女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可) 作:異種百合推進委員会
「流石にこれだけ居ると狭くて動きにくくなりやすねえ」
「おいアズキ! もう少しそっち詰めろッ」
「うふふふ、お祭りみたいで楽しみですわ」
「ジスタさん、順番変わりましょうか?」
「お願いしますぅ、さっきからミランダさんから視線が」
「急に大勢で押しかけて来たかと思えば鍋とは……場所を作らされる身にもなれ」
女三人で姦しいのなら八人も揃えばそりゃ喧々囂々。レイのおうちが広いと言ってもかなりギュウギュウのおしくら饅頭だ。冬なのにじっとり汗までかいてる。
「ごめんねー。でも、にぎやかなの嫌いじゃないでしょ」
「まあな。前線で詰所に居た頃を思い出す」
「何その話聞きたい」
レイが左遷される前の話をしてくれるのは意外と珍しい。魔族と戦っていた時代だから、あたし達に遠慮してしまうっぽい。あたしはそれはそれと割り切っているのだが、レイにはまだちょっと難しいんだろう。話を広げようとしたところでわぁと悲鳴があがる。ジスタだ。
「今お尻触りましたよねえ」
「ただのスキンシップですわ」
「いや……認めはするんですね……」
「諦めろ。ミランダのセクハラは言っても治らん」
「魔族だけかと思えばクリムも被害に遭ってるんですね……」
「ニルさん、ありがとうございます……」
「いえ。でもこれ、対象が私に変わっただけでは?」
がやがやとこの調子じゃ腰を落ち着かせて聞くことは出来なさそうだ。せっかくの機会だけど諦めて、鍋の準備の方に意識を向ける。
テーブルや椅子は端に追いやられて、開けた中央には煉瓦造りの小さな炉が一つ。火を付けてやると熱がぼわっと広がった。
「メアリ、もう鍋持ってっちゃって大丈夫?」
「はい。先にお野菜だけ入れてるので、煮えるまでもう少し待ってくださいね」
台所に行ってメアリから大鍋を受け取る。中にはアズキの育てた冬野菜にお出汁を取るための鶏の骨、あとは調味料を少々。
「重たいから気をつけてくださいね?」
「大丈夫大丈夫。あたし力持ちだから」
実際この程度なら祭りの時に組み立てた櫓の方がずっと重い。
「はいはい、どいてーお鍋置くよー」
炉の上に鍋を置く。じゅっと音がして、しばらく待っていると水がぶくぶく泡立ってきた。おたまで軽くかき混ぜてやると出汁の良い匂いが広がっていく。
「おいオジョー、肉が入ってないぞ」
「野菜の方が煮えるのに時間が掛かるのよ。待ち遠しいのは分かるけど」
「おや、そちらの棒はなんでしょうか」
「こいつは菜箸ですな。某の故郷では鍋の具材を取るのにこいつを使うんです」
「使いにくそうだな。ナイフとフォークじゃ駄目なのか?」
「それじゃあ気を付けないと火傷しやすんで。使いにくいなら某が取り分けましょうか?」
「一回ヘレネが火傷して大騒ぎしたことあったわよね」
「ありやしたねえ。某がすぐ治したのに傷が残るだの散々な言いようでしたな」
「その癖次の時にもけろっと参加してましたけどね」
「かわいくて良いじゃない」
野菜から出る灰汁を掬っていく。野菜も良い感じに煮えてきたかな。
「メアリ、そろそろお肉持ってきて良さそう」
「はーい。じゃあ持ってきますねえ」
台所からお皿に載せられたお肉を両手で抱えてメアリが出てくるとわっと歓声が上がる。
「牛肉か? まだ残っていたのか」
「そうですよ。冬初めに貰ったものなのでそろそろ食べるか干さないとって考えてたんです」
「お肉ばっかり食べちゃ駄目だからね」
「お前に言われるのは心外だな」
「牛はこれだけですけど、他のお肉もありますからね」
「はいはい、みんなお椀持った?」
全員にお椀とフォークが行き渡ったのを見て手を合わせる。
「いただきます!」
いただきます、と声が揃った。
「む、これは思った以上に使いにくい……」
「メアリの分もあたしが取ろうか?」
「あ、お願いします」
「あらクリムさん。お野菜も食べなくては駄目ですよ」
「げ、ミランダ。いやいやこれはな、自分の好きなタイミングで食べようと」
「……フッ」
「おいニル、今私のこと笑ったろッ」
「なんのことでしょう」
「え、えーとぉ」
「ああジスタ殿、某が手伝いましょう」
ワイワイガヤガヤと、魔王城にいた頃は鍋を部下と囲んでいたけれど、そのときに戻ったみたいだ。どちらかというと友達も増えて、進んだって言うべきなんだけど。
「牛肉食べるのなんて久しぶりよね」
「この村じゃ猪か兎か鶏だからな。牛を飼ってるのはダレンさんとこくらいだし。間引く冬じゃないと肉にしないから」
「野生の牛居れば狩るのに」
「今時居ないだろ」
「某の故郷にはよく居ましたよ?」
「冬の風物詩よね」
五人くらい平気で振り回す暴れ牛の討伐。
「何処の魔境だ」
「アズキは一人で狩ってたけど」
「ここらは狩りするには獲物が小さいですよねえ」
「だからわたくしでもお手伝いが出来て助かりますわ」
「あたしは狩りとか出来ないからほんとに助かるわ。はあメアリ、火傷しないよう気を付けてね」
取り分けたお椀の片方をメアリに渡して、あたしもくぐらせて良い色になった牛肉を頬張る。
「うーん、美味しい」
たぶん、今まで食べた中でもトップスリーに入る美味しさだった。
ちゃんとおてつだいしなさい
かんそうひょうかおまちしております