一等星より輝く光たれ   作:区星

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大変長らくお待たせしました
月末に身内のPOG(ペーパーオーナーゲーム)のドラフトがあって投稿準備どころでは無かったので
ここから終章です、終わりに近づいていきます


終章
16話 ガチ恋と愛


 意外とバ美肉アイドルVtuberにもガチ恋勢っているもんである。

 

 ガチ恋勢ってドル売りアイドル系Vtuber特有のものかと言われるとそういうわけではない、ガチ恋勢の中でもユニコーン(異性とのコラボすら許さない人)はそう言った恋愛を売りにしたVtuberには多いがそうでもないVtuberにも多少なりともいるわけである。

 

 ウチにもごくわずかだが居る。男性の方が多くてペンペン草も生えない。

 

 ところでなぜこんな話をしたかというと……ヒカリ——神木ヒカリに押し倒されているからである。彼女が俺に好意を抱いているというのはまあ間違いないのでどうやって説得しようか、鈍った頭で必死で考える。

 

 どうしてこうなったか、それは昨日の夕方に遡る…………。

 

 …………

 

 ……

 

 ヒカリの1stライブから3年が経ったある日。ヒカリと事務所で西武ドームでのライブの打ち合わせをしていると電話が鳴った。

 

「もしもし、社長ー」

 

「はいはい、シュガーちゃん?どうした?」

 

「ヒカリちゃんと一緒にオフで遊ばない?ほらしばらくコラボとかもしてないじゃない、何かしらネタ作りたいなって」

 

 ここ1年ライブイベントやテレビ出演などが多すぎてどうしょうもないぐらいには忙しかった。そのためいつもの三人や金田一のおっさんとも飲みに行けてない。

 

「空いてる日あったら連絡するわ、電話ありがとう、じゃあな」

 

 意外な人物から意外な連絡が来た。と思いつつ、ヒカリとの打ち合わせにもどる。

 

「社長、誰から連絡あったんです?」

 

「シュガーちゃんから今度オフで遊ばないかって連絡がな、最近ライブやテレビ出演とかで忙しかったしその……」

 

 事情を話してるうちにヒカリの表情が能面の様になっていって、さすがに話を止めざるを得なかった。目が笑ってないぞ、こわ……

 

「へーふーん、そうですか」

 

 まあでもその日は何もなかった、何もなかった方が怖いって?いうな。

 

〜〜〜〜〜

 

 社長にシュガーさんから電話があった日の夜、私はシュガーさんに連絡を取っていた。

 

「社長を連れ出して何するつもりだったんですか?シュガーさん、前は恋愛対象じゃないって言ってたのに」

 

 まさかそろそろ結婚もその願望があるなら視野に入れたい年齢だから社長のことを………?

 

「あれ?社長から聞いてなかったんだ、今度3人でオフで遊ぼうって話だったんだけど」

 

 そんな私の不安は帰ってきたシュガーさんの言葉で一瞬で掻き消えた。

 

「そりゃ私だってそろそろこんなあやふやなVtuberよりいい人見つけて共働きでもいいから結婚したいって思うけどさ。社長ちゃんはないよ、わざわざ嫉妬深い虎を飼ってる人に手を出す覚悟なんて持てないよ」

 

 と、虎って……

 

「ヒカリちゃん、社長ちゃんのこと好きなんでしょ?前からそんな雰囲気してたし知ってるよ、社長に告白とかしないの?」

 

 告白、考えたこともなかった。私はまだ結婚とかそういうのはもっと先だと………

 

「社長ちゃん、お金持ってるし別に性格に破綻するほどの難があるわけでもない。長年の、それこそヒカリちゃんより付き合い長いから思うんだけど、正直結婚しようとしたらすぐにできちゃうよ」

 

 …………それは、嫌だ。社長の全部が欲しい、私だけを育てて欲しい、私の才能を全部使って世界一のアイドルに育てて欲しい。あの人のお眼鏡にかなって、アイを超えると思われたのは私なのだから。

 

「あはは、図星みたいだね。すごい表情(カオ)してるよ」

 

「…………どうすればいいんですか?社長に振り向いてもらうには、私を見てもらうには」

 

「んー、今でも相当大切にしてもらってると思うけど、もう一歩か二歩距離を一気に詰めてしまうとか…………それかもう押し倒して思いを伝えて覚悟してもらうか」

 

 押し倒す…………

 

〜〜〜〜〜

 

 その翌日、仕事終わり。休憩用のスペースで座りながらスマホをいじっていると

 

「社長、突然だけど私のことどう思ってる?」

 

 とヒカリが聞いてきた。

 

「夢そのものみたいな存在だぞ。今なら言えるわ、お前は世界一のアイドルになるって」

 

「そうじゃない、そうじゃなくて恋愛感情とかそういうのは…………」

 

「あると言えば嘘になるな、けどそれでも愛することは出来る。俺にとってお前は世界一大切な人だから」

 

 俺がそういうとヒカリはぐっと身体を近づけて、抱きつくような姿勢になって。

 

「じゃあ私をここで…………その、してくれる?」

 

「え……」

 

 俺が惚けている間に肩を床に押し付けられ馬乗りにされていた。

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 そして冒頭に戻る、というわけである。どうすんの、これ。

 

 …………でも、ヒカリは大きくなったよな。俺と出会った頃は150cm無かったぐらいなのに、いつの間にか公称166cm、モデルみたいな身長だ。昔はかわいい系だった顔も、怜悧さを含むような瞳を持ち美しくなっている。髪もショートからロングに。

 

 そっか、ヒカリはもう守られる側じゃなくなって。そばにいて支え合う関係になりたくなったのか。

 

「社長、愛してます。誰にも渡したくない、ずっと私だけを見て欲しい」

 

 ああ、多分彼女は俺のことを、きっとどうしようもないほどに愛してくれているんだろう、それでも。

 

「ここでお前に手を出すのだけは無しだ。その嘘だけは、おまえにつかせたくない。世界一のアイドルになるまで、世界ツアーが出来るまで待ってくれ」

 

「私はファンに、世間に嘘をついてでも社長が欲しい、社長を手に入れるためだったら」

 

「ヒカリは天性の嘘つきじゃない、きっとどこかで俺達の夢とともにその嘘は消えてしまう。夢のために今だけは待ってくれ、俺達が掲げた夢のために」

 

 きっとヒカリはアイのようにはなれない、けれど。アイのようにはならなくてもいい。無謀な橋は渡らせない、誰よりも大切な人だから。

 

 …………そっか、この気持ちがきっと愛情と呼ばれるものなのだろう。この気持ちから出るべき行動こそが愛することで、行動だけを模倣すれば例え愛情が無くても愛することは出来るのだろう。俺のかつての父のように。

 

「約束ですよ、社長。この瞬間から社長はフリーじゃなくなりましたからね、浮気したら許しませんよ」

 

「わかった、愛してるぞ、ヒカリ」

 

 人間の愛情は永遠じゃない。けれど、一生をかけて彼女を愛し続けることは、父のように出来るはずだ。

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