ダンガンロンパ十周年記念小説【ifストーリー】第二章 乙女心☆ポリシーとプリテンダー★ボーイ   作:千葉 仁史

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捜査パート②

33、

 

 それから僕らは無言で視聴覚室を出た。会話の『か』の字も思いつかないとは、まさにこのことだ。重苦しい空気を払拭したくて僕が口を開くより先に、青褪めたままの不二咲くんが「僕も大神さんと一緒に朝日奈さんを看てるね」と溢し、僕が何か言う前に早く立ち去ってしまった。

彼女の後ろ姿へ伸ばしていた、中途半端に上げた右手を下ろし、僕は考える。前回の学級裁判は、ほぼほぼ霧切くん一人で捜査し、解決まで辿り着いていた。つまり、僕らがしっかり調査をするのは実質これがはじめてなのだ。捜査の仕方も方法も真実への辿り着き方も分からない暗中模索のなか、精神的負荷までが僕らの肩に重く圧し掛かっている。

 

(今なら、霧切くんがあの動機ディスクにすら縋ってしまう気持ちが分かりそうな気がする)

 

 気が付けば、僕は自身の喉元に右手を添えていた。酷く喉が渇いている。【食堂】に行って、一杯の水でも飲もうと思った。

 

 

34、食堂

 

 食堂に入ると、テーブルにはセレスくんがのんびりと座っており、キッチンでは山田くんが慌ただしく動いていた。どうやら彼女は山田くんがロイヤルミルクティー(と言うのだろうか。僕は紅茶よりも日本茶が好きだ)を用意するのを待っているようだ。昨日・一昨日と山田くんはセレスくんに奉仕していたから、僕の中でも見覚えのある光景になっていた。

 

「あら、ナイト(騎士)の石丸くんではありませんか? 貴方がどうして【食堂】に?」

「ナイト(夜)? 今は午前なのだが……いや、僕は喉が乾いたから水を貰いに来ただけだ。セレスくんこそ、捜査時間中なのに、そんなのんびりしていいのかね?」

「いつ如何なる時でも休息は必要ですわ。八時の朝食時間より前に事件が起きてしまったせいで、朝食を食べ損ねてしまいましたから、その代わりの紅茶タイムです。……まぁ、最も朝食なんて抜いたぐらいで丁度いいかもしれませんが」

「君の言う通り、朝食前に事件が起きてしまったので、僕らは誰も何も食べていないが、朝食は食べた方が健康にいいぞ。流石に今日の僕も全く食欲が湧かないが」

 

 セレスくんのポツリと呟いた言葉に訂正を入れるが、今の僕では全く説得力がないだろう。ところで、夜(night)がどうかしたのだろうか? 今は未だ午前タイムだというのに。

 

「それに、お言葉ですが、何も【成果】が無くてこんなのんびりしている訳ではありませんわ」

「成果?」

 

 訝し気に尋ねる僕の目の前で、セレスくんはテーブルの上に【ビニール袋に入った証拠物件】を置いた。それは【電子生徒手帳】だった。

 

「電子生徒手帳? これは君のもの……ではなそうだ」

「ええ。仰る通り、これは私の電子生徒手帳ではありません。最初の学級裁判でオシオキされた【葉隠康弘くんの電子生徒手帳】です。モノクマに命じて改造させた【娯楽室こと空き教室】で見付けましたわ」

「何故、【葉隠康弘くんの電子生徒手帳】が【娯楽室に改造した空き教室】にあったのだろうか」

「それは分かりかねますわ。【亡くなった他の方の電子生徒手帳】もあるかもしれないと思い、山田くんと手分けして探しましたが、今現在【見付かりません】でした……と言っても、【江ノ島盾子の電子生徒手帳】は彼女の圧死により跡形もなく【無くなりました】し、残った【苗木誠の電子生徒手帳】は時間も人も足りない状態ですので【見付からなくても不思議ではない】状態ではありますが。ところで、石丸くんは何か【証拠】や【ヒント】になりそうなものはありましたか?」

「うっ……」

 

 セレスくんに詰められるように言われてしまい、僕は言葉を返せなかった。僕が持っているものと言えば、大神くんから貰い、【ヒント】になりそうなことをまとめた【さくら色の小さなノート】と、不二咲くんと一緒に霧切くんの部屋で見付けた【霧切くんの黒い手帳】と【苗木くんの動機ディスク】ぐらいだ。とてもじゃないが、【証拠】と呼べるような代物ではない。僕の挙動にセレスくんは小さな溜息を吐くと「そういえば、他の方はどんな捜査をしているのでしょうね」と呟いた。

 

「私たちはプールと更衣室の捜査が終わった後、二手に分かれました。大和田くんが喚く桑田くんを連れて行くのを見ましたわ。私は山田くんと一緒に空き教室を捜査して、この【葉隠くんの電子生徒手帳】を見付けたまでです」

 

(兄弟は桑田くんと一緒なのか。何故、僕と一緒に行動してくれないのだろうか)

