女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可) 作:異種百合推進委員会
六匹の小竜は、あたし達を目掛けて襲い掛かってくる。二匹はあたしとレイで即座に落とした。残りの二匹はアズキとスーザンが受け持って、残った騎士三人がチームワークで二匹を相手にしている。
だけど、あの生み出し方を見るに殆ど無尽蔵と考えた方が良いだろう。限界はいつかは来るだろうけど、見立てが出来ないものをアテにしちゃいけない。
「だったら本丸一点狙い!」
闇の槍を生み出し、重力を乗せて放つ。三本の槍が真っ直ぐに飛んでいき、真竜の鱗に弾かれる。嘘でしょ、オウキの壁にも突き刺さる威力よ。それが表皮を削ることすら出来ないなんて。
「でぇぇやぁぁ!」
アズキが飛び出し、上段に構えた刀を振り下ろす。それすらもガチりと火花を散らすに留まった。
「ぐぁ」
邪魔な虫を振り払うかのように真竜が前足でアズキを振り払う。猫がじゃれるかのような動きでアズキは横に弾け飛んだ。木々を薙ぎ倒し、その下敷きになる。
「アズキ!」
「ぐぅ……こりゃ一溜りもない」
倒木を切り裂き、立ち上がる。治癒魔法の魔法陣が見えた。傷は即座に全快しているが、痛みは凄まじいのか顔を歪めている。
「クァ────」
咆哮を上げ、突起がまた膨らみ始める。もしかして、また生み始めるつもりなのか。まだ三匹残っているのに、間隔が短い。
「潰れなさい」
卵が割れる前に重力魔法で潰す。この頻度で生み出されるんじゃ、他を巻き込まないように制御する余裕すら与えられない。本体をやるなら皆も一緒に潰してしまう。
「はっ!」
産卵に立ち止まった隙を狙ってレイが細剣を突き出す。鋼鉄よりずっと硬い皮膚を貫いて肉を抉る。凄まじい威力だけど、それだけだ。手傷を負わせただけで致命傷には至らない。筋肉の脈動で剣が折られる前に即座に引き抜き、振り下ろされた前足を飛びのいて躱す。
「バケモノめ」
レイが吐き捨てる。あたしも同じ気持ちだった。こんなに強いモンスターは見たことない。硬いだけなら、鋭いだけなら覚えもあるけど、その上軍勢まで扱うモンスターなんて。もしこんな奴が魔王様のところに来たら、魔王様以外に対抗できる奴が居るだろうか。
突破口はあたしかレイのどっちか。ちまちまと削り続けるか。賭けに出て一撃で終わらせるか。
「レイ、アズキ。あたしをどれくらい守れる?」
長期戦は不利。多少きつくても、あたしの魔法で押し潰すしか無い。でも、奴だけを潰すには力の制御に時間が必要だ。ちょっとでも弱くしたらこいつは生き残るだろうし、強くしてしまえばみんなお陀仏。
レイは質問の意図を考えるのに一秒と掛からなかった。
「何分必要だ」
「二分はほしい」
「無理を言う」
肩をすくめて細剣を構え直す。無理を承知でお願いしている。それにレイは応えようとしてくれる。
「レイさん。某は出来るだけあの卵を割り続けます」
「怪我はするなよ」
「治癒魔法を舐めんといてください」
二人が走り出す。あたしはその場に魔法陣を作り出し、それに手を伸ばす。ああ、これをやるのは何十年振りだろう。今の魔王様と初めて会って、本気で喧嘩した時以来か。
「──陣への接続、
幾つものヘッドアップが頭を焼きに来る。痛みに顔をしかめながら、あたしは全てに許可を出し続ける。レイがあたしの前に立ちながら、火球を弾き飛ばしているのは見えるけど、今は一歩も動けない。
「──制御用仮想魔法陣、
アズキが吹き飛ばされながら、卵を三つ割っていた。残った三つが孵ろうかというところで、飛び込んてきたスーザンが残りを切り裂いた。
「対魔法三層式拘束具、
鈍りきった身体がみしみし悲鳴をあげる。あたしの魔法に、あたしの身体は耐え切れない。だから普段は拘束で出力を管理していた、それを破って自分の手で操作しようとした瞬間、錆び付いた状態のあたしには手に余る。
こんなことになるなら、もうちょいちゃんと運動しておくべきだったかもしれない。レイと騎士達が四人がかりで真竜の突進軌道をズラしてくれた。
「──
猶予は十秒。魔法を働かせるポイントに目を付ける。百六十地点決定。出力制御、皆を巻き込まないようにベクトルの調整。
「離れて!」
残り五秒。セッティングは完了。叫ぶと同時に四人共条件反射で下がった。足を止め、卵を膨らませる竜に人差し指で照準を合わせる。
四、三、二、一。
「
深い闇が、真竜をその巨体ごと包み込む。そのまま潰してしまい、残ったのは肉塊だけの筈だった。だけど、原型を失ってなお、それは動き続けた。肉塊から元の体躯に戻ろうとして、ぐにゃぐにゃと膨らみ始めた。
計算をミスった? いや、これで十分な筈だ。何処かで見落としがあったのか? 今までに見せていたものとは別に、防御能力が?
混乱するあたしを前に、誰かがまた走り出した。
「レイ!?」
あたしの魔法をモロに受けて生きてるような怪物だ。迂闊に近付けばどうなるか。だけどあたしには止めることも出来ない。ただ声で止まってほしいと願うだけ。
「気にするな」
だけど、レイは肉塊から突き出た触手を潜り抜け、いなし。中心に刃を突き刺した。
それがトドメ。ぐにゃりとした怪物は動きを止め、小さな塊だけが残った。
「助かった、ギルネ」
なんだこのばけもの
かんそうひょうかおまちしております