女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可) 作:異種百合推進委員会
「おい、ギルネリアっ。ジスタ見なかったか」
話しかけられて足を止める。
「スタンじゃない。どうしたのよ」
「探してんだけど見つからねーんだ」
ブーブーと不機嫌そうに呟く。手には何かが入った袋。食べ物の匂いはしないしなんだろう。ジスタにプレゼントでもするのかな。
それにしても大きくなったなあ、とスタンを見下ろす。最初あった時よりもぐんと背が伸びている。もうジスタの身長に追いつきそうだ。きっともう一年あったらすっかり追い越して、もしかしたらあたしよりも高くなるかもしれない。男の子の成長は早いものだ。
「で、知らねーのか?」
「あたしがおうち出た時にはまだ居たからねえ。今日来てないかも」
毎日のように遊びに来ているあたしと違ってジスタは来たり来なかったりまちまちだ。わざわざ把握している必要も無いから放任主義。
「ちぇっ、なんだよサボってきたのに」
あたしの答えにスタンは唇を尖らせる。
「なに? またマーサの手伝いすっぽかしてきたの?」
「そっちはもう終わったしー」
じゃあ何をサボってきたのかと考えて、そういえばテトラの剣術教室があったと思い至る。最近治安が悪くなってきたから、村人も自衛出来た方が良いと彼女が提案したのだ。今までここに居たのは才能あり過ぎて真似できないレイと超スパルタのアズキだったものだから。初心者にも合わせられるテトラの申し出は有り難かった。クリム? あの娘はまだ教わる側だから。
で、元気盛りの子供たちはみんなそっちで木剣を振るっている中、一人サボってきたらしい。自由参加だからサボるってのも違う気はするけど。ガキ大将のスタンが参加しないってのは確かに珍しい感じがする。
「言伝ならあたしがやっとくけど」
「いや……いいよ」
なんだか煮えきらない返事だ。ほほうほほう?
「おサボりまでしてなーにを伝えるつもりだったのかなぁ」
面白そうな匂いを察知して絡んでみると腕を振り回して振払おうとしてくる。照れ隠しでも乙女にそんな乱暴にしちゃ駄目よ。あたしには効かなくても。
「うっせ、ギルネリアには関係ねーだろ」
「なくはないわよ。だってジスタはあたしの部下だもの」
詭弁である。
「ぜってー言わねえ!」
あらら、怒っちゃった。肩で風を切っててんで別の方向に行ってしまう。まあちょっとだる絡みした自覚はある。レイが居たらたぶんげんこつが落ちてるだろうか。でもレイってその辺りわりと天然だし、よく分かってないような顔もしそう。
んー、ここでおうちに帰ってしまうとジスタと入れ違いになってしまうかもしれない。そもそも今どこに居るのかも分からない。魔王様のところには戻ってないとは思うけど。
ぱっと翼を広げて物見櫓の上に登る。高い所からなら色々と見渡せる。広場ではテトラを見本に素振りをしている若い男達と子供たち。スーザンがやってたのに比べれば遥かに緩そうだ。ってそれも当たり前か。兵士達でも悲鳴をあげるような訓練をさせるわけにいかないもんね。
それにしても、思っていたより数が多い。若者はみんな参加してるんじゃないかしら。やっぱり騎士っていうのは人間にとって憧れなのかもしれないわね。
裏手ではアズキとクリムも稽古中。今日はミランダも見学に来ているみたいだ。あ、メアリがおやつを差し入れに行っている。いつも通り天使みたいに優しいわ。
他には農作業を終わらせたおじさん達が昼間から酒を飲み交わしていたり、さらっとそこにニルが混ざっているのも見える。ニル、クールに見えて交友関係広いのが結構不思議なのよね。物怖じしないって奴かしら。
「ととっ、探すのはジスタよね」
村を眺めるのは楽しいけれど、本来の目的を忘れちゃいけない。あの子の蝶のようにきれいな翼を探す。それは案外早くに見つかった。
「あれ、スタンに出会えてるじゃない」
あたしと離れてから結構すぐに見つけられたのだろう。村の外れで、二人で座って何かをやっている。ちょっかいをかけに行こうかと思ったけどすぐに却下。そこまであたしも空気が読めない女じゃない。でも、何をしているのかは気になるので目を凝らしてみる。
「ああ、そういうことだったのね」
スタンの手には絵筆があった。腕や頬には絵の具が撥ねている。そして二人の前にはカンバスがある。
「あの辺り、春の花がきれいに咲くのね」
黄色い花はタンポポで、紫っぽいのはなんだろう。あたしは草花に詳しいわけじゃない。でも、知らなくたって美しい景色なのはよく分かる。
毎日のように村を駆け回っているスタンだからこそ見つけられたのだろう。そりゃあたしに言伝を頼みたくないわけだ。だって、せっかく見つけたとっておきの景色なんだなら。
うん、あたしはメアリに会いに行こう。ついでにクリムの様子を見て、ミランダに植物について詳しい本が無いか聞いてみよう。去年は草花なんて調べることも考えなかったけど。ピクニックなんか行く時に、知識があるともっと楽しいだろう。
「春だなあ」
爽やかな風を感じつつ、あたしは櫓を降りた。
ふゆだなあ
かんそうひょうかおまちしております