 

 セレスくんの回答にそんな不満が過ったが、敢えてそれは無視して、僕は舞園くんと更衣室を捜査した後、気持ち悪くなった舞園くんを部屋に送ったこと、朝日奈くんの自室で目覚めた朝日奈くんと彼女を介抱する大神くんと会話したこと、不二咲くんと探索したが(流石に被害者の個室を家探ししたなんて言えないからそれは黙っておいた)彼女は朝日奈くんの様子が心配で見に行ってしまったことを話した。

 

「僕は十神くんと腐川くんは見掛けていない。セレスくんは?」

「私もあのお二人方は見掛けておりません」

「そうか。彼・彼女らも捜査をしていると良いのだが」

「つまり、今現在、分かっている範囲で【舞園さん・朝日奈さん・大神さん・不二咲さんは捜査をしていない】状況ということになりますわね。随分と【非協力的】ですこと」

「セレスくん! 非協力的とは、そんな言い方はないだろう!」

「ですが、自身がクロ(犯人)だと、そのような態度は当然かもしれませぬな」

 

 僕とセレスくんの会話に参入したのは、セレスくんの為にロイヤルミルクティーやらを用意していた山田くんであった。絶句する僕を余所に、山田くんは仰々しくセレスくんの前にロイヤルミルクティーを置くと、持論を語り出した。

 

「石丸清多夏殿。クロは外に出たいがために殺人を起こしたのですぞ。そして、学級裁判さえ乗り越えられれば、外に出ることが叶うのです。今回の学級裁判は【超高校生級の探偵が不在という犯人にとってまたとない好機】、その学級裁判へ不利になることをする訳がないではありませんか?」

「だが、彼女らは【クロ】ではない!」

「ですから、それを証明するためにも【証拠】や【ヒント】を見付けなくてはなりませんわ。それに対しての捜査へ【非協力的な態度】は疑念を深める仕方のない行為となり得ますことをお忘れなきように」

 

 セレスくんから釘を刺され、僕は何も言い返すことが出来なかった。忘れていた訳ではなかった、いや、本当は心の何処かで【現実】を見ないようにしていたのかもしれない――霧切くんを殺害した冷徹なる殺人鬼が僕らの中にいることに――それどころか、僕が守ろうと決めている女子生徒たちの中にいるかもしれない【事実】に。気が付けば、また喉元に僕は右手を置いていた。そういえば、食堂へは水を飲みに来たのだった。一言「水を飲んでくる」と告げ、僕は二人に背を向けてキッチンへ足を進めた。

 霧切くんの仇を討つ為に捜査をしている。それは本当だ。だが、被害者がいるということは、加害者がいるということだ。そして【その加害者は僕らの中に確実に存在している】のである。その加害者は特定されてしまうと、いや、僕らが特定に成功すると、オシオキを受けることになってしまう。或いは、僕らが特定に失敗すれば、僕らがオシオキを受ける羽目になってしまう。

 

(こんな時にセレスくんが紅茶を飲みたがるのは、もしかすると、これが最後になるかもしれないと思ったからだろうか)

 

 そう考えて、僕はぞっとした。その怖気を誤魔化すように腕を伸ばして【食器棚】から【ガラスのコップ】を取り出すと、水道水を入れ、がぶがぶと飲み干す。

 

(だからと言って、それでも僕の意思は変わらないぞ。必ず、苗木くんとの約束を――)

 

 シンクにガラスのコップを置きながら決意を改めて固めようとしていると、テーブルの方からティーカップが割れる音と山田くんの小さな悲鳴が聞こえてきた。

 

「山田くん、何度も言いますが、私、ロイヤルミルクティーには強い拘りがありますの。……ミルクも茶葉の香りもすっ飛ばしった代物をこの私に出すんじゃねぇぞ、ブタがっ!!」

「ひいぃっ!」

 

 前半は穏やかなのに、後半は荒々しいものに変わったセレスくんの口調に、僕はそれが同一人物から発せられたものとは信じられない気持ちでいた。そうこうしているうちに、山田くんがキッチンに入ってきたため、僕は彼の邪魔にならないように身をシンクへ寄せ、彼がもう一度お湯を沸かし始める様子を見ながら、ガラスのコップを洗い終わったら早めに立ち去ろうと決める。

 

「あれ?」

 

 ガラスのコップを洗おうとして気が付いた。【ガラスのコップの底に粉が付いていたから】だ。

 

「どうかされましたか、石丸清多夏殿」

「ガラスのコップの底に粉が付いている」

「ああ、それは【プロテインの粉】でしょうな」

「【プロテイン】? 大神くんが愛用している飲み物か。あれは粉を溶かして飲むものだったのか」

 

 山田くんの回答に僕はガラスのコップをしまっていた食器棚を見上げてみた。成程、そのガラスのコップが置いてあった同じ段に【プロテインの粉が入った缶】が置いてあった。缶の蓋がしっかり閉まっていなかったから、それで零してしまったのだろう。

