革命機ヴァルヴレイヴ 現代に欲望のまま生きる自分本位の鬼達   作:怪物怪人怪獣さん

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次の話で漸く初巨大ロボットバトル……
兪史朗が嫌いなキャラは勿論キリト。女性関係が少し酷いからだとか……
闘牙が嫌いなキャラは……実は作品を一つも見たことなく実際に良く知らない……キリトと言うキャラも栗色の女性キャラの名前と思っている……その作品が出ている頃は海外ドラマ……アメリカと韓国ドラマの吹き替え版にハマっていた。


第3話 革命の転校生と在校生

【革命】被支配階級が、支配階級を倒して権力を握り、国家や社会の組織を根本的に変える事……

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「その女を俺によこせ」

普通の生活や日常を過ごして余り聞かない台詞を聞いたハルトやショーコ達……テレビアニメや漫画の世界では戦いの切っ掛けになる単語の一種だ…ソースは○斗の拳…あれもヒロインを兄弟同然に育った強敵に奪われ……イヤ、良く思い出したら、彼女は自分から主人公を助ける為に強敵の元へ向かったのだ……そして強敵はヒロインの姑に匹敵するキツい小言に耐えながら主人公のケンシロウを待っていた。あれ?何か違うって?でも大体こんなんで合ってるよ。

そしてその言葉は、鬼の俺にとっては、宣戦布告に聞こえた。

最初はワクワク観客気分で見物していたが……内心は……

(はぁ?)

自分の中にドス黒い物がある事を知った……ハルトは良い奴だ。やや優し過ぎるけど……彼ならショーコが好きになるのも納得する……だがまるでガラの悪い男のような発言をする銀髪ウォーズマンに、俺は自分の中にある黒いの部分を抑えるのに必死だった。数百歳なんだからもう少し思慮深くしろよ……うん。無理……

 

「え?」

ハルトも言われた事が、咄嗟に理解出来ないようだ。

勿論脈々もない言葉に俺や指南ショーコも理解など出来る筈はない。

「聞こえなかったか?その女を、俺によこせ」

「……………………………………」

(よし殺そう…………いかんいかん……何面倒くさい男になっている……あの小僧の思考を読め……脈々もなく何故言った……)

 

無言で銀髪の面を見て……ハルトを見て……

(………いやアレはないな……コイツ…ショーコを見ているようでハルトに向けて何かを問おうとしている……脈はないな……はっ、まさか奴はハルトの方が好きなタイプなのか……)

闘牙は、目を見開き口に手を当てる。戦国時代や江戸時代に兄弟の関係とか衆道と呼ばれるのは、存在していたが……新撰組らのように男同士深い仲とか…………

(イヤ普通に気持ち悪いし素直に怖いわー。俺はまだおなごが好きだ。)

 

尊い時間は終わり何故か緊迫感を覚えるやり取りが始まる中で ハルトはどう答える。

此処で出る答えによっては、指南ショーコと俺の中にある人物評価と好感度に影響が生まれる。勿論、ハルトの性格を知っているのなら大体の返事は予想はつく。しかし、そのどの予想から外れた返事が帰ってきたら、同級生としてどう対応するべきか考えないといけないな。

(さぁ、どう答える……時縞ハルト。………………ハルトを信じ切れていない自分はやはり醜いな……)

(ハルト……)

心無しか指南は助けを呼ぶ為に動くべきか迷っている様子だ。

そして俺自身は、咲森学園の仲間達を心の底から信じ切れていない……自分自身にバレたら終わりの隠し事をしているせいもあるだろう。顔に極力出さないも内心人の視線や会話にビビっている……根の良い人間を本気で良い奴と見ていないのは、永い時間を生きる鬼として人を騙す醜い人間達を見すぎた弊害だ。

(頼むから指南の気持ちを裏切るような事はしないでくれよハルト……)

それでも仲間を信じ切れなくても、仲間を信じるしかない事もある……

 

目の前の相手が誰なのか。何故いきなりそんな事を言い出したのか。ハルトは理解は出来ない……出来ないが…

「ちょっと……」

見かねて口を挟もうとしたショーコを、ハルトが手を伸ばして止める。

そして、冷たい鋭い男の目をハルトなりに精一杯の本気で睨み返し、言った。

「い……いやだ」

 

 

「い……いやだ」

ハルトの返事を聞いた刹那、ショーコが大きく目を見開いて、ハルトの横顔を見つめる。

ショーコとその後ろに気配無くいる俺はその様子を静かに見る。只……感想は違う

(ハルト……)

(チワワが狼達に必死に威嚇しているように見える……)

嫌、充分本人なりに反抗の意志を見せているんだが、いかんせん実戦とかで自分より強い相手に怯まない不屈の闘志なんてこのご時世持っている奴は一部の連中だけ、

(アニメとかだと最初の殺されるタイプなんだよな。ハルト……優しいけど切っ掛け一つで感情的になって直ぐ動きが雑になって袋叩きになって殺される。)

ハルトは相手の動きとか外見を見る観察力は平均的だ。

相手から指摘して始めて気付く場合が良くある。

闘牙は冷静に銀髪の……袖の部分を観察する。

(……銀髪の手首の中に何か固い物がある……左胸ポケットの少し膨らみ……手首の中には暗器……ポケットには……恐らく標準装備のハンドガン。)

わざわざ学園の生徒の服でこの学園に来たんだ彼らの装備は、基本軽装……スタンガンやワイヤーや針といったのもあると過程しても、サブマシンガンやPDW銃のような嵩張る銃は背中にも無い……人体の内部に何か武器を仕込んでいるかも知れないが……その時は、無効化すればいい。

(だが……油断できない相手には違うまい。)

息を吸うように人の命を奪うタイプは、根本的に人を人として見るより、より客観的に目的の障害になると判断して抹殺するタイプか単純に人がもがき苦しむのが好きなイカレた殺人鬼が多い……ついでに俺は皮肉にも目の前の銀髪と同じ前者……人を喰らうより、目的の為に殺める事ばかりだ……極がつく悪人や救いようのない屑以外は……痛みも感じさせず苦しまずに一瞬で終わらせてやるくらい慈悲はある……あれっ?良く良く振り返って見たら……俺の生き方ってまんまケンシロウじゃね?世紀末救世主っぽい事を良くしていた気がする…………怖っ!?……やっぱり無いな……俺には、強敵と言う友は……居たよ……みんな天に帰りやがったよ……ユリアもマミヤはいないけど、……やべっ何か泣けて来た……

 

 

冷たい目の男は、ハルトの精一杯の搾りに搾り出した気迫に些かも怯んだ様子はない。

「なら半分こにするか?」

「…………え?」

「ハムエッグの黄身も、愛した女も、お前はナイフで半分に切り分けるのか?」

「…………そんな事…」

ハルトが男の言葉に何か返事を返すより先にハルトの肩越しに男がショーコに向かって手を伸ばした。

「っ!」

咄嗟に、状況反射的に、男に向かって両手を突き出すハルト。

(女が危ないと分かると何も考えずに動くか……罠がある事も警戒しない……)

冷たい目の男はハルトの勇気ある行動をただただ冷めた目で観察し呆れていた。人質の姿が見えたら地雷に掛かる新兵と同じだ。人質の姿をしているのに、それが本当に救出する対象の人質かと合っているか?生きているかすら警戒しない……簡単に罠に掛かり周りに迷惑を掛ける……評価にすら値しない。

男は最小限に身をひねってその突き出す行動をかわし、ハルトの片足を軽く引っ掛ける。

つんのめってうつ伏せに倒れたハルトが身を起こそうとすると、男はハルトの肩を蹴飛ばして転がし、仰向けにしてその前に立ち塞がった。

「ちょっと!何やって、」

「ダメだ!」

ハルトに駆け寄ろうとしたショーコを、ハルトが鋭く制する。

「来るな、ショーコ」

その視線は、男の袖口に仕込まれたナイフの光に注がれている。

冷たい目をした男は、鋭く袖口のナイフ顔負けに憎々しげにハルトを睨みつけ激情の視線を向けていた。

「本当に大事な物は、半分こになんて出来ない」

しかし、その激情の視線はハルトなどではなく、何処かずっと遠くの別の誰かに向けられているようにも見えた。

(……思ったより、訳アリな男のようだ……)

闘牙は静かに冷たい目をした男を観察する。只の殺人マシーンではなく何かを必死に得ようとして……みっともなく下り坂に登る事が出来ず転がり落ちた人間がする目……そして諦めず必死に登る途中の男の目……ハルトが経験した事のない経験をした男の目だ。

「子供の理想などこの世界には通じない。お前が戦いたくなくても、向こうから殴ってきたらどうする。ヘラヘラ笑って、大事な物を譲るのか?」

この男の言葉に、ハルトもショーコも何も言い返せない。特にハルトにとってその言葉は今まで、頑なに目を逸らし続けてきた、残酷な世界の真実だ。

「譲れないなら、戦うしかない。」

(……同感。)

世の中結局パイの取り合いだ……全てを平等にするならまさに理想郷の中のルールだろう。貧富は時間や環境と共に生まれては差が付き、更に世界は国境線と言う領土を大義名分や理由を付けては取り合う。まさに時代は群雄割拠の戦国乱世~~と千葉ボイスがあちこちに水面下で聴こえる始末。世界の裏側には得体の知れない連中が沢山居て……俺は満足にオタクアニメや映画や昼ドラ朝ドラが観られない。

 

(そう言えば、【おそ松○ん】に【笑点】と【純情キラリ】の再放送を録画しないとな……テレビの録画予約は分裂体達による熾烈な戦い……誰も譲り合いの精神はない。だが!?こんな事もあろうかと……無限城以外にこの咲森学園の視聴覚室には既にHDDと録画ディスクはセット済みだ。)

学園がヤバい学園と知った日から私物を各教室にそれとなく持ち込んでいる鬼……己の欲望に妥協はしない……それがオレだ!?

