ギャル&パンツァー/ガールズ&パンツァー:サイドストーリー「青師団高校編」 作:ミハイル・シュパーギン
しかし、事はうまく進まないものだ。
エルがアルタに怒鳴ってしまったあの日以来、隊員達との間がぎこちなくなりだした。
いや、対立こそしていないが、気まずさが障壁となっているのだ。
「エル隊長、本当にどうしたのかしら…」
練習を終えて一息つく間が出来た時、Ⅲ号突撃砲の車長で3年生のペネロペが言った。
戻った車庫でエルは練習終了を告げ、明日のスケジュールの確認と整備を命じると早々に立ち去ってしまったのだ。
まるでその場にいる事に耐えられないというようにである。
バスクが頭を掻く。
「まずいね…あいつ、チームを潰す気かい?」
副隊長の呟きに、装填手で2年生のカサンドラがギョッとした。
「ど、どういう事ですか、副隊長?」
「そうですよ、冗談がきつすぎますって!」
操縦手で2年生のバレリアが言ったが、振り返ったバスクの真剣な表情を見て言葉を失う。
周りを見ると隊員達が幾つかグループを作って小声で何か話し合っているが、エル隊長の事だろうと察しがつく。
そこへヴィリディアナとトリスターナ、アルタとソフィアがやって来た。
「エル隊長、変わってしまいましたよね…」
開口一番ソフィアが言うと、アルタも同意を示す。
「うん。明るくて、仲間思いで、話しやすい人だったと思います」
「ああ。それがあたしらの知ってるエルさ」
バスクが言った。「でも自分のせいで予選に選ばれたと考えちまっていてね。あたしも『それは違う、みんなで来年の切符を掴もう』って、何度も言ったってのにさ…」
アルタが首を傾げる。
「でもどうしてですか。なにもそんなに自分を責めなくても…」
「今年の大会を覚えてるだろ?」
「はい」
「エルは慣れない雪原で焦っちまって、強行軍を命じた。おかげで余裕がないまま継続とかち合い、殆ど何も出来ないうちに一方的にやられちまった。エルはあたしらを今年こそ決勝まで連れて行くって言った。それが叶わなかった所へ予選リーグだ。エルが自分を責めてるのは、そう言った経緯からさ。だから予選突破に強く拘ってるんだ」
「そんな…確かに勝利は大切ですが…」
アルタは涙ぐんでいた。「私、エル隊長と出会うまでは勝ちが全てでした。でも、あのような人と、ここの仲間と一緒に戦えるだけでも勝利なんだだと、私はエル隊長から教えられました」
いつの間にアルタの話を聞いていた他の隊員達も静かにうんうん頷いている。
尊敬し、親しみやすいエル隊長の事を、みんな本気で心配しているのだ。
「でもどうしたら…」
トリスターナが頭を抱えた直後、壁掛けの電話が鳴り、近くにいたアンダルシアが応じる。
「はい…え、聖グロが?」
続く