ダンガンロンパ十周年記念小説【ifストーリー】第二章 乙女心☆ポリシーとプリテンダー★ボーイ 作:千葉 仁史
41、
「とうとう、始まったでござるなぁ! あわわ、拙者、緊張のあまりに語尾が変わってしまうでやんす」
「朝比奈、決して無理をするでないぞ」
「さくらちゃん、私は平気だから。私にも頑張らせて」
「無理よ、【超高校生級の探偵】もいないのに推理で殺人鬼を当てろだなんて! もう絶望的だわ!」
「腐川! さっきから喚いてないで、テメェもちっとは頭を使いやがれってんだ。……俺だってアタマに自信がねぇんだからよ」
「舞薗さん、僕らも頑張ろうね」
「ええ、不二咲さん。私たちの出来る限りのことを少しでもいいからしましょう」
「うおお、舞薗ちゃんは俺が守るぜ! イインチョには負けねぇ!」
「どいつもこいつもプランクトン風情の癖に何を無駄に張り切っているのやら――苗木も霧切もいないというのに」
「あら、【超高校生級の御曹司】にしては随分弱気ですこと」
「皆! よく聞いてくれ! 学級裁判が始まる前に一つ頼みたいことがある!」
学級裁判の席に着いたとはいえ、一回目の学級裁判は霧切くんがほぼほぼ一人で進めてしまった故に勝手が分からないからか、各々銘々に声を上げている。そんななか、僕は腹式呼吸で溜め込んだ息を声に出して提案した。
「学級裁判を始める前に、此処は一つ、殺された彼女の為に黙祷を捧げようではないか。そして此の中に【犯人クロ】がいるのならば、どうか黙祷中に其の良心に従って挙手して欲しい。僕は決して責めやしないから」
それだけ言い切ると、先ず隗より始めよ、というように僕はすぐに瞼を落とした。
冷たい風を纏うようにクラスメイトから距離を置いて、冷徹な仮面を被り、感情を殺して、たった独りで悲しみと辛い現実に立ち向かおうとした霧切くん。舞園くんのコンサートを廊下で聞いたり、朝日奈くんが企画する女子会に参加したり、僕の前で笑顔を見せてくれたり、漸ようやっと打ち解けてくれそうになった矢先に彼女は無慈悲な方法で殺されてしまった。
『簡単な言葉でいいのよ、思い付いたことを心からストレートに言えば』
彼女はそう僕に助言してくれた。本当は彼女こそが――僕は彼女が苗木くんに伝えたかったか毛頭見当が付かないが――彼に対して【短くて確かな言霊コトダマ】を伝えたかったのだろう。命を落としてしまった彼女が僕に見せてくれた、生きていた頃の最後の笑みを瞼の裏に描きながら、僕はその瞼を開けた。
円形の裁判席のなか、挙手している者は誰もいなかった。
「石丸、分かっただろう? 自分だけでも外に出たいという【利己エゴ】の塊たる殺人鬼の良心に期待するだけ、無駄だということを」
十神くんが鼻でせせら笑う。陪審席にも傍聴席にも被告人席にも弁護士席にも検事席にも、そのどれらにも該当する円陣の席にて皆が皆、不安げな顔を見合わせるようにしつつも、互いの視線がかち合わせないようにしながら誰が【クロ】なのか疑っている。僕は静かに呼吸をして吐き、何度もした其の覚悟を何度も決め直す。そして、皆に貴重な時間を使ってしまったことを謝ってから、体中に散らばる勇気を一ヶ所に集めるようにして僕は言った。
「では、みんな。学級裁判を始めようではないか」
視線を落とさないよう、頤おとがいを上げる。白い制服のズボンの上から、ポケットの中に在るさくら色の小さなノートの輪郭を、まるでお守りのように触れながら、僕は一人一人の顔を確かに見渡した。
「とりあえず、捜査時間の間に何をしていたのかを教えて頂けないだろうか?」
「では、まずは私から」
最初に発言したのは【超高校生級のギャンブラー】こと、セレスくんであった。
42、セレスの発言