 

(全ては知らないが、俺はこの時……あの男とは仲良くなれる気がする……何故なら俺も色々と失って色々と得た…否、俺は本当の意味では……何も手に入れていないのだから……)

(世の中は譲れない物ばかり……だから戦う事には賛成だ……平和な時代になったらなったで……次の紛争や戦争までの下準備の時間でしかない……そしてそれはこのジオールもそう。)

 

男のその言葉を聞いた瞬間ハルトの脳裏に、キューマから届いたメッセージが蘇る。

『誰かとられてから泣いても、遅いからな』

 

分かっている。いつかは、戦わなければならない。いつまでも、目を逸らし続けてはいられない。ハルトはせめて、自分を覆いかぶさる謎の男から目を逸らさず、睨み返す。

男もまた、そんなハルトを睨み返す。

「はい。そこまでだ……お二人さん。」

睨み合う二人の間に鬼がチョッカイと言う名の仲裁をする。

「っ!?」

(馬鹿なっ!?コイツ何時の間に……)

冷たい目をした男……エルエルフのナイフを隠し持った袖口を気配も音も無く掴み二人に声を掛ける。気付くのが遅れたのだ。仲間達が近くいながら……

「あれっ?闘牙?何時いたの?」

ショーコも突然姿を現し……否、普通に気配を消しただけの存在が気配を見せた事に驚いている様子だ。

「闘牙。っダメだ!?ソイツから離れて!?」

「大丈夫大丈夫。それよか立てるか。ハルト?」

エルエルフの袖口を掴んだまま闘牙は片手を差し出して

ハルトは男を睨むのをやめて闘牙を心配する。

エルエルフは直ぐに空いた右手を使い掴む闘牙の片手を振り払おうとするが、

「っ!?」

(……身体がっ!?…動かない…)

突然身体が……指先一つすら動かなくなりハルトを無視して闘牙を激しく睨みつけるエルエルフ。

「そんな視線だけで人を殺すような怖い顔をするなよ。お兄さん。あんたの現実主義の言葉はハルトには少し理解するのに時間が掛かるんだ。」

闘牙はハルトを何とか立ち上がらせてエルエルフに威圧を止める……

無惨様や上弦の鬼達が無意識にする異次元の強さを見せる威圧……常人を優に越えた存在……鬼を越えた存在に対する恐怖心を利用した威圧をエルエルフと呼ばれる少年はまともにくらい身動きを軽く封じ込めたのだ。

 

「っ!?」

身体が自由になったエルエルフは鋭い目を闘牙に向ける。袖口に仕込んだナイフを使おうと考えるも……

「そう。ビリビリ警戒するなよ。別に取って食いはしないんだから……でも袖の中にある物を使わないでくれるかな?」

ハルトをショーコの元に駆け寄らせた状態で、笑顔で対話する……

「……貴様は何者だ……」

ハルトやショーコの事なんかよりも目の前の気配を感じない男に問い掛ける……

「……お前が会った事のない存在だ……」

(さて……得体の知れない奴と遭遇した人間は幾つかの行動をする……パァートォワァン生存率を高める為に抵抗する。うん。彼はするタイプだ。パァートォツゥー逃げる……うんコイツは合理的な判断でそれを選択しそうだ……判断が出来るならだけど……パァートォスリィー対話する……こっちが会話出来るなら少しでも情報収集をして有利を取る。パァートォフォー何もせず興味が無くなるのを待つ……これも俺には効果的……俺は殺戮が好きじゃない。後始末が大変だから……)

「…………」

「…………」

鬼と男の間の空気がどんどん張り詰めていく……緊迫感が辺りに漂い始める空間の中で闘牙が出した結論は……

結論……今は見逃そう……まだ男と戦う時ではない。

仮に此処で戦闘開始となれば、勝利は可能でも……出来るだけ俺自身は、普段通りしたい。にしても……めっちゃ親の敵の如く睨んでいるよ。凄く睨んでいるよ。やめてよね。こんな凄い鬼闘術や血鬼術を持っていても、やる気はないサボりや楽な方向が好きな駄目な奴なんだから……

【…………………………………………………………】

エレベーターが到着するまで鬼と男は無言で向かい合っていた……そしてその重苦しく張り詰めた空気に胃をやられそうになるハルトとショーコの二人だった……そして闘牙本人は、凄くシリアスな顔を冷たい目をした男に向けながら……○斗の拳2の挿入歌【kill THE fight】を熱唱していた。

「…………………………」

「…………………………」

【…………………………………………………………】

本人の中ではやる気はゼロでも何時でも掛かってこいっと戦闘準備事態の覚悟完了しているのだ……

此方から戦う動きはしないが向こうから来たなら心の臓に静かに鳴るのを待つ戦いのゴングは大きく鳴り響きであろう。

(…これも鬼の宿命か……)

冷静に相手の動きや服装から来る攻撃パターンを予測する闘牙。向こうの方が頭は良い……こっちの取り柄は常人の何十倍の身体能力と不死の肉体……自分で考えた効果あるかわからない変に下らない術の山とかだけ………

 

両者見詰め合ったまま間合いを維持しつつエレベーターがある方向にゆっくりと向かい。相手の動きに注意しつつ近くで両足を止めて向かい合う。

エレベーターが到着するとエレベーターの扉が開く。

冷たい目をした男は仲間達と共にエレベーターに乗り込むも、扉が締まる直前まで俺の姿を見ていた。

 

 

 

転入生達が姿がいなくなると……闘牙は口の中でグツグツと貯めていた白い空気を一気に吐き出すと共に脱力感をぐにゃぐにゃと全身に出す。その場であぐらをかく始末だ。

(物凄く真面目すぎる人に向かい合って緊張した感じのソレ……何で俺がこんな目に……こういうの別の奴がやる事だろう……)

「闘牙!」

二人はぐにゃぐにゃになった闘牙に直ぐに駆け寄る。

「あっ二人ともストップ。俺今腰が抜けて力入らないの……殺されるかと勝手に緊張しちまった。」

(否、死なないだろうが、気迫や気持ちだけなら殺されるかと錯覚を覚えてしまったわ。………………えっ?アイツを仲間にするの?○ッターロボの原作のキチガイの神 隼人を仲間にするくらいハードルが高くない?)

先行きの不安を隠せず真っ青な顔に冷や汗を全身から出す闘牙……

(俺は流 竜馬じゃない……こ○すばサトウカズマポジションの駄目駄目な鬼だぞ~~)

最早逃げられない……筈もないのだが本人は気付いていない~~

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「……住民との接触は、最低限のはずだ」

三つ編みの言葉に、冷たい目の男はやはり答えない。こういう事はこれまでも昔からもあった事だから仲間内から特に言う事はない。だがエルエルフは静かに心苦しそうに……ぼそっと言う。

「……すまん。」

「「!?」」

たった一言……たった一言だが自分達が知っている男なら言わない詫びる言葉がエレベーターの中で広がる……

降下してゆく冷たい金属のエレベーターの中その言葉を言ってた冷たい目の本人は……エルエルフは、最初は自らの未熟を恥じていた。平和ボケしたジオール人の口から、大切な思い出の言葉が出てきた事。その言葉に記憶を重ねてしまった事。思わず逆上してしまった事。その全てが、悔しかった。

「…………くっ、」

だが…だがそれ以上に悔しかった事は、平和ボケしたジオール人の"仲間の男"を見て俺はカルルスタイン機関で学んだ全てを使っても避けらない"確実な死を覚悟した"

(……奴は俺を敵とすら見なしていなかった……)その事実が余計己が未熟と感じて悔しかった…さっきの返事も生き残れた安心感が無意識に口と共に出たと言う事を本人は知らない……

…そんな彼の内心を、他の四人は知る由もない。

「……うん?」

眼鏡の男は昇降ボタンの方に視線を向けてある事に気付く。

「どうした、イクス。」

髪を逆立てた男は友人が一瞬動きを止めた事に疑問を抱く。

「何か問題があったか?」

銀髪の三つ編みの男も尋ねるも眼鏡の男は振り向く事なく片手で静止のサインを見せて仲間を止める。

「いや、何の障害でもない。」

(ボタンの下のパネルが少なくとも2回……開かれた跡がある……整備の為にパネルを開けたにしては、少し雑だな……)

眼鏡の男は知らない……既に炎竜鬼がパネルを開けたと言う事実を……

 

銀髪の三つ編みの男アードライは疑念を抱く。

アードライは、彼を自分のライバルだと、同時に唯一の友人(残りの三人は友人と言うより同じ所属する部隊の仲間……プライベートで付き合う機会少ないだけだ……うん。そうだ。そうに決まっている……)

同じ夢のために、今はただ心を殺して任務を果たす戦闘機械。自分と同じだと、そう思っていた。

だからこそ先程、彼が取るに足りないジオール人に対して激情を見せた事が、決して小さくない違和感を胸中に生じてさせた。

そして、あの後から来てエルエルフに気付かれずに現れたもう一人のジオール人の姿を見た瞬間……全身が言い知れぬ圧に包まれた……普通の人間とは違う得体の知れない感じが……

 

青髪の眼鏡の男イクスアインは、困惑を抱く。イクスアインは、彼をエルエルフを評価している。冷静な判断力で、冷徹に遂行するその姿は、安心して状況を任せるに足るものだと思っている。だからこそ、ジオールの民間人に暴挙は理解出来なかった。

 

背の低いヘアバンドを着けた赤い髪の少年クーフィアは、さっきのエルエルフの激情する様子に興味を抱く。エルエルフはつまらない。彼はいつも任務の時は眉一つ動かさずに人を殺す。あんな楽しそうな事をしておいてちっとも楽しそうじゃないエルエルフは心底つまらない。クーフィアはいつもそう思っている。だからこそ、彼が初めて強い感情を見せた事を面白いと思った。

 

髪を逆立てた男……闘牙にホウキ頭と呼ばれて仲間と友人に笑われた男……ハーノインは、やや不満を抱く。

自分が学園の眼鏡の掛けた可愛い女生徒に声をかけた時、アードライもイクスアインも、自分に対して否定的な態度を見せた。それが彼の時は、二人とも強く言わない。

しかしまぁ、そんなものか。……とハーノインはそれ以上気にする事を止めた。……って止められるか!?エルエルフについてはそれまでで良い。仲間にも色々あるんだ。しかしあの変な麦わら帽子にアロハシャツやウクレレを持った変なサングラスを掛けた奴にからかわれてたの思い出した。アイツ今度会ったら覚えてろよ!!

 

「━━通った」

イクスアインが言った。乗ったエレベーターの昇降ボタンの下にあるパネルを外し、持参した端末を繋いで試みていたハッキングが成功したのだ。

それぞれが色々と考えていながらこれからする行動の準備を各自する。

「~~♪~♪~~~♪」

クーフィアは口笛を吹きながら楽しそうに銃の状態を確認する。これから楽しい時間が始まるのが待ち切れない子供のようだ。

「…………はぁ…」

ハーノインも一度ため息を吐き軽薄そうな雰囲気は成りを潜めて任務をする軍人の顔になる。

「ハーノ。コンディションの状態はどうだ?」

イクスアインは振り向く事なく銃の安全装置を外して尋ねる。

「そっちは?」

「お前よりは万全だ。」

「なら俺はそのお前より万全だよ。イクス。」

「ふっ、そういう事にしておいてやるよ。」

互いに信頼しきった軽口の発言は長い間紡がれた信頼の証。

「エルエルフ。準備は出来ているか?」

アードライは問う。

「問題ない。」

エルエルフは簡潔に言う。今が任務中である事に思い出し、自責の念を押し殺すエルエルフ。

その一言は両者の信頼関係を表すのに充分なやり取りだ。

「フォーメーションはどうすんの?」

クーフィアは簡潔に聞く。ポジションによっては楽しい楽しい戦いが出来ない可能性もあるからだ。

「ハーノが先頭にすると先走って孤立する可能性がある。」

「コラ。イクス。敵の観察に集中してお前は少し初動が遅いだろ。」

「……俺が先頭に出る。」無言で袖口に仕込んだナイフを手元に出して言う。

「決まりだな……」

「開くぞ」

本来止まらないはずの階層にエレベーターが止まり、本来開かないはずの扉が開くと、その先では学校の施設としては考えられない程の重厚な隔壁が行く手を更に塞いでいる。その隔壁が一枚ずつ、上下に、左右に、斜めにゆっくりと開いていく。そしてついに、廊下が開けた。

