女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可)   作:異種百合推進委員会

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かこへん(※たいかん)

 フェルトノールが魔王になった、らしい。なんでもライバル達を殆ど配下にしてしまったので本来行われる魔王決定の儀式が執り行われなかったそうだ。これは異例のことだそうで、一部では不満も出ているらしい。

 あたしにとってはどうでも良かったのだが、あちらから戴冠式へご丁寧に招待してきた。招待状の文字なんてあたしは読めないから、フェルトノールがわざわざやってきて読み上げていったので、それじゃ付き合いくらいはするかと連れられてきて今に至る。

 

 しかし散々な行路だった。あたしを知る兵士には怯えられ、或いはフェルトノールを守る為か有無を言わさず攻撃されるし、城の侍従はあたしをあいつの女なんかと勘違いして卒倒する。腐れ縁の晴れ舞台くらいは見てやるかと重い腰をあげただけだというのに。

 何より一番嫌だったのは、侍女達に着せ替え人形にされたことだ。あのドレスはどうとか、このドレスの方が良いとか。わーきゃー言う割に全然進まず、何度も着替えさせられた。別にあたしは普段のボロ切れで良いと言ったんだけれど聞く耳持たず。結局黒だか緑だかのドレスを着せられて来賓席に座らされている。

 

「はっ、夜の怪物が借りてきた猫のようだな」

「めでたい式典をぶち壊してほしいの? 自分で作った牙城を崩してほしいなんて物好きなのね」

 

 マコラとの陰湿な毒吐き合戦も興が乗らない。というか、フェルトノールが流れを切ってくれないと際限なく勢いづくのが分かってるから、そこまでする気になれない。

 マコラと軽口叩いている見慣れない女ってのが珍しいのか、他の来賓とやらは横目でジロジロとあたしを見てはこそこそ話をしている。

 

 魔王。今となってはこの無駄に豪華な城を取り巻くちょっと広い領地の地主くらいの価値らしい。ああ、後は南部で人間だかと戦っている奴らの指揮も魔王がやってるんだっけ。どうでもいい。ともかく、フェルトノールが目指しているのはそんなちんけな役職ではない。かつての栄光、魔族全ての統治。それが彼の夢だという。この戦乱の時代を終わらせることができるのならば、名君として名を残すことになるのだろう。

 

「ま、あたしにはどうでも良いけど」

 

 マコラが来賓席から去ってしばらくすると戴冠式が始まった。儀礼って言う程たいしたものでもない。ただあいつが王冠を受け取って自らの頭に被せ、玉座に座るだけ。長々と祝辞を述べはするが、小一時間もあれば終わるだろう。あたしはその間来賓用の果実酒をちびりちびり飲んで眺めている。

 

 フェルトノールが壇上に上がる。兵士が二人がかりで恭しく王冠を運んできた。あいつはそれを手に取ろうとして──取り落とした。

 

「あぶっ……」

 

 間一髪だった。王冠を持っていた兵士が二人とも、剣を抜いてフェルトノールに斬りかかったのだ。咄嗟に飛びのいたお陰であいつは軽傷だけど、兵士は追い打ちを仕掛けようと剣を構える。

 

 あたしの認識はそこで一回止まった。次の瞬間には、あたしは来賓席を飛び出して、兵士の頭を掴んで床に叩きつけていた。即死させない程度の理性があったことに驚きだ。あたし自身でさえ、行動が終わってから自分のやったことを自覚したというのに。

 

「誰の差し金かしら」

「ぐぅ……ぁ……」

 

 ぎりぎりと頭蓋骨を軋ませる。どうせこいつらは末端だ。他に黒幕が居る。一番最初に思い当たったのはマコラだったけど、すぐに無いなと切り捨てた。奴の謀略だったらこんなお粗末な訳がない。あたしが居る場所でこんな事をするほど馬鹿じゃない。

 

「ギルネ!」

 

 フェルトノールが叫ぶ。もう一人居たか。いやもっと居るな。この戴冠式に参加した奴らを皆殺しにせんと何人もの戦士が姿を現し、来賓達を拘束していく。反抗した一人は容赦なく袋叩きにされた。動かなくなったから死んだかもしれない。

 

 あたしとフェルトノールを囲んでいる戦士も十人を越える。まあまあ腕に自信はある奴ららしい。

 

「何が戴冠式よ。全然人心掴めてないじゃない」

「はは、マコラから妨害はあるだろうと聞いていたから気を付けてはいたんだけど」

「この状況の何処が?」

 

 しかもマコラは姿見せないし。あの野郎、この馬鹿をあたしに押し付けて美味しいとこだけ取りに行ったな。

 

「あー、ギルネ。俺は大丈夫だから一人で逃げて良いんだぜ」

「この状況でそんな台詞が出るなんて真正の馬鹿ね」

「いやだってお前が強いってもこの人数は……」

「黙って」

 

 これでも仲間を巻き込んだりしないように訓練はしてきたんだ。集中力を乱さないでほしい。あれは敵だから潰して良い。あれは来賓だから駄目。本当に全部押し潰してから元に戻せたら楽なのに。

 

「あたしね。厄介事に巻き込まれるのは大嫌いだけど」

 

 ともあれ、これで準備は整った。剣を構えて飛びかかってくる戦士に魔法陣を向ける。

 

「あたしの領域をずかずか荒し回る奴らが一番嫌いなの」

 

 ぐっと手を握ると戦士が落ちる。床にヒビが入り、ギリギリとめり込んでいく。他の奴らもみんな、地面に叩きつけて動けなくしてやった。

 

 ああ、我ながら甘っちょろい。面倒なことせずに全部潰してしまえば良かったのに。

 

「あたし達に喧嘩売るなら戦力百倍は持ってきなさい」

 

 叩きつけた奴らに魔法で作った黒い槍を突き刺した。




わすれがちですがぎるねはおかしいくらいにつよい

かんそうひょうかおまちしております
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