 

「それにしても、あの【几帳面な大神さくら殿が粉が零したのに片付けないなんて珍しい】ですな。【この棚は、昨夜はきれいな状態】でしたのに」

「うむ、後で大神くんに注意しなければ」

 

 忘れないように、さくら色の小さなノートに書きこんでいると、山田くんにちょんちょんと肩を叩かれた。

 

「どうしたのだ、山田くん。今、僕はメモしている最中なのだが」

「石丸清多夏殿は誰が犯人と睨んでおりますか?」

 

 山田くんに小声で囁かれた言葉にペン先が止まってしまった。それでも最後まで書き切ると、僕は「分からない」と素直に答えた。

 

「【証拠】も【ヒント】も全く足りていないうえ、僕は探偵でもない身だ。そんなこと、見当もつかない。山田くんはどうなのかね?」

「いやぁ、拙者にもさっぱり分からん状態ではありますが、ただ先程セレス殿が言っていた【捜査に非協力的な人物が怪しい】と言われると、彼女まで含まれてしまうことに気付いてしまったのです」

「セレスくんが?」

「紅茶タイムをしていること、即ち僕を巻き込んでの捜査時間の消耗ではないかと考えたまでです……が、拙者は【セレス殿を信じます】ぞ! 僕のうさぎさんがそんなことをする訳がありませんからな!」

 

 誇らしげに宣言する山田くんを見て、僕も勇気付けられる想いであった。

 

「そうだ、僕は【皆を信じねばならない】のだ。セレスくんも当然、守らねばならない! ……ん? 山田くん、どうしたのかね? 僕の顔に何か付いているのかね?」

「舞園さやか殿を守る発言をした後でその御言葉とは、石丸くんもなかなか業が深いですな」

 

 山田くんにしみじみと言われ、僕は首を傾げてしまう。

とりあえず、洗ったガラスのコップを片付け、捜査を再開しようとする僕に彼は言った。

 

「ですが、石丸清多夏殿、【皆を信じねばならない】のはとても難しいことだと思いますぞ」

「山田くん、何故そんなことを言うのだ?」

「拙者はセレス殿に紅茶を淹れる前からこのキッチンを利用して夜食を作っていたから気付いたことですが」

 

 なんだろう、とても嫌な予感がする。

 山田くんはその豊満なボディを屈めると、僕の耳元でそっと囁いた。

 

「実は一回目の動機提示があった日の晩、もう既に包丁が一本無くなっていたのです」

 

 

35、

 

 あの後、食堂を出た僕は廊下を歩きながら、ふつふつと考え事を繰り返していた。

 

 山田くんが推測するに。

第一の動機の後、殺人を計画しようとした【殺人計画者(クロモドキ)】がいたが、葉隠くんのオシオキを見て、やる気がなくなってしまい、そのまま包丁を元の場所に戻すタイミングを逃しているのではないか? とのことだった。

 彼の言う通り、あの無慈悲なオシオキは見るものに恐怖の神髄を叩き込むものだった。学級裁判でクロだと特定されてしまった末路を見たというのに、こうして二回目の殺人が起きてしまったのは今回のクロが余程の命知らずか、それとも【絶対に特定されないという自信】があるからなのだろう。

 

(まさか第一の動機提示の時点で既に殺人を計画していた者がいたなんて。一回目の学級裁判は、葉隠くんは【黒幕】を倒すために罠を張ったが、運悪く苗木くんがそれに掛かってしまったという不幸な事件に拠るものだ。だが、今回は【明確な殺意】を以て【生徒の誰か一人】を殺害する【罠】を仕掛けた。そんな【血も涙もない殺人鬼】が僕らの中に一人、確かに存在している。そして、その人物が誰なのかを【非協力的なクロ】と共に僕らは見付けなくてはならない――【超高校生級の探偵不在の学級裁判】を通して)

 

 今、瞼を落としてしまうと、霧切くんの凄惨な遺体を思い出してしまいそうだった。それを振り払おうと、僕は頬を両手で叩き、いつの間にか視線を廊下の床に落としていた顔をぐっと上げる。上げた視線の先には一人の女子生徒が歩いていた。

 

「腐川くん! そこにいるのは腐川くんではないか!」

「い、石丸。そんな大声を出さなくても聞こえるわよ」

「大声? 僕は普通に声を出しているだけだが?」

「アンタは元から声が大きいって言っているのよ!」

「十神くんは一緒にいないのだな」

「ちょっと人の話を聞きなさいよ!」

 

 腐川くんに近付こうとするが、彼女に警戒され、それ以上近付くこと出来なかった。それにしても、彼女は【風呂嫌い】と聞いていたが、昨日はプールに入ったので【清潔】そうであった。

 

