※今回は流血表現やグロ描写が多いです。時雨、夕立のファンは気を付けて下さい。
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朝日が顔に当たり自然と目が覚めた。視界には見慣れた自室。休日の昼間のような感覚だ。そう言えば昨日は――――――
「夢じゃ……ない」
窓の外にはゲームでよく見た軍港、その奥に海が広がっていた。やはりあれは夢ではなかった。俺は本当にゲームの世界に来てしまったようだ。だが、それでいい。現実世界に比べたらここは楽園なのだから。
自然と口角が上がっていく。パソコンの画面外で妄想していた彼女たちとの日常やあんなことやこんな事を何でもできるんだ。彼女たちは
「提督、大和です。起きてますか?」
ノックと共に聞こえる大和の声。邪な妄想をしていた為に特に何も支度をしていない。
「あ、あぁ」
「入りますよ?」
「あっ!ちょっ!!」
ガチャリとドアが開いた。異性が俺の部屋に入ったことはない。実家にいた時なら母親が入ってきたぐらいだ。だから血縁関係者以外の異性に全く縁が無い故に心の準備ができてない。色々思うが、やはり小汚い男の部屋を彼女たちには見せたくはなかった。
「ここが提督の部屋……」
「悪い!汚いよな?俺、まったく掃除とかしてなくて……」
「いいえ、そんな……提督が良ければ掃除とかしておきましょうか?」
「いや、それは悪いよ。俺の部屋だから俺がしないと」
少し残念そうな顔をした大和。すまないな、別に大和に見られてまずいものは無いと思うが、異性に部屋をいじられるのは慣れていないんだ。男のプライドなんだ。
「あ、提督。制服の仕立てが終わったのでこちらを着ていただけませんか?」
大和の手に持っていたのは紙袋。その中身を取り出してみると真っ白な制服が入っていた。学生時代に平和学習として行った資料館で見た純白の軍服。これからの俺の制服はこれか……
「制服に着替えましたら、大和と一緒に食堂に行きましょう!」
「おう、分かった。ありがとうな。大和」
これからはこの服を着るのか。じゃあさっそく……
「「……」」
大和と数秒間見つめ合う。そこらの男や俺よりも背の高い体に見合わないぐらい子供のように大和は目を輝かせてた。
「大和?」
「どうされましたか?」
「い、いや……年頃の女の子が男の着替えをまじまじ見るのは……」
「大和は気にしませんよ?」
「俺が気になるよ……」
あの後、一向に立ち去らない大和を部屋から押出して着替えたのだが――――――
「……」
ズシッと重い空気、食器を動かす音すら聞こえないぐらい静かになる食堂。今まで生きてきた中で感じた事のない圧力が背後からする。本能が『振り返ってはいけない』と身体に警鐘を鳴らしていた。
後ろには食堂に来るまで他愛のない会話をしていた大和しかいないはずなのに。
「提督、これからは執務室で食事を取りましょうか」
俺の顔を覗き込みながら大和は言った。大和は笑みを浮かべているはずなのに、その細くなった目から何か恐ろしいものが漏れ出しているような気がした。あの気配はやっぱり大和の様だ。
「俺は食堂で良いよ。皆ともさ、話したいから……」
「提督がそうおっしゃるなら。でも、何かあればこの大和に何でもお申し付けくださいね?」
「あぁ、その時はそうするよ」
俺は今の大和と目を合わせることができなかった。別に童貞を拗らせたわけではない。ただ、今目の前にいる大和が怖い。俺を取り合う彼女たちを何度も想像したことがあるはずなのに、いざその修羅場を前にするとこんなにも恐ろしいものなのか。
「さぁ、提督朝食にしましょう?」
「そうだな……」
大和に手を引かれて食券機の前に連れて来られた。メニューは俺の好きなものばかり。サバの味噌煮、肉じゃが、からあげと朝食では少し豪華すぎるメニューだ。それに、海軍ならカレーがありそうな気もするがここには俺の好きなビーフシチューしかない。まるで俺の為のようなラインナップばかり。
「提督の好みはありました?」
「いや、俺の好みばかりだよ...…ん?間宮か」
「はい、そうですよ」
カウンターから顔を出す間宮。大人な女性の見た目に反する堀江由衣の幼い声が可愛らしい。予想通りというか、なんと言うか、間宮が食事担当になるのは艦種的に適任だろう。
「間宮が食事担当か?」
「週4日は私と伊良湖ちゃんで、その他は鳳翔さんを主に皆さんが当番制でしてくれてますよ」
「おぉ……」
