女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可)   作:異種百合推進委員会

61 / 86
おつかれさまかい(※えなじーほきゅう)

「ぎゅー」

「ふふ、くすぐったいですよ」

 

 今日は夜も遅いのでおうちに帰ることはやめて。メアリのベッドを借りて一緒に眠ることになった。一人用だけどメアリが小柄だからあんまり狭くはない。ほんとはレイも巻き込んで三人で寝ようとしたんだけど、そんな広さはないって断られた。残念だ。

 前にも思ったけどメアリは体温が高くて、抱きしめているだけで温かい気分になる。どうせなら毎日抱っこして眠りたいくらいだ。

 

「ねえ、ギルネさん」

「んー?」

 

 よしよしと頭を撫でていると、不意にメアリが聞いてきた。

 

「モンスターと戦うの、怖かったですか?」

 

 撫でていた手が止まる。突飛な質問だけど、頓珍漢な質問じゃない。当たらずとも遠からずというか。怖かったことに間違いは無いからだ。

 

「どうしてそう思うの?」

「手が、震えていたから」

「……そっか」

 

 あたしの不安が、メアリにも伝わってしまっていたらしい。メアリに心配をかけさせてしまうなんてサイテーだ。でも、今あたしが抱えてるこの気持ちを、メアリに聞いてもらいたいとも思った。

 

「モンスターと戦うこと()怖くないわ」

 

 どんなに強いモンスターでも、あたしより強い奴は見たことがない。今回だって、あたしが負ける可能性は万に一つも無かった。

 

 でもそれは、あたし一人だった場合だ。

 

「でもね、メアリ。あたしは皆を守れるほどは強くないの」

 

 アズキのように人を癒す事はできない。プルメオやヘレネのように人の為になるものを作ることも、ニルのようにそれを必要な時に取り寄せることも出来ない。

 レイは魔法なんて使えないのに、いろんな人を守る力がある。スーザンのような騎士達も、人の平和を守る為に戦っている。

 

 でも、あたしは壊すだけ。あたしが力を込めれば込める程、本気を出せば出す程、周りを巻き込んで傷付けてしまう。傷付けないように、赤子を抱きかかえるようにと身をすくめていては、相手を壊すこともできない。そして、余計に危険に近づけてしまう。

 

「時々、自分が嫌いになるの。もっと、ワガママをなんでも押し通せるくらい強くなりたかった。それが無理なら、こんな強さなんて無い方が良かった」

 

 メアリを抱きしめる力が強くなる。一人ぼっちは嫌だった。だけど、あたしが求められるあたしになろうとすると、周りには誰も居なくなる。周りから友人を、部下を追いやらないといけなくなる。贅沢な願いだって分かっているけど。こんなことになるなら、あたしは力なんて要らなかった。

 

「……ギルネさんの手、暖かいです」

 

 メアリの手があたしの手を上から包み込んだ。一回り小さいから、完全には覆えない。でも、確かに包まれた。手だけじゃなくて、全身が。抱きしめられているのはあたしの方な気がした。

 

「私は強さがあれば良いな、って思ってました。強かったら。故郷を、お母さんも守れたのに」

「……ごめん。あたし酷いこと言ったわね」

「良いんです」

 

 メアリの声は、しゃんとしていた。

 身をよじらせて、こっちに向き直る。メアリの吐息が近くに感じられた。目が、上目遣いにあたしを見ていた。

 

「ギルネさんは、私を助けてくれました。私をこの村に送ってくれました。こうやってよく会いに来て、不安な夜には一緒に寝てくれました。一緒にお料理を作ってくれました」

 

 それは、これまでの日常。レイに怒られたり、ちょっかいかけたり、一緒にご飯を食べたり。メアリに甘えたり、メアリを甘やかしたり。

 

「でも、それはあたし一人の力じゃないわ」

 

 レイが居て、受入れてくれた村の人達が居て。それでようやく実現した。あたし一人じゃ出来はしない。

 

「はい。だからギルネさんが一人の力で全部守ろうとしなくても、良いと思うんです。レイさんに頼っても、アズキさんに頼っても良いと思うんです。得意なことでも一人で背負わなくて良いと思うんです」

「頼る……」

 

 今回だってレイに頼ったつもりだ。あたしが魔法を撃てるまでの時間稼ぎを。でも、それがメアリの言っている()()とは違うことも分かる。

 

 結局、今回あたしは加減を間違えた。あたし一人の力で潰そうとして、レイがトドメを刺してくれなければ、被害が出ていたかもしれない。それは、あたしが自分の魔法でどうにかするって選択肢しか取れなかったからだ。

 

「こんなこと言ったら、子供が何言ってるんだって怒られちゃうかもしれませんけど」

「ううん、そんなことないわ!」

 

 少なくともあたしは今、あたしの魔法でトドメを刺そうとする、って悪癖に気付かされた。頼るってのはサポートしてもらうってだけじゃない。あたしがサポートして、やってもらうってのも、当然ありなのだ。戦い以外なら選べるのだから、戦いでも選べて良いはずだ。

 

「メアリは本当に賢い子ね」

 

 ぎゅー、ともう一度抱きしめる。あったかい。あたしが今までずっと欲しかった。優しい暖かさだ。

 

「おやすみ、メアリ」

「おやすみなさい、ギルネさん」

 

 こうしていれば、今日みたいな日でもぐっすり眠れるような気がした。




めありとねるとえむぴーがかいふくする

かんそうひょうかおまちしております
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。