「そういえば、昨日は朝比奈くんに誘われてプールに参加したそうだが」

「ええ、そうよ。全くあの女、強引なんだから。不二咲は調子が悪いとか言って上手いこと逃げたのに、私は掴まっちゃったのよ。おかげで風呂にもみんなで入ることになるし、どうして私だけこんな目に……っ! 不二咲も不二咲よ。【プールの誘いは断った癖に女子会には参加】しちゃって」

「では、どうして君は【女子会には参加しなかった】のかね?」

「そんなの決まってんじゃない! アイツ等、どうせ私を【ブタ】とか言って笑うんだわ。どうせ私は可愛くもないし、痩せてもいないし、スタイルだってイマイチだし、白夜様だって『【今のお前は何の役にも立たない】』といって私を置き去りにするし、どうせどうせ全部私が悪いのよぉぉおお!」

 

 次第にヒートアップしていく彼女に、僕は完全に気後れしてしまっていた。確かに彼女は被害妄想(パラノイア)が強いようだが、如何せんこれは強過ぎる。とりあえず落ち着かせようとして距離を詰めようとすると「近寄らないで!」と彼女に威嚇された。

 

「何故だね、腐川くん! その調子では捜査も学級裁判も出来ないではないか!」

「アンタ、本当に鈍いわね! 私は血を見るのが嫌いなの! その血塗れの服で私に近付かないでって言ってるのよ!」

 

 彼女の言う通り、僕の白いズボンの膝は、犯行現場で崩れ落ちたときに付いてしまった被害者の血で赤く染まったままだった。

 

 

36、寄宿舎の倉庫

 

「よぉ! 兄弟じゃないか!」

「兄弟? どうして君が此処に?」

 

 服を着替えようと、寄宿舎の倉庫へ行くと、其処にはプールと更衣室の捜査以降、別行動の為に会っていなかった大和田くんの姿があった。

 

「特攻服を霧切に掛けちまったから、もう学級裁判まで残り十五分を切っちまったこともあって勝負服に着替えに来たのよ。兄弟、お前もか?」

「ああ、僕もだ。ズボンがこの通りだから、腐川くんに注意されてしまってな」

「お前も腐川に言われたのか。俺も腐川に『いつまでも上半身裸でうろつかないで!』と叫ばれちまった」

 

 そう言って笑う兄弟に心のストリングス(ばね)が緩んでしまったのか、僕も仄かに笑みを浮かべそうになった。兄弟がいてくれるだけで僕は強くなれそうな気がする。だからこそ、今の今まで近くにいてくれなかったのが、勝手ながら本当に恨めしいと思えてしまう。

 

「兄弟よ、何故僕と共にいてくれなかったんだ? プールと更衣室の捜査の後、君はいなくなってしまうし」

「おいおい、兄弟。感謝されることはあっても誹(そし)られる謂(いわ)れはないと思うんだがな」

「感謝?」

 

 お互いに服を着替えながら、会話を続けていると、兄弟から不思議な単語『感謝』が出て来て、思わず僕は当惑してしまった。

 

「テメェを舞園と二人きりにするために喚く桑田を引き摺っていくのは大変だったんだぜ? ところで、舞園はどうした?」

「舞園くんか? 舞園くんはプールと更衣室の捜査の後、調子を悪くなったというから彼女の個室まで送っておいたぞ」

「なんだよ、思った以上に一緒にいてねぇじゃねぇか。……でよ、兄弟、折角の二人きり、上手く活用できたか?」

「ああ! 彼女から学級裁判に向けて有益な情報を得ることを出来た!」

「……あり得ねぇ。あんな【告白】を盛大にしといて、【超高校生級の暴走族】がお膳立てまでしたのに、それしか出来なかったとか、マジあり得ねぇ……」

「?」

 

 かっくりと肩を落として、ぶつぶつ呟く大和田くんに疑問符を飛ばしながらも、僕は棚からいつもの学ランを取り出す。そのついでに見上げると【スポーツバック】を置いた棚が目に入った。不自然な空きが示すように、幾つか使用されたようだ。

 

(そういえば、朝日奈くんが女子をプールに誘ったと言っていたから、スポーツバックが幾つか消えているな。……ということは水着も同じように消えているのだろうか……って、僕はいったい何を考えているのだ!)

 

邪念を晴らすように学ランに腕を通す。皴もシミ一つない純白の学ランに心機一転、身が引き締まる思いだ。兄弟も時同じくして新しい特攻服に着替え終わっていた。

 

「ところで、兄弟は何処を捜査していたのだ?」

「俺は桑田と一緒に【プチライブ会場に改造された空き教室】とか【二階を中心にして捜査】していたぜ。それにしても、あの犯行現場は酷過ぎて見てられねぇな。俺が記憶している限りだが、【俺たちが捜査した以降、誰も犯行現場へ入っても近付いてもいない】ようだしな」

「……ということは、十神くんもかね?」

「ああ、見掛けてないから恐らくそうだろうな。あの財閥眼鏡、このヒトゴロシ学園生活をゲームだの何だの言って愉しんでやがった癖に、いざという時は情けない悲鳴を上げるばかりでさっぱり役に立たねぇじゃねぇか」

