女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可) 作:異種百合推進委員会
上空から様子をうかがう。惨憺たる光景、にはまだギリギリなってなかった。二十人は越える軍勢の内、半分は継戦不可能な傷を負い、後方で倒れている。鎧の薄いところに噛みつかれたのか、応急手当こそしてあるものの血が滲んで痛々しい。もしかしたら何人かもう助からないかもしれない。
残った内の半分は、小さな竜から怪我人を守るために防戦一方。数体落ちているし善戦しているらしい。クリムが血を流しながら戦っているのも見える。とりあえず無事を確認できたので一安心。
そしてレイを含む残りは、巨大な四足の竜と対峙していた。
まずは、邪魔なチビから片付けましょうか。戦っている人間達を巻き込まないよう気をつけて魔法陣を組む。
「潰れろ」
すべての方向から重力で押しつぶし、小竜を手のひら大の肉塊に押し縮める。こつんと地面に落ちて軽い音を立てた。ワイバーンの時にもやったやり方だ。人間たちは突然目の前の敵が消滅したことにポカンとして、辺りをうろうろ見回す。そして、クリムが見上げてあたし達を見つける。
「オジョー!?」
この馬鹿。呼んじゃったら無関係の魔族アピールが出来なくなるじゃないの。後始末がもっと面倒になったわ。と頭を抱えても時既に遅し。今更知らないふりも出来ないのでアズキと一緒に場に降り立つ。本丸と戦っている組は、背後で何かが起きていることは分かっても、振り返る余裕も無いみたいだ。
「アズキ、怪我人を適当に治してやって」
「某の分も残しておいて貰えると助かりやす」
「はいはい」
怪我人その他はアズキに任せて、あたしは最前線へと身を投げ込む。竜が吐き出した火の球みたいな攻撃を地面に叩きつける。
「なっ……」
レイが何か叫びそうになって、慌てて口をつぐんだ。大方あたしの名前を呼びそうになったのだろう。残念、クリムのせいでもう手遅れよ。だからもう自分が一番やりやすいように動かせてもらうわ。
「騎士団の頭は誰?」
「……魔族まで。なんとも運のない」
呼びかけに答えたのは背の小さな女性だった。ジスタと同じくらいしか無いけれど、大振りな剣を持ち、寸法をむりやり合わせた鎧で布服のように立ち回っている。モンスターに苦戦している最中に魔族まで混ざってきたのだから、声には絶望の色が見えた。
「勘違いしないでちょうだい。あんた達を狩るつもりは無いわ」
ひらひらと手をふる。別に人間を相手にしにきたわけじゃない。
「後ろの怪我人。治療させてるからさっさと退却しなさい」
「…………」
「疑わしいなら振り返っても良いわよ。別に背中撃ちなんてしないから」
団長格は部下にカバーさせて背後を確かめる。モンスターだけではなく、あたしにもしっかり睨みをきかせているし、一瞬の動きでも連携が取れているのが分かった。なるほど、半壊しているのに指揮が崩れないわけだ。よく訓練されている。下手な部隊だったらとっくに全滅していただろう。
「嘘じゃないでしょ? 怪我人が居ても邪魔だから下がりなさい」
「……痛み入る」
数瞬逡巡して、ここで問答することが無意味だと分かってくれたのだろう。頷き、彼女が声を張り上げる。
「小型が居ない内に負傷者は退却しろ、防衛班は負傷者の護衛に当たれ! 退けぬという命知らずは私と共に殿だ!」
「りょ、了解!」
よく通る声。あたし達のせいでざわついていた集団の空気が引き締まる。食い下がる者も居らず、後方部隊が下がっていくのが見える。そして、前線でも疲労や傷の多いものは自己判断でそちらに合流していく。残ったのはあたしとレイ。団長格と手練っぽい部下が三人。そして治療を終わらせたアズキが合流してくる。
ほんとは皆下がってくれたほうが良かったんだけどなあ。あたしの魔法はどうしたって大雑把だから、人が多いと大技とかじゃ巻き込んじゃう。なので実は人が居ないほうが楽に終わる。
だけどまあ、騎士団にも面子というものがあるだろうし、あたしが信用無いのも事実だし。
「で、と。レイ。来ちゃった」
呼びかけると鬼のような形相をされる。いや気持ちは分かるけど。痛いほど分かるけど。
「クリムがあたしのこと呼んじゃったからもう無理よ。今はこの場をどうにかしましょ」
「はぁ……あの馬鹿。スーザン殿、信じるのは難しいと思いますが、この魔族は今は味方と考えてもらって構いません」
「……事情は分からないがもとよりそのつもりだ」
「話が早くて助かるわ」
彼女の名前がスーザンだと分かったところで、バケモノの方に向き直る。さっきから何度も火球を飛ばしてきていたけど。半分はあたしが重力で叩き落し、半分は騎士達が弾いていた。飛び道具だけなら楽なんだけど、それだけだったらとっくに討伐できている筈だ。
特徴的なのは背中に六つ並んだ突起。あれはなんだろうと見たところで異変が起きた。
突起からぶくぶくと変な塊が吹き出す。乳白色で、ぶよぶよとして気味が悪い。瞬く間に膨らんで、塊が卵型になったか思うと、ぴきり、とヒビが入った。
「えぇ……嘘でしょ」
「……これで二度目だ。本体も頑丈だし埒が明かない」
生まれたばかり、六体の小竜が甲高い鳴き声をあげた。
まおうぐんかんぶのえんとりーだ!
かんそうひょうかおまちしております