「間宮さん、サバの味噌煮定食下さい。ご飯は……普通盛りで……」
恥ずかしそうに食券を手渡す大和と少し微笑む間宮。この二人の間に何か……あぁそうか。
「大和、それで足りるのか?」
「て、提督ッ!!」
やっぱり大喰らいの様だ。普段はフードファイター顔負けの量でも食べているのだろう。それを控えているっている事は俺を意識してるからだろう。男より身体が大きくてもやはり女の子だ。
「いつもの量食えばいいじゃないか」
「な、何言ってるんですか!提督も早く選んで食券を間宮さんに渡してください!!」
「ははは、分かった。分かった」
大和と同じサバの味噌煮定食を選んで間宮に渡す。一分もしないうちに定食が出てきて渡された。間宮に一言礼を言い、待っていた大和と合流する。周りの艦娘達は俺と目が合っては自分たちの座る席にどうかと勧めてくるが大和が振り向く様子を見せると一瞬怯えた顔になった。
「ここで食べましょう!」
たどり着いたのは広い食堂の端っこ。背後に艦娘達の視線が刺さる。俺が振り向くと皆嬉しそうな顔をするが、すぐに顔を伏せる。大和の事が怖いのだろう。
大和は気にせず、俺の向かいで米を幸せそうに頬張っている。俺が見て無い時に大和は一体どんな顔をしているんだ……
「提督、こちら間宮さんと伊良湖からのサービスです」
その言葉と共に定食の横に羊羹数切れと
「伊良湖か、ありがとう」
「いえいえ……あの、提督」
「ん?」
「間宮さんと分担して食事を作っているんですけど、サバの味噌煮は私が作ったんです。美味しいですか?」
「あぁ、美味いよ。さすが給糧……」
「し、失礼します!!」
伊良湖はそのまま急いで厨房に帰ってしまった。振り返ると大和はもう食べ終わったようでお茶を啜っていた。
「……大和、お前何したんだ?」
「何をって、
「大和の提督って...…」
「大和をずっと秘書として置いてくれてたじゃないですか、それに画面越しで『ケッコンは大和かな』って言ってくれたじゃないですか」
顔を薄紅色に染めながら語る大和。そう言えば最後のログインした時に大和を第一艦隊の旗艦(秘書艦)に配置していた。その為、レベルもそれなりに高く、イベントにも頻繁に運用していた。愛情はそれなりにあるが、第一資材の消費が激しい事が原因である。
俺はこういったゲームでは特定の推しは作れない。いや、特定のキャラが好きな時もあるのだが目移りをしてしまう癖がある。今も艦これで一番好きなキャラは誰かと聞かれても答えられる自信が無い。だからケッコンシステムは資材消費を重視して、あとはその時ハマった子とすればいいと思っていた。
だが、今こんな本音を大和に言えるわけがない。
「あはは……そ、そうだったか?」
「忘れたなんて言わせませんよ?」
「提督」
「あ、いや……その……大和、お前のレベルっていくつだっけ??」
「……97です」
「なら、まだケッコンできないぞ~」
「そうだぞ、大和よ」
俺の隣の椅子に武蔵が座る。俺よりも視線が高い。というか、肌の露出が多すぎて顔しか見られない。画面越しだと普通に見れたはずなのに、実際にこうして対面すると目のやりどころに困る格好だ。
「確かに大和もこの武蔵も97レベルだ。しかし、この鎮守府には99のケッコン可能な艦娘が複数人もいる」
「……」
「嫉妬深くては提督に嫌われるぞ?」
「大和は!!」
「……こんな嫉妬深い姉で悪いな相棒。どうだ?私を秘書艦に置いてみないか?」
武蔵に肩を抱かれ、引き寄せられる。左肩にダイレクトに伝わる武蔵の胸の感触。武蔵のあのさらしの下には……
「この武蔵、喜んで秘書をするぞ?」
耳元で官能的に呟かれる。優しい吐息に耳が反応する。
「あ……いや……その……」
「て、提督どうするんですか!?」
顔が徐々に熱くなると同時に下半身も熱くなる。これ以上は危ない。急いで目の前の定食をかき込み、少し温くなった茶を飲み干した。
「お、俺は執務室に帰る!!」
「提督!!」
「相棒!」
大和や武蔵の声を無視し、走って食堂を出た。本当は食堂にいた艦娘達に話しかけても見たかったが、少し起き上がっている息子をこれ以上出させるわけにはいかない。
「くそ……武蔵のあれはわざとか?それとも無自覚か??」
女慣れしていない俺にとって武蔵は危険な気がする。大和が秘書艦というのも修羅場を作りかねない。俺はこの鎮守府全員と仲良くしたいだけだ。もちろん厭らしい意味では無い。二次創作である色んな艦娘と肉体関係を持つ作品を見るのは好きだが、実際その立場になるのは遠慮したい。だって、現実と二次元と言うのは違うだろう?だらしない男女の関係は俺自身が嫌だった。
「ここならいいか……?」
艦娘達がいないか周りを警戒して人気のない廊下まで来た。深呼吸をして数回飛び跳ねると下半身の息子は落ち着きを取り戻した。
「これで大丈夫……」
「何が?」
「なっ!?」
背後には川内が立っていた。それも息を切らしてるのか、肩が上下している。
「提督、いきなり食堂飛び出したらダメじゃん」
「お前……朝も起きてられるんだな」
「いつもは寝てるよ?でも、提督が着任したからさ」
じりじりと近づいてくる夜戦馬鹿こと川内。「夜戦だ!」「夜戦しよう!」と叫ぶ馬鹿キャラと見ていたのだが、よく見れば美人だ。なんだか勿体ない。
「意外に真面目なんだな」
「『意外』ってなにさ!私は普段から真面目だよ!」
「ははは、いや、すまない」
「もう、提督の馬鹿!」
ポカポカと肩を軽く殴られる。美人な印象は神通、あざとい動きは那珂ちゃんと思っていたがさすがあの二人の姉だ。
「お詫びに夜戦させてよ」
「お前はそれか……」
「……ねぇ、良いでしょ?」
俺をまっすぐ見つめる川内。子供っぽいと思っていた川内の印象ががらりと変わる。そんな美人な顔で見られたら……
「わ、分かったよ!」
「本当に夜戦してくれるの?」
「あぁ……」
「約束だからね」
「分かってるって」
可愛らしい笑みを浮かべて俺の腕にしがみつきながら川内は喜んでいた。
「提督」
「ん?」
グイッと腕を引かれたと思ったら頬にキスされた。
「
「え?お、おう……?」
川内は白いマフラーを靡かせて廊下奥の角に消えていった。川内の足音が微かに聞こえている。
「って...…あいつ、俺を夜戦に連れて行くつもりかよ...…まぁいいか」
艦娘達が戦っている所を見てみたいというのもある。アニメで観ていたような戦闘の仕方をするのだろうかと気になっていた。夜戦忍者と言われる川内がどんな動きをするか楽しみだ。
「……さて、執務室にでも戻るか」
制服とセットで貰っていた腕時計の針は9時を指している。会社員でなく軍人になったが、一応司令官だ。何かしらの書類とかあるだろう。二次創作からの知識しかないが、夜遅くまで残業している提督というのをよく見かけている。仮に仕事があるならば、川内の約束の為にも早く終わらせなければならない。
「待てっ!!」
「ん?」
次にはバタンッと曲がり角から誰かが盛大に転んだ音がした。急ぎ足で近くの廊下角を曲がるとそこには響が床に寝そべっていた。しかも伸ばした両手にはしっかりと妖精を捕まえている。
「響か?」
「あぁ、すまない司令官。ちょっと妖精さんが言う事を聞かなくて……」
いつも冷静な響にしては珍しく大きな声を出していた。それに妖精が言う事を聞かない事もあるんだな。今も妖精は離して欲しそうにジタバタ暴れていいるが、そのたびに響が手に力を込めているのだろう。妖精は苦しそうな顔をしてる。
「響、もう少し力を緩めたらどうだ?」
「いや、工廠に着くまでは離せないから仕方ない。少しでも油断するとまた逃げ出すから」
「そ、そうか...…」
ゆっくり立ち上がり、制服に着いた埃も払わず立ち去ろうとしていた。このまま工廠に行く気なのだろう。
「ちょっと待て響」
俺は響を呼び止め、跪いて響の制服に着いた埃を掃った。
「司令官、これぐらい大丈夫さ」
「可愛い女の子が埃を付けたまま走るんじゃない」
「……ありがとう……」
「ははは、良いんだよ」
ふと手元の妖精に目が行く。妖精は手足をバタつかせて俺を必死に見ていた。どこか必死そうな表情で何か言いたげな様子だ。
「あっ」
「司令官、ありがとう。もう行くよ」
「妖精さん苦しそうだけど……」
「良いんだ。じゃあ」
握り潰し勢いで妖精を握りしめて走り出した響。なんだか少し機嫌が悪そうだった。
「……なんで二人ともいるんだ?」
執務室のドアを開けたら大和型の二人が仁王立ちをしていた。大きさからしても仁王と言う言葉が似合う二人だ。
「なんでって、大和は提督の秘書ですよ?」
「私はその補佐だ。早く執務が終われば自由に使える時間が増えるだろう?」
大和は秘書艦だし、武蔵の言っている事は正しい。ただこの二人の奥に見えた机が3つある。偏見だが、一流企業の社長が使うような机と、それを挟むように密着する事務机2つ。こんなスタイル&露出度の高い(主に武蔵)二人から密着されたら落ち着いてられない。
「……秘書艦、補佐チェンジで」
「どうしてですか!!」
「どうしてって、俺が落ち着かないからだ!」
「大和、そう残念がるな。相棒もゆっくり私たちに慣れていけばいい」
「そういう問題じゃ……」
武蔵は密着した事務机2つを少しだけ離した。距離は人一人が間を通れるほどだった。
「これで良いだろう?食堂で揶揄ったのはすまなかった」
「……」
やっぱりわざとだったのか。俺で遊びやがって……
「さぁ、相棒、大和、書類を片づけよう」
「提督、やりましょ?」
「はぁ……今日だけぞ?明日は別の艦娘に交代な」
「「それは駄目です(だ)」」
口を揃え答えた大和型。眼光が鋭く、俺の身体は恐怖で固まった。大和は他の艦娘達にこんな目を向けていたのか。そりゃ怖がるわけだ。
「秘書艦なんて大和で十分じゃないですか」
「相棒は何が不満だと言うんだ?」
「い、いいえ……」
情けないことに俺は反論できなかった。
無言で書類を片づける俺と大和、武蔵。最初の方に説明をされた時と、たまに書類について話す事はあるがそれ以外の会話は一切しない。カリカリと大和に渡された万年筆を滑らせる。ジジ臭い文具だと思っていたが意外にも書きやすい。
というか、やはり二時創作通りというか書類が山の様に机に鎮座している。この世界にはパソコンとか無いのだろうか?いや、書類の陰に見える黒電話がこの世界の文明レベルがなんとなく予想できる。
「演習から帰って来たっぽ―い!!」
「お、夕立か。おかえり」
勢いよく執務室に入る夕立、隣には時雨が「ノックをしないと...…」と夕立に注意している。だが、夕立はそんな事を聞くことも無く、そのまま俺の机の前に立った。
「ごめんね、提督」
「いや、良いんだ。元気な方が夕立らしいじゃないか」
「時雨は静かすぎ……」
夕立が喋るのを辞めた。視線は俺ではなく、俺の隣に居る大和に向いている。
「……提督、これ、演習の結果だよ」
時雨に書類を渡されて、目を通す。演習組に出した艦娘のデータと被弾数、補給の数、それと……
「……おぉ、夕立はMVPじゃないか! 偉いぞ」
「あ、ありがとうございます!」
「夕立?」
さっきから変だ。俺の印象的には昨晩抱き着いてきた夕立のイメージが強い。こんな畏まった子じゃないはずだ。
「そ、その……提督さん」
「なんだ?」
「夕立たちと間宮に行って欲しいっぽ……です」
俺に聞いてるはずなのに夕立の視線は俺の後方を向いていた。やっぱりか。
「そうだな、MVPを取ったご褒美だ!昼前だし丁度いい!」
「待ってください提督」
大和の声で振り返る。
「それなら大和も行きます。秘書艦ですから」
「休憩してて良いよ。そこまで気を張らなくてもいいじゃないか」
「いいえ、大和が好きでやっていますので提督はお気になさらないで下さい」
「いや……でも...…」
「はぁ、困った姉だ。大和、良いではないか。私たちは秘書艦だぞ?」
「……では、提督、お昼休憩楽しんできてください」
「提督さん、早く早く~!」
ぴょこぴょこと犬耳のような髪を揺らして急かす夕立。俺ら3人は間宮と書かれた看板のある建物の前まで来ている。山間部にある「~茶屋」という店のような和風建築物に吸い込まれるように艦娘達が入っていく。
「提督、行こ?」
「そうだな」
夕立は既に店内に入り、空いたテーブル席に座ってメニュー表を見ていた。俺と時雨も後を追うようにして夕立の向かいの席に着く。店内にいる艦娘達の視線が一気に俺に集まって少し恥ずかしい。
「じゃあ、僕は提督の隣に座ろうかな」
椅子を少しだけ俺の方に寄せて座った時雨。少し照れくさそうに俯いている。俺は駆逐艦を妹のような風に見ているが、時雨はその中でも理想的な妹だ。実際に妹がいるが、あいつは俺の事をゴミを見るような目で見ていた。暴言も曙、霞、満潮と比べて可愛げが無い。妹は俺に対して本当に罵倒していた。
「どうして時雨が提督さんの隣っぽい?」
「駄目なのかい?」
「提督さん!夕立の隣に来て欲しいっぽい!!」
「え、あ、あぁ、分かっ……」
立ち上がろうとしたが、片足に違和感がある。ふと、視線を落とすと膝に時雨の手が置いてあった。まるで行かせないと言わんばかりに俺の膝を押さえつける時雨の手。顔を上げると夕立は憤怒の形相をしていた。 怒りを抑える為、歯を食いしばっているのか夕立からギリギリと音がする。時雨って思っている以上に独占欲が強いのか?
「今行くから、機嫌直せ夕立」
その一言でパァアっと笑顔になる夕立、時雨の手を退けて夕立の隣に座ると今度は時雨が不機嫌そうになっていた。
「お、俺がおごるから好きなものを頼みなさい」
時雨に余っていたメニュー表を差し出した。小さなため息を吐きながら時雨は受け取って、メニュー表を開いた。
「提督さん、何食べるっぽい??夕立のおすすめはチョコバナナパフェっぽい!」
俺にメニュー表を見せながら熱弁する夕立。俺は正直甘味は苦手だった。それも生クリーム系やチョコ系は一口食べれば十分な程だった。
「あぁ……」
「提督、あんみつはどう?そんなに甘くないから食べやすいよ」
「……提督さんは何を食べるっぽい?」
「俺はそうだな……腹減ってるから、甘味よりうどんかな?」
メニューの端にあるうどん・そばの欄に人差し指を置いた。甘い物を空きっ腹に入れるより、何か食べて甘味を食べた方が胃に優しいだろう。
「え~、ご飯食べるっぽい??」
「俺もデザートで何か頼むから」
「じゃあ、頼むもの決まったね。間宮さん呼ぶよ」
室内に響く時雨の通る声、すぐに間宮と書かれた藍色の暖簾から間宮本人が出てきた。
「あ、提督、お昼はこちらで?」
「夕立と時雨に誘われてな。注文良いか?」
「えぇ、どうぞ」
それから10分もしないうちに俺ら3人の注文したものが届いた。卓上にある七味をきつねうどんにかけて麺を啜る。出汁も美味いし、麺もコシがある。隣の夕立も先程の不機嫌そうな表情は消え、嬉しそうにパフェを食べていた。
「……提督さん、うどん食べ終わったっぽい?」
夕立は空になったどんぶりを見ていた。
「あまりにも美味しいからすぐ無くなったよ」
「提督さん、一口食べるっぽい?」
パフェをスプーンで一口掬って俺の前に持って来る。女性に「あーん」をされる体験は初めてだ。
「あーんするっぽい!」
「お、おう……」
恥ずかしさを堪えながら口を開ける。舌に乗ったのは生クリームとチョコのかかったバナナだった。少し冷たく感じるのはパフェの中に隠れていたバニラアイスなのだろう。
「これも美味いな」
「そうでしょ!そうでしょ!!だからチョコバナナパフェは夕立のお気に入りっぽい!」
「……提督、僕のあんみつも食べない?」
「え?」
「あんみつ、嫌だった?」
「食べるよ!時雨のあんみつも気になるんだ」
時雨は良かったと笑いながら俺を見るが夕立みたいにあんみつを掬おうとしない。
「時雨?」
「沢山フルーツがあるからさ、提督が食べたい所教えて欲しいな」
「俺はなんでも良いよ」
「なんでもいいが一番困るよ...…」
「時雨の一番美味しいと思う所が食べてみたいな」
「ぼ、僕の??」
顔を赤らめてあんみつを凝視する時雨。と言いうか、よく見たらあんみつは殆ど食べた形跡が無い。俺に一口食べさせるために食べていなかったという事か?
「じゃあ、ここかな」
一口掬って木製のスプーンを前に出す。
「提督、もう少しこっちに寄って欲しいな」
「ん、分かった」
舌に乗るあんみつ。パフェに比べると淡泊な味だが、甘さ控えめなあんみつは食べやすい。
「これも美味いな」
「提督って甘いの苦手でしょ?だからこのあんみつって食べやすいと思うんだ」
「あぁ、確かに食べやす……ん?」
「今度は僕と……」
「時雨ばっかり狡いっぽい!!」
俺が何か違和感に気づこうとした瞬間、ドンと地面を揺らすほどの衝撃。手元の机が下の方に下がっていくと思ったら、不意に向かいの時雨に手を引かれそのまま引っ張られた。転んでしまうと思って目を閉じたが、特に何も痛みが無い。それに足は地面に着いているが、何かしらの違和感が。
恐る恐る目を開けると、時雨が俺に抱き着いている。夕立はと、後ろを向くとテーブルは真っ二つになり料理は全部床に散らばっている。夕立の目は赤く光り、俺に抱き着く時雨をじっと睨んでいた。これが艦娘……ソロモンの悪夢。
「やめてよ夕立、提督が怖がってるじゃないか」
「時雨……」
俺をきつく抱きしめる時雨。今そんな事を夕立の前ですれば……
「いい加減にしろっ!!」
声はその体のどこから出てるのかと問いたい程低く、いつもの可愛い語尾も無くなていた。そして、獲物を狩る獣のように時雨に飛び掛かる。その瞬間、時雨と夕立は間宮の壁を突き破り外で殴り合いをし始めた。ドラマで見るようなキャットファイトのようなものじゃなく、本物の喧嘩だった。きっと男の拳での喧嘩でも見ることが無い激しさだ。耳を塞ぎたくなるような鈍く水気を含んだ打撃音。本来なら即止めに入るのが正しいと思うが、入る気が起きない。あんな化け物の争いに入れるわけがない。
「提督さんは夕立の
「今は
「間宮に誘ったのは夕立よ!」
「提案したのは僕だ!!」
あんなに可愛い顔だったのに今では二人とも顔が青あざや鼻血を垂らしている。それに、二人が争っている足元にも所々に血が付いていた。最初まで俺の為に争う様子は可愛かったと思っていたが、ここまで来ると怖い。
