女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可)   作:異種百合推進委員会

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いっぽうそのころ(※しゅとにはとうちゃく)

「なんだか騒がしいな」

「そうでもないさ。貴殿はあの村に居て長いから、記憶が薄れているのだろう」

 

 そういうものだろうか。スーザンの言葉に首を傾げる。我らがフレイジャ王国の首都キピタ。歩くのも困難な程にごった返した人々。屋台の客引きは喉が潰れるのではないかという大声で心配してしまう。喧騒で耳が利かなくなってしまいそうだ。だが、私のように顔をしかめているのは少数派で、殆どの人は気にしてもいない。時折肩をぶつけ合った歩行者が舌打ちをしているくらいだ。

 

「このまま王宮へ?」

「いや、一度青獅子の詰所に向かう。団長には文面で情報を共有しているが、彼の口利きが無ければお目通り願うのは難しいだろう」

「やり取りは任せても?」

 

 青獅子の団長は一度しか会ったことがない。人畜無害そうな優男だったように記憶している。騎士として最も高い地位に居るのだから、柔和なだけではないのだろうが。

 

「連れてきたのは私だからな。詰所はこっちだ」

 

 スーザンの先導に従って大通りを抜ける。民衆が一番多い通りを抜ければ、今度は貴族や商家の屋敷ばかりが見える高級街だ。思い返してみれば、大通りよりも高級街の方が私にとっては馴染み深い。生家があるのもそうだが、演劇を見る時も、大抵は高級街の劇場だった。なるほど、感覚がズレるわけだ。

 

「おい」

 

 スーザンを呼び止める。彼女も同じように異変に気がついたのか。小さく首を揺らして立ち止まる。

 

「人の気配が無いな」

 

 高級街は確かに大通りと比べれば人は格段に少ない。それでも通常なら見回りの騎士や各屋敷の守衛が姿を見せている筈だ。それがどうも見当たらない。

 

「少し回り道をしてみようか」

 

 詰所に向かう前に、高級街と他の区画を繋ぐ別の道へと向かう。広い通りなら、人影の一つくらい見つけられるかもしれないと考えてのことだ。

 

 その読みは正しく、しばらくして騒がしいどよめきが聞こえてきた。近付けば近付くほど、それは大きくなっていく。大通りと比べても遜色無いだろう。

 

 察するに、なんらかの式典で人が出払っていたということだろうか。しかし、この時期に行進を行う程の行事があった記憶はないし、普通ならそれでも盗人を恐れて何人か屋敷に残しておくだろうに。

 

「スーザン殿は何か思い当たる節は?」

「いや……何も聞いていないな。式典にしては楽団の演奏が聞こえないのも妙だ」

 

 不穏に感じながら喧騒へと近づいて行く。通りにぎゅうぎゅうと人が詰めていた。実際には貴族達が快適なスペースを確保してはいるのだが、それでもこれ程の密度は初めて見る。これでは通りに何があるのか見ることができない。

 

「スーザン、抱えたら見れるか?」

「……しゃがめ」

 

 本人は不服そうだが、騒ぎの元は確かめたいのだろう。肩に乗ってきた彼女を押し上げる。私はそれなりに背が高いから、二人分の背丈なら流石に見えるだろう。

 

「魔族だ」

 

 目を凝らしたスーザンが声を上げた。

 

「魔族だと?」

「ああ。召使いを二人連れている女の魔族。それを金竜騎士団が連れている」

「捕虜か?」

「いや、違うな。扱いは丁重だ。外交官か、あちらの貴族階級か。どちらにしろ賓客だな」

 

 なるほど、人が集まっているのはそういうわけか。魔族としては見世物にされるのは気分が良くないだろうが、キピタに居ては魔族を見る機会など無い。暇を持て余した貴族連中が物見遊山に来るのも納得がいく。

 

「それにしてもこの時期ということは、休戦後に正式な国交でも結ぶつもりか」

「さあ。だが戦をやめるのならば抱き込んでおきたいというのが我が国の正直なところだろう。他の国と繋がりを持たれれば面倒だ」

 

 我が国は魔族との戦争を名目に自国に有利な条約を結ばせてきた歴史がある。魔族との戦争が止まれば、そちらとの関係も今まで通りとはいかないのだろう。

 

「魔族側の意図は掴みきれんが」

「考えるだけ無駄か、魔族の事情は分からん」

「ただ、このまま王宮に向かうのなら、顔を合わせる機会があるかもしれんな」

「それは楽しみだ」

 

 ギルネリアのことは知っているだろうか。知っていたとしても、私がこうして首都まで赴いていることは伝わっていないだろう。

 期待している私に対し、頭上の声は困惑気味だ。

 

「楽しみと言うか」

「ああ、他の魔族と話したとなればギルネへの土産話にはなるだろう」

 

 外交として我が国に来ているのなら、友好的な筈だ。話が出来ると決まったわけでもないのだから皮算用だが。

 

「貴殿らは本当に仲が良いな」

「相性が良かったんだろう。似た者同士だからな」

「似た者か」

「ああ、少なくとも不器用なところはな」

「それは、納得がいってしまうな」

 

 スーザンがくつくつと笑う。

 

「では、原因も分かったし、今度こそ詰所に向かおうか」

「そうだな」

 

 私が王の御前で話す機会を得られなければ交流も何も無い。踵を返し、歩き出そうとしたところで再び頭上から呼び止められる。

 

「抱えたまま行くな。降ろせ」

 

 ああ、すっかり忘れていた。降ろすまで三度ほど頭を叩かれるのだった。




すーざんはかるい

かんそうひょうかおまちしております
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