそうひょうかおまちしております