一等星より輝く光たれ 作:区星
俺、こと里見U時は動画編集者であり、現在焼肉中である、というのも自宅で動画を編集してるときに、いちごみるくこと苺崎社長から連絡があって、
「焼肉行くぞ、俺が出すから来い」
と、強制呼び出しがかかったからである。急ぎ気味で準備して個室制の焼肉店に行くと
「この美人が黍根シュガー、ここで飲んだくれてるのが鬼灯一羽、そこで緊張してるのがうちの新人のヒカリだ」
美人が2人、美少女が1人いた。
「あ、君が話題の動画編集者、Uちゃん?ええ感じに飲みに付き合ってくれたらウチの次の歌動画任せるかもしれへんで〜」
「いつもみっつーがお世話になってます、イラスト動画いつも見てます」
「ありがとうございます、お二人とも美人ですし彼女とか彼氏とかいらっしゃらないんですか?」
自己紹介を受けて雑談しようとしたら、酒を飲んでないのに口を滑らしたヤッベ。
「おらへんよ〜」
「いないよ、それがどうかしたんですか」
「だと思いましたよ、彼女彼氏いるならこんな合コンみたいな飲み会来るはずないですもんね」
「「お?」」
「人の飲み会を奢りだと思って好き放題言いやがってよ〜お前の分だけ割り勘にしてもいいんだぞ?」
ゲラゲラと笑っているがそうされると真面目に困る、フリーの動画編集者は金にならないのだ。
「すいませんっした!」
「わかったらいい。あっ、ヒカリ〜、肉焼けてるぞ」
「は、はい、いただきます!」
「んで社長、こいつをスカウトした理由ってなんなんですか?」
前々から気になってたことを問う、わざわざ劇団ララライに無理を通してスカウトしたと聞いた、そこまで彼がするほどの価値があったのか。
「瞳に……というか目力にロマンを感じた、俺では届かないものを夢見てしまうほどのロマンを」
「あー、確かに惹きつけられますよね、そこにだけスポットライトが当たってない感覚になる」
白い背景の上に一つだけある黒点のような存在感、それがヒカリというアイドルの現状での才能と俺は思える。
「社長さんよ、喋っとらんと食え」
「アッはい」
………………
…………
……
「じゃあ俺ちょっとお手洗い行ってくるね」
焼肉も大詰めといったところで社長は席を立った、ははーん、そういうことね。
「あ、じゃあ今社長がいないので聞いてみるんですけど、皆さんにとって社長ってどんな人ですか?」
ヒカリちゃんがこう聞いてくる、社長のことをよっぽど知りたいとみえる。俺なりの答えを出してやろう。
「俺から言えばあの男は恒星、一等星の輝きを持った男だ。その輝きを一番近くで見続けたら焼かれるに決まってる」
「たとえ誰かの手を借りたとしても輝きはその手で生み出してる」
「誰よりも努力し、誰よりも諦めない。そんな男が夢そのものだと思えるほどの才能を見つけたなら…………」
「誰よりも大切にするだろうな」
「自覚、あるんだろ?」
あの男は才能の塊というわけでは決してない。むしろ生まれ持った才能と夢の噛み合わなさを砂漠でダイヤモンドを探すような努力で乗り越えた。夜空に輝く一等星。そんな一等星が育てたいと思える人間、それがヒカリちゃんなんだろう、幸せものめ。
「…………はい」
〜〜〜〜〜
「その……お二人は社長のことどう思ってますか?」
ヒカリちゃんから若干嫉妬混じりの質問がウチらに飛んできた。
「仕事相手としてはこれ以上ないぐらいの人間だと思うよ、けど」
「良く言えば公私の区別がしっかりついてる、悪く言えばプライベートまで人を立ち入らせない」
「私に相談に乗って欲しいと頼んだのも1回だけ、しかもその相談は仕事の相談」
「みっつーがこうしてオフで飲み会しようと誘ってくれたこと自体私から見れば信じがたいことだよ」
「とてもじゃないけど恋愛対象にはならないかな、Vtuberのママとしてはいいママではあるんだけどね」
シュガーから合図されたし喋らなあかんな、
「せやけど、いちごみるくとしての振る舞いはアイドル中のアイドル、並の人間が真似できるものでもあらへん」
「素の人格と全く違う人間性を動かして破綻することもなく取り回せる、ヒカリちゃんもわかると思うけど一人称がVtuberしてる時にブレたことあった?ないやろ?」
「ヒカリちゃんならわかると思うけどウチのように素の人間性を誇張してるわけでもなく、全く別の人格を自在に自然に動かしとる、例えて言うならハンドシミュレーターで自在に動かしとる人間や、さとみんが一等星呼ぶのもわかるわ」
ウチらのようなまともな人間が真似したら人格が変わるか分裂するんちゃうかな。表向きは何も変わってへんように見せてるとしてもそれだけで怖いわ。
「いちごみるくとしてならウチもありかなって思うで、苺崎三久としてはないよりのなしやけど」
「「ただ、そういう人間に目に入れても痛くないぐらい可愛がられてるってことは覚えておいてね(とくんやで)」」
一通り3人がが喋り終わった後、当の本人が戻ってきた。
「ただいま〜」
「肉もうないで〜」
「まじか、ちょっと離れすぎたな」
噂されてたけど、知らぬが花やわ。ヒカリちゃん泣かせたら一生後悔させたるで。
〜〜〜〜〜
とまあつつがなく焼肉が終わった、お手洗いと勘定したら肉が消えてたのはアレだが。ヒカリを家まで送ろうとしたら3人から生暖かい目で見られたのは気にしないでおこう。
プライベートはさておき公でコラボしたり仕事をメインに依頼するのはこいつらなのでたまには交流を深めておきたいし、ヒカリ絡みでも今後お世話になることも増えそうなのでね。
「社長、あの2人とどんな関係なんですか、恋人とかは反応からしてなさそうですし、仕事相手?」
「まあそんなところだ、肉の方は食べれたか?」
「もちろん、今までこんな高いお店来たことありませんし……」
それはそうである、自分の知ってる一番高い店だもん。東京公演の打ち上げに使ったぐらいで特に使わないし………。
「まあ、デカいこと達成したら連れて来るさ。お前なら俺以上に夢を見れるし叶えられるだろうから」
〜〜〜〜〜
「社長。私やっぱりあなたにスカウトしてもらえて良かったと思います」
あなたと共に夢を見れるのだから。