「誰が役に立たないだ、弱小プランクトン共め」

 

 話題に上がっていた人物・十神くんの登場に、兄弟は大袈裟なぐらいに「げぇっ!」と言いたげな顔付をしてみせた。だが、兄弟の表情は『見付かってまずい』というより『嫌な奴に会っちまった』という嫌悪で溢れていた。

 

「十神くんか。捜査は順調に進んでいるのかね?」

「捜査? 捜査なんてする必要があるものか。どうせ、これはモノクマが仕掛けた【自作自演の殺人】だ。する必要すら無い」

「おいおい、それはモノクマ自身が否定したじゃねぇか! テメェ、まだそんな寝言を言っているのかよ?」

「貴様らはあのクマの言葉を信じすぎだ。そうだ、あれはモノクマの仕業だ。あのモノクマが邪魔になった探偵を始末したに決まっている……っ!」

 

 彼の口調は、最初は鼻で笑いそうな勢いだったのに、最後の台詞の語尾は怒気を孕んでいた。僕は二日前にライブチケットを渡すために探していた図書室で霧切くんと十神くんの口論を見掛けている。鈍いだの空気が読まないだのと言われる僕だって分かるぐらいに二人の仲は険悪であったはずなのに、彼は霧切くんが殺されたことに怒りを感じている。協調性なんて彼にはないと思っていただけに、この十神くんの態度には正直驚かされた。なんだかんだ言っても、彼は彼なりにクラスメイトを心配しているのだな、と少し見直した。

だが、それは次の彼の台詞でひっくり返されることになる。

 

「ならば仮に奴の言う通り、この事件の犯人がモノクマで無ければ、不二咲がクロで決まりだな。あの【AI】こと【アルターエゴ】でこの学園の【ネット】にアクセスして【プログラムを書き換えた】に決まっている」

「不二咲くんはクロではない!」

 

 十神くんの許せない発言に僕は噛み付くように否定の言葉を弾丸のように放っていた。だが、彼は僕の反論(コトダマ)をせせら笑うと腕組をしながら追撃をしてきた。

 

「そうでなければ、どうやって【女子更衣室に入ろうとした、女子生徒である霧切響子をマシンガンで撃たせた】のだ? 【プログラムの改ざん】でなければ、説明が付かんではないか?」

「それは……」

「これだから感情馬鹿のプランクトンは。何が『だからと言って諦める理由にはならない』だ。笑わせる。お前如きが【超高校生級の希望】になれると思うなよ、石丸清多夏」

 

 十神くんの質問に僕は何も返すことが出来なかった。この一番の大きな命題に返答できないというのに、どうやって学級裁判に挑めというのだろうか。十神くんに鼻で笑われ、俯くしかない僕を大きな人影が覆った。思わず顔を上げる。その影の持ち主は兄弟である大和田紋土くんだった。

 

「なら、こっちから【反論】してやんよ。いいか、十神。不二咲が持っている【図書室で見付けたノートパソコン】は【ネット回線が繋がっていない】ものなんだぜ? それでどうやって【プログラムの改ざん】とやらをするってんだ? もし仮に【この学園のネットにアクセス出来た】としたら、モノクマが作った、あのくそったれな【同級生を殺して学級裁判で暴かれなければ卒業できる】ルールに則るより、外に出られるよう、あの厳重な正面玄関を開けた方が早いんじゃねぇのか?」

「チッ……!」

 

 兄弟の反論に十神くんは悔しそうに大きな舌打ちをしただけだった。好機と見たのか、更に大和田くんが十神くんとの距離を詰めようとしたので、このまま言葉(声)ではなくて、暴力(拳)に訴え出るのではないか、と嫌な予感が過(よぎ)り、僕は咄嗟に「兄弟!」と呼んでいた。そして、兄弟の集中が十神くんから僕に逸れた瞬間を狙って、十神くんは倉庫から廊下へ飛び出していった――最後に遠吠えのような台詞を残して。

 

「愚民風情が! 【超高校生級の探偵】も【超高校生級の希望】もいない学級裁判を乗り越えられるなど、甘っちょろい【希望】を持ったところで、どうしようもない【絶望】があるということを思い知れ!」

「十神くん! 廊下は走ってはならないぞ!」

 

 見えなくなった十神くんへ注意の言葉を掛けると、何処かの扉を蹴り飛ばしたのか、大きな音が響く。嵐のような出来事に、しばしの間、呆けそうになった僕だったが、正気を取り戻すと、すかさず兄弟に礼の言葉を述べた。

 

「大和田くん、ありがとう。咄嗟にあんな【反論】できる君は凄いな、僕にはとても出来ない」

「いいってことよ、兄弟。ようやくあの財閥眼鏡に一泡吹かせることが出来てキモチイイぐらいだぜ」

 

