一等星より輝く光たれ   作:区星

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番外編
番外編 天童寺さりなと星野アイの話


 病室からこんばんは、さりぴゃんだよ。

 

 …………なーんて言ったところで誰が答えてくれるわけでもなし、画面の向こうからはVtuberが雑談配信をしているがそれだってコメントを打たないと返事は返ってこない。

 

 私が健康ならアイちゃんやいちごみるくさんのようにアイドルになれたのかな。そしたらお母さんにも愛してもらえたのかな。そんなとりとめのないことが頭を流れる。

 

 いちごみるくさんは新進気鋭のバ美肉Vtuber、ついこの間、全国ツアーの発表をしたばかりである。前世はちょっと有名なイラストレーターだったらしく、週に1〜2回ぐらいでイラスト解説動画をしたり、スケブをこなす配信をしながら歌枠や3Dでのダンスパフォーマンスに挑戦したりとどこからそんなバイタリティが出てくるのか、参考にしたくなるVtuberである。

 

 そんないちごみるくさんの夢はアイちゃんの職業であるアイドル、それも世界一のアイドルらしい。無謀だと思う、パフォーマンスは明らかに足りてないし歌だってそんなにだ。でもそこを掴むために努力してるのは滅茶苦茶伝わってくる。

 

 いちごみるくさんは完璧で究極のアイドルじゃない、むしろ不完全で、究極なんて明らかに遠い。けれどそんな(彼女)が努力を積み重ねて成長していくすがたにみるくふれんずは何者かになろうとするさなぎを見守る気持ちになるのだろう。

 

 それはアイちゃんの輝きとは全く逆の輝きで……どちらも尊いものだと思うけれど、何者にもなれない私にとって親近感を抱くのはいつも決まって彼だった。

 

「せんせ!みるくちゃんが全国ツアーするらしいよ、アイちゃんのライブは体調が整わなくて行けなかったけどみるくちゃんのライブは福岡だしがんばればいけるよね!」

 

 病室にきたせんせにみるくさんの話題を振る。

 

「そうだな、ここからなら大体バスで4時間弱、自家用車で3時間弱ぐらいだし……体調さえ整えば行けるだろうな」

 

 やったぁ!

 

〜〜〜〜〜

 

「佐藤社長」

 

 デスクでスマホを眺める佐藤社長に声をかける、今度のライブでの相談があるからだ。

 

「…………」

 

「さ!と!う!社長!」

 

「すまんすまん、思わずライブに見惚れててな、というか俺の名前は斉藤だ。ちょうど今生配信中のアイドルのライブがあってな、それを見てたらついな」

 

 そこまで言う理由が気になった私は佐藤社長のスマホを奪い取り、覗き込む。

 

 その画面には嘘付きの私から見ると自分に嘘を吐いてる(ファンに愛情を持ってないのに愛してる)ようにしか見えないのに愛が届けられる、摩訶不思議な光景が広がっていた。愛情がないのに人は人を愛することが出来るという、私の嘘つきとしての根底を覆すような表現が画面の向こうで躍っていた。

 

「一級品のパフォーマンスにダンスも歌もおおよそのところで使えるレベル、こんなダイヤの原石どこから掘り出してきたのやら。これが1stライブなんて信じられないな……」

 

「そっか、この子の名前は?」

 

「カタカナ3文字でヒカリ。1年前にデビューしたバーチャリアルアイドルだとさ」

 

 ヒカリちゃんね……でもどうやってこんな愛し方を手に入れたんだろう。やっぱり恋なのかな……

 

〜〜〜〜〜

 

 画面の向こうの彼女達の前だけでは私は演じなくていい、というのは私、天童寺さりなにとって少しだけ救いになっている。

 

 健気に頑張る理想の患者ではなく、一視聴者として振る舞える。流れるコメントの中では私は少しだけの間、自由である。

 

「ライブ、すごかったな。アレが新世代のバーチャルアイドルか………」

 

 いつのまにか部屋に入っていたせんせの声に顔をあげる。

 

「せんせ、居たなら言ってよ」

 

「ごめんな、ちょっと夢中みたいで声を掛けづらかったんだ」

 

「せんせ、そういうところすきだよ」

 

 せんせは画面の向こうの彼女を除いた現実で唯一構ってくれる人、私が昔、せんせと結婚したいと言っても16になったらなと無下にしなかったし。

 

 やっぱりせんせはいい人だと思う、看護婦さんの漏れ聞く話だと女癖は悪いけど。

 

〜〜〜〜〜

 

 衝撃を受けたあの時からしばらくの年月が経ち、ヒカリちゃんはとんでもないところまで羽ばたこうとしていた、とうとう西武ドームでのライブが決まったらしい。

 

 一方でB小町は右肩上がりだけれども、ヒカリちゃんとはだいぶ差がついてしまった。一体何がいけなかったのか、やはり、恋なのかと思ったが現状お付き合いを考えたい人の候補ですら周りにいない。

 

 B小町の仲間とはそこそこ上手くやれている、なのにどうしてだろう。こんなにも不安で、焦るような気持ちに包まれっぱなしなのは。

 

「アイちゃん、しっかりしてよ。アイちゃんはセンター、一番目立つ人がそんな切迫した表情してたらお客さんにも伝わっちゃう」

 

 あまりにも追い詰められていたのか、無意識のうちに取り繕ろえていたはずののアイドルとしての仮面にボロが出ていた。仮面を被り直し、表情をミリ単位で調整し、アイドルとしての理想を演じる。

 

 完璧なはずなのにどうしてだろう。これでは彼女を超えられないと心の中の私が叫ぶのは…………

 

〜〜〜〜〜

 

 こんばんは、さりぴゃんだよ。といっても今のさりぴゃんは天童寺さりなじゃなくて神木ルナらしい。

 

 ママは神木ヒカリって言う元アイドルで、今はマルチタレントとしても活躍してるよ。ずいぶん昔から活動してたらしいけど

 

 パパは元々いちごみるくってVtuberをしてて、最近復帰したらしい。ってことは私、推しの子ってこと!?

 

 前世での推しであるアイちゃんもテレビでそこそこ見かけるしなんなら共演した際に連れてってもらって手を握って貰えちゃったりした。

 

 幸せ……

 

 前世でお世話になったせんせの話をするとせんせは今でも宮崎で元気にしてるらしい。電話をかけたらちょっとだけお話しが出来た。

 

〜〜〜〜〜

 

 結局B小町はそこそこの知名度のあるアイドルグループとしてつつがなく寿命を迎えた。

 

 私は元アイドルのタレントとしてTVにそこそこ出演する機会が多く、あの時勝てなかったヒカリちゃんとも共演することもある。

 

 結局あの時感じた差は何だったのか、本人曰く、

 

「ファンを愛するクオリティを上げるために自分を騙してただけですよ、何を思い込んでたか?内緒です」

 

 とのことらしい。やはり恋なのか、そうなのか。

 

 




 アイ視点、マジで上手く書けてる気がしない
 さりぴゃん目線はまあマシかな
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