女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可) 作:異種百合推進委員会
フェルトノールはそれからも何度かあたしのところにやってきた。誘い文句は一回も吐かないで、だいたい自分の話ばかりしてくる。
彼の言うことには、フェルトノールは魔王と呼ばれる一族の一人で、次代の魔王の座を掴み取る為に仲間を集めているとか。魔王という呼称は聞いたことがある。かつて、魔族を治めていた一族だとか。それは昔の話で、今は魔王に従う魔族なんて居ない。何処もかしこも、強い奴が幅を利かせて食い合っている。無秩序だと彼は言った。だから彼は立ち上がることを決めたのだと。
一度、その野望の為にあたしの力を使おうとしているのか聞いたことがある。答えはノーだった。初めはそのつもりだったらしいのだが、考えが変わったらしい。あたしが使われることの無い世界が、善い世界かもしれない、なんて戯言を言っていた。そんなものは夢物語にしか思えなかったが気分の悪い物では無かった。あたしが望んでいるものと一緒だったから。
「なあギルネ。今日はすっげぇ仲間を連れてきたんだ」
「は?」
その日はあたしの所にやってくるなり、子供みたいに目を輝かせていた。仲間探しとやらを本当にやっていたことも驚きだが、わざわざ成果をあたしのところに見せびらかしてくるとは。あたしの悪名を忘れたのだろうか。
「どうよ、うちの軍師になってくれるマコラくんです」
「……は!?」
声が裏返った、さっきとは全く違う
「まさかとは思うが、コレが貴様の言う友人とやらか?」
「おいおい、初対面に向かってこれは失礼じゃないか?」
「初対面ならまだマシだったのだがな。貴様とて魔女を知らぬ訳ではないだろう」
「あーそういやギルネって有名人か」
言われてようやく思い出したと手を叩く。やはりこいつは相当な馬鹿なんじゃないだろうか。救えない奴はほっといて、マコラという男に対して記憶を巡らせる。
マコラ・トランジルグ。幻影魔法の持ち主で、あたしを除けばこの辺で一番強い魔族だ。確かにこいつを配下に加えたならば、フェルトノールの夢物語も一歩現実に近づくだろう。何より、こいつは頭がキレる。あたしに手傷を負わせて、それ以降は常にあたしを戦場の中心から引き剥がしている。
逆に言えば、こいつ程の魔族がフェルトノールの下につく理由が分からなかった。無能とは言わないが、有能ではない。マコラが上に立った方がここでは自然だ。何より、こいつ自身大きな勢力を支配していた筈なのに、それを捨てた理由はなんだ。
「じろじろと躾のなってない目だ。晒されているだけで吐き気がする。貴様の疑問に答えてやるからその目玉を抉りとれ」
「嫌よ、あんたが勝手にこぼすならどうぞお好きに」
「えっ、仲悪っ」
当たり前だ。嫌いではないが、好むわけでもない。散々殺し合っているんだから、どうもこんにちはと仲良く出来たら異常者だろう。
「で、フェルトノール。あんたはこいつに何を吹き込まれたわけ?」
「俺の方が吹き込まれた側なんだ」
「そうじゃないと説明つかないでしょ。それも分からない?」
「マコラ、ギルネが冷たい」
「知るか」
孤立無援のフェルトノールはよよよと嘘泣きをしてみせる。やっぱうざいなこいつ。
「普通に俺の方からスカウトしたんだよ。暇そうだったから」
「暇ぁ? こいつ、部下に囲まれて忙しいなんてもんじゃなさそうだけど」
「居なかったぞ?」
「余計なことを言うな」
居なかった、って部下のことだろうか。自分から捨てるような輩じゃないし、苛々している様子から察するに。
「あんた、反乱されたんだ」
「……馬鹿の相手は疲れる」
大正解らしい。これは笑える話だ。あんだけたくさん居た部下に反逆されているのだから。頭が悪い奴らも人手として揃えていたから、思い上がった扇動家に丸め込まれたのだろう。
そしてまあ、生きてるんだから全員返り討ちにしたのか。別に不思議でもなんでもない。あたしと面と向かってやりあって死なないんだから、その程度はやって貰わないと困る。
「なーるほどなーるほど。それで自分がトップに立つと面倒ごとの方が多いとか考えたわけだ」
「貴様には関係のない話だ」
「でも、よりによってこいつを選ぶとか。あんた、もう運残ってないんじゃないの?」
「神輿は軽い方が良いと思ったのだがな。重い女がついてきたものだ」
「乙女に重いとかデリカシー無いわね」
「乙女を自称するなバケモノ。まだトカゲの方が近いぞ」
バチバチと火花が散る。フェルトノールに免じて大人しくしてやってるけど、やっぱぶっ殺した方が良いかもしれない。
「あー、お二人さん。楽しく喧嘩してるとこ悪いんだけどさ」
「なによ」
「なんだ」
「腹減ったし飯にしない?」
……こいつはどこまでのうてんきなのか。馬鹿馬鹿しい提案にすっかり肩の力が抜けてしまった。
むさいおとこどもしかおらん
かんそうひょうかおまちしております