女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可) 作:異種百合推進委員会
「お前は、どう思う」
「え、あたし?」
スーザンが帰った後、あたしに聞いてきた。レイが迷うってのは珍しいなと思いつつ。簡単に答えが出せる問題じゃないことも知っている。
「あたしはレイがここに帰ってきてくれるなら良いなー、って思ってる」
「……そうだな。たかだか二、三年だが、ここは私の第二の故郷と言っても過言ではない」
「それ以外は、あたしが全部守るつもりで居るから」
あたしの存在が他所の人間にバレる、もしくはバラすってことは当然考えたことがある。そもそも、魔王様が怒り狂うことも頭の片隅にくらいには考えてたし、性格の悪い魔族がここを襲撃してくる可能性だってあった。だから、あたしの覚悟はとっくに決まっている。全部抱えて守り切る。この前みたいな失態はもう見せない。
はっきり言い切ってみせると、なんでか引きつった顔で返された。誠に不服である。
「前から思っていたんだが、お前のその善性は何処から来ているんだ?」
「善性?」
レイには悪いけれど、ちょっと笑いそうになってしまう。
「私は優しい魔族であろうとは意識してるけど。善良なものだって思ったことはないわよ」
優しいのと善いのは違う。あたしは道端の蟻を踏み潰さない優しさはあるけど、それを守ってあげるような善良さは無い。善い魔族なら戦争をやめさせるか、戦争に参加してさっさと終わらせてしまうか、どっちかやっている筈だ。あたしはどちらもせずのらりくらりと自分に都合の良い場所を求めてるだけ。
「どっちでも良いさ。お前程の強さがあれば、なんだって手に入っただろう。それこそ、魔王とやらになり代わることもできたんじゃないのか?」
冗談きつい、と言おうとした口がレイの目を見て閉じる。疑問と、あたしに対する恐怖。その力で暴れずにいられる理由が分からない、理解不能から来る不安。例えるなら、凶暴なモンスターが目の前でごろごろ寝っ転がっているような。あたしに言わせてもらえば、レイだって大概だと思うのだけれど。
でも、レイの昔の話は聞いたことが何度かあるけど、あたしの昔の話って、あんまりしたことが無かったな。
アズキと出会った時の話はしたっけ?
いや、あの話をしたのはジスタだな。あたし達のおうちで、雨の日に昔話をした。
ニルとのエピソードは?
これもちゃんと話してないな。ニルを拾ったことくらいは話したっけ。でも、西方征討は魔族にとって結構クリティカルな話題だからお茶を濁していたような気がする。
ヘレネもプルメオもディアンヌも、名前くらいは伝えたことがあると思うけど。話なんて全然していない。誰だそいつ、って言われるだろう。
それこそ話したことなんて、この間の鍋の時に、部下達集めてやってた、ってことくらいか。
そして、それは全部あたしの生涯ではほんの最近のこと。百年かそこら。人間にとっては長くても、魔族にとっては。いや魔族にとってもそこそこ長いけど。あたしにとっては生きてきて二割少しの話だ。
ああ、とあたしは今更後悔した。あたしについて何にも話してないじゃん。レイにとって、あたしは全然知らない人なんだ。この一年一緒に居ただけで。もちろん、それで今のあたしは十分に分かってもらえていると思う。でも今のあたしを構成する要素は分からない。だから、きっと怖いと思ってしまうんだ。
「ごめん、レイ」
「急にどうした」
「いや、レイが疑問に思うのも当たり前だな、って」
じゃあレイを安心させるには、あたしのことをもっと知ってもらうしかない。何より、あたしがレイに自分のことを知ってほしいと今思った。思い出したくなくて失くしてた記憶を。あたしが今のあたしになるまでの話を。
だって、友達だから。あたしの嫌いなあたしを、ちゃんと知ってほしいから。
「ちょっと、お茶でも淹れようか。昔話がしたいの」
「……? ああ、そうしようか」
「そういえば、メアリはまたダレンのとこ?」
「いや、今日はマーサのとこだ」
いつかはメアリにも聞いてもらいたい話ではあるんだけど。でも、この話は今やらなきゃいけないものだ。どうせ再放送すれば良いだけなんだし。
勝手知ったる台所でお茶を用意する。これも今まで五百年出来なかったのに、一年で出来るようになったことの一つだ。それがあたしは誇らしい。
「はい」
「ああ……大丈夫か?」
カップを渡すと心配そうな顔をされてしまった。嫌な話だから顔が引きつっているのかもしれない。いざと思うと凄い尻込みしちゃうなあ。きっと、たいした話にはならないのに。
「大丈夫大丈夫。でも、これからする話はアズキ達もあんまり知らない話だから、話さないでね」
「そんなに昔の話なのか」
「うん。レイが求める答えになってるか分からないけど。きっと、今のあたしが。うーんと、今のあたしの欲求が生まれた理由にはなってると思うから」
どうやって始めようか。なんて言葉で始めるのが良いだろうか。うん、一つしかないかな。
「昔のあたしはね、道具だったの」
愛情を注がれない、無駄に頑丈で性能ばっかり高い道具。それがあたしだった。
つみせーぶにごちゅういを
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