「イクス。隔壁が多いな。」

「その数の多さの分、ジオールの秘匿した物が重要って事だろう……ハーノ。」

「全員私語は一旦止めるぞ。」

それはつまり━━━軍事盟約連邦ドルシアの特殊部隊である五人が、中立国ジオールの秘匿施設への侵入に成功したという事だった。

隔壁の向こうに立っていたジオールの兵士二人を、飛び出したエルエルフが一瞬で切り伏せ、ナイフに付着した兵士の血を振り落としながら言った。

「ランメルスベルグへ通信を送れ。『コウモリ ハ クモリゾラヲ トブ』」

その符丁が意味する事は、すなわち━━『侵攻を開始せよ。』

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咲森学園には伝説の祠がある。

学園の裏山にある小さな祠の前で告白すると必ず両想いなれるという、ありがちと言えばありがちなものだ。

つーか、創立三年目の学園で一体誰が何の為にそんな伝説を作ったのか?それは誰にもわからない……

今、その祠にはハルト、ショーコ、キューマ、アイナ……そしてサトウカズマじゃなくて操真闘牙こと炎の竜鬼の五人が集まっていて、箒で落ち葉を掃いている。

ハルトとショーコは授業中に騒いでいた罰だが、キューマとアイナはそれを聞いての善意の手伝いだった。

えっ?俺は?成り行きだよ……てか帰って録画した【宇宙戦艦ヤマト2202】のアニメを観ないと

「四人もいるならこっちは大丈夫だろ?俺は祠の裏の方の落ち葉"狩り"をしてくるよ。」

「狩りゲームみたいに言うなよ。」

「じゃあ、お願いしますね。」

 

そそくさとねずみ男ヨロシクな動きで祠の裏に回り━━

「さてっ手早く片付けるか……」

箒を日輪刀のように両手で持ち、真剣な刃のような眼差しで祠の裏側に散らばる落ち葉を見て、

「流石に数が多いが……どおりゃあ!!ジョイアー!!」

鬼の力を込めた箒で祠の裏側の落ち葉を凪ぎ払い全て舞い上がらせて制服の両の袖口から無数の『帯』を出して裏側の落ち葉を一つも残さずに回収する。

「まっ、落ち葉や枯れ葉集めは此れが一番だな……」

袖口に"堕姫"の帯を戻して一ヶ所に集めてる闘牙。

「…………それどうやって出したの?」

自分以外の声が自分の耳に聞こえて恐怖の表情をする闘牙。

「ヽ(ヽ゚ロ゚)ヒイィィィ!おっ、お前は!?」

「……何その無駄なリアクション……」

祠の裏側に座り込み、壁に背中を預けてスマートフォンをいじっている後輩……もとい少し前ラッキーな激突してわしつがみしまった流木野サキと遭遇する。彼女は俺の血鬼術を目撃して戸惑いの気持ちと呆れた気持ちを混ぜた感じの表情で俺を見る。

「……手品だよ。」

血鬼術の事を答えられない為、闘牙は嘘を口にする。

「にしては着物の帯が生き物みたいに動いていたけど……」

(何と言う鋭い切り口……節穴の海のリハクの目を持ってしても見抜けなかった。祠の裏側に人がいるなんて……)

「……視線が溺れていますよ。ライフセーバーが急いで助けに来るくらいに……」

「さぁて掃除掃除~~ランランララララ~ン♪」

答えると墓穴を掘りそうだから……闘牙は彼女に背を向けて既に集まった落ち葉をゴミ袋に入れる作業をする。

「っ!?……その歌、知っているの?」

後ろからサキが何やら聞いてきた。

「うん?あぁ…まぁ、3、4年前の流行っていた歌らしい……誰が歌っていたのか俺も実は良く知らないんだ。夜のバイト先の先輩が口ずさんでいたからさ。深い興味もないし……」

「……そう…。」

酷く淋しそうな悲しげな返事が聞こえて闘牙は軽く真面目に彼女の方に視線を向ける。

「君もこの歌を聞いた事あるの?」

「……」

彼女は何も答えず、複雑そうな視線を俺に向けて一言だけ答える。

「先輩ってそういう真剣な雰囲気の顔も出来るんですね。意外でした……」

「……ふざける時は全力でふざけるだけだよ。まっ、何かこの歌で嫌な思い出があるならもう君の前では「その歌の歌手私なんです…」……えっ?」

何か大事な物を諦めた笑顔否……とても哀しげな目をする彼女は静かに闘牙ではなくスマートフォンに視線を向ける。

「……色々な思い出が詰まっているんです。辛くても楽しい……未来があったとか夢があったとか……輝いていた頃とか……一言では表せない色々な思い出が……」

「……そうか…」

そう答えて闘牙はサキから背を向けて落ち葉をゴミ袋に詰める作業に戻る。

「…………いつか、」

作業を続けながら闘牙はサキに聞く。

「えっ?」

「…いつか、お前の気持ちの整理がつけたなら……いつか……お前の心が洗われたのなら、その思い出を話してくれるか?」

「……随分先になるかも知れないですよ。」

スマートフォンから目を離して闘牙の後ろ姿を見て答える。

「……問題無い。俺の時間なら沢山ある。……腐る程沢山な。」

「……そうですか。」

互いに言葉は此れ以上交わさずにそれぞれ思い思いの行動をする。

だが互いに少しだけ相手の事を知る。只のふざけたばかりの先輩ではない事、只の無愛想仏頂面の後輩ではない事……先ずはそれだけ知れば充分だ。

「……そうは問屋が卸しませんよ。どうやって制服の中に着物の帯を仕込んでいるのか説明して下さい……」

「……ちょっと良い感じで終わる話しだったのに水を差すなよ。そっと流してくれよ。」

前言撤回、世の中やっぱり思い通りにはいかない。

 

祠の表側では

「あーもう、なんなのよ!悪いけど、ハムエッグは白身から食べる方だから。そもそもハムエッグの主役はハムでしょ!」

冷たい目の男、エルエルフとの一件があってから不気味な沈黙を保っていたショーコだったが、ここに来てついに我慢の限界を迎えたらしい。この分では告白などというロマンチックな雰囲気とは程遠いようだ。

「うん、ハムは大事だ」

いきり立つショーコと真面目な顔で頷くハルトを見て、キューマがアイナに囁く。

「押し倒されたのは、ハルトなんだよな。」

「その、はずですけど……」

実質的に被害も被っていないショーコは、それでも箒を振り回してながら憤慨している。

「ハルトは良い事言ったのに!間違ってないのにーっ!」

レレレのおじさん並みに箒を振るうも、あらっ不思議、落ち葉は彼女の箒の周りにはない。

 

祠の裏側side

「いや、そもそも俺は何で祠の落ち葉の掃除なんてしているんだろう……」

「知りませんよ。」

「もっとこう俺がしないといけない事が沢山あるというのに……そうだ。富野。代わりに落ち葉「嫌です」晩御飯高級フレンチレストランで奢るから「嫌です」其処を何とか!」

「私、補習サボっているだけで此処にいるんですから……」

「……此処が嫌いなのか?」

「っ!?」

「……お前と会話する度に、冷めた目と冷めた心で此処を見ているからさ。此処じゃない何処かに思いを馳せているみたいに俺には感じた…」

「…だったらどうなんですか?」

少し苛立ちが混ざった声に、自分の世界を変える為に外との繋がりを欲するけど、その繋がりには自分の世界を壊す危険も知っているから拒絶もしている相反する"矛盾"を抱えた頃の自分と流木野を重ね見た自分がいる。

(……居たんだな。でも自分から離れた……)

「……別に…少し昔の自分に見えただけだ。」

俺が俺を保っていたのは、周りにある人から見たらガラクタとも言えるゴミとも言える物で孤独の寂しさを紛らわせるのと。

『貴様っ!?貴様が描く珠世様の絵には珠世様の想いがこれっぽっちも入っておらん!!』

『イヤこんな物だろ。』

『大体お前が描く絵は何かお前の願望が見え隠れるんだよ!!何か……こうっ!?説明しずらい何かが!!』

口が悪い同居人と色々と喧嘩もしながらも時代に取り残された者同士。何だかんだ欲望まみれで生きていたからかな?

ある時は

『ドラゴンクエストⅤクリアしたぞ!!』

『えっ!?』

『何だ、その反応は?っ!まさか貴様既に……』

『兪史朗は凄いな~~(棒)。』

ある時は

『いい加減結婚したい……』

『鬼の俺達には無用な悩みだろ……』

『フランケンシュタインの"怪物"もこういう寂しさと戦ったんだな……』

『いや……お前はまず女性が好ましいと思える部屋じゃないだろ。物が多過ぎて普通にゴミ屋敷だろ。昭和の頃の家電のグッズとか倉庫か蔵にしまえ。』

『この暴走族の服装とかもか?』

『せめて髪型とか服装は普通にオシャレしろ。』

『兪史朗はしないのか?』

『人間の女に俺が興味あると思うか?』

『お前……』

『何残念そうな顔しているんだ。』

とまぁ色々と変な事もあるけど割かしまだ俺の場合は今は寂しくないよ。

「なぁ、流木野?」

「……何ですか?」

「この学園は楽しいか?」

何気ない確認だ。その質問に彼女はスマートフォンを動かす指を止めてたった一言だけ小さく答える。彼女の脳裏に入学してからの日々を思い出して

「……そんなの私に……わかるわけないじゃないですか…」

ゴミ袋の口を綺麗に縛り闘牙は彼女の方に視線を向け

「そりゃあ……それもそうだな……」

15、16の女の子に何て質問しているんだと軽く後悔した顔で複雑そうに答えた……

祠の裏側sideout

祠の表側side

「落ち着け!」

キューマがアイナを庇いつつ荒ぶるショーコを窘める。しかしショーコの怒りは収まる様子を見せない。

「だって犬塚先輩!」

頬を空気で小さく膨らませて怒りのアピールをするがハルトからすればそれすら可愛いと答えるだろう。

「ありがとう、ショーコ」

「え?」

唐突に聞こえた感謝の声は、ハルトのものだった。ショーコだけでなく、キューマとアイナも疑問の視線を返す。

「僕の代わりに、怒ってくれてるんだろ。おかげですっとしたよ」

お世辞ではなく、本当に嬉しそうなハルトの微笑み。ショーコは頬を赤らめて、照れ臭さを取り繕うように早口で言う。

「そ、そりゃあ、友達だもん。ハルトが怒らないからだよ」

「あははは……友達か……うん、ありがとう」

「あっ、ゴメン。何か私不味い事言っちゃった?」

「うん。大丈夫だよ」

慌てるショーコを見ながらやっぱり良い子だな、と破顔するハルト。そんな優しい目で見られてショーコはますます照れ臭そうに俯いてしまう。なんだか良い雰囲気になってきた二人を見て、キューマはニヤニヤと笑いながら静かに距離を取る。アイナもそれに倣って祠の裏手へ回り━━

「━━あれ、流木野さん?」

祠の裏に座り込み、壁に背中を預けてスマートフォンをいじっている同級生を見つけた。

そしてその流木野と向かい合うように同じくタブレット

をいじっている闘牙がいた。

「うん?ヘタレバスケ先輩。表側の掃除完了しましたか?」

タブレットで何やら操作しつつ闘牙は犬塚先輩に話掛ける。

「いや、表側ハルト達に任せているんだ。にしてもこっちは綺麗だな。」

「手品を使って掃除しましたからね。」

「袖口から着物の帯を沢山出して掃除していましたよ。」

ボソッと答える流木野に面倒くさい顔をする闘牙。

「あっチクるな。」

「?」

「操真先輩。流木野さんと仲良くなったんですか?」

「否、コイツとの仲良し度は他の奴らと違ってゼロだ!?」

優しく言うと思ったら何処からともなくコード○アスのゼロっぽい仮面を被り格好良く答える闘牙。

「その仮面何時作った?」

「少し前、顔を隠して目立ちたい時期が俺にもあって……○きのタクトの変な怪しい人達の仮面を参考にしたらコード○アスの仮面になっただけだ。」

「……」

俺と犬塚先輩の変なやり取りを軽く見て彼女は……流木野は視線を直ぐにスマートフォンに戻す

野火マリエ先輩から何気なく教えられたあの日から軽く先輩に教えられた……流木野サキ。咲森学園の一年生で、幼い頃から子役を務め、中学では女優に歌手と華々しい活躍をしていたが、なぜか芸能活動の一切を休止して咲森学園へ入学したという珍しい経歴の持ち主だ。それが災いし、男子生徒の好奇と情念、女子生徒の羨望と嫉妬に晒され、それら全てに無視を貫き通し、現在のところ学園では孤立している。……っとまぁ、咲森学園の美人や美少女に詳しい野火先輩なりの分析だ……

