一等星より輝く光たれ 作:区星
お正月はのんびり過ごしたい、きっと誰もがそう思うことだろう
芸能事務所社長の俺だって例外ではないのだが……。
ここ数年は紅白歌合戦にも出させていただいた影響もあって普通に忙しかった。
いや、久々じゃんこんなしばらくのんびり出来るの、休養期間万々歳だわ。
テレビで流れる紅白歌合戦を見ながらのんびりみかんの皮を剥き、こたつに入ってあったまる。ここがヒカリの家であることを考慮しなければごくごく10年前ぐらいに過ごしてた日常で……ここ10年はまあ、忙しすぎてアレだったが。
「社長ー、じゃなかったみつくんおそばできたよー!」
「ありがとな、ヒカリ。愛してるぞ」
愛と言うのは言葉や態度にしなきゃ伝わらない、相手に察してもらうようではダメなのだ。自分から伝えていかなければならない。
「………私も」
2人で年越し蕎麦を啜りながらテレビを眺める、1年前にヒカリが同じ舞台で共演していた人達をテレビを通して眺めると言うのは、とても不思議な気分で。
「みつくん、私達、あそこの舞台にずっと立ってたんだ……なんだかやっと実感湧いてきた」
「そうだな。……きっとお前以上に夢を燃やしてくれる人には出会えないんだろう、それはきっと幸せなことだと思う」
ずずずと蕎麦を啜りながら、今までのことを思い返す。ヒカリと一緒に歩んできた道のりを。
……にしても美味いなぁ、この蕎麦。
「うまいな、これ」
「へっへっへ、そうでしょ?いいところの蕎麦使ってるからね」
機嫌が良さそうな声が返ってくる。
…………
……
「「ごちそうさまでした」」
蕎麦を食べ終え、2人分の器を台所に持っていく。
「ところでさ、みつくんは今、幸せ?私はもちろん幸せだけど」
食器を運び終わって戻ってくると、なんだかとっても意味深な質問が飛んできた。
「今”も“幸せだぞ」
割と夢を2人で追いかけてた時も、スケジュール調整に追われつつも不幸ではなかった。30代半ばで夢を追いかけられるのは希少な経験なのもあるのだろう、まあそれを抜きにしても心地よい経験だったが。
「そっか、ありがと」
ヒカリを抱き寄せて、首筋にキスをする。
「社長、やめ「やめない、ヒカリが俺のこと愛してるのと同じぐらいに俺はお前のこと愛してるし、こうやって愛を伝えることでいつまでも愛せるならそうする」
「ずるい」
ずるくていい、こうやって愛することで1秒でも長く一緒に居られる時間が長くなるならかまわない。
………………
…………
……
こ、腰が痛い。流石に運動不足の身体に急な運動はこたえる。
まあそんなことも言ってられないので、注文していたおせちと御神酒と……睨みダイは関西の文化なんだよな、前世の記憶でついつい鯛を買いそうになる。それからお雑煮、親戚が集まるわけでもないのでこんなもんです。はい。
適度に食べて……あ、かまぼこうまい、栗きんとんもうまい。
初詣の時間である、まずは地元の神社で去年1年の感謝、こういった神に対する感謝の気持ちを忘れると碌なことにならないので真剣に。
「社長、もう一ヶ所行くんですか?」
「まあ、ここで願い事をするのもいいんだがな……俺らは日常はここで過ごすけど仕事場はここじゃないだろ?だから仕事の分の感謝とお願い事は別の場所でもしないとな」
行く先は徳川家の菩提寺としても知られる有名な寺、まあ人混みがえらいこっちゃである。ヒカリにはマスクとサングラスを、俺は帽子を被ってマスクを付けている。
「…………人多いですね、去年は2日、一昨年は収録の予定もあって3日でしたっけ。それに比べるとだいぶ…………」
「元旦だしな。手は離すなよ」
ヒカリの細くて柔らかい手を握るとキュッと握り返してくる、あったかくてすべすべしてる。
…………まあなんだその………はい。
「お参り、行くか」
「そうですね……」
2人の耳が赤くなってきたところで一旦切り上げる。
お賽銭を……うーん、500円玉でいいか。しっかり仕事の感謝、主に休んでる時にアクシデントが何も起こらなかったことの方に………感謝。
「社長、お願い事は何にしました?」
「(ヒカリの)健康かな、まあアクシデントがないに越したことはないし」
「そっか。私は━━内緒かな」
内緒か、それもいいだろう。内心なんて全部言うものではないし。
「おみくじ、おみくじ……あ、そこか」
ええっと、
『中吉
恋愛 すぐそばに大切な人がいる。』
ほーん。
「社長、大吉でした」
「俺は中吉だった、どんなこと書いてあった?」
「ちょ、ちょっと恥ずかしいのでその……帰ったら見せますね」
まあ、いいこと書いてあったんだろうな………。
その後は家に帰ってのんびりした。