 こんななかでも不敵に笑える兄弟の【心の強さ】が正直に羨ましいと思った。こんな【心の強さ】があるから、彼は【超高校生級の暴走族】にまで昇り詰めることが出来たのだろう。仄暗い倉庫へと廊下から指し込んでくる蛍光灯の明かりが、兄弟そのものが眩しくて、僕は目を伏せてしまう。

 

「それにしても、本当にムカつく野郎だぜ。兄弟がいなかったら、言葉より先に殴っていたところだった」

「しかし、十神くんの言う通りだ。僕は十神くんからの質問に対して肝心なことを回答できていない。学級裁判まで残り僅かだというのに【女子更衣室に入ろうとした、女子生徒である霧切響子をマシンガンで撃たせた罠】について、てんで見当が付かない。これでは――このままでは霧切くんの仇を討つことも、舞園くんを守ることも出来ず、僕はただ徒(いたずら)に皆を死なせてしまうことになってしまう」

 

苗木くんと交わした約束が守れそうにない事実の重みに、僕は瞼を落とせず、涙すら流せずにいる。沈黙が倉庫内を満たし、このまま此の沈黙の海に溺死してしまいそうになる幻すら見えた。だが、沈黙の波に攫われそうになる僕に差し伸べる声があった。

 

「兄弟、テメェに【これ】をやる」

 

 兄弟から声を掛けられる。また泣いていると思われたのだろうか。泣いている訳ではないぞ、と良い訳しながら上げた顔の前にあったのは、柔らかいハンカチではなく、固い【電子生徒手帳の残骸】だった。

 

「兄弟、これは!?」

「【霧切響子の電子生徒手帳】だ。俺の特攻服を遺体に被せるときに気付いたから、ひょいっと屈んで拾っておいたのよ」

 

 それから兄弟はバツが悪そうに頭を掻くと、言葉を続けた。

 

「【更衣室には電子生徒手帳がないと入れない】だろ? 絶対に大事な【証拠品】になるから、学級裁判で俺の手柄として提示して十神の鼻を明かしてやろうか、と考えていたけど、テメェにやる。兄弟、これで霧切の仇を討って、舞園を守ってやれ」

 

 やっぱり兄弟は優しい男だ。情けなくも鼻を啜ると、僕は震える手で【霧切響子の電子生徒手帳の残骸】に手を伸ばした。その電子生徒手帳にはマシンガンで撃ち抜かれた穴が幾つも空いていて、血も纏わりついていた。こんな硬い電子生徒手帳ですら貫通する弾丸に、彼女は数百も撃ち抜かれたのか。そう考えてしまったからか、震えがピークに達してしまって、僕はうっかり其れを掴み損ねてしまった。その結果、兄弟から僕に手渡されるはずの【霧切響子の電子生徒手帳】は、そのまま床に吸い込まれるようにして落ちていき、割れる音を響かせることになってしまった。

 

「おいおい、なにやってんだよ、兄弟」

「すすす、すまない! 僕としたことがっ!」

 

 大事な【証拠品】に僕はなんてことを! 慌てて大きな破片を拾い上げるが、元からヒビが入っていたこともあり、電子生徒手帳の残骸は更に真っ二つに折れてしまった。最初からある程度壊れていたとはいえ、証拠品をもう一段階も破損させてしまったことに、僕の顔は真っ青になる。電池カバーの蓋まで完全に取れてしまったので、それも拾い上げようとして、はたと気が付いた。

 

「兄弟、どうした?」

「電池カバーの後ろに【写真】が貼り付けてある」

 

 ボロボロになった電池カバーの裏には【集合写真】が貼られてあったのだ。機関銃で撃ち抜かれてしまっていたから、写真の全容は分からず、【四人程度の男女を撮った写真】だと精々分かるぐらいだったが、一人だけ顔が無事なものがあった。それは【ショートカットの黒に近い茶色の髪の少女】だった。

 

「電池カバーの裏に恋人や友達(ダチ)の写真を貼るのが流行っていたから、それじゃねぇのか?」

「……ということは【この濃い茶色の短髪の少女】は霧切くんが希望ヶ峰学園に編入する前の高校の御友人?」

「恐らくな。でも、あんまり事件には関係なさそうだな、こりゃ」

 

 これからは気を付けて扱えよ、と続けて言う兄弟の注意を聞きながら、僕は【この少女の顔を何処かで見掛けた】ような気がしてならなかった。

 

「大和田に石丸、其処にいたのか?」

 

 大きく開け放たれた扉の前に立った人物により、ただでさえ仄暗い倉庫が更に暗くなる。僕は【霧切響子の電子生徒手帳の残骸】を破片諸共、学ランのポケットにしまい込むと、逆光で見えにくい人物の名を呼んだ。

 

「大神くん! どうかしたのかね?」

「そろそろ学級裁判の時間というのに集まって来ないから探しに来たのだ」

「それはすまない! 五分前行動を心掛ける僕に有るまじき行為をしてしまった!」

 