『彼女には中々凄いポテンシャルを秘めている……ジュルリ……グヘヘヘ……』

何のポテンシャルとか何にグヘヘヘついてからはどうでも良いが……

(休止の理由は……まず本人の望んだ事ではないな……)

仕事が過密スケジュール過ぎた芸能人は私生活が疎かになるとかはある。だが先輩や本人から聞いたり見たりしている限り……

(大体、望んで活動を休止した学生なら学園生活を心から楽しんでいる筈だ…………考えられる可能性は沢山あるが……)

("普通"の芸能人の望まぬ芸能活動の休止……芸能界に詳しくなくてもゴシップ関連なら幾らでも出てくる………普通ならな……)

彼女はこの学園に入学した……入学させられた時点で、

彼女と同じ世代否、完全にガ○ダムの計画に備える為に…政府か軍が動いたのが一番の可能性だな……

(この事は早い内に教えてやった方が良いな。)

実際冷めた性格と言うよりも大人びたって答えた方が良いのか……同世代の通る基本のレールからことごとく外れた泥だらけの凸凹の道を彼女なりに努力して作り歩いていたのに強制的に自分の道からひかれたレール乗せられてレールにいる事がただただ苦痛なのだろう……ある意味被害者の一人だ……否、そもそもこの学園に入学した生徒は例外の俺と兪四郎を除くと全員被害者だ。

「何してるの? こんなとこで」

「別に」

櫻井に対してにべもない返事。実際には見つかりにくい場所で補習をサボっているだけである。

「何か面白いもの見てるの?」

しかしアイナは、そんなサキの人を寄せつけない雰囲気を気にもせず、隣に並んで座り込んだ。サキは闘牙にも見せた仏頂面のまま、それでも闘牙と違ってアイナを拒絶する事はなく、スマートフォンのゲームの画面を見せる。

「あ、これ私もやった事あるよ。難しいよね」

「そう?簡単だと思うけど」

発言とは裏腹に、サキの声音には親しみが含まれているのを闘牙は気付き

(あっ声音が俺の時と違って親しみがある……何よ!?そんな女が好みなの!?悔しくなんかないやい!?)

好感度の高い人物に対しての対応の違いという変な理由で白いハンカチを噛んでキーっと悔しがる。

(……せっかく櫻井さんと話せる話題なのに……言い方もまだ私固いな…)

仏頂面で、言い方も少し上から目線でアイナと話しをしているのに、アイナの心証が悪くしていないかサキは、気にしていた。

実際は心証が悪いとかそんな事はないのだが、サキには心の中を読めるとかはないので確認しようがない。

でももう少し素直な……有りのままの自分をアイナに見せたいとは、思っているくらい同級生の中で大切にしているのだ。それこそ…実の両親達以上に……

サキを色眼鏡越しにしか見ない同級生達の中で、唯一、過去の芸能活動など関係なく普通に接したのが、アイナだった。それ以来サキは、アイナには少しだけ、心を開いている。それを本人に言った事はないが、いつか素直に言えたらいいな、なんて事を思っているサキだった。

 

そんなささやかな交流を他所に

 

「もうヘタレ先輩!?あんな無駄に充実したリア充なんか無視して俺達野郎だけでカラオケとしゃれこみましょう!?ほれっ連れの案山子も一緒だよ。」

「いや、何だよ。俺をその変な一味のメンバーにするな。てかこの案山子。何に使うの?烏とかの鳥獣対策?」

お手製の藁で出来た案山子を犬塚先輩に手渡して

「呪う時に用意したけどよくよく考えたらカンガルーに

据え置きゲーム機本体の中にあったラ○ザのアトリエ3を破壊された理由に使うのおかしいと思ってそのまま蔵にしまっていた縁起の良い案山子だよ。中に鉄板が入っているのが特徴さ。」

「わっ重っ!?呪物になる予定の藁人形じゃねえか!?しかも2メートル……こんなデカイ藁人形を良く伝説の祠に置いておいたな!?てかカンガルーに据え置きゲーム機を破壊されたってどんな状況!?」

「説明するには今から約3年前の話になります……そうあれは……」

「否、今は良いよ。鉄板の重さで持てないから取り出せ。」

にべもなく話を切られる闘牙。

「ガーン!持っているだけで両腕が発達するのに」

「その前に疲れるわ!?」

 

「……男ってバカばっかりよね。」

「あははは……でも、心の底から楽しんでいるよ。」

「そう?只のガキなだけよ。何でもかんでも興味もって……」

冷めた目の仏頂面が闘牙を見据えて喜怒哀楽が分かりやすい……道化師かとツッコむ程だ。

「私は闘牙先輩の事羨ましいと思うけど……」

「そう?」

「だって下らない事で全力を出せる人は肝心な時でも決める時には決めれる凄い人って事だから……」

闘牙の変顔にキューマとアイナが小さく吹き出す。

「…そうには見えないな……」

視線を闘牙に向けながら藁人形の中に手を突っ込み鉄板を取り出す光景を見て考える。

二人程操真闘牙の事を知らないサキは、変な名前の自転車で爆走したりして自転車がバラバラに壊れたり、私に過去の芸能活動関係なく……どちらかというと私の事を知らないのかも知れないが、普段通り?に接してくれる?

「うん。やっぱり良くわからない先輩だ……」

小さくそう自分の中で完結させて

「……流木野さん?」

「どうしたの?」

「ゲームオーバーしちゃっているよ。」

「嘘っ!?」

【GAMEOVER】

四人がそれぞれの思い思いの事をしている合間にハルトは真面目に祠の表側を掃除を続けていた。

無心に地面を掃いていると一枚の絵馬を落としてしまった。

「あ」

落ちた絵馬を拾おうと身を屈めるハルト。それに気付いたショーコが小走りで寄ってくる。拾った絵馬に書かれている願い事を見て、ハルトの動きがピタリと止まった。

『この恋が叶いますように!!』

女の子らしい可愛い文字で書かれたそのお願いをハルト

はじっと見つめる。

「ハルトもお願いするの?」

「えっ!いや……」

突然隣から聞こえたショーコの声に、ハルトの心臓が飛び上がる。横を見ると、肩が触れ合いそうな距離でこちらを見つめているショーコ。その無防備な距離感に、ハルトはいつも一喜一憂させられる。

「ここで告白すると、絶対両想いになれるらしいよ、伝説の祠なんだって」

ハルトから絵馬を取り上げ、何処か愛おしそうにその願いを手でなぞる。

 

「ああいうので男子って勘違いを覚えるんですよね。」

「失礼な事を言うなよ。凄くピュアだろ。」

「清水寺レベルで?」

「何で清水寺!?どういうピュアの基準!?」

「本当にピュアな人は自分で声高らかにえげつない程ピュアだって叫ぶ人です。」

「そんな事言う人いるのかよ!?」

「後両目に星椎茸入れていら人。」

「確かに!?そういうキャラクターたまに見るけど……」

犬塚先輩と変なやり取りしながら二人のやり取りを凄い形相で見る。

夕日に照らされたショーコのその表情は、まるで恋に憧れる少女のようで。

不意に、ハルトの脳裏に、キューマのメッセージが、そして冷たい目の男の言葉が蘇る。

━━今しかない。

自然と、ハルトはそう思った。

「出来て三年の学校に伝説はないよねー」

元通りに絵馬をかけ直し、冗談めかして笑いながら振り向くショーコ。そんなショーコを、ハルトは真剣な表情で見つめていた。

「ショーコ……」

「え?」

不意を突かれて戸惑うショーコ。ハルトは真剣な表情で一歩近づく。

「どうしたの?」

小首を傾げるショーコ。ハルトの一世一代の決心など欠片も伝わっていない。

「君に、言いたい事があるんだ」

「言いたい事?何よ、あらたま……って……」

自分を真っ直ぐ見つめるハルトの顔に、ショーコの言葉がゆっくりと萎んでいく。そして、気付く。此処が何処なのか。今、自分が何の話をしていたのか。

「ショーコ。僕は、」

「えっ……あっ……ま、待って、ちょっと待って!」

「えっ?」

「お願い、ちょ、ちょっとだけ待ってよ!」

「……うん」

「え……だ、だって……そんな……」

 

「流石にテンパってるな。ショーコの奴。」

「当然だろ。一世一代の本気の大勝負だ……勝負事にとことん弱いアイツが文字通り己の全てを懸けたな……」

「コレショーコが告白する側の方が面白いんじゃないか?」

「……そっちも見てみたいが、これで満足しろ。」

 

「……。」

「何だ、お前も興味あるのか?新野。お前も色々とあるけど乙女何だな」

「別に……。」

【GAMEOVER】

「流木野さん。また……」

なんだかんだ言いながら四人とも祠の裏側から二人の様子を見る。

 

熱を帯びる自分の頬を両手で覆い、ショーコは取り乱す。そんなショーコを、ハルトは自分でも不思議なほど落ち着いて見ている。もし、自分の想いをショーコに伝える事があれば。その時はきっと、みっともないほど舞い上がっているんだろうな、そんな事を思っていた。しかし今、それをしようとしている自分の心は、うるさいほど心臓が高鳴っているものの、揺れてはいなかった。むしろ、自分の代わりに取り乱しているようなショーコの姿を見て、愛しさを募らせているくらいだった。

そんな真っ直ぐな瞳をしたハルトを見て少しずつショーコもまた、覚悟を決めた。これは、ハルトが初めて自分

から何かを求めて挑む勝負なのだという事に気付き、これから何かが予感への不安と期待と恥ずかしさを飲み込み、ハルトに向き直った。

「ど……どうぞ」

「う……うん」

再び開いていた二人の距離を、ハルトが踏み出して縮める。

思わず後ずさろうとして、ショーコは懸命に堪える。至近距離で見つめ合う、二人の瞳。

 

「うん?………………」

(ガ○ダム開発計画の責任者の息子とその開発を命じた総理大臣の娘……幼馴染の関係も果たして何処まで……)

美しい光景なのに、何故か俺の目には、造られた関係にも見えてしまい純粋に喜べなかった。

「どうしたの」

闘牙の持つタブレットに一つのメッセージが届き内容を見る。

メッセージの内容を静かに見てやる気の無い表情をしていた闘牙の雰囲気が変わり出してサキ達は自分達の知らない一面を知る。

闘牙な素早くメールを送りため息を吐き

「……もう少し……この先を見たかったな……甘くて……バカみたいに下らないが……だからこそかけがえのない……この美しくも尊い……平和な一時を……アイツらの幸福な未来を……」

優しそうなそして哀しそうな瞳でハルトとショーコの二人を見る目はそんなに歳に違いはないのに酷く大人のような感じがした。闘牙は静かに目を閉じて……

 

「ショーコ。僕は、君が……」

胸に手を当てるショーコ。大きく息を吸うハルト。一瞬の間を挟み、再びハルトが口を開く。絶対に変な所で噛まないように、絶対に聞き逃さないように……この瞬間は永遠に感じた……その瞬間。轟音と共に、大地が揺れた。

