ギャル&パンツァー/ガールズ&パンツァー:サイドストーリー「青師団高校編」 作:ミハイル・シュパーギン
「すみませんエル隊長!私達がコースアウトしたばっかりに…」
頭を下げるソフィアとガリシアだったが、
「大丈夫よ。私とアルタで最後はしっかり決めるから」
「とは言え…冷や水を掛けるわけじゃないけど…」
トリスターナが言いにくそうにしつつ、「もうこれじゃ…」
エルにはトリスターナの言いたい事は理解していた。
緊急とは言え、自分でルールを変えておいて負けるようではエル自身の面目が立たない。
「あ、副隊長だ!」
エレナが最終直線コースに現れたⅡ号戦車を指さした。
「思ったより速いじゃない」
トリスターナと同じく、エルもバスクのⅡ号戦車は今よりもう少し遅れるだろうと思っていた。
「さすがね、ヴィリディアナ」
仲間も最後まで諦めずにバトンを託そうとしてくれている。
しかし一方でダージリン車は尚もぐんぐん距離を稼いでいる…これではどう足掻いても…
その時、エルにアイデアが閃いた。
本当はこの戦車競走において青師団では暗黙のタブーだが、発進する前にダージリンが意味深にこちらに掛けた英国の格言をエルは思い出していた。
『All fair in love and war』
自分は青師団高校戦車道チームの隊長として、チームを導く使命がある。
エルは即断した。
「ソフィア!Ⅱ号に弾丸を装填して!」
「え!?」
「履帯を切るのよ!早く!」
「は、はい!」
目を丸くしつつ、ソフィアはガリシアとトリスターナと一緒にコースの脇に山積みとなった物資から20mm弾の入った弾薬箱を引っ張り出し、それを自分が乗って来たⅡ号戦車に運び込もうとする。
すると、他の隊員達も手伝い、バケツリレーの要領で先に車内に潜っていたトリスターナに弾薬箱が渡る。
トリスターナは手際良く20mm機関砲に弾丸を装填する。
そこへバスク車がエル車に横付けする。
「いいぞ!」
バスクがゴールの合図を告げたところで異変に気付いた。「え?何やってんだ?」
しかし彼女の疑問に構っている暇は無く、トリスターナのⅡ号戦車の砲塔が周り…他の隊員達が慌てて散り散りに離れた…機関砲が俯角を取って狙いをエル車の足元に向けたかと思うと、バババッ!と横に薙ぎ払った。
これには観客側の聖グロの隊員達も驚いて紅茶を思わずこぼした程である。
土煙が晴れると、エルのBT-5の履帯は左右共に切断されていた。
「行くわよ!アルタ!」
「Si!」
エルに促されるまま、アルタはBT-5を猛ダッシュでスタートさせた。
その過程で履帯が外れて後に残され、装輪車輛モードとなったBT-5は履帯装着時よりも向上した速度を持ってダージリン車を猛追し始めた。
BT-5は履帯モードでも転輪モードでも走行可能なクリスティー式戦車の1つなのだ。
続く