一等星より輝く光たれ   作:区星

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15話 カラスのような少女

 事務所の帰り、公園で休んでいると黒い服を着た少女に声を掛けられた。

 

「君はあの子の本当の姿を知ってるのかな?」

 

「その前にお前は誰だよ、見たところ一般人ではなさそうだが」

 

「…………君はこの世界のことは知っていても、私のことは知らないんだね」

 

「まあ、神様だと思ってくれれば問題ないよ」

 

 そっかー、神様ね。…………神様!?

 

「神様が俺に何の用事ですかね、特にこれと言って高額なお賽銭や捧げ物をした記憶はないのですが」

 

 これは本当、大体500円放り投げて日頃の感謝を伝えるぐらいしかしてない。

 

「そうじゃないんだよなー、君ではない誰かさんのせいで物語がしっちゃかめっちゃかになってるからちょっとした意趣返し的な?」

 

 悪いやつもいたもんだ、俺ではないので目を逸らすことにする。

 

「せっかく母のいないような子を転生させようとしたのにパアだよパア」

 

「ま、いいんだけどね。とりあえず君に伝えたいこと、まあこれも誰かさんから教えてもらった又聞きなんだけどさ。神木ヒカリ、いるじゃん?君が可愛がってる」

 

「いますね」

 

 この時点で碌な言葉が飛んでこないのは想像がつく。こういう人間もとい神は人の都合なんて考えないから。

 

「あの子は元の世界では男で、アイに子供を妊娠させた上ファンを唆してアイを殺させちゃったんだよ」

 

 知ってる。というか予想通りというか……何というかあれだ。

 

「で、それがどうかしたんですか?」

 

 こういうことである。

 

「もう俺はあの子に転生者ってことバレてますし、その時の会話で当たりは付いてますよ。正直もう捨てられないぐらいの金も時間も注ぎ込んでますんで、俺がヒカリを世界一のアイドルにするまでそこで見ててくださいよ」

 

 事実として、俺は最初の彼女に嘘を吐かないアイドルとしての素養を見て、この前の初ライブは嘘も織り交ぜて愛してみせた。こんなアイドルに誰がした、俺か。

 

 少女は呆れたようにため息をはいて、言葉を紡ぐ。

 

「君さぁ、よっぽど立ち回り下手なのか信用されてるのか……転生なんて荒唐無稽なこと信じさせちゃうって何したんだい?」

 

 …………秘密です、あれはダメだったね。こう、取り乱した挙句全部吐いちゃった。

 

「まあ、秘密です」

 

「秘密ねぇ……」

 

「ま、でも君のおかげで3流のバッドエンドから2流のハッピーエンドにはなりそうだ。それはそれで感謝しなくちゃいけない」

 

 少女は少し考える様子を見せると、俺の方に振り向いて、こう問いただした。

 

「ねえ君、君は星野アイを救いたかったんだよね?じゃあ何で君は星野アイに積極的に関わろうとしなかったんだい?」

 

 彼女はアイドルで俺は何も、あそこに手を伸ばすために必要な才能は持ち得なかった。

 

 世界一のアイドルを目指すなら星野アイに憧れてはならない、彼女を超えるならば。じゃあなぜ超えたかったか……それは……。

 

「星野アイを超えるアイドルを作りたかったから、じゃダメですか?」

 

 今思えばあの嘘は愛だというアイドルとしてのあり方は……愛することに愛情なんて必ずしも必要ない。という俺の価値観とダブって見えて、否定したかった、転生前の愛されたけれど、最期の最後まで愛情を持たなかった父を思い出すから。

 

「嘘つきだね、君は。まあ信用されてないからだろうけど」

 

 少女が愚痴ってるがそれはそうだろう、こうやって話に乗ってあげてるだけでありがたいと思って欲しい。こんな疫病神みたいな雰囲気してる神様と好き好んで関わり合いになりたいやつとかいないだろ。

 

 …………ところでこの神様なんの神様なんだろうね?

 

「知りたい?」

 

「まあ、そこそこ」

 

「じゃあ取引だ、ちょっとしたお願いを聞いてほしいな。なにそんなに苦労するような話でもない」

 

「絶対碌なお願いではないじゃないですか、お断りしますよ」

 

 内容を言わない時点で地雷でしかない、こんなもん断るに限る。

 

「…………よし決めたよ、君の承諾を得ずに押し付けることにするね」

 

 …………最初っから終わってて草、こんなん詐欺だろ。まあ嘘はつかなさそうなので苦労しないことを祈るしかない。

 

「まあでもノーヒントというのもアレだ、君なら彼女のことも知ってるだろうね」

 

 彼女…………?今の時点でブレイクされてない原作なんてほとんどないはず……誰……あ。

 

 そうか、確かに彼女なら何も変化が起きてないはずだわ。そして目の前の神様が押し付ける理由もわかる、誰のせいでこうなったかと言われると間違いなく俺のせいではないが……。

 

 確かに迷惑でないと言われるとそれは間違いないが、そっかぁ…………

 

 …………

 

 ……

 

「ところでヒカリちゃんのことどう思ってるの?恋愛対象?」

 

「俺の恋愛対象だったらやべーでしょ、通報ものだわ」

 

「実際のところどうなの?」

 

「個人としてそういう感情はあんまりない、あくまで焼かれたのは才能にだ」

 

「まあ嘘はついてないからよしとしておこうかな」

 

 …………

 

 ……

 

 クソ迷惑な疫病神様にとんでもない贈り物をされることが確実になったところで話を切り上げて帰宅する、何やかんや30年強過ごして来た実家なのでこうこころが落ち着く。

 

 思えば大学自体も実家から通っていたので結局俺は一人暮らしをしたことがない。一人暮らしの経験を積むためにも、ヒカリの初ライブもあったし事務所近くにアパートでも借りて、事務所に配信機材を移すべきか…………。

 

 まあゆっくり考えていけばいいだろ、まだ幸いにも時間はある。

 

 

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