「……来やがったな……」

「来たって何が?」

「…敵だよ。俺達のな……」

やる気のない顔から引き締めた顔に変化し目を見開き言う。

「お前ら安全な場所に移動するぞ。ハルト。ショーコ。」

「闘牙この揺れは一体……」

「説明は色々後だ。まずはここを離れるぞ。こんな場所奴らから見たら何時でも狙える分かりやすい場所だからな……」

二人に声に掛けて祠から離れる。

「奴らって……」

流木野と犬塚が闘牙に聞く。

「……ドルシア軍だよ。さぁ走るぞ。」

その単語を聞き状況が直ぐに理解するサキとキューマは

アイナ達を連れて動き出す。

ハルトは祠に離れる際に一度祠の方に振り替える。

「何しているの。ハルト。行こう!?」

「う、うん。」

ショーコに手を掴まれて走るハルト……

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

外部からの激しい砲撃により天蓋の一部が砕け散り、モジュール内の空気が勢い良く漏れ出ていく。

そして自己修復を始めるガラスの隙間から壁のような大型盾を両肩に装備した量産型戦闘機、ドルシア軍の『バッフェ』が次々となだれ込んできた。

頭付きの有人機が二機、頭のない無人機バッフェをそれぞれ二機ずつ従えて、合計六機のバッフェがモジュール内部を飛び回る。

「何あれ?」

「低くない?」

「ちっ、うるせいな。」

「演習とかじゃん。」

「何処の奴?」

「バッフェっぽくない?ドルシアの」

「ぶつかりそう!」

それらを迎え撃つべく、ジオール軍の戦闘機『スプライサーZ』が作られた人工の海面を裂いて現れた。Zタイプの主兵装である左右二門のビームライフルから、圧縮された荷電粒子が打ち出される。しかし小さなハエのように飛び回るバッフェには掠りもせず、大気中で減衰して消える。やがてバッフェの自由自在な機動に死角を取られ、実弾兵器の連射を浴びて爆散する。敵のいなくなっバッフェ達は、悠々とモジュール上空を飛び回る。そしてバッフェらやがて咲森学園の方向に飛ぶ。

マリエが現在いるプール場でもその光景が見えていた。

「きゃあああああ!?」

「何処向かっているの!?」

「何なのあれ!?」

平穏の日常を壊す存在に競泳水着を着た学生達は悲鳴の声を上げる。

「……闘牙…」

やる気の無さそうな顔を普段する彼と以前、彼が見せた巨大ロボットの存在を脳裏に過るマリエは此処にはいない彼を一人心配する……

 

また別の方では空を飛ぶバッフェにスマートフォンのカメラ持ち走る霊屋達の姿もあった。

「ドルシアの型式番号Nw507Beバッフェ有人機たたたたたたっ」

地下から対空機銃が出現してバッフェ達に攻撃するも、

両肩のアイゼン・ガストで防御されてその防御力を突破出来ず逆バッフェら破壊さられる始末。

 

地下にあるジオール軍作戦司令室内では、突然の事態に何とか対処しようと怒号が飛び交っている。その間も、宇宙からドルシア艦隊の侵略と攻撃が続けられる。

そして遂にらドルシア戦艦の主砲かみ大地を抉り、怒号が飛び交っている作戦司令部に直撃した。

モニターが、コンソールが、壁が、天井が、そして中にいた軍人達が、無慈悲な破壊の前に成す術もなく引き千切られ吹き飛ばされる。

 

学園の寮にて

「糞っ!?珠世様の美しい絵を描いている最中に遂に現れたドルシアども!!!?」

遮光カーテンのほんの隙間から飛び交うバッフェらが見えて遂に恐れていた最悪な未来が現実となり怒りの表情を露にする兪史朗。

【べべん。】

「迎えに来たぞ!?兪史朗!?」

「白怒火か!?部屋の物ごと頼む!!」

「承知!」

琵琶を片手に姿を現した分裂体は琵琶を鳴らして兪史朗と購入した物をまとめて無限城に移動させる。

無限城 大広間

「っち、流石はドルシア軍。やり方がムカつくくらい効率良く無駄がない……」

無限城に避難した兪史朗は己の血鬼術『紙目』を使いジオール軍作戦司令室内の様子を見てその司令部の最後を目撃する。

「……もう暫くジオール軍には頑張って欲しかったが……何分、先守防衛が基本のせいか。モジュール77が狙われた場合の対処方法がセオリー通り過ぎて簡単にくたばったよ。」

狼牙丸が兪史朗と九荷ともに集まり監視カメラから咲森学園の教師達がドルシアの軍人達と銃撃戦をして次々と撃ち殺されている様子を見る。

「流石に練度の違いだな……ドルシア軍の方の立ち回りが上手い。」

「市街地の方でもあちこち銃撃戦闘を展開している様子だ。九荷。」

【コーーン!】

咲森学園の生徒達はモジュールの上空を飛び回るバッフェに気を取られて市街地で街の人間のフリをしたジオールの軍人達の市街地戦闘に気付いていない様子だ。

「こりゃ、ジオール軍人達が全滅するのも時間の問題だな……」

「!!闘牙のバカはどうした?」

兪史朗が戻ってこない闘牙を思い出して狼牙丸達に訪ねる。

「くたばってはいないが、同級生らと移動している最中だ。あっ、ガ○ダムは敵に奪われたか?」

白怒火もドルシア達のこのモジュールに侵攻した理由を思い出す。

「否、だがもう時間の問題だ……」

かつて自分と闘牙が使ったエレベーターで地下格納庫まで移動した五人の咲森学園の"転入生"を見る。

「どうする?俺らの誰かが乗り込むか?」

バッフェをどうにかするのにモジュール内部に使える物はあるが、ジオールのガ○ダムが敵に奪われたら反撃出来ずに咲森学園の連中達は最悪の場合全滅する。そうなる前に撹乱なり撃墜なりするために鬼達は動こうと考えるが、

 

「麿達は待機でおじゃる。」

鶴の一声を出す骸野捨丸が髑髏の牛車と共に姿を見せる。

「捨麿!?外にいる奴らが全員死ぬまで隠れているつもりか!?」

狼牙丸が捨丸の判断に怒りの声を上げる。

両の籠手から爪を生やして捨丸に目で追えぬ速さで接近するも、

「本体が既に向かっているでおじゃる!!」

「何。」

髑髏の仮面に拳が直撃する直前に捨麿は答えて持っていた扇子で、帯雷の打撃を弾く。弾かれて捨麿から間合いを取りながら空中から身を低くして着地して狼牙丸は捨丸に問う。

「どういう事だ?」

「我々はいわば伏兵……切るべき機会に切る鬼札……伏兵が最も効果的なのは相手が油断している瞬間……」

予めガ○ダムの存在を知っている炎竜鬼は、この侵攻が始まった瞬間からいの一番に機体のある場所に向かっていたのだ。

「もし自分が何らかの形で学園生徒達の近くにいない場合は麿達が学園生らを守る必要がある。そしてその出陣の機会を決める役割は……兪史朗殿が我々に命令をするのでおじゃる。」

「俺が……」

「そして今回の初陣は本体が自分に任せて欲しいと決めていた事……我々が動くのは次……」

はっきりした声が広間に響き鬼達の耳に渡る。

白怒火は静か狼牙丸の肩を叩き……

「俺達の本体を信じよう。本体もやる気があると凄いのは知っているだろう……」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

司令部より更に地下の奥にある地下格納庫では、白衣の男達が絶望に頭を抱えていた。

「どうしてドルシア軍が!?」

「本国とは連絡が取れないのか!?」

「爆撃されてるって……」

「何で……ジオールは中立国なのに!」

現状を理解出来ず、ただ狼狽するばかり白衣達……その様子は外にいる学生達と違いはなく。此処が狙われるとは露程も思っていないという証拠だった。

そんな中、一人の男が、モジュールに起きているこの現状を解決する最善の手を意を決したように言った。

「━━ヴァルヴレイヴを、使いましょう」

途端、沈黙が辺りを包んだ。…ヴァルヴレイヴを使う。

……それが一体、どういう事なのか。

「しかし、あれはまだ」

「RM-011ならいけるでしょう。ちょうど出力テストが終わったところです」

「『火人』か……だがパイロットはどうする?」

当初の予定ではもっと時間を掛けた計画の為咲森学園にいる生徒達は全員パイロット候補であり被験者兼人質だ……ジオール政府と軍の命令でヴァルヴレイヴを開発する為に必要な科学者達を無理矢理でも集めると言う人がするべき論理に反した罪人達……

「責任が取れるのかよ」

「そんなの、上にいくらでもいるじゃないですか!」

「お前……」

別の白衣が何か言いかけ━━その胸に、銃弾が撃ち込まれた。

「っ!?」

倒れる白衣の一人。他の白衣の一人が直ぐに振り向き、やはり胸に凶弾を受ける。残りこ白衣達が慌てて逃げ出そうとするがもう遅い。

腕に、足に、腹に、胸に、頭に。薄く開いた扉から音もなく覗いた銃身が無差別に吐き出す死の塊を食らい、白衣達は次々と動かなくなる。やがて扉が完全に開いた時、室内には動く者はいなかった。

「さすがだねぇ」

中に入ってきたハーノインが軽薄に口を開く。

「また独り占め……」

転がる死体に駆け寄りながら、幼い子供のように口を尖らせるクーフィア。

イクスアインとアードライは油断なく室内に目を配り、エルエルフは他の何者にも興味がないと言うように、無造作に死体を避けて格納庫の奥へと向かう。そして、その最奥に━━それは、いた。

「……………………………………………………」

無言でそれを見上げるエルエルフ。まるで拘束された巨人のように、ケージに収まる巨大な人型のシルエット。剥き出しになった背面内部に見える謎の球体には無数のコードが繋がれており、まるで呼吸しているかの如く不気味な明滅をゆっくりと繰り返す。フレームに刻まれた、三本の足を持つ烏……ヤタガラスをなぞった意匠と『火人』の文字。ジオール独特のそれらの意味を、エルエルフは理解出来ない。

しかし、そんな事は今はどうでもいい。今回の目的は、モジュールが占領されるまでこの鹵獲した機体を出撃させない事。占領が確実になるまでこの格納庫で待機。この機体は特殊な適性がなければうごかせない、上官のカインにそう聞いている。パイロットが現れたら殺す━━そう考えていた時、突然機械の駆動音が響き、足元から煙が噴き出した。

「しまった!」

次の瞬間、機体を格納しているケージが上昇し、天井に開いた射出口から打ち出された。エルエルフの声が、直後に閉じられたハッチにぶつかって四散する。

格納庫の表の方では、最後の力を振り絞って機体の緊急射出スイッチを押した白衣の男を、クーフィアが見つけたところだった。

「生きてた……!ちょっと待ってて。苦しまずに今楽にしてあげるからね。」

それまでずっとつまらなそうにしていたクーフィアの表情に、初めて笑みが浮かんだ。

「ヒっ」

やっと、傷つけられる相手が、苦しめられる相手が、殺せる相手が、見つかった。その事を心の底から喜ぶ、狂気の笑みを浮かべる。

「まずは全身の麻酔から……麻酔ーー!!」

「ぎゃああああああああああああああああああ……」

「うわぁ……鬼畜……いっそヘッドショットで楽にしてやれよ。」

「やだよ。一撃で終わるなんてつまらないじゃん。」

ハーノインはクーフィアの麻酔の様子を見てドン引きしており、相手が簡単に死なないように、手足の先から銃弾を撃ち込んでいくクーフィアを横目にアードライとイクスアインが格納庫の奥へと走る。

