女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可)   作:異種百合推進委員会

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かんわきゅうだい(※うごめく)

「……やはり、と言うべきでしょうか」

 

 怒りの余り鉛筆が折れてしまいそうだった。こんな姿は他の皆様に見せてはいけないだろう。窓からは月が覗いている。ひと仕事終えて帰ってきた夜だというのに、目は冴えて眠れなかった。蝋燭の灯りを頼りに、自らが記した図と考察を読み直す。

 レイ様とギルネリア様が打ち倒した真竜(ドラゴン)本体の死体は回収できなかった。正確に言えば、回収はしたものの圧縮して解剖が不可能だった。だから、それが生み出したという小竜の亡骸を研究の材料にした。伝聞から思い付いてしまった、最悪な想定を確かめる為に。

 

「生殖器官が存在しないだけならまだしも。消化器官の存在しないモンスター、なんて有り得ませんわ」

 

 口があった。牙もあった。喉から食堂に通じる道もあった。だけど、胃はなかった。見た目だけそっくりな、ただの袋があるだけだった。回収した死体すべてが同じ特徴を持っていた。

 

 モンスターは生物だ。不可思議な生態をしていようとその前提は変わらない。アリのように、生殖の為の個体とそれ以外で機能が異なるモンスターは存在する。だけど、何も食べずに生きながらえることの出来るモンスターは、もはやモンスターではない。

 

 考えられる可能性は一つ。このような端末を生み出すことが母体であるドラゴンの特性であるということ。だが、それは余りにも異様だ。こんな怪物を生成し維持するのは、モンスターにとっても負担が大きい。自然発生したのならば、子孫栄えることなく滅ぶだろう。

 

「だけど、もし。そう作られたのだったら?」

 

 例えば、戦場にこの母体を放流したとする。人類最高峰の騎士ですら手を焼く凶暴さ。無尽蔵に端末を生み出し、暴れ回れば敵味方問わず混乱することは間違いない。この時、片方の陣営が予め知っていたのなら、被害は最小限に抑えられるだろう。

 

 すなわち、戦略兵器としての価値を見出すことができる。

 

 荒唐無稽と笑えるだろうか。いや、そんなことはない。だってわたくしは天覧研究所の研究者。その仕事はモンスターから新たな技術を生み出すことなのだから。技術の為にモンスターを作り出すようなことがあってもおかしくない。

 もっと言えば、モンスターの遺伝子操作(そんなたくらみ)を一番推し進めていそうなのは、天研に他ならない。

 

 こんこん、と窓の縁が叩かれた。夜更けなのに鳩が窓枠をつついている。窓を開けてやると、机の上に乗ってきた。その首には針が一本刺さっている。

 

「ミランダよ」

 

 鳩が発したのは人間の言葉だった。低い男の声に、わたくしは答える。

 

「これはこれは所長ではありませんか。如何したのです?」

「報告を。件の真竜の死骸は確保したのだろう?」

 

 所長はこうやって遣いを送るだけで姿を見せない。研究員は各地に散らばっているのだから、一々身を運んではいられないという。

 

「いえ、残念ながら。死してなお動こうとしたということで、騎士団によって焼却されてしまったようで。組織だけは辛うじて採取できましたが、解剖は叶いませんでしたわ」

「チッ、愚図の騎士共が」

 

 無表情の鳩から舌打ちが聞こえるとおかしくて笑いそうになる。こうやって各地の報告を伝聞でしか聞こうとしないから。わたくしの嘘にこうやって簡単に騙される。所長はギルネリア様のことについて一切何も知らない。わたくしが伝えていないのだから、知る由もない。レイ様という、便利な押し付け役が居るのも幸運だった。大概の無法はレイ様の仕業にしてしまえば納得してしまう。

 

「ですが、その真竜が生み出したという小個体については死体の分析が出来ましたわ。図面をそちらに送らせていただきますわね」

「ふん……」

 

 当たり前だと言わんばかりに鼻を鳴らす。

 

「わたくしからは、他にお送りできるものはございませんわ」

「そうか。まあいい。私はお前には期待しているのだ。分かるな、ミランダ。卑しい魔女の血を引く者よ」

 

 魔女、という言葉に顔をしかめる。大嫌いな言葉だ。他人に、所長に使われると特に吐きそうな気分になる。

 

「虐げられ、排斥され続けたお前を拾ってやったのが誰か、忘れたわけではあるまい?」

「もちろん。深く感謝しておりますわ」

「常に真意を隠すような喋り方をするのはお前の悪い癖だ」

「あら、わたくしは常に誠実たらんと誓っているのですが」

「魔女がよく言う。ともかく、拾ってやったのだから、それに答えてみせろ」

 

 解剖図を結び終えると、鳩は窓から月に向かって飛び立っていく。その姿を見送りながら、わたくしは窓を締める。

 

「ええ、分かっておりますわ。魔女の末裔を受け入れてくれる場所なんて無かった」

 

 だけど、いつまでもそうではない。騎士を受け入れ、魔族を受け入れ、放蕩者の貴族も受け入れる場所がある。弱みを握って使い潰そうなどと考えず、わたくしを友人として扱って、助けの手を差し伸べてくださる人がいる。

 

「でも、お気を付けになってください。雛鳥はいつか旅立つものですもの」

 

 巣立ちの時に崩れ落ちてしまうような、脆い巣ではないことを他人事のように祈った。




しりあすなふらぐだけー


なんだかんだと60わをこえていました。すとっくがたりなくなってきましたができるだけまいにちがんばりたいとおもいます

かんそうひょうかおまちしております
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