 【超高校生級の風紀委員】らしくない行為に対する猛省も込めて、僕は大神くんに心からの謝罪をしたのだった。

 

 

37、走り出す

 

「おい、大神。朝日奈は大丈夫なのか?」

「歩けるぐらいには回復したと言っておこう。不二咲が朝日奈を連れて先に向かっている」

 

 廊下を歩きながら、僕らは学級裁判場に通じる地下へのエレベーターへ歩いていた。兄弟が大神くんに朝日奈くんの体調を確認する横で、僕は【ヒント】を書き込んだ【さくら色の小さなノート】を復習するように何回も心の中で音読する。

 

(出来る限りの【ヒント】や【証拠品】は集めた。後は皆の【証言】を頼りに真実を追求するしかない)

 

 そう考えながら、大神くんがいることだから、と確認したいことを聞いてしまおうと思った。

 

「ところで、大神くん、昨日は動機提供の後、朝日奈くんの提案で不二咲くんを除く女子でプールへ行ったそうだな」

「ああ、その通りだ。昨日の午前中、我々は【不二咲を除く女子でプール】へ泳ぎに行った。不二咲は体調が悪いと言っていたのだが、午後からの女子会に参加したのを見ると、泳ぐのが嫌いなだけかもしれぬな。午後になってから、我はキッチンで【プロテイン】を作って【女子更衣室にて一人トレーニング】を行い、朝日奈の部屋で行っていた【女子会】に合流した。【女子会には腐川だけが参加しなかった】。そして、夜も更け、我々はそのまま【朝日奈の部屋で寝泊まり】することになったのだ。【女子会】の最中、我が覚えている限り【長時間抜け出した女子はおらぬ】はずだ。寝ているときであってもそんなことは無かった。気配で我は気付くからな」

「へぇ、【女子会】ねぇ。……それにしても【プールの後にトレーニングまでする】なんて、流石【超高校生級の格闘家】だな」

「……あ、ああ。そういったところだ」

 

 大和田くんからの誉め言葉に、大神くんの言葉がどもったのが分かった。

 

「大神くん、なにか【別の理由】でもあるのかね?」

「石丸よ、詮索は止せ。【乙女のポリシー】の問題だ」

 

 【ポリシー】と言われれば黙るしかない。僕は【超高校生級の風紀委員】として【皆のポリシーを守る】ことを決めているのだから。

ノートの内容と照らし合わせながら大神くんの話を記述していたが、【プロテイン】と聞いて【大神くんに言わなくてはならないこと】を思い出した。メモを取って置いて良かった、と心からそう思った。

 

「それはそうと、大神くん。【プロテインの粉】を零したのなら、しっかり拭き取らなくてはいけないぞ!」

「プロテインの粉?」

「そうだ、僕はつい先程キッチンで【プロテインの粉】が零れているのを見付けたのだ。おかげで【プロテインが入った缶の棚が粉だらけになってしまっていた】ぞ。トレーニング機器のある女子更衣室のカーペットにも【プロテインを溢したシミ】があったことだから、気を付けたまえ」

「それはおかしい。昨日の午前、我は確かに【朝日奈に誘われたプールの後に一人でトレーニング】をするために【プロテイン】をキッチンで作ったが、【プロテインの粉は零していない】。加えて、石丸の言う通り、我は昨日そのトレーニング中に女子更衣室でプロテインを溢してしまったが、それに気付いたモノクマがすぐに【掃除をして綺麗にしてしまった】から【今も尚、残っているはずがない】」

「え?」

 

 大神くんの【証言】に僕は石化されたかのような衝撃を受けてしまった。

つまり、【女子更衣室のカーペットのシミ】も【キッチンの食器棚に零れていたプロテインの粉】も【大神くんの仕業ではなかった】ということだ。

 

(では、いったい誰が? いや、もしかすると、僕は何か別のものを――これと同じように強い思い込みをしているのではないのだろうか?)

 

 そう思うと居ても立っても居られなくなった。何をそう思い込んでいるか分からないが、こんな思い込みがある状態で学級裁判に挑みたくない、と心から感じた。これから僕は【超高校生級の風紀委員】に有るまじき行為をしようとしているのは百も承知だ。しかし、瞼の裏に浮かぶ【超高校生級の探偵】の笑顔を思い出したら、たとえ学級裁判まで後僅かしかないのは分かっていても――もう走り出さずにはいられなかった。

 

「兄弟!?」

「大神くんと兄弟は先にエレベーターへ向かっていてくれ」

 

 兄弟の呼び止める声も、【超高校生級の風紀委員】としての【ポリシー】も無視して、僕は犯行現場である二階への階段を駆け上ったのだった。

 

 

38、

 

