女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可) 作:異種百合推進委員会
「オジョーって寂しがりの割に交友関係狭いよな」
「いきなり何を言い出すのよ」
春の陽気にあてられて木陰でウトウトしていたら、クリムからそんなことを言われた昼下り。斧を置いてしまっているが今日は木こり仕事は良いのだろうか。
「今日のノルマはとっくに終わらせたぞッ」
「ノルマとかあるんだ」
「伐採し過ぎても良くないらしいからな。過ぎたるはなお及ばざるが如し、だ」
クリムのくせに難しい言葉を知っている。いやお貴族様だから頭は良いんだ。
「で、なんだってぇ?」
まだあんまり舌が回らない。隣に座ってきたお転婆貴族はあたしの翼が邪魔だと払いのける。
「いや、前から思っていたんだが。村人達と微妙に距離を取っているような」
「誰と比較してよ」
「アズキやジスタ、ニルヴァートと比較してだが」
ふむ、全くもって心当たりがない。ミランダと〜とか、テトラよりはって話なら分からなくもないのだが。あの二人の馴染みようが凄いだけな気もするわね。人懐こいテトラはともかく、ミランダは何か怪しい術でも使ったのではないかと勘繰ってしまう。
「レイやメアリにはあれだけベタベタまとわりついているのに、不思議だなと」
「もしかしてあたしちくちく喧嘩売られてる?」
さっきから言葉の火力が高い。これではまるであたしが距離感測るの下手みたいではないか。
まあアズキは、畑仕事の連中と飲んでたりテトラやクリムと稽古したりしてあんまり構ってくれない。ジスタはお母さん方か子供たちに追いかけ回されてる。ニルは修繕に裁縫にすっかり便利枠だ。
「だいたいサトと居るか、メアリと居るか、遠くで眺めているのどれかじゃないか?」
「ぐふっ」
きゅうしょにあたった! あたしはふらりと崩れ落ちる。ぐうの音も出ないというか、気付かされたというか。いや別に仲悪いわけじゃないのよ? 祭りとか行事のときは手伝うし、おすそ分けしてもらったり信頼してもらってる、とは思う。でも何でもない日に飲み交わしたり、お料理や仕事を手伝ったりとかはあんまり無い。
「……言い過ぎたかもしれん。済まなかった」
「謝られると余計に傷が抉られてる気がする」
申し訳なさそうにするんじゃない。追い打ちよそれは、追撃戦よ。
どうせあたしは友達作りが下手ですよ。地面にのの字を書いていじけてみる。だってこの数百年友達なんて居なかったんだもの。一番そのポジションに近いのって魔王様か、ディアンヌか。百歩譲ってフェルトノール。億千歩譲ってマコラ。五百年で四人。いややっぱマコラは除いて三人。我ながらさもしい交友関係である。
だって怖かったんだもの、仕方ないじゃない。正直今でもまだ怖い。誰かに近付くだけで刃を向けられるのはまだ良い。本当に怖いのは、その切っ先が震えていること。表情が恐怖と諦観に染まっていること。
レイと初めて出会った時もそうだった。切っ先が震える程彼女は弱くなかったが、あたしを前にして覚悟を決めていた。
「今の様子じゃそんな強者にはまるで見えないがな」
「アズキに勝てないくせによく言うわ」
「この間一本取ったぞッ」
「マジ?」
しばらく見ていない間に随分実力を身に着けていたのか。こないだ野盗相手の立ち回り見たときはまだまだだなあと素人目線で見ていたのだが。
「百戦程やった最後にな。まあ半分は情けだったとも思うが」
胸を張りきれないのかちょっとだけ目が泳いだ。情けと言ってもアズキの想像を越えたんだろうから、誇っていいのにね。目指すのがレイともなれば、そこで満足はしていられないらしい。
「アズキも稽古の時以外はわりとふにゃふにゃだし、魔族ってそういうものなのか?」
「魔族に限らず、むしろこんなところで常在戦場してる方がやばいと思わない?」
レイですら鍛錬の時意外はわりと緩んでるからね。堅物の顔して結構フリーダムなタイプだから例えに出すのは不適切な気もするけど。
「魔族は野蛮で凶暴だと習ったものでなッ」
「清々しいまでの偏見!」
野盗やごろつき以下、モンスターと扱いが殆ど一緒である。いや全然否定できないが。魔族って実力というか暴力主義だし縦社会だし。野蛮で凶暴なのは、うん、そうね。
「人間の知る魔族など、北方で争っている一握りだから当然だろう。むしろオジョーは、人間を野蛮だと考えたりしなかったのか?」
「あたし人間全然知らなかったし」
前線なんてまともに行ってないし。戦うの嫌いだし。他の魔族から白い目で見られるの嫌だし。
「あたしが見たことあるのって勇者くらいよ、勇者は野蛮とは思ったけど。こっちまで乗り込んでくるんだからそういうもんでしょ」
まあ勇者に比べたら、ここの人々の素朴さは赤ん坊レベルだ。
「勇者、勇者かぁ」
クリムが珍しく苦い顔をする。
「それは野蛮だと思われても仕方ないな」
「ぷっ」
真剣に溢した言葉に吹き出した。勇者はあちらでも荒くれ者扱いらしい。
「でもクリム、一つ言っていい?」
「なんだ?」
「あたしが見た中で一番暴れ散らしたのはアンタよ」
「それはやめろッ」
華麗なるカウンター。黒歴史を掘り返されたクリムはがっくりとうなだれるのであった。
くろれきしをのぞいているとき、おまえもまたのぞかれているのだ
かんそうひょうかおまちしております