そこではエルエルフが、自らの落ち度により特一級戦略目標を逃してしまった事を悔いる表情で、機体が射出されたハッチを見上げていた。ぎり、と歯を食いしばる音が、アードライ達にも聞こえる程だった。

「ったくお前ら。急いで追うぞ。」

もし射出先で機体のパイロットが居たのなら現在モジュールを侵攻しているバッフェ隊が危ない。

「よし。治療完了。」

赤黒いモザイクと化した物から目を離して弾を再装填してハーノインの後をイクスアインと共に追う。

「………………」

アードライが駆け寄り、らしくないミスをした友に声を掛ける

「……エルエルフ。」

「……わかっている。」

任務で失敗したなら任務で取り返す。

エルエルフはアードライと共に格納庫を後にする。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

生徒会の立ち入り禁止の空き教室にあるダンボールハウス内部では……数時間前に届いたダンボール箱に書かれたメモの内容通り……ドルシア軍による侵攻が始まった映像を防犯カメラから見ていた…………

しかしこのハウスの主……連坊小路アキラは対人恐怖症の引きこもりの為……何より……何より……メモの内容を改めて目を通す。

「……何で私が……」

はっきり言って私に出来る事はない……協力関係を持ち掛けられる資格はない……外に私を助けくれる人なんていない……私が助けたい人間もいない……

「人は嫌い……」

【コーーン】

嫌な思い出を思い出しているた左右非対称の飛燕が戻ってきて無言で私を軽くつぶらな瞳で見上げる。

【………………】

「…そんな目をしても助けにならないよ。私は人が嫌いなの。」

飛燕は左右に首を振り歪な翼の先をメモの一つにコンコンと叩く。

「否、鬼は嫌いなのかとか……そもそも鬼を良く知らないし……」

そう言いつつも興味はあるのか電子書籍の鬼滅の刃に目を通して……自分なりに鬼の協力者の事を知ろうと地道に頑張っている。

「…だって……相手は男の子だし……年上だし……良く知らないし……」

知らない人間が自分の力を必要としているのは、分かるけど、簡単に協力は出来ない……彼が自分を助けて欲しい時に見捨てる可能性も充分あるから……そんなしょんぼりするアキラを見た飛燕はアキラに近づき今回戻ってきた理由なのか一枚の写真を見せる。

「何?………………/////////////////」

心の先から平和のピースサインをする満面な笑みを浮かべる闘牙の写真だ……全裸の……

「///////否、違うの!?知らないからって……これが知りたかった訳じゃない///////っ…60センチ……」

思わぬ不意討ちの写真に対して両手で目を隠すも所々隙間を開けて鍛え抜かれた細マッチョの肉体とか腹の下部分の写真を凄く血走った両目で吟味する引きこもり……

「本人は一体何の目的で……」

(あれ?これを見た事を知ったら……本人凄く怒るんじゃ……)あのNGバージョンのパターンを知っている為、何か凄く悪い事をしてしまった罪悪感が生まれてしまう。実の兄の中学受験の時でさえ此処までの罪悪感は覚えなかったのに……そもそも何故この右手はこの写真を私に見せた?

「……/////もしかして……私を買収するつもり/////?」

飛燕は無言で首を縦に振る。

「……こんな写真で私を動かそうだなんて甘いわね。」

口でそう言いつつ飛燕から写真を肉眼で捉えらない速さで掠め取る。

「…でもその考えは私嫌いじゃない…これは賄賂として貰って…おく…。」

無言でしょんぼりする飛燕に対して真っ赤な顔したアキラは手を差し出して

「取り敢えず……顔見知りから始めよう……宜しくお願いします。」

飛燕は右手に可変変形して握手をする。銀河に轟く小さな協力関係がこうして小さなダンボールハウスに始まる

これが後の歴史に【リトル・ウィッチとダンボールハウスへの誓い】と呼ばれる出来事だ。闘牙の黒歴史の写真の一枚が無限城から消えた神隠しの事件の始まりでもある。

「っでこの状況で私はまずどうしたら?」

飛燕はアキラから離れて前に持ってきた連絡用通信機器を指差す。そしてそこにはドローンと言った物も……

「あっ、」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「何よあれ!?」

学園の地下から対空機銃が出現してバッフェと戦う光景を見る補習授業に参加する学生達。

「皆っ!?早く校舎に入って!?早く!?」

状況が良くわからない七海リオンだが教育者として生徒達の安全を第一に校舎に逃げるように大きく声を出して避難を呼び掛ける。

 

「悪い。俺は少し離れる。」

「ちょっと、闘牙。」

情け容赦なく飛来する実弾兵器の雨の中を必死に走るハルト達に混じった闘牙は、いの一番に

夜を迎えつつある咲森学園は、突然過ぎる出来事で誰も彼もパニック状態に陥っていた……それもそうだ。中立国であるジオールは先守防衛……戦争や紛争事は全て他所の国の出来事で、ここにいる殆どが戦争の経験などはしていないのだから……

それでも冷静さを失わなかった一部の教員達の指示に従い、生徒達が我先にと校舎内へ逃げていく。

校舎内部には突然の攻撃に何が起きたのかわからないまま死んでいる生徒達も既にいて、その近くに起き上がる連坊小路サトミ、取り巻きの二人を守るように隠れる二宮タカヒと言った無事な生徒達もいるが、この状況で冷静で対応出来る人間は誰一人としていなかった……

 

モジュールの人工の地面を割って現れた無数の対空機銃がバッフェを牽制するのを横目で見ながら、ハルト達も走っている。

「何かあったらスマートフォンで連絡しろ。以上。」

「危ないよ!?」

「ちょっとっ!!うへぇ!!闘牙の奴陸上部の奴らよりずっと速いじゃねえか!!」

「わかった!?」

心配するハルト、最後尾にいた闘牙がもう必死に走る自分達より先を走り去るのを見て驚くキューマ。唯一指南ショーコだけが闘牙の言葉に返事を返して闘牙は鬼の身体能力を使い単独行動する。

 

 

「サンダ。無事か。」

「おい。ノブ!?しっかりしろ!?おい!?おい!?」

移動する目的地の途中の校舎付近を見ていると見慣れた色のリーゼントの強面の同級生を見掛けて闘牙は直ぐにその場に走る。

そして気付く……

山田は自分の事よりも目の前に倒れている眼鏡を掛けた男の方に意識を向けているのを、

「あっ、おい…闘牙……ノブの奴がよ。目を開けないんだよ……血だって止まらないだよ……急いで病院に「サンダー!!」っ!?」

闘牙は無言で風本ノブハルの喉元に手を当てて確かめる……そして……

「……もう…手遅れだ……」

「っ!?…なんだよ……何なんだよ!!」

親友の物言わぬ躯を抱き締めて漢は目から止めとなく涙を流す。そして空を縦横無尽に飛び回るバッフェに声を上げて叫ぶ。

「何なんだよ!?チキショー!?」

訳もわからないまま自分の友は理不尽に巻き込まれて殺された。確かに喧嘩に明け暮れて育ちのいい連中達には

危ない奴らと呼ばれていたが……呼ばれた居たけどよ……

「こんな簡単に、あっさりとゴミみたいに殺される言われはねぇぞ!」

涙を流す山田雷蔵に闘牙は無言で肩を優しく叩き、

「……残念だがお前の友を弔うのは後だ……この状況で何処が安全かはわからないが今は校舎に移動しろ。」

「闘牙……お前は………何で、人が死んでるのにそんな平気な顔出来るんだよ。」

「……身体中の水分を涙に替えて流しても……死んだ人間が甦らないと知っているからだ……随分と冷たい男で悪いな……」

何だよ。目の前にいるコイツは、沢山人が死んでるのに、恐怖を露にした顔せず、淡々として……それが酷く得体の知れない恐怖を覚えてしまう。

「ふざけるな!?俺はノブの仇を討つ!?お前のような人が死んで顔色一つも変えない冷てぇ野郎はとっとと尻尾を巻いて避難しろ!?」

自分の知らない一面を目の前に見せるコイツの冷たい一面を知り、自分は違うと言い聞かせながら軽く怪我をした箇所を抑えながら山田は、ゆっくりと立ち上がり闘牙と向き直る。

「……死ぬぞ。」

「…ダチを殺されて黙っていられる俺様じゃない。」

「知っている……だから最初に言っておく……加減は充分する。」

山田の顎に闘牙はノーモーションで鋭い蹴りを放ち顎に直撃して、勢い良く倒れ込むが、倒れ込む前に闘牙が素早く胸ぐらを掴み至近距離で山田を睨みつける。

「……俺程度の攻撃も避ける事も防ぐ事出来ないお前は自分の命も守れない……」

「ぐっ、さっきのは不意討ちだしまぐれだ。次は…「さっきの蹴りが拳銃の銃弾ならお前に次なんかはない。」っ!」

「この程度なんだよ……人の命なんて……一発の銃弾であっさりと消える程度の命なんだよ……」

胸ぐらを掴まれた状態でも山田は諦めず闘牙に殴り掛かるもその全てを避けられて防がれて……

「それでも……それでも…俺は…!?」

山田は闘牙に胸ぐらを掴まれ持ち上げられながら自分なり睨みつけて答える。

「こんな所で死ねば、仇は討てずに終わるだけだぞ。」

「っ!?」

「仇が討ちたいのならまずは頭を冷やして生き残る事を考えろ!?」

「理不尽に屈しろとは言わない……だが、一時の感情で自己満足で暴れて…死ぬ事はお前の親友も俺も許さない……」

山田を地面に下ろして校舎内に無理やり入れる。

「みっともなくで良いから親友の分まで生きろ!?」

「闘牙……」

「悪いが、俺は先に行く所がある……」

山田を後にして闘牙は走る。その様子をドローンは見ていた。

市街地のとある貸ビルの一つに闘牙の貴重なコレクションはあった。そう……ガンプラ含めたプラモデルである。勿論精巧なジオラマつきで場面再現も欠かせない。

放送当時の奴から貴重なコラボ限定品といったコレクションらがあって博物館にも展示出来る程保存状態が良い物ばかりだ……純金製と言ったり人と同じ大きさの巨大プラモデルとかもこの貸ビルにひっそりと置かれている更にその地下には今は誰もやらない程の古いアーケードゲーム機達が所狭しと並べてあり最早ゲームセンターと呼ばれても過言でない。ゲーム機の修理に必要な部品工場まで働き部品の名前から材料と製造方法まで調べて無限城で部品の製造機を造る始末だ。

 

闘牙はVRMMOよりPCゲームとテレビゲーム派でアプリゲームは滅多にやらない……そんな彼の夜の娯楽がゲームセンターのゲーム機達である。

その貸ビルにバッフェの実弾兵器が直撃する。

「へっ……旧ザク、ザ○Ⅱ、シャア専用ザ○!?○ウォーリアー、ズ○ッグ!!(ボスボロットカラー)アッ○イ!!(ドラえもんカラー)ド○トローペン。○ラ・ズール!!シャア専用ゲ○ルグ!!Z○、フリー○ム、○ャイニ○グ、バ○バドス、○イング○ロ!!○ブルオー!!○ンブ!!ジ○ーガン!!Ζガ○ダム!!ビキニ○グ○ンダムうううううううっ!!?安土城おおおおおおおおお!?大阪城おおおおおおおおお完成途中の姫路城おおおおおおおお!!!!!まだ未開封の江戸城おおおおおおおおお」

 

「っ!?」

目の前で瓦礫の山と化す貸ビルを目撃する闘牙……そして瓦礫の山の前で両の膝を叩き落とし、拳はアスファルトを砕き両の目から血の涙が大地に流れ堕ちる

OTLのポーズをして……絶望の叫びを上げる。

「何故だ!?神よおぅ!!何故俺からコレクションを奪った!!一体何の権利に!?何故だぁ!!何故なんだぁ!!神を!!!?」

【推奨挿入歌 小田和正 言葉にできない】の曲が脳裏に激しくリフレインして走馬灯と共に闘牙の中の何かを全て焼き切った。そして彼の身体は眩い黄金の光に輝き始める……

市街地を離れて行くバッフェ達の後ろ姿を血の色になった両の目が捉える

「この…め…」

余りの怒りの果てに全ての歯が噛み砕けて再生し、両の拳は流れる血に耐えられるず血管と皮膚を破り両の手を赤く染めて憎き敵のいない夜空を睨み付ける。空の果てにある地球にあるドルシアを見て……怒りが、哀しみが、憎しみが、怨みが、ありとあらゆる負の感情が爆発する!!