「時雨なんて大嫌い!」
夕立が思い切り時雨の右腕を蹴った。すると、なにかが砕けた音がしてその場に時雨はしゃがみこんだ。時雨の右腕は力なくただくっついているようにぶらりと揺れている。おそらく骨が折れたんだ。
「僕もだよ……」
目にも止まらなぬ早さで時雨は夕立の足を左手で薙ぎ払った。夕立は綺麗な円を描くように宙を浮き、足を空に向けたと思うと頭から地面に叩きつけられた。グシャっと嫌な音がする。そんな音を唖然と聞いていた自分とは違い、時雨は夕立に跨り左手で首を絞め始めた。ミシミシと嫌な軋み音が聞こえた。
夕立達は戦闘なんて日常茶飯だが、俺は『戦争』を知らない。故にこんなにも血が流れることも、骨が折れるという音も知らなかった。これ以上見ていられない。
俺は情けない事に手で目を覆った。人の、夕立の首が折れる瞬間なんて見たくない。
ドンっと鼓膜が破れそうになるほどの轟音と共に視界が硝煙に包まれる。あの二人は艤装を持っていなかったはずだ。
「貴様ら何をしている」
この声は武蔵?視界が晴れてきた時、俺の目の前には武蔵の背があった。
「武蔵……?」
「提督よ、怪我はないか?」
「……」
武蔵の顔には赤い液体が付いていた。その液体の正体が何なのかって言うのはすぐに分かる。どうして平気で仲間に砲撃ができるんだ……?
「反応が無いようだが、あの二人によからぬことでもされたのか?……この武蔵が早く気づき奴らに砲撃しておけば……」
「……て……てい、とくさん……」
「まだ生きていたのか。上官である提督に危険な目に遭わせた貴様らなどに慈悲は無い」
絞り出すように俺の事を呼んだ夕立に、武蔵はまるで機械音声のような声色で言葉を返し全砲門を夕立たちがいる方へ向ける。これでは夕立たちが危ない。
「む、武蔵!俺は大丈夫なんだ!これ以上、夕立たちに攻撃をするな!」
震えていたと思う。足も手もガタガタ震わせながら武蔵に言った。長い沈黙の後、武蔵がゆっくり振り向く。会った頃はモデルのように思えたっはずだが、今では巨人が目の前にいるようだ。
「……相棒がそう言うならやめておこう」
武蔵がニッと白い歯を見せ笑う。そして武蔵の大きな手が俺の頬を包んだ。
「何かあればこの武蔵が守ろう。相棒の為なら例え仲間でも害ある存在なら躊躇もしない」
「……」
「さて、相棒よ。我儘な
ちらりと武蔵が横を見た。俺も横目で武蔵が見た方を見ると、大和が笑顔で手を振っている。多分、ここの艦娘は俺を攻撃しないと思う。そんな気がするはずなのだが、この大和型とのやり取りに限っては命の危機を感じる。
「……そう……だな」
「では行こうか」
武蔵に肩を抱かれ歩き出す。俺との時間を確保できて喜ぶ武蔵、大和型の二人に怯える駆逐艦たち、抵抗できない俺……
「て、いと...…く……待っ……て」
夕立の声だ。瀕死の女の子が絞り出すような声で俺を呼んでいる。そんな時に振り向いてやらないなんて酷い奴じゃないか。そんな俺だから振り向いてしまった。後悔することも知らずに。
「あ………う、うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
交通事故に遭った事も、目撃した事も無い俺にとっては衝撃的な光景だった。どんなホラー映画でもスプラッタ映画よりも酷い。
俺の方に這いずりながら来る時雨と夕立。二人とも腹に穴が開いてドロリとした血と赤黒い何かがぶら下がって...…
「……あれ?」
「提督、目が覚めたようですね」
「あれほどで意識を飛ばしては困るぞ、相棒よ」
目が覚めると学校の保健室のような場所のベッドの上だった。ベッド脇には大和型の二人が小さな事務椅子に座っている。
「あ……俺、気を失ってたんだ……」
「少しの間だけですけど……どこか痛んだりしませんか?」
「……どこも痛くはないかな」
大和が俺の心配をしてくれるが少しも嬉しくなかった。とにかく今はこの二人から離れたい。
「秘書……秘書艦を変えていいか?」
「どうしてですか?」
「何か問題でもあったか?」
どうしても、何も二人に問題がありまくりだからだよ。俺に近づく艦娘に圧はかけるし、武蔵に至っては仲間を平気で殺そうとする。俺に何か危害を加えると言う事はしないと思うが、俺の精神が持たない。なんて言ってやりたいが、そんな勇気はない。
「今日二人が秘書だっただろ?他にもさ……秘書して欲しいんだよ。皆と交流しないと作戦とか……編成とか考えられないから……」
「提督はいるだけで良いんですよ。無駄に交流を持たなくても大和たちでやるので心配ないです」
「い、いるだけじゃ嫌なんだ!ほらあの……漢のプライドだ!」
「そんな意地を張るな提督よ。戦争はプライドだけでできるような事じゃない」
