女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可)   作:異種百合推進委員会

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きしのにちじょう(※へいたん)

 たくさんの人を率いる時、一番大切になるのは兵站、つまりごはんだろう。どんなに強い戦士も、腹が減っては戦は出来ぬ。あたしは殆ど軍を率いることは無いから深く考えたことはないけど、それで失敗した作戦を幾つも見たことがある。

 それともう一つ。こういう村では冬の食べ物は貴重だ。頑張って秋の間に備蓄はしているけど、いたずらに消費する余裕は無い。

 

 つまり、どういうことかと言うと。

 

「食料の補給が厳しくなってきたと」

「不甲斐ないことにな」

 

 スーザンは悔しそうな顔をする。指揮官としてこの事態を大きな失態だと考えているのかもしれない。

 

「まあ、仕方ないわよ。街道が通行止めになっちゃったんじゃあ」

「それもこの地域の冬を楽観視していた私の責任だ」

 

 食糧不足の原因は、簡単に言えば街に行けなくなったからだ。元々、近くの街で食料は買い込んでいた。ただ、今回の事態を重く見て滞在期間を延長。それに伴って足りなくなった食料は改めて街に買い出しに出る予定だったという。

 

 ところが、少し前に降った雨で街道に土砂が流れ込んでしまったらしい。人の往来くらいならともかく、数十人を賄う食料なんてとても運搬できない。サトにも聞いてみたが時折あることで、こうなったら待つしか無いのだと言う。だいたい五日から七日くらいで改善されるとは言うが、スーザン達の備蓄もおよそ五日ほど。行き帰りに二日は掛かることを考えたら正直心許ない。

 

「それこそ騎士の人たちの派遣すれば早く解消されるんじゃないの?」

「私もそう考えたんだがな。どうもマロルの建築組合は発言力が高いらしい」

「あー利権問題」

 

 何処の世界も世知辛い。力自慢の男が十人も居れば三日くらい早く開通するだろうに。こういう輩がいるから色々と不幸を背負う子が生まれるのよね。そんな縁もゆかりもない集団の悪口は何の益にもならないからここまでにするとして。

 

「どう、レイ。何か良い案無い?」

「……というか、私に相談に来たはずなのにどうしてお前が聞き手になっているんだ?」

 

 たまたまあたしもここに居たから、かな。これでもあたしって聞き上手だから。実際事のあらましはよく分かってもらえた筈だ。

 

「一人二人ならともかく、騎士団全員を賄う程の備蓄なんて村には無いぞ」

「村の半分以上の人数だものねえ。寝床が確保できてるだけマシというか」

 

 ちなみにスーザン達は村の近くで野営している。流石に全員を住まわせる程の空き家は無かった。とはいえ、土地は十分だから、行き来にもそれ程苦労はしていないみたいだし。

 

「ギルネのところも、人数的に無理だろうしな」

「うち四人よ? 冬の貯蓄なんて一晩で食べ尽くされちゃうわ」

 

 別に大食漢が居るわけでもないし、規模的に無理がある。健啖家の方であるアズキでも、スーザンのとこの騎士程は食べないんじゃないだろうか。

 

「やはり切り詰めるしか無いか」

「それが出来れば良いけど」

 

 不可能ではないが苦しいだろう。食の不満は広がりやすい。ちゃんと統率されているから杞憂だとは思うけど、場合によっては村からの略奪だって発生しうる。何より、十分な量食べさせてやりたいのが人情というものだ。ひもじいのは辛いってことをあたしは良く知っている。

 

 どうにかしてあげたいなあ、と頭を捻らせるけどあたしの頭脳では中々思いつかず。どうしたものか。どれもこれも街道をさっさと直さない建築組合とやらが悪い。

 

「……あ」

「何か思いついたのか? ……いやその顔はろくな案じゃないな」

 

 レイが顔をしかめた。あたしのことをよく分かっている。真っ当な方法が無理なら真っ当じゃないやり方でやれば良いのだ。

 

「例えば不思議な力で突然街道が開通したらどう?」

「……どういうことだ?」

「どうせ深夜にお前が出向いて道を開けてしまおうとかそんなところだろう」

「まあね」

 

 レイやスーザンじゃ街との折り合いとかあるだろうし、組合に一枚噛むことはできない。でも、あたしなら一晩あればたぶんすっきり片付けることが出来る。知らない人からすれば奇跡か何かが起きたようにしか見えない筈だ。

 

「よくよく考えたらあたしがその組合とやらの顔色伺う必要一切無いのよね」

「だが、相手の困惑と怒りは相当なものだろう」

「でもスーザン達じゃそんなこと出来ないのは見て分かるでしょ? あたしが知られてないなら、相手も突っ込みようが無いと思うのよね」

 

 姿隠しならミランダに協力してもらえば良いし。レイもあたしがやること自体は反対しないだろう。問題は。

 

「スーザンはどう?」

 

 魔族の力を借りるということ。証拠がないとは言え、状況的に矢面に立つのはスーザンだ。知らぬ存ぜぬでやり過ごすのにも忍耐がいる。本人は魔族に頼るなんて嫌だと言うかもしれない。

 

「……なぜ君は自らリスクを背負う?」

 

 返ってきたのは警戒の言葉。

 

「飢えが苦しいのは知ってるもの。それに、あたしの為にもちゃんとなることよ? だってサトが街に行けないとあたしも困るもの」

「サト、というとあの行商人か」

「ええ、だからついで。それくらいに思っておいてちょうだい」

 

 視線があたしからレイの方に向く。うーん、露骨ではないけどやっぱりまだ信用はされてないわね。ま、それが当たり前だしそっちの方が安心するけど。レイが何も言わないのを見て、彼女は腹をくくったように息を吐いた。

 

「痛み入る」

 

 そういうわけで、あたしが一夜で土砂をどかした事件は、一夜の謎として噂されることになるのだった。




ふゆにくるから……

かんそうひょうかおまちしております
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