「……この悪魔め…赦さねえぞ!!!?てめぇら……てめぇら!!」

「てめぇらの血は何色だあああああああああああああああああああ!?」

闘牙 覚醒のハイパーモード。文字通り哀しみを怒りに変えて力にする。そしてその様子をドローンは見ていた。

「超…サ○ヤ人……」

自分は一体何を目撃しているのであろうと連坊小路アキラは何とも言えない表情で見ていた。

 

一方

「どーなってんだよこれぇ!?」

キューマの叫びに答えるのはアイナだ。アイナは流木野の手を繋ぎながら上空で戦闘を繰り広げるバッフェとスプライサーを見上げて答える

「操真先輩が何か言ってましたよね。ドルシア軍とか何とかって……」

「じゃあアイツはこの状況に心辺りがあるって事か!?」

「とにかく皆校舎まで走れ!?そこなら外より安全だ!?」

「…戦争……?」

ハルトも呆然と今の状況に思い当たる確実な言葉を呟く。

「とにかく逃げるよ!」

今は細かい事を考えている暇などない。避難するため、第一校舎へ向かって全力で走る。

「流木野さん。大丈夫!?」

「櫻井さんこそ……」

放送部と家庭科部で全力疾走がそこまで得意ではない両者。互いに心配しながらも走るしかない。

「あ、」

見ると、軍による攻撃で抉れた地面の底に車が止まっており、ショーコが一人でそこへ向かって走っていく。

「あの車、中に人がいる!」

「ショーコ!戻れ!」

「大丈夫!先に行って!」

ショーコはハルトの制止に耳を貸さない。あの予感が、ハルトの胸の中で、爆発的に膨らんだ。ショーコの優しさが、強さが。

いつか、ショーコを何処向かってか遠くにつれていってしまいそうな。

「駄目だショーコ。行くなあああ!」

そこへ、ドルシア軍のバッフェが飛んできた。それを迎撃するため、ジオール軍のスプライサーが突っ込んでいく。急制動をかけてスプライサーをやり過ごすバッフェ。そして離れていくスプライサーの横っ腹を目掛けて発射されたミサイルは狙いを外し━━ショーコが扉を開けている車の直ぐ傍へ、着弾した。

「ショーコおおおおおおおおお」

爆音がハルトの絶叫をかき消し、衝撃波が辺り一面を吹き飛ばす。

その場にいる全員が、各々の身を守るために大地に伏せて身を固める。

「流木野さん!」

「っ!」

櫻井は咄嗟にサキを守るように覆い被り神様に祈る。今日の朝、闘牙にお願いされた事もあるが、それ以上に自分の事より仲の良い友達を守りたいという気持ちが彼女を無意識に行動させたのだ。

やがて、視界を覆い尽くす砂塵が晴れた時、

「流木野さん。犬塚先輩。ハルトさん。無事ですか?」

アイナの安否確認に、キューマは直ぐに答える。

「俺は大丈夫だ。流木野さんは?」

「……ありがとう。」

「…………ショーコ………」

ショーコのいた辺りは、車さえ跡形もなく、数メートルのクレーターと化していた。

何かの破片がぶつかり骨折したらしい左腕を押さえながろ、ハルトが呆然とそこに駆け寄る。

「おい、ショーコ。」

クレーターに足を踏み入れ、やけに緩慢な動作で辺りを見回しながら、ハルトは呟く。

「隠れんぼなんて、やってる場合じゃないだろ!?」

その目はうまく焦点を結んでいない。爆発の影響もあるが、何より現実に焦点を合わせたくない、そんな思いがハルトの視界をぼやけたものにする。

「そんな……ショーコさん……?」

サキと身を寄せ合いながら、アイナも泣き出しそうな声でショーコの名前を呼ぶ。

もしかしたら、爆風で飛ばされただけなのではないか━━そう考えて諦めずに周囲を見回していたキューマも、なおも獲物を探すように飛んでいる頭上のバッフェの銃口がこちらを向くのを見て、顔を青ざめさせる。

「出てこいよ。なぁ、ショーコ。ショーコ」

「……行こう、ハルト……俺達もやられちまうぞ……」

「行けませんよ! だって!」

「やめなさい!」

肩に置かれたキューマの手を振り払ったハルトに、サキの凛とした声が突き刺さる。

「受け入れるしかないでしょ!?彼女は、死んだの!」

「━━っ」

小さな頃から演技や歌で人の心を動かしてきたサキの声は、現実を拒絶しようとするハルトの耳にも容赦なく滑り込んだ。膝を落とし、拳を震わせ、欠けてしまいそうな程に自身の歯を食い縛るハルト。

何故。何故、ショーコが。どうして。勇気を出して筈だった。もう少しの筈だった。勿論ショーコの答えはわからないけど、少なくとも自分の気持ちは伝えられた筈だった。取られる前に。奪われる前に。半分こじゃなく。自分だけのものにしたいと。初めて、言える、筈だった。━━なのに、どうして?誰が、何の権利があって、ショーコを?悲しいに、怒りに、後悔に、憎しみに打ち震えるハルトを嘲笑うかのように、上空を飛び回るバッフェ。

そのアイセンサーが放つ毒々しい赤い光が、ハルト

その時近くに何かが着弾して全員軽く吹き飛ぶ!?の中の何かを焼き切った。

「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」

ハルトは、地面に落ちていた瓦礫を拾い上げて、バッフェに向かって投げ付ける。

「ショーコを!」「俺のコレクションを!」「ショーコを返せえええええっ!」「返せえええええっ!もう何処の国も売ってないんだぞ!!ネットオークションにも売ってないんだぞおおおおおおおおおっ!!最早オーパーツ扱いなんだぞおおおおおおおおおっ!!」

半狂乱になるハルトをキューマが押さえようとするが、ハルトはそれに抗い、骨折した左腕の痛みも忘れてなお瓦礫を投げ付ける。だが、当たるどころか届きもしない。バッフェはそんなハルトを挑発するかのように頭上を旋回している。

(ちくしょう……何か、アイツらに届く、何か……!)

「……弱い鬼狩りの奴らやバカな童磨もあの無惨様ですら!?俺のコレクションは壊しはしなかった……貴様らは初めて俺を本気に……最も本気に怒らせたんだああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!?」

「何だ!?」

黄金の光と共に何かがハルト達に落下してその衝撃波で

全員バラバラに離れ倒れて何とか起き上がり地面に亀裂を作った存在を見る。

「皆生きているか?」

全身を黄金の光に眩しく輝かせた操真闘牙がスーパーヒーロー着地でキューマ達と再会する。

「これって膝に良くないのに皆何故かやるのよね……実に無益に意味の無い行動だ……」

ブツブツと答えながら闘牙はニヤリと笑い……怒りの頂点に達した彼は早口になり自分を落ち着かせようしていた。

「"だがそれがいい"それこそがこの俺の生き方よ。」

桜を始め様々な季節に問わず豪華絢爛の華々が描かれた扇子を開き嬉しそうに答える。激おこプンプン丸だが…

「ええっ!先輩。何か凄く光ってませんか!?」

「そうだな……イライラで覚醒した超地球人だ。思えば昔親にお前は光る物があるって良く言われた物だ。」

「いえ物理的に……現在まさに眩しく金色に全身光っていますよ。」

「確かに俺ってどちらかと答える夜型人間だけどサタデーナイトフィーバーみたいお祭り大好きじゃあないぞ。」

アイナ達の質問を答えている内に怒りが収まり始めてきた闘牙。

「きゃあああああああああああっ!」

その時、知っている声の悲鳴が聞こえてその方向を見るとさっきの着地の衝撃波でサキは鉄火場のど真ん中に吹き飛ばされた様子だ。対空機銃とバッフェのドンパチに晒される。

「もう…もうアイツは駄目だな……諦めよう。」

間髪入れず答える。その速さ最早0.05秒。

「間髪入れずに言うな!?まだ希望はあるわよ!?」

直撃は避けている物のいつまでも無事とは限らない。

「 俺達が逃げる時間を稼ぐ為の尊い犠牲になったという事で……ちゃんとお墓も作ってあげますから…………大丈夫。牧野はこれからもずっと生きるんだよ。」

「……俺達と一緒さ。そう。鷹野は俺達の心の中で永遠のアイドルになったんだ。……お前の事は忘れないさ。ずっと一緒だ。さぁっ皆、志野の分まで生きるぞ!?」

「「生きてるよ!?勝手に殺してやるな!?」」

闘牙の躊躇なく切り捨てる発言に犬塚先輩とガチキレる流木野。当然である。

「おりゃあああっ!?シバくぞぉ!?おんどりゃあああっ!!化けて出てやるぞぉ!!てか名前くらいちゃんと呼べえええ!!」

普段の彼女なら絶対言わない暴言を吐くのはそれだけ彼女は生きたいと言う証だ。

「流木野さん生きているよ!?諦めるのは早いよ!!助けてあげましょうよ。」

「えっ?どうしても人に助けて求めて欲しいなら両膝をひざまづかせて頭と両の手の平を大地につけるべきではないか!!」

「この洒落にならないヤバい状況で何、人気アイドルの女子高校生に土下座を強要させようとしてんだおんどりゃあああああ!!」

「何だか知らないがチャンスだ。アイツが自ら切り開いた退路を無駄にするな。大丈夫!あの声のタイプは意外にしぶとい……」

「きゃああああ!!早く助けてぇぇ!!」

彼女がいる所に着弾はしなくても危ない状況には変わりない。

「……………あっそうか………きっとアイツは流れ星の精霊だったんだ。いかに美しく眩しく輝く光を放っても落ちる運命の……帰るべき所に帰っただけだ。きっと北斗七星の横の死兆星が見えていたんだよ。なので涙を流すのは、この状況を打破してからにしてやろう。」

「変な設定を作って流木野さんを助けるのを諦めないで!?もっと粘って!?」

 