 もう何でもいいから新たな【ヒント】が欲しかった。

 霧切くんの凄惨な死体の横を通り抜け、僕は男子更衣室から女子更衣室へブーツも脱がずに入った。はじめて入った時、僕は大和田くんが開けたままのロッカーの扉を男子更衣室同様に閉めていったが、なかには閉められたままのロッカーの扉もあったのだ。恐らく兄弟は途中で開けるのが億劫になって開けなかった扉があるはずだ。開けられていなかったロッカーの扉を開けると、一番右下のロッカーだけ湿っていた。いったい誰が使ったのか分からないが、【大神くんのトレーニング後に誰かが使用した】のは確かなことだろう。

 

(カーペットが湿っていたのは【その誰か】がプールを使用したからだと思われるが、誰が使用したのだ? この中へ入れるのは【女子】だけだが、大神くんがトレーニングする頃、そして後には【女子会】を夜通ししていたから誰も行けないはずだ。あれ? だがしかし、【一人だけ参加しなかった女子】がいたような――)

 

 時計の針が動く音がする。他にも確認できるものはないだろうか? 例えば、先程音を立てた時計とか。

 そう考えると無性に気になって、体重計の上に乗って時計を調べようとしたが、高くて手が届きそうにない。諦めるしかないのか、と俯くと体重計の針は68㎏を指していた。足を下すと、体重計にブーツの足跡がはっきりと残ってしまい、罪悪感を覚える。他に調べるもの、調べられるものは――。

 

「おい、イインチョ! もう時間だぞ、やばいぜ!」

「桑田くん!?」

 

 プールへ続く扉から赤髪の男子生徒から顔を出す。僕を呼びに来たのは桑田くんだった。

 

 

39、

 

「……ったく、石丸も随分と風紀委員らしくないことをするなぁ。俺に『廊下を走るな』と叱った癖してよぉ」

「……全く以て君の言う通りで猛省の限りだ。それでも僕は何としてでも、霧切くんの仇を討ちたくて、舞園くんを守り抜くためにも、学級裁判に向けての【ヒント】をギリギリまで探したかったのだ」

 

 二人して更衣室を飛び出し、廊下を走り抜けながら、学級裁判所へ続くエレベーターへ向かって駆けていく。

 桑田くんの言葉に風紀委員の腕章が重く感じつつも、一段飛ばしで階段を下っていくと、先に降りていた桑田くんが「石丸!」と僕を指差して宣言してきた。

 

「俺が舞薗ちゃんを守るんだ! お前にだけイイ格好させやしないぜ!」

 

 人を指差す行為は褒められたものではないが、舞園くんを守ろうとする気概に僕は胸を打たれた。

苗木くん、喜びたまえ! 君の遺志を引き継ぐ者は僕だけでは無かったようだぞ!

 

「本当かね、桑田くん! 君も舞園くんを守ってくれるのに協力してくれるのかね!!」

「アホアホアホ! 俺が舞薗ちゃんを守るんだよ!」

 

 喜びの余り僕が彼の両手を掴むと、桑田くんは必死で声を荒げてきたが、鈍い鈍いと言われる僕でもそれが照れ隠しだと一発で分かったのだった。

 

 

40、

 

「遅かったな、プランクトンA」

 

 学級裁判場まで繋がる地下へのエレベーターには僕と桑田くん以外の全ての生徒が揃っていた。人を見下す態度を直さない十神くんの挑発を受け流して、僕らはエレベーターに乗り込んだ。

 

 エレベーターの扉が閉まる。地下へと降りていく電動音を聴きながら、僕はさくら色の小さなノートに気付いたこと全てを記した。まとめ終わった後、僕は十神くんを一瞥した。相変わらず、ふてぶてしい態度をしている。彼を見ていると、僕の祖父である――最大最悪の汚職事件で総理大臣を失職した石丸寅之助が脳裏に浮かんだ。

 

 今思うと、祖父は弁論が巧みな男であった。上手でもあったが、それ以上に巧みであった。自身へされた不都合な質問に対して、質問者への人格攻撃に行うことで質問を有耶無耶にしたり、回答せずとも質問者を陥れたりすることができる人物であった。

 

(どうして今になって貴男を思い出すのか分からないが、天才的頭脳を持った祖父よ、僕は【努力し続けることで天才を超えた凡才になる】ことで貴男の総てを否定してみせる。【努力】とは【常に前進して決して諦めない】ことだ。僕はいつも【努力】してきた。だから、今回も【決して諦めない】。霧切くんの仇を討ち、舞園くんを守り抜き、苗木くんとの約束を絶対に果たすのだ)

 

 エレベーターが地下に着いた。

 クラスメイトの諸君の皆々が重々しい顔付で、それぞれの証言台であり、弁護席であり、容疑者でもある席に着く。

 赤くバッテン印が付いた霧切くんの写真を飾った席を見て、息を飲みそうになったが、敢えて吐き出すことで回避する。

 

 命懸けの裁判。

 命懸けの騙しあい。

 命懸けの裏切り。

 命懸けの謎解き。

 命懸けの言い訳。

 命懸けの信頼。

 

 命懸けの学級裁判が今始まる。

 

 

 

…to be continued

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