no side
月軌道近く、議会連合の送電設備兼本拠地。
今、その近くには無数のカラゴールの残骸が漂っているだけだった。
そして、その残骸の中を、五機のモビルスーツが駆け抜けている。
ロイド「………ッ!」
ロイドの駆るペイルライダー・デュラハンが、数的不利をものともせず、スレッタ達相手に善戦している。
スレッタ「くっ………!ロイドさん、お願いだからもうやめて!」
スレッタはクアッド・ウイング・レーザーで進路を塞ぎつつ、ビーム・ライフルで牽制する。が、ロイドはそれを生成したシールドで防ぎ、エルピスに急接近する。
お互い近接武器を構え、鍔競り合いが起きる。
ロイド「やめてどうなる!?それでレイラ達はどうなる!?お前は今、レイラ達を犠牲にして俺を引き戻そうとしてる事を分かってるのかよッ!!」
スレッタ「違う!私達だって、レイラさん達の状況は分かってる!その上で、私はレイラさん達もロイドさんにも悲しい思いをしてほしくない!」
ロイド「だったら何で邪魔するんだよ!俺はただ、お前達も!SDMにも!幸せになって欲しいだけなのにッ!!」
互いに膠着状態となったが、ムーンガンダムが割って入り、今度は射撃戦となる。
レイラ「ロイドのしてることは間違ってる!人を殺して成り立つ幸せだなんて、私達は望んでない!」
ロイド「お前達なら分るだろ!?手に入ったものは、第三者によってあっという間に奪い去られる!奪われるだけだなんて、不公平すぎる!」
レイラ「だからって、人から奪っても、その連鎖が続くだけ!自分の大切な人が幸せなら、他人はどうだっていいの!?」
ロイド「どうだっていい訳ないだろ!だけど、他人よりも大切な人を優先するのは当たり前だ!それで俺が全部背負う覚悟は、とうに出来てるッ!!」
ロイドはそう言い切り、大量のガンビッドを生成して一斉に射撃する。
レイラはサイコ・プレートを射出して防御するが、弾幕が厚く身動きが取れなくなっていた。
レイラ「う、ぐぅっ………!?」
サルネリア「それ以上はッ!」
しかし、デュラハンの真横からサルネリアのリゼルがウェイブライダー形態で突撃、ムーンガンダムと距離を離していく。
サルネリア「ロイド、こんな事したって俺達もレイラさん達も喜ぶわけじゃないのは、お前が一番わかってるだろ!自分の理想を押し付けるなッ!」
ロイド「ならどうすれば良かったんだよ!?ただ見てるだけなんて俺にはできない!かといってあのまま放置してても互いが余計に失っていくだけじゃないか!」
サルネリア「それでもッ!」
ロイド「俺にはこうするしか残ってない!俺一人が背負って、皆が幸せになれるなら、俺はァッ!!」
ロイドは小さいダガーを生成し、機首ごとビーム・キャノンを切り、リゼルから離れる。
が、行く手をイーシュヴァラに阻まれ、ダリルバルデ・Ⅲと切り結んでいく。
グエル「お前は俺に何度も背負いすぎるなと言ってきたくせに、自分は例外なのかよ!」
ロイド「黙れッ!全部お前達のためなんだ………!お前達が幸せになれるなら、俺は人をも捨ててみせるッ!!」
グエル「人を捨ててまで俺達を幸せにするなら、俺達はそんな幸せ投げ捨てる!お前がいない未来なんて、俺達には考えられない!」
ロイド「その程度で揺らぐほど、俺の意志は柔くない!たとえお前達に嫌われようと、俺は目的を完遂する!」
ロイドはダリルバルデを蹴飛ばし、四機と距離を取る。
同時に、四機は集結し、それぞれの武器を構える。
ロイド「クソッ………どうして………なんで分かってくれないんだよォッ!?」
ペイル《そっちこそ………自分が間違ってるって、なんで分かってもらえないの!?》
ロイド「黙れ………黙れ黙れ黙れェェェェッ!!!」
ロイドはがむしゃらにガンビットを大量生成し、先程とは比べ物にならない量のビームを連射する。
