ギャル&パンツァー/ガールズ&パンツァー:サイドストーリー「青師団高校編」 作:ミハイル・シュパーギン
「エル隊長!アルタ!頼んだわよ!」
「お願いです!勝って下さい!」
「追い抜かせえ!Vamos!Vamos!」
暫し呆気に取られていたバスクだったが、隊員達がエルとアルタの背中に熱狂的な声援を送っている光景を目にして表情を緩め、ヴィリディアナと目を合わせると互いに頷き合った。
一方、装輪走行モードとなったエル車は、驚異の猛追でダージリンのクルセイダーに迫っていた。
「見えました!」
「ゴールまで半分ね…」
「大丈夫です!このまま抜かせます!」
実際、アルタの気合の入れようは物凄いもので、コース上の様々な難所を危なげなく飛び越え交わし走り抜けていた。
「…来たわね」
後方を確認したダージリンは、予想していたというようにそう呟いたが、ローズヒップの方はそうでなかったようだ。
「マ、マジですの!?」
BT-5とクルセイダーの間の距離は急速に縮まりつつあった。
「そう、マジですの」
と、ダージリンは平然と答えると、「リミッター解除」
「勿論でごぜえますわ!」
スピード狂のローズヒップは口角を釣り上げると、速度制限を司る調速機を解除するリミッター解除装置に手を掛けた。
これにより、クルセイダーは本来のカタログスペック以上の速度を発揮するのだが、一方で故障率を高める諸刃の剣でもあった。
しかしこの場合は効果的で、甲高い悲鳴のようなエンジン音を響かせながらクルセイダーは追うBT-5との距離を再び開け始めた。
「くっ!」
思わず歯噛みするエル。「逃がさないで!」
「はい隊長!」
しかしアルタの頑張りにも関わらず、両者の距離は決定的に縮まらず、遂に最終直線コースに入った。
「来た来た!」
「うわあ、追いつけるかな?」
「頑張れアルタ!エル隊長!」
「急げ急げ!」
一方聖グロも青師団に触発されたのか、応援に熱が入っていた。
「よしよし、そのまま逃げ切っちゃえ!」
意地の悪い顔つきでティーカップを頭上に掲げているのはルクリリである。
「よーし、このままゴールインして道場破りを成功させちゃいま…」
ローズヒップの言葉が終わらないうちに、エンジンが咳き込み始めた。「あ!エンジンが死にかけですわ!」
直後にエンジンが最後の咳き込みと共に無音になる。
「お亡くなりですわね」
が、ダージリンは尚も冷静だった。「慣性走行でゴールインせよ」
「了解ですわ!」
ローズヒップは巧みなブレーキ操作で車輛に残る慣性の力を利用し、スライディングの要領で突き進むようにした。
しかし減速は避けられないもので、BT-5が横に並んできたが、その頃にはあと数秒でゴールインだった。
ただ、まだクルセイダーの方が僅かに前だ。
「まだ頭1つ…」
エルはアルタに「くっついて!」
何の事か分からなかったが、それでもアルタの体は反応して、BT-5をクルセイダーに幅寄せして、そのまま車体を擦り付けた。
ゴールが目前に迫る。
「スピン!」
アルタはただ言われた通りにした。
すると、くっついて競り合う2輌は、BT-5の車体を先のゴールに向ける形で回転し、そのまま横滑りするようにゴールインした。
その光景は両チームの観衆の目を見張らせ、暫し言葉が見つからず無言で2輌の組み合った戦車を凝視するばかりだった。
最初にバスクが我に返ると、
「おい!映像判定しな!」
「あ、そうだ!」
ヴィリディアナが急いで際どい場合に使う為に設置していたビデオカメラに急いで走って行った。
続いて青師団の隊員達がヴィリディアナの後を追い、聖グロの隊員達もそのビデオカメラに集まって両チームが映像判定を巡って押しくら饅頭となった。
みんなが結果を求めてわいわいがやがやと騒ぐ中、ヴィリディアナは努めて冷静に映像を確認する。
「これは…」
映像は組み合いながら横滑りするクルセイダーとBTー5で再生が始まっており、それによればクルセイダーがBT-5をゴールに押し出すような形となっていた。
一応、ヴィリディアナは他の青師団隊員や聖グロ隊員に確認を取って貰ったが、意見は満場一致だった。
最後にオレンジペコとアッサムが、互いに眉を八の字に下げながら肩をすくめ合う。
それを見てから、ヴィリディアナが判定を高らかに宣言する。
「青師団チームの勝利!」
大歓声が響き渡り、その中でハッチを開けたダージリンとエルが、互いに称賛を込めて頷き合った。
因みにローズヒップは悔しそうに口を尖らせていた模様。
続く