ギャル&パンツァー/ガールズ&パンツァー:サイドストーリー「青師団高校編」 作:ミハイル・シュパーギン
左手を額に当てているエルの後ろからバスクが熱い緑茶入りのマグカップを差し出す。
他の時ならスペイン系の高校らしくホットチョコレートを出すところだが、今はこれが落ち着くだろう。
「ああ、有難う」
エルは一口飲むとひと心地ついたようだった。
そこへヴィリディアナとトリスターナが入って来たので、バスクが
「アルタは?」
「とりあえず、今は落ち着いたみたい」
ヴィリディアナが隣室の方を見やりながら言うと、トリスターナが
「でも今日はゆっくり休ませた方がいいと思うわ」
「だろうね。全く…」
バスクがやれやれと言う風に首を横に振ると、
「なあエル。さっきのは何だったのさ」
エルは両手に抱えたマグカップから漂う湯気をじっと眺めている。
バスクは一歩進んだ。
「あれはきつく当たり過ぎだよ。それにここ数日、他の子にも厳し過ぎというか、当たりが強すぎやしないかい?」
エルがゆっくりとバスクに振り向いた。
本人は気丈にふるまっているつもりだろうが、どんな腑抜けでも気付きそうなくらいに疲れた表情をしている。
「みんなを来年の大会に送り出したいのよバスク。みんなをこんな目に遭わせた、せめてもの償いにね」
「なんの事だい?」
「予選リーグの対象校に選ばれたのは、私が不甲斐ないせいよ」
「…なんだって?」
バスクの後ろでは、ヴィリディアナとトリスターナが困惑した表情で顔を見合わせている。
「来年の全国大会に後輩達を送り出せなかったら、私は…その事を一生赦せないと思う…」
「エル、最初のブリーフィングであたしの言った事、覚えているかい?」
「え?」
「みんなで予選突破する、ってあの時言ったろ」
「あ、ああ…確か、そうだったわね」
「じゃあなんで勝手に一人で抱え込んでるのさ?」
「あの子達を来年に送り出す事が、隊長たる私の責任だからよ。なのに、うまくいかない」
「そんな事ないって。みんな頑張ってるじゃない」
トリスターナが言うと、ヴィリディアナも
「そうそう。なんでそう一人で気負ってるわけ?」
バスクが言葉を重ねる。
「いいかい。あんた一人の戦いじゃないんだ。みんなの戦いさ。みんなで予選突破を勝ち取るんだよ。けどあんたがピリピリしてたら、チームの士気も下がっちまう。あんたが元気に張り切ってたら、他のみんなも後に続くよ。でも自分で台無しにしちゃおしまいさ」
じっと耳を傾けていたエルは、尚も数秒沈黙していたが、また緑茶を一口含んで立ち上がった。
「あなた達の言った事、考えてみるわ」
「ああ。それがいい」
ヴィリディアナとトリスターナも頷いた。
続く