女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可)   作:異種百合推進委員会

78 / 86
ときがうごく(※はなしはおわる)

「まあ、今のあたしのルーツはだいたいここから始まったと言えるかしらね」

 

 思ったよりも長く話し込んでしまった。誰かに話したことなんて殆ど無かったから、エピソードの取捨選択が上手くいかなかった。マコラの話とかもっと切りたいのにあいつやけに重要なとこにいるから端折れない。

 

 レイは相槌だけ打って、殆ど言葉を挟まずにずっと聞いてくれていた。淹れたお茶にも手を付けずすっかり冷めてしまっている。話し通して渇きを癒やすために空にしてしまったあたしとは反対だ。

 

「そのフェルトノールという男は、お前にとって重要な奴なんだな」

「そうね。それは間違いないわ」

 

 フェルトノールが居たから、あたしは道具から魔族になれた。普通の、って枕詞をつけられないのは悲しいけれど仕方がない。それでも、魔王軍幹部になってからもあたしとあいつの関係は変わらなかったのだから。

 ぶっちゃけた話、魔王軍に居る理由って殆ど全部フェルトノールへの義理なのよね。恩返しというか。今でこそ魔王様(リィズ)っていう大切な相手や、アズキ達みたいなかわいい部下が居るけれど。それまであたしが疎まれ続けても去らなかったのはフェルトノールに居場所を貰ったからだ。

 

「なんというか少し……妬けるな」

「え?」

「ああいや、なんでもない」

 

 本当は聞こえてるけど。そもそもあたし耳は良い方だから、意識していれば結構ちゃんと捉えている。まあ聞き逃しって意識してないから発生するものだと思うんだけれど。

 

 それにしても妬ける、か。言われると嬉しいものだなあ。だってレイが、あたしの記憶に自分を残したいって思ってくれていたってことだもんね。あたしもきっと、同じような願望はあるけれど。人間の寿命は短いから、ずっと一緒にいることが出来てしまう。最高の一人にはならなくとも、挙げる内の一人になることはきっとそれ程難しくない。

 だってあたしは、フェルトノールの死に目も、その後継者であるカミューの死に目も見てきたんだから。

 

 魔族の寿命は一般的に三百年くらいって言われている。二百を越えたら少しずつ体にも老いが見えるようになって、最期には人間と同じようにゆっくりと息を引き取る。強い魔族は寿命が長い、なんて噂もある。噂って言うには確かにあたしやマコラがまだ生きてるから、検証例が少ないだけで事実なのかもしれないけど。あたしは自分で言うのもなんだけど外れ値だし、マコラはあいつぶっちゃけ信用ならないからなあ。寿命をなんとかする邪法を生み出していてもあたし納得するわよ。もしくは老いて見えるけど幻影でまだ若々しいとかも。

 

「おい」

 

 こつんとおでこを突かれて我に戻る。カップにはまだなんとか湯気を出しているポットからのお茶。考え事をしていた隙にまた注いでくれたようだ。

 

「えーと何の話だったっけ」

「お前の昔話……はもう一区切り着いたんだったな。ああ、そうだ。スーザンの話だ」

「そうだった」

 

 あたしを友好的な魔族として報告しないかと、スーザンがレイに提案していたのだった。休戦は確実とはいえどうしたものかと悩んでいたから、あたしは昔話を。というより、あたしはレイに何も見せてないってことに気付いてしまったから、この話をしたんだ。

 

「してから気付いたけど。あんまり参考になる話ではなかったわね」

 

 あたしって魔族からしたら嫌われ者、というか恐れられ者? だし。

 

「そうでも無いさ」

 

 でも、レイの声音は優しかった。

 

「お前が助けになろうとしてくれて、お前が考えて選んだ話だ。案外、お前が思っているよりも多くのことを私は受け取っているかもしれんぞ」

「そういうものかしら」

「そういうものだろう。お前はフェルトノールからどれだけの物を貰った?」

 

 名前、居場所。それだけじゃない。魔族としてのあたし全部。今日までのあたしを形作る指標。強さとか、頭の良さ以外の価値があることもきっと教えてもらった。

 

「それと、こうやって話す思い出、とか?」

 

 いやぁ、思い出して見たけれど。フェルトノール絡みでない思い出ってアズキ拾ったくらいまで時代降っちゃうのよね。カミューは良くも悪くもビジネスライクな関係性だった。というか魔王かどうか疑うくらいビビりで腰が低かった。それが今の老害どもを生んだっちゃ生んだんだけど、嫌いじゃなかった。フェルトノールへの義理があるとはいえ、不機嫌なあたしが渋々指示に従うのだから、好感度は間違いなく低くなかった。

 

「でも正直。この一年の方が話せる思い出はずっと多いわよ」

「それは嬉しいな」

 

 冷めたお茶をレイが飲む。

 

「決めたよ。行くことにする」

「そう?」

「ああ、結構長く、秋までにも帰れないかもしれないがその間ここを任せていいか」

「ええ。あたしが守るわ」

 

 メアリもミランダもクリムも。ダレンもスタンもサトも。全部守り切って見せる。だってここは、あたしの宝物だから。レイが安心していられるように。こんなに気の入る仕事も無いわね。

 

「ああ、それと」

「ん?」

「寂しいからってメアリ達を困らせるなよ」

「……やっぱりできるだけ早く帰ってきて」




すこしまじめなはなしをします

いつも拙作を読んでくださりありがとうございます。途中で切れてはしまいましたが約2ヶ月半の毎日投稿をこれだけの方に見てもらえるのはありがたい限りです。
本題に移りますと、しばらくの間休養期間を頂きます。しばらく空けてようやく更新したと思ったら何故、と思うかもしれませんが、言い訳させて頂きますと本来この話で一区切りにしてお休みを頂こうとしていたところ、なんとも狙いすましたタイミングで体調を崩しまして、遅れてしまった次第です。

これからまた物語が少し動くに当たって、執筆時間が中々取れなくなってきていたこともあり、一度充電期間を設けようと決めていました。

一、二ヶ月程の間になるとは思いますが、記憶の片隅に拙作のことを残していただけると幸いです。それでは

かんそうひょうかおまちしております
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。