一等星より輝く光たれ 作:区星
無事ヒカリをちゃんと説得したところで、俺は俺できちんと向き合わなければいけないものがある。
Vtuberを続けるか否かだ。飛ぶ鳥を落とす勢いで伸びるヒカリのチャンネルとは対照的にヒカリのマネジメントに労力の7割を注ぎ込んでいるせいで特に生配信の時間が取れていない、そのせいもあってチャンネル登録者の伸びは完全に止まっている。
私自身ファンと真剣に向き合う余裕すらない。正直目先の収入だけ考えるとやめてもあんまりいいことはないが、それはそれとして今以上の労力をかけられる見込みは全くない。つまりはやめたほうが本当は私にとっても、ヒカリちゃんにとってもいいのだろう。
でも、それでも私は引退を受け入れられない、わがままだとは思うけれど、それでもこの夢を背負うと決めた日からたとえ無謀だと知っていてもやめられない。止まれない、そう思って活動してきたから。
という感じで俺自身、踏ん切りが付かずに居る。
………………
…………
……
いま取れる選択肢は2つ、いや3つか。
1つ目は現状のまま続けるというもの、ヒカリへ全力を注いであげられない代わりに収入はある程度安定する、ぶっちゃけ二人の夢のことを考えるなら100%無しだ、私の夢を死に体のまま続けるためにVtuberを続けるのならないほうがマシである。
2つ目は思い切って引退してヒカリを支えるというもの、一見良さそうに見えるし個人的にも出来るならそれがいいんだが私としては納得いかないのでその……無しよりの無しである。ほら、納得感って大事じゃん。
3つ目、戻ってくることを前提とした無期限休養。私なりの妥協点である、もちろんヒカリちゃんを支えることができるし、戻って来れる様なこと。まあヒカリちゃんの活動に区切りがついたりとか〜があったらまた戻ってくることもできる。
3つ目かな。みるくふれんずには私の言葉で伝えたいから配信を取らなくちゃ。
でもその前に、伝えなきゃいけない人が居る。
………………
…………
……
「社長、大切なお話って……」
「まあなんだ、立ち話もしんどいだろうし座ってくれ」
「わかりました」
ヒカリをちゃんと椅子に座らせたところで、話の続きをする。
「本題から話すと、Vtuberをしばらく、無期限で休養しようと思う」
「……え?ほ、本気なの?!社長の夢は世界一のアイドルになることで……それを一旦諦めるってことだよね」
慌てるヒカリを見ながら私は言葉を紡ぐ。
「このままの活動をしていても、世界一のアイドルにはなれない。というかむしろ仕事量がおおくてVtuber活動に影響が出てる。そんな状態ではきちんとファンと私の夢に向き合うことはできないと思った」
だからまあ、仕方ないのだろう。今は夢を追いかけないことが一番夢に近い道なのかもしれない。
「勘違いするなよ、お前が押し倒してきたこととは全く無関係だ、早急に向き合わなきゃいけない問題だったからな」
「…………!」
「まあなんだその、お前が世界一のアイドルになるまではちょっとVtuberの方はお休みだ」
「ずるいです、そう言われたら反対なんて出来ませんよ」
まあ伝えるべき人には伝えたかな、じゃあみるくふれんずに伝えないと
………………
…………
……
【ネガティブな方です】大切なお知らせ【いちごみるく】
・!?
・配信減ってたしもしかしてその………
・なるべくなら続けて欲しい
「ざわついてるところ悪いですけど、安心してくださいね。ちゃんとネガティブなお知らせですから」
・できるか!
・ええ……
・やっぱりか
「お察しされてる人も多いと思うけど、最近は事務所の仕事の方が死ぬほど多くなってしまってVtuber活動を動画投稿ぐらいしか出来てないし、ヒカリちゃんの西武ドームライブも控えててこっから仕事量が増えこそすれど、減ることはあんまりないかなというのはあるかな」
・あー
・確かにツイッターでも忙しそうにしてた
・じゃあその……
「まあそういう理由があって、Vtuberとして活動を続けていくのも結構な期間難しくなるのは間違いないかなっていうのもあってね」
「この度、私、いちごみるくは今月の31日をもって無期限の活動停止をすることを決定しました」
・え!
・マジか
・引退じゃないんかい!
・まあ引退じゃないだけマシか
「Vtuberとして夢を追える目処が付くまでは戻ってこないかな、でも戻ってくる時は私は必ずここで配信するよ」
「メンバーシップとかも特典はなくなるけど払いたい人も、まあいないわけじゃないだろうしで残しとくね。もちろん負担になるなら解約して欲しい」
・あくまで期限のない活動停止なのか
・やさしい
「YouTubeのアーカイブとかはもちろん消さないよ、ツイッターアカウントも日常ツイートは無くなるけどまれに動くかも」
「質問とか受け付けるよ、何かある?」
ーヒカリちゃんはどうするの?
「むしろヒカリちゃんのサポートとかに全力尽くせるようにするための判断だからね、移籍とかそういうのは特にないよ?」
ー活動停止後にしたいこととかは?
「セーブしてた仕事をもっと増やす頃になるかも……」
ー社畜乙、過労死しないように頑張れ
「私が過労死したらヒカリちゃんがフリーで仕事取ってこないといけなくなるから気をつけるよ、というかこれ心配じゃないよね?」
………………
…………
……
この8年間は私にとって、何よりも大切な宝物だ。
この活動を始めてなければ、私は私であることもなく。しがないイラストレーターとして過ごしていただろう。
しばらくの間はお休みをいただいてゆっくりとやりたいことの夢を膨らませて。いつか戻ってきた日には、また夢を目指して走れたら、いいね。