愚図る子供をあやすように武蔵は俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。今日の時雨たちの事を見ていれば、武蔵が少しでもこの手が力を込めれば俺の頭なんて簡単に潰れてしまうだろう。
「そうだ……だから、色んな艦娘から戦略を教わりながらやりたいんだ」
「私たちが教わってそれを提督に伝えるのはダメなんですか?」
「それぞれの艦種から聞きたいんだ……お願いだ!この通り!」
「秘書官は……加賀か」
執務室に移動してから1時間程経った。すると、赤い印の着いた割り箸を持った加賀が執務室にやって来た。どうやら俺の命令通り血を流さず決めてくれたようだ。それに加賀だ。しっかりしてるはず。
「不満でもあるかしら?」
「いや、何もないさ。むしろ加賀で良かった」
「……さっそく始めましょう」
特に何も言わず秘書官の席に着いて書類を手に取り作業を始めていた。これなら安心だ。甲斐甲斐しく世話をされるのは良いが、大和たちは少し怖すぎた。絶妙な距離を取ってくれる加賀なら何も心配する事は無い……え?
「何か問題でも?」
真顔で俺を見る加賀だが、問題はある。
「何故机を正面に動かした」
「ここが一番いいポジションと判断しただけですが」
秘書艦用の事務机は俺の机の目の前に移動された。反論しようとしたが、加賀の淡泊な反応の中に自分は間違ていない意思が見えて面倒になった。
「……じゃあ、あと6時間ほどだがよろしく」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
カリカリと書類を片づける。嫌に大きく聴こえる時計の秒針。そして……
「……」
「……」
前から視線を感じる。その視線の主は分かっているのだが、俺が顔を上げると加賀は何も無かったかのように書類作業をしていた。サボってるのかと思うが意外にも書類を書き上げるペースは加賀の方が早い。
「何か私の書類に不備がありましたか?」
顔を上げずに問いかける加賀。これ以上手を止めていると加賀に怒られそうだ。
「い、いや……何も……」
書類に目を移す。艦娘の要望書や報告書、大本営からの書類などに目を通し、判を押したりサインを書く。
「……加賀、何か用か?」
「何もありません」
「じゃあ、なんで俺を見てるんだよ」
「見てませんよ」
「……」
確かに今俺が加賀を見ている時は視線はしない。だが、俺が書類に目を落とすと目の前の加賀から視線を感じていた。だが、これ以上加賀を問いただしても無駄なようだ。諦めて書類作業を始めたが...…
「……な、なぁ。俺、ちょっとだけ息抜きしたいんだよ。ちょっとだけでいい。鎮守府の外を散歩してきてもいいか?」
限界に達した俺は休憩したいと加賀に言った。加賀はゆっくり顔を上げるとそのまま横の壁に掛けてある時計を見た。
「駄目です。まだ開始して30分ですよ?休憩だけなら、せめてあと30分我慢してください」
「後の時間の休憩はいらない!気晴らしさせてくれ!」
「……じゃあ、20分だけよ」
加賀は書類をまとめて机の隅に置いた。
「え……いや、俺は一人で行こうと...…」
「何を言っているのかしら?」
「はい?」
「1人にしたら何が起きるか分からないでしょう?」
「何が起きるって、別に散歩に行くだけだぞ?」
「その散歩中にもしもの事があったら?例えばそうね……貴方が何者かに襲われたら?」
「そんな馬鹿な……」
誰かに恨まれているなんて無い筈だ。仮に元の世界にいたとしても、俺はもう艦これの世界にいる。この世界に知り合いが居なければ誰から恨まれる事も無い。
「心配し過ぎじゃないか?」
「一軍人なのに警戒心の無い貴方の方が変よ」
「そこまで言われるほどなのか?」
「えぇ。私の提督なのだからちゃんとして欲しいわ」
確かに俺は元は一般人だがそこまで言われる必要はあるだろうか?大事に思ってくれる気持ちは有難いがさすがにここまでだと疲れてくる。それも一人ならまだしも全員がそうだ。
「……行かないの?」
「ベランダなら良いだろう?」
本音を言えば少しでも艦娘と言う存在から少しだけ距離を置きたい。今、俺の中では可愛らしい彼女たちと恐ろしい怪物の二面性で揺れている。彼女たちの事は大好きだ。好きなはずなんだ。だけど、やはり何かおかしい。昼の武蔵の行動だって俺の事を想った故の行動と言うがあれが本当に正しいと言えるのだろうか?それに千切れかけた手足や、風穴があき内臓を引きずりながら近づいてきた夕立と時雨を見ていると気味が悪くなる。
「……5分」
「5分?」
「5分で帰って来る事。何か問題でも?」
当たり前のように言うがそんなの納得できるわけがない。せめて10分にして欲しい所だ。だが待てよ。俺はここの提督、決定権は俺にあるはずだ。なぜ加賀に許可を求めないといけないんだ?
