女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可)   作:異種百合推進委員会

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きしのにちじょう(※すぱるた)

 ドラゴン討伐から数日が経った。あたし達の外出禁止令もなくなり、みんな村に降りて来れるようになってやっと元の生活に戻った。

 スーザン達青獅子騎士団は冬が終わるまでは村に残る予定らしい。出てきたモンスターがあまりに強かったから、周囲への影響も調べなきゃいけないらしい。それはミランダの居る所の仕事じゃないのかと聞いたら、必要とする情報が違うって答えられた。まあ、アドバイザーとしてミランダにも協力を頼むことになったから実質的には変わらない。

 スーザンは休暇みたいなものだと呟いていたけれど、あたしの目線からはそう思えなかった。

 

 

「あと二百本! 今回のような無様を二度晒すつもりか? 意気地なしと罵られたくないなら口より手を動かせ!」

「押忍!」

 

 大の男が何十人も並んで、冬なのに汗だくで剣を振っている。村の外れで開けた場所だというのに、熱気でこっちまで汗をかきそうだ。

 

「そこ! 構えが乱れているぞ、一本たりとも集中を切らすな!」

「押忍!」

 

 先頭に立つスーザンが檄を飛ばす。まったく心得の無いあたしから見てもスーザンの素振りはぴたっときれいに止まっていた。自分より小柄な隊長に手本を見せられては部下達も負けてはいられない。やってられるか、って投げ出すような輩はここに来る前に淘汰されているんだろう。

 

「あれが青獅子の鬼教官か。噂には聞いていたが凄まじいな」

 

 木箱に座って眺めていたら、横にレイも腰掛けた。彼女は彼女で自分の決めたメニューをこなした後のようで、じっとりと汗ばんでいる。

 

「レイは混ざらないの?」

「自分で決めたもの以外は極力やらない主義でな」

「おお、玄人っぽい」

 

 ほんとは余計に疲れるのが嫌なだけなのかもしれないけど。レイの訓練も一度見たことがあるけど、不思議な気持ちになったもんだ。しばらく目を瞑ったかと思えば、見えない敵と戦うように体を動かす。あれは他人には真似できない、彼女だけに最適化されたものだ。

 

「クリム辺りは放り込んでやった方が良いかもしれないが」

「訓練って言ってもみんな全然違うやり方なのねー」

 

 アズキはひたすら実戦で体を動かし覚えろ、ってタイプだからまた別だ。その二つに比べると、スーザン達がやっている練習はなんだかレベルが低いように見えてしまう。

 

「それは、正しいとは言えないな」

「そうなの?」

「アズキのやり方は、教えられる教官が付きっ切りにならないと出来ないものだ。スーザン一人で全員を相手にしろというのか?」

 

 倒すだけなら出来ると思うけど。確かに訓練としては全然身にならないような気がする。一秒で倒されて学べるのは実力差だけだ。

 

「基礎は裏切らないからな。私も、疎かにはならないよう気を付けている」

「基礎かー。人間の強さってやっぱり独特よね」

 

 魔族には均一化された基礎を鍛える、なんて発想は中々出て来ない。馬鹿にしてるんじゃなくて、魔法っていう物がみんなまったく違うものだから、素振りみたいな誰でも効果があるものってのがあんまりないのだ。強い奴は勝手に強くなるし、鍛えるにも自身で魔法との付き合い方を学ぶしかない。近い魔法が生まれやすい一族の中ならそういう技術も継承されているかもしれないけど、結局はその魔法だけの特別製だ。一定の水準まで全員が鍛え上げられた集団というのは、強い魔族よりずっと厄介だ。

 

「終了! 休憩の後乱取りに入る。補給を怠るなよ!」

 

 千本素振りが終わったスーザンが滝のような汗を手ぬぐいで拭き取りながらこちらに歩み寄ってくる。

 

「ギルネリアだったか。最初からずっと見ていたな」

「人が何かしてるの見るのって好きなのよね」

 

 メアリの料理とか、ジスタのお絵かきとかもそうだけど。誰かが真剣な顔で取り組んでいるのを眺めるのがどうやらあたしは好きらしい。自分がやる方となると面倒だからあんまりやりたくないんだけど。

 

「邪魔はしないから気にしないでちょうだい」

「そうさせてもらおう。して、レイ殿。貴殿もご覧になっただろうが、貴殿の目にはこの騎士達はどう映る?」

「驚嘆に値する。ここまで統率の取れた部隊は白狼にも居ない」

「だが、あのドラゴンを相手にしては全滅していただろう」

 

 よっぽどこないだのことが悔しいらしい。魔族からすればあんな怪物に対抗できる部隊なんて増えてほしくないんだけど、空気を読んでおとなしくしておく。やぶ蛇は嫌だし。

 

「乱稽古への参加をお願いできないだろうか。貴殿のような猛者と手合わせする機会は滅多にない。彼らにも良い経験になるだろう」

「ふむ……」

「良いんじゃない? 行っちゃえば」

 

 だって、本当は熱気に当てられてうずうずし始めているの分かるんだもん。あたしは野蛮なことは苦手だけど、騎士っていう生き物にとっては楽しくて仕方がないらしい。

 レイはあたしを見てなにやら考えていたけど、ついには首を縦に振った。

 

「では手合わせ願おう。参考にならんと怒らないでくれよ?」

「まさか。そんなこと思う筈もない」

 

 まあ、結果としては、レイが全員目にも止まらぬ速さでボコボコのボコにしてしまったんだけど。

 

 負けず嫌いもここまで来ると凄いなあ、とあたしは苦笑しながら眺めていた。




きし(ばんぞく)

かんそうひょうかおまちしております
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