女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可)   作:異種百合推進委員会

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しふくのひととき(※しんにゅうしゃはむし)

「やっほ。きちゃった」

「本当にフットワークが軽いなお前は」

 

 そう言いながらもレイは中に入れてくれる。魔族と人間の平和の環最前線だ。そんなもの求めてない、と叫ぶ人種も結構な数居そうだがあたしが居るのであたしの勝ち。レイも居るから人間サイドも大勝利。

 

「メアリ、元気にしてた?」

「ギルネリアさん!」

 

 メアリに抱き着いてぐるぐるしてあげる。うん、血色よし! かわいさよし!

 

「もう少しでパンが焼き上がるんです」

「メアリの手作りパン!? 食べる食べるー!」

「いろんな手伝いをしてくれて助かるよ。私はお世辞にも家事が得意とは言えないからな」

 

 それは確かにという顔になる。レイは武力に関しては文句なしに強いが、それ以外は不器用そうなイメージがある。あたしもあんまり人のことは言えないんだけど。

 

 あー、パンのいい匂いが漂ってくる。お店で売ったら連日長蛇の列だ。そしたらあたしがメアリのパンを食べられなくなってしまう。心苦しいが本人には伝えないことにしよう。

 

「パン、持ってきますね」

「ありがとー!」

 

 とてとて歩いて行くエプロン姿を眼福と眺めながら、椅子の一つに勝手に腰掛けて待つ。レイが人数分のお皿を戸棚から取り出してくれた。

 

「良い皿ね」

「そうか? まあ、ここに来る前に王都で取り揃えたものだからな。それなりの質はあるだろう」

「えー、人間の王都ってこういう皿たくさんあるんだ。良いなあ」

「魔界はそうでも無いのか?」

 

 魔界? って首を傾げてから魔族の領土はそう呼ばれていたことを思い出す。

 

「自らを魔族とは名乗るのに、自分達の領地を魔界とは呼ばないのか?」

「だって魔族って『魔法を使う種族』って意味だからねー」

「それじゃあ現地だとなんて呼ぶんだ?」

「んー……特に名称はないかなあ。だいたい地名で通っちゃうし、前線は前線じゃない。別に人間の住む場所を人間界って呼ぶこともないし」

「そういうものか」

「そういうものよ」

 

 話が逸れた気がするので修正、修正。

 

「魔族ってあんまり食にこだわり無いのよね。お腹いっぱいになれれば良いって考えの奴も多くて。だから食器とかって需要ないのよ」

「でもお前みたいに良いと思うのも居るじゃないか」

「そういうのはだいたい専用の職人を配下にしてるわね」

 

 需要は無い、客層も悪いってことになれば自分で店を開こうなんて思う奴は稀で。誰かに雇われている方がずっと安心安全だ。あたしも手先の器用な部下に作らせたりしていたこともあるのだけど、今回の仕事のせいで離れ離れになってしまった。とても悲しい。

 

「わっどいてください。熱いですよー」

 

 話をしている間にメアリがパンを持ってきてくれる。おお、凄い。焼きたてのパンってこんなにふっくらしてるんだ。

 

「ねえ、ねえ、もう食べて良い?」

「せっかちだな。バターは要らないのか?」

「いる!」

 

 パンを半分に割ってバターを乗せるとじゅっと溶けていく。よだれがたれてしまいそうだ。全員席についたのを確認して、あたしはかぶりつく。

 

「美味しい……! とても美味しいわ!」

「ありがとうございます。そんなに美味しそうに食べていただけると私も嬉しいです!」

 

 褒められて照れてしまったメアリがごまかすようにパンを口にした。でも自分の作ったスーパー最高完璧なパンに頬が緩んでしまっている。かわいい。

 

「メアリの作るご飯を毎日食べられるレイずるくない?」

「面倒見ろと言ったのはお前だろう」

「面倒見られろとは言ってない!」

「理不尽過ぎる」

「ううっメアリ慰めて」

「え、ええと。元気だしてください?」

「メアリ、時には突き放してやることも優しさだぞ」

 

 うう、酷い。涙が出そう。理由は悲しみよりもこうやって益体もない会話ができる日常の嬉しさだけど。

 

「しかし、ギルネリアは一人で居るわけだろう? 食事はどうしていたんだ」

「森でイノシシ狩って丸焼きにしたりとか」

「豪快ですね……」

「あとは食べられる木の実探したりとか」

「結構切実だったんだな……」

 

 あれ、なんか哀れみの目で見られている。

 

「騎士団とかだって野営の時とか狩りしないの?」

「することにはするが。そもそも年単位で補給が無いなんてことはめったに無かったからな。携行食で凌いだり、狩りをする際にも何人かでグループになっていたな」

「えぇ、羨ましい」

「イノシシなどは一人で獲っても持て余すからな」

「まあそれは確かに」

 

 一度めちゃくちゃでかいイノシシを狩ったは良いが処理できなくなって泣く泣く腐りかけの肉を土に埋めたことがある。

 

「あー、毎日ここに来ようかしら」

「一応お前にも任務はあるだろうに」

「あるにはあるけど、暇なわけだしー……んー?」

「どうした?」

「いやなんでもなーい」

 

 誤魔化したけどあたしの警戒レベルはちょっと上がった。即死トラップから拘束トラップに差し替えたお家の罠に誰かが掛かったみたいだ。入り口に近づいた時点で気配が察知できるから、すぐに動きが止まったってことは、一番最初の罠に掛かったのだろう。

 

 まあ、捕まったってことは放置してても良いな。あたしの至福のひとときを邪魔することは許されない。念のため奥へと続く扉を閉じておいて。もう半分のパンを手に取る。

 

 あー、本当に美味しい。




かんそうひょうかおまちしております
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