「いや、やっぱり散歩にする」
「では、護衛として私も……」
「加賀、君はここにいるんだ」
「……何を言ってるの?」
「お前こそ上官に対し意見する気か?」
眉間に皺を寄せる加賀。そうだ、俺の立場は艦娘達の上官だ。理不尽に上司に怒られる平社員でも捨て駒の歩兵でもない。この権限である程度艦娘達との距離を作ればいい。
「貴方は自分の事を上官だと思っているようだけど、所詮、知識は一般人と変わらない。貴方は画面の外で艦隊を編成して出撃させてたかもしれないけど、戦場で動いていたのは私達よ。貴方の意見に合わせた戦略方法を自分たちで考え、貴方に勝利を収めた。実際の立場はどっちが上かしら?」
「だが俺が居なければ君たちは存在しなかっただろう?俺が放置していた数年だって鎮守府を稼働できずに暇を持て余していただけじゃないか」
ゲーム内で彼女たちが動いていたかもしれないが、俺が編成と出撃の権限を与えなければ何もできないじゃないか。出撃もせず、ただ俺を待つ日々だったはずだ。
「……そうね、貴方がいるからこそ私たちの存在意義が生まれるわ。でも、この数年間を『暇』という言葉で片づけてほしくはないわね」
「は、俺が居ない間何をしていたか言ってみろよ」
「……色々よ。大規模作戦を立てたり色々」
「俺が居ないのに無意味な事を……」
俺がいないのに作戦を考えていた所で何ができる。仮に出撃できていれば、勲章も司令レベルも上がっているだろう。なんならいない間に知らない新しい艦娘が着任と言う事もあり得るだろう。だがそれが無かった。彼女たちはただ作戦を考え、イベント期間が終わるのをただ待っていただけだ。
「そうかしら?私たちにとってその作戦はどんな海域での作戦よりも大義なものだったと思うのだけど」
「は?」
「何でもいいわ。その『暇』があったからこそ得たものがあるのだから」
「……よくわからないが、もう俺に指示をするな。だが、危険な行動はしないと約束はする」
「……俺、一人で散歩したいんだけど」
「私が黙っていれば一人のようなものでしょ?」
「そういう意味じゃないって...…」
あのあとやっぱり加賀は着いてきた。何度も着いてくるなと言ったが「私も散歩がしたいのよ」「ルートが被っているだけ」と適当な言い訳を言われてしまった。
後方を見ると俺の3歩程後ろに加賀がいる。元の世界にいるときから頑固なイメージはあったが、ここまでだと思わなかった。もう女性経験が無いとかそのレベルじゃない。普通に今は一人にして欲しい。
「俺な、君らと同じ空間で過ごせたらいいなと思った日は沢山ある。だが、たまには一人の時間だって必要とか思わないか?君も赤城とずっといたいわけじゃないだろう?」
「それとこれとは違うわ」
「何が違うんだよ...…」
「想い人と四六時中いたいと思わないの?」
「え……」
「何かしら?」
思わず振り返る。加賀との距離は先程よりも近い。
「『私らしくない』とでも言いたそうな顔ね」
「それは……」
「確かにらしくないわね。でも、それは本音よ。鈍感な貴方の為にその想いを珍しく口に出しただけ」
いつものボイスからでは考えられないような加賀の本音。ある意味告白されたと言っても過言ではない。加賀は鉄仮面の下は起伏の激しい情熱家という設定があるらしいが、間違ってはいなさそうだ。
「ここまで言われても分からないのかしら?」
「……」
「まだ分からないと言うの?馬鹿ね」
加賀は両手を俺の頬に添え、顔を……
「どう?分かったかしら?それほど私は本気なの」
柔らかかった。ただその言葉しか言えない。
「……あ、あぅ……い、いや、そ、そ、その……」
「……情けない人」
あの仏頂面が優しく微笑んだ。そんな顔を見せられて落ち着いてなんていられるか。初めてのキス。異性との、それも俺が好意を持ったキャラ……いや、女性からのキスだった。
「……」
不覚にも悪くない。なんて思ってしまった。