ウイング・ガンビットとサイコプレートを重ねて防御するが、そこで違和感を持つ。
サルネリア「ロイドの様子がおかしい………さっきと比べて明らかに凶暴になってる………!」
レイラ「まさか、デュラハンシステムに蝕まれ続けた影響………!?」
グエル「だとしたら、ロイドは相当危険な状態だぞ!?」
ペイル《………それでも!そうだとしても、まだ諦めない!》
スレッタ「そうだよ!ロイドさんのためにも、ここでやめたるわけにはいかないっ!」
レイラ「ロイドが、私達の為に苦しんでるなら、私達が終わらせなきゃ………!」
ペイル《デュラハンシステムは、HADESと同じで頭部に搭載されてる。どうにかして破壊すれば!》
サルネリア「俺とグエル君で道を開く!その間に、三人で頭部を破壊して、ロイドを止めるんだ!」
ペイル《皆、行こう!》
四人「「「「応!」」」」
防御は続けたまま、四機は一斉に突撃する。
ロイド「分からず屋どもがァァァァァッ!!」
ロイドはそれを阻むように弾幕を集中させる。
サルネリア「動きを止める!グエル君は右を!」
グエル「はい!」
エルピスとムーンガンダムはそれを防ぐことに集中し、その隙にリゼルとダリルバルデが横から一気に突っ込む。
サルネリアのリゼルは左腕を抱え込んで拘束し、グエルのダリルバルデはスタンアンカーを巻き付けたうえで右腕を抱え込み拘束する。
ロイド「クッ、こいつら、何を………!?」
しかし、ロイドはすぐ対応し、ガンビットで二機を包囲する。
レイラ「させないっ!」
しかし、ムーンガンダムのサイコプレートが、生成したガンビットを次々と切り刻んでいく。
そのままサイコプレートの側面を使い、全方位からデュラハンの拘束を補助する。
グエル「今だッ!」
サルネリア「終わらせろ!」
レイラ「スレッタ!」
動きを封じられたデュラハンに向かって、エルピスがサーベルを構えて突っ込んでいく。
スレッタ「これで………止まってぇ!!」
ロイド「ッ!!」
そして、デュラハンの頭部はビーム・サーベルで貫かれ、シェルユニットは輝きを失った。
同時に、ロイドが生成した全ての物体が、再びパーメットの粒子となって消えていった。
スレッタ「………止まったぁ………」
ペイル《………うぅん、まだ終わってないよ》
コックピットで気が抜けたスレッタに対し、ペイルはそんなことを言った。
そして、エルピスの持つビーム・ライフルの銃口が、デュラハンのコックピットを捉えた。
スレッタ「………え」
ペイル《さよなら、ロイド》
そして、スレッタが止める間もなく、ビームの発射音が聞こえた。
ロイド「………なんで、外した?」
発射寸前で、銃口を横にそらした為、ロイドは生きていた。
ペイル《………今この場で、ロイド・エレネットは戦闘に巻き込まれて死亡した。ケナンジさん達にはそう伝えればいい》
ロイド「ッ!?」
ペイル《私は最初からこのつもりだった。ロイド・エレネットという存在をこの世から消すこととなっても、ロイドには生きてほしかった》
ロイド「………お前に、何が………!」
ペイル《なら、ロイドは私達の気持ちは分かるの!?》
ロイド「………ッ」
ペイル《………もうあなたはロイド・エレネットじゃない。登録コードはどうにかするから、また株式会社ガンダムで働けばいい。でも………
………たとえ名前が変わっても、私は貴方を支えるよ。これからも、ずっと》
ロイド「………俺は………ッ!」
モニター越しに、ロイドがエルピスに向けて手を伸ばす。
そして、ロイドの意識は深く沈んでいった。
次回予告
スレッタ「モビル、アーマー………ッ!」
レイラ「それでも、私達はッ!」
グエル「このままじゃ終われない!」
サルネリア「俺たちは未来を信じる!」
ペイル《私達の、未来をッ!》
第四十九話 希望と絶望の狭間で