「……仕方ないな。おい。流木野!?俺に助けられたらさっきの漫才のやり取りは冗談と笑い飛ばしてくれよ!!ってか忘れろ。記憶全て忘れろ。」

アイナ達の地道な説得で漸く助けに行く気になった闘牙。鉄火場の中を駆け巡りながら

「絶対に忘れてたまるかあ!!覚えていろよ!!」

「さっきは本当にすまなかったよ!?イヤすまない!?本当にすいませんでしたああああ!!」

鬼の身体能力で瞬く間にサキの元に到着して

「……にしても流石は元人気アイドル……敵の集中攻撃に狙われているな……」

闘牙はサキをおんぶして犬塚達がいる場所まで急いで移動する。

「元って言うな!?今も人気アイドルよ!?」

「流木野。今なら一度は言ってみたい台詞上位に通ずるあの台詞を言うチャンスだぞ?」

急に前触れなく真面目なシリアスボイスに代わり流木野は(・_・)きょとんとした顔をする。

「へっ?」

「【此処は危ない!?早く私を置いて先に行け】…っと……格好良い台詞だなクゥー!チクショウ!!」

「誰が言うか!?あんたが言えよ!?」

「くそっ、どうせ助けるなら……黒髪ストレートロングの年上女性を助けたかった!?何でお前年下なんだよ!!ニート!?」

「現実逃避も性癖暴露もやめてよね!?ってちょっとコラっ!?今なんつった!?ニートって言ったか?」

「働いていないアイドルをニートと呼んで何が悪い……」

「き…貴様を殺す!!!!」

「掛かってこい!?」

「私はニートじゃない!?強いて答えるなら求職者だ!?」

「いや。求職者の時点でアイドルでも何でもないよ。この子はもう……」

「イヤ普通に素を出すな。真面目に答えるな!?」

 

「今の私は無垢な赤子と変わんないのよ……先輩も少しくらい女の子を守ってやるって言う男の甲斐性を見せてみなさい。」

両腕を両足を伸ばして子どもみたいにバタバタする流木野。

「それ以上、馬鹿な発言をしているとわしゃツッコミをやめるぜよ!?」

「何で土佐弁。首締めるわよ!?」

「ふっ無様だな矢野よ。」

「流木野よ。鼻で笑つな。」

「まっ、罪の重さに潰れるよりはマシか。」

「先輩……」

「櫻井達が…」

「あんたが罪の重さに感じろ!?人気アイドルが死んだらファンに殺されるわよ!?」

「本当にろくでもないなぁ……ドルシア共とお前は……」

「何でモジュールを攻撃している侵略者と同レベルに貶されているのよ私は!?」

「反応が滅茶苦茶面白いから……」

「生きた心地がしないのよ!?好きな女の子にイタズラする男子か!?」

「えっ!何勝手に自分は人気者って誤解しているの?怖っ!?」

「根倉日陰のオタクに言われたくないわ!?顔だけは無駄に良い癖に!?」

「実は……俺女性アレルギーで近くに女性がいると、じんましんと呼吸困難が起きる……はぁ…はぁ……」

「聞いた事ないアレルギー作るな!?」

「元気あるな……ティグルかキリトかウィスパーに助けに来て貰えよ。」

「何処にキリトがいるのよ!?あの主人公っ何時もヒロインが居て欲しい時に限って別の後輩やら義妹やらとイチャイチャしていて彼女の扱いが普通に荒くて酷いわよ!?」

「兪史朗の奴が言っていたけど、その二人を恋仲になるなら200話くらい友達以上を続けておくべきだったって……吊り橋効果って怖いし、もう少し曖昧な関係を楽しんだ方が良かったんじゃないかって……」

「私達が今まさに生き残りを掛けたデスゲームの真っ只中にいるわよ!?」

「まさにこの世からGAMEOVERだな……」

「誰が上手い事言えって言った。」

「危ない流木野!?」

「ちょっ、きゃあ!」

二人の近くにミサイルが着弾しそうになって咄嗟に彼女を持ち上げて犬塚先輩達がいる所に放り投げる。

そして放り投げられた流木野は犬塚達に受け止められて三人の目の前で、闘牙がいた場所は数メートルのクレーターに変わり果てていた。

「っ!?」

「「闘牙ッーーーー!!!」」

犬塚先輩達は流木野も含めて"四"人は叫ぶ。

ハルトは気絶しているから叫ぶ事はなくとも犬塚先輩、普通に自分を助けてくれた先輩に涙を流す流木野、櫻井、闘牙は力の限り叫ぶ……あれ?

「?????」

三人とも叫ぶ闘牙の方を凄い目で凝視して沈黙が辺りを包み闘牙本人と目が合い。

「実はコンティニューで生きてたりして……」

「「どうなってんの!?」」

「じゃあこっちは何!?」

三人はクレーターでドラ○ンボールのヤムチャなポーズをしたお尻丸出しの闘牙?を見てツッコミを入れる。

「増えたんじゃね?」

特に意味も考えずに答える闘牙。

「何でもありか!?」

「流木野……お前のツッコミ……楽しかったぜ……」

「どういう感情で受け取ればいいのよ!!私今色々な事で頭パンクしそうよ!!」

「闘牙ッーーー!」

倒れた闘牙にガチ泣きする闘牙。

「闘牙はあんただろ!?もうこれ以上ぐちゃぐちゃにするな!?」

「アイルビーバック……」

ターミネーターの格好をして親指を高く上げている途中で

「わぁあ!?緑色のドロドロの変な汁になった!?」

「うわぁ!?気持ち悪!?」

「否、お前自分に辛辣だな!?」

「きっと彼は闇の中に生きる妖怪人間だったんだよ。」

「知らないネタを入れるな。ツッコミ出来るか!?」

「あれ?○梨和也がドラマの主演をやってたり映画やアニメとか色々と人気あるのに……悲しいのぅ……」

「「出ろーー!!勇者王マジ○ガーガ○ダムVF-28号!!!?」」

「凄く変なダサい名前で何言っているんだ。遂に頭おかしくなったのか!?」

 

高らかな声と共に右手の指先を大きくパッチンして音を大きく鳴らすとプールの水面をモーゼの十戒の如く割って出現……拘束された巨人が闘牙達の前に姿を現す。

「なんだ、これ……」

「ロボット……」

気絶から回復したハルトはキューマの後ろから巨人を見る。そして、誘われるように……その視線が黒と赤い装甲の人型兵器ヴァルヴレイヴに引き寄せられた。半ば無意識の内に、ハルトプールの中央で頭を垂れているヴァルヴレイヴに手を必死に伸ばして愛する人の名を力の限り叫ぶ。

「ブッド・キャ○アーみたいなのはないのか……あの蓮の花の蕾の形からMFが出る演出は好きなのに…」

「ショーコおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!「喧しい!?」ぐへらっ!?」

【ゴキッ】

(恐ろしく速い手刀……私じゃなきゃ見逃してしまうわね。)

闘牙の加減した鋭いチョップを首の後ろに直撃してぐへっ再び気絶するハルト。その一部始終をサキは間近で目撃して戦慄する。

「なっ、おいハルト。おい闘牙!?今ハルトの首にヤバい音が「それ……俺の手首の音だ……」否、お前のかよ!?」

「安心しろ。峰打ちだ……」

「チョップで峰打ちって……」

闘牙は首と両手を軽く鳴らしてステップを踏み臨戦態勢を完了する。

「じゃあ、お前らはとっとと校舎の視聴覚室に行って笑点でも見ておけ。」

「あっ、おい。お前はどうする気だ!?」

「知れた事!?化け物共に目に物見せてやるぜ。弁慶!?お別れだ。」

「否俺は弁慶じゃあねぇぞキューマだよ!?てか何その凶悪な顔芸!」

「てか闘牙!ヤバいって!大人が来るまで待とうぜ!」

石川賢キャラの顔をする闘牙は笑い。

「良くも俺の酢昆布プラモデルコレクションを……許さない、絶対に許さないぞ!?ドルシア軍!?只では殺さん!?引き摺りまわして細切れにしてシュレッダーに掛けてフードプロセッサーにミンチにして崖の上から海に投げ捨ててやる!!!」

「否、普通に怖いわ!?酢昆布のプラモデルを壊されたペナルティーが」

「そして最後は元人気アイドルによる肝心な所を噛み噛みなスピーチをお届けしてやる!?」

「ねぇ、その噛みまくるスピーチって私がやるの。何の目的で……」

「駆けよ!?鬼風!?三千世界を駆け抜けて全てを飲み込む嵐と成れ!!」

「否、先輩の自転車。大破してますよ!?」

【ヒヒーーン!!】

闘牙の質滅裂な掛け合いと共に何処からか動物の嘶く声が聞こえると同時に何もない空間から無数の障子が出現して障子が全て開く。

「へっ!」

「ヒヒーン!!」

象に匹敵する大きさの巨大な灰色の馬が出現し、キューマ達の前に姿を現す。

「えっ。」

だがサキは気付く。気付いてしまう。

巨大な馬には不自然な自転車用の買い物カゴと7速切り替えスイッチがついている事に……

そして校舎……正確には自転車置き場にある大破した自転車がある方向を見ている事に……その目は哀しみを背負った何とも言えない目でその方向を凝視していた事に……

(え?…何っ……修羅場?)

女の勘で馬と馬の主との関係を一目に気付いてしまったサキは凄く気まずい顔をする。こう…約束した友達の家に遊びに来たら彼氏と別れ話を切り出される友達に遭遇したような感覚を覚える……

馬は無言で闘牙に近づき巨大な蹄で闘牙の頭を何度も踏みつける。

「あ痛っ!?何をする!!」

地面に蹄の跡がつくも踏ん張りながら払いのけて馬の背に乗る闘牙。

「ふん。」

鬼風と呼ばれる馬は、背に乗せた闘牙と共に駆け出して

高く跳躍して巨大なロボットの頭部に乗っかり、闘牙はコックピットに無様に搭乗して鬼風はその搭乗口に頭を入れる。

「否、お前はどう頑張ってもサイズ的に入れないだろ!?」

「ヒヒーーン。」

「そんな悲しい事を言うなよ。でもお前だって止まらないやめらないのは知っているんだから。」

「何の話をしているんだ!」

「Calbeeのカッパえびせん!!

「この状況でお菓子の話をしているんじゃねぇ。」

「遊馬。指揮車は貸すから何か見つけたら報告連絡相談するように!さぁ、アイツらを頼むぞ。鬼風。」

馬の頭を優しく撫でて鬼風は嘶きロボットから離れて

鬼風が犬塚先輩達の前に着地する。馬に見つめられてから数分後……

「コイツはすげぇや!!風より速い~~」

巨大な馬に跨がる三人。そして馬の口に咥えられヨダレまみれになる気絶したハルト。

「……あの、犬塚先輩。凄くハルト先輩の扱いが可哀…「仕方ないだろ!この馬、身体が大きいが四人も乗せるように安定した訓練おおっと、ヤベっ!」……」

「仕方ないのよ。櫻井さん。時縞先輩は気絶しているし……そう!これは仕方ない事なの!?」

全員馬に乗った事がない為、振り落とされないようにしがみつくので精一杯の状態で馬の手綱を引く。ロボットから離れる中、サキはロボットの方を振り替えて見る。

「………。」

冷めた日常の中に突然起きた平穏の学園が壊される中に何処からともなく非日常の象徴のロボットが出現してそれに乗る学生……サキの目にはその一連の光景は、自分の中の酷く濁ったつまらない世界に変化を与えるには、充分過ぎる程の物だった……

サキは興奮の余り鳥肌を覚えその瞳からは普段の冷めた物は消えて興奮を隠し切れない子どものような眩しく光り輝いていた。それは何か凄い物が始まる瞬間を……キラキラした物を見る目でロボットを見る。自分の中の闇を全てかき消す激しい光を……

(私はその夜……とても…とても……とても!!眩しい星を見た……)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「コイツ。動くぞ。動きますぞ!?」

 

「行くよ。激おこプンプン丸!!」

機体のコードネーム 激おこプンプン丸に決定。




闘牙にとってコレクションを失う事は大切な人を失うと同じくらいショックが大きい事なんです。物を大事にすると同時にその物に関する思い出も大切な物だから……でも兪史朗に片付けろよとか、数を減らせとかは良く小言を言われています。
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