女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可) 作:異種百合推進委員会
レイがスーザン達と一緒に出発してから一週間後には、人間と魔族の停戦が伝わってきた。それからもう二週間、あたしはサトと一緒に頭を悩ませていた。というのも、
「治安、悪くなったわよねえ」
「毎回護衛を雇うわけにもいかないし、困ったもんだ」
どうも最近、野盗崩れみたいなごろつきが近くに増えている。昔も居たことはあるんだけど、レイが掃除した筈だったんだけどなあ。街道でも被害が出ているそうで、商人たちは嵩んだ護衛代に頭を悩ませているというわけだ。もちろんサトだって例外じゃない。
「戦争は一旦止んだのに」
「止まったからだろうさ。お暇な騎士様が増えたってんで、どうも大きな街は平和になったらしいよ」
「ああそういう」
そりゃ仕方ないとため息を吐く。騎士ってのは金食い虫だ。実際は知らないけど、常備兵のやりくりに偉い人がよく頭を悩ませているのは知ってる。戦争が終わったからってクビにするわけにも、遊ばせとくわけにも行かない。じゃあどうするかって言うと、治安維持に使うのが一番名目が立つ。
それで、戦場帰りの猛者相手にごろつきじゃ相手にならないから、逃げて逃げてこんな辺境まで拠点を移してきている、ということらしい。
「テトラ嬢が居なかったら本気で商売上がったりだったね」
「はえ? 呼んだッスか?」
サトの言葉に、荷物を積んでいた少女が振り返る。格好こそ軽装だけど、腰には剣を差していて、まあ農民って雰囲気じゃない。それもその筈で、彼女は元々スーザンの部隊に居た騎士だ。レイが首都に向かう為村を離れるとなった際に、それなら代わりに残ろうと手を上げてくれたのがテトラだった。まだ一月も居ないのに、既にすっかり村に馴染んでいるのは本人の明るい気質のお陰かしら。
「テトラが居てくれて助かった、って話よ」
「それは騎士として冥利に尽きるッス。それでこそ残った甲斐もあるってもんで」
がしっと小さな力こぶを作ってテトラが笑う。二度、野盗による襲撃があったけどテトラとクリムの活躍で被害はほぼ無かった。精々鶏が一匹やられたとか、突き飛ばされて怪我したとかそのくらいだ。あたし達はいつでも出られるように準備はしていたけど、結局手は貸してない。クリムもいつの間にか頼れるようになったもんだ。
あたしもサトもサボって話に花咲かせていたのに、すっかり荷馬車の準備は済んでいた。サトの視線が痛い。へーへーすみません全部テトラに任せました。
「じゃあテトラ嬢、街まで護衛を頼むよ」
「合点承知!」
「それとギルネリア。戦将駒の盤と駒、探してはみるけど持ち運び用ってなると中々無いから、あんまり期待しないでね」
「はーい」
素直にお返事。あたしもすぐに手に入るとは思ってないしね。
「ん、戦駒すか?」
「そ、スーザンが持ってきてたのよ。面白そうだからあたしも欲しいなあ、って」
「えっ隊長が」
「そんなに驚くこと?」
確かにいくら好きとはいえ、遠征にまで持ち込むのは相当だと思うけど。テトラの驚き方はまた違った感じだ。
「隊長がやってるのなんて見たことないっすよ」
「ほう?」
理由はよく分からないが、スーザンにとっては秘密の趣味だったのを、うっかり漏らしてしまったらしい。でも口止めされてないしあたし悪くない。
「やる相手が居なかっただけとかそんなオチじゃなくて?」
「いやぁ、私もルールくらいは分かりますし。騎士団でもちょっとした賭け駒は流行ってるっす」
「賭け駒……ああ、そゆことね。何賭けてるの、お金?」
「だいたい酒場のお代っすね。あー、酒場でも隊長見たことないな……もしかして下戸なんすかね」
「あたしに聞かれても困るわよ」
テトラの方が付き合い長いでしょうが。おでこを指でピンとはたく。
確かに下戸なら酒代が賭け金の勝負に混ざらないのも納得できるけど。勝っても負けても地獄だもんね。代用品を要求すれば良いような気がするけど、ちょいちょい固いのは窺えたしプライドが許さないのかもしれない。そしてその結果悲しき戦将駒モンスターになってしまったと、それは言い過ぎか。
「テトラは飲めるの?」
「普通くらいっすね。あ、でも宴会は好きっすよ」
「気が合うわね。そういえばそろそろ春の祭りだし、騒げるわよ」
「祭りっすか、良いっすね!」
なんとなくだけど、テトラはアズキとかと同じタイプな気がする。被害に遭うニルはちょっとかわいそうかも。にしても、お酒なあ。最近あんまり飲んでないな。一人で飲むタイプじゃないし、レイと二人ではよく飲んでたけど、アズキとサシで飲むことはめったに無いし。
んー……アズキとニルもせっかくだからジスタも混ぜて今度お家で飲もうかな。ジスタがお酒飲んでるとこ見たこと無いんだよね。本人が苦手だって言ってたから無理強いはしないけど。酔ったあの子はちょっと見てみたい。
「サトー、お酒もあったら買ってきて」
「そこの荷台にいつものあるけどそれ以外?」
「偶にはね」
せっかく普段とは違うことをするのだ。普段とは違うお酒が良いだろう。
おひさしぶりです
いぜんのようにまいにちとうこうはできませんがよろしくおねがいします
かんそうひょうかおまちしております