「私は最初に【山田くんと石丸くん、大和田くん、桑田くん、舞薗さんの六人で犯行現場となった女子更衣室前へ行きました】。女子更衣室前を見た後は【男子更衣室から中へ入り、それから女子更衣室内を見て、プールまで確認しました】。犯行現場だけではなく、様々なところを捜査しなければ見えないものもありますので。その後、私は【山田くんと共に二階と一階の散策】して、この【葉隠康弘の電子生徒手帳】を見付けました」
そう言いながら彼女は――捜査時間中の食堂にて僕に見せてくれた――【葉隠康弘の電子生徒手帳】を掲げた。
「第一の事件で亡くなった【葉隠康弘の電子生徒手帳】か。どうせ【玄関ホール】の横の【レターケース】の中に入っていたのだろう?」
「いいえ。モノクマに命じて改造させた【娯楽室こと空き教室】のロッカーの中にありました」
「なに?」
十神くんの【葉隠康弘の電子生徒手帳】の在り処の推理に、セレスくんがあっさりと否定する。肩透かしを受けた十神くんは『信じられない』という表情を浮かべていて、何故か兄弟は自身の口元をその大きな手で隠していた。
「【葉隠康弘の電子生徒手帳】を見付けた私と山田くんは【亡くなった他の方の電子生徒手帳】もあるかもしれないと思い、手分けして探しましたが、捜査時間内には【見付けることは出来ません】でした。それにしても、【江ノ島盾子の電子生徒手帳】は彼女の圧死により跡形もなく【無くなりました】から最初から【無い】と思われますが、【苗木誠の電子生徒手帳】は【いったい何処にいった】のでしょうね」
【葉隠康弘の電子生徒手帳は空き教室にあった】が、【苗木誠の電子生徒手帳は見付からなかった】。
捜査時間が短いから見付けることが出来なかったのか、それとも――?
「その後、食堂で――石丸くんにも其処で出会ったので少し会話しましたが――私と山田くんは小休憩を取りました。学級裁判の為に唇を湿らせる必要がありましたから」
そう言って彼女は赤い舌をペロリと出してみせた。白い肌に黒い服のせいか、その紅さが際立って仕方がない。
「私はこれで以上です」
最後に、綺麗にお辞儀をして彼女は締めたのだった。
43、山田一二三の発言
「では、二番手は不肖ながら僕といきましょうか」
鼻息荒く二番手を買って出てくれたのは山田くんであった。
「僕は【常にセレス殿と一緒に行動して捜査】しました。セレス殿の発言と被ることが多々なので、一部割愛して頂きます。ああ、それと! 今回の事件とは関係ないと思いますが、一回目の動機提示があった日の晩、食堂から包丁が一本無くなっていました」
山田くんの発言に、皆がどよめく。これに動じなかったのは既に教えて貰っていた僕と、そして、何故か十神くんであった。十神くんは舞園くんを一瞥して意味深に浅く微笑んですらいた。やや注意力散漫のようだが、彼はこの学級裁判を真面目に臨む気があるのだろうか。
「つまり、一回目の動機提示で誰かが殺人を目論んでいたってことかよ!?」
「恐らくは。しかし、殺人を計画しようとした【殺人計画者クロモドキ】でしたが、葉隠くんのオシオキを見て、やる気がなくなってしまい、そのまま包丁を元の場所に戻すタイミングを逃しているのではないか、と思われます」
桑田くんの叫びにも似た質問に、山田くんは事前に用意していたであろう回答を口にする。青褪める面々を前に、山田くんはややオーバー気味に頭を下げると「拙者からは以上です」と締め括った。
44、腐川冬子の発言
「なら、つ、次は私がするわ」
少しどもりながらも口を開いたのは腐川くんであった。
「捜査時間中、わ、私は【白夜様を追い掛けていた】んだけど、白夜様に『しつこい』とか『いい加減に目覚めないのか』とか『お前は思い出さないのか』とか訳の分からないことを聞かれて『できない』って否定したら『【今のお前は何の役にも立たない】』とか言われた挙句、白夜様は【二階の男子トイレ】に入って出て来なくなってしまって……。私は女子だから男子トイレに入れないし、白夜様が出てくるまでしばらくトイレ前の廊下で待っていたけど、全然、出て来なそうだったから、もう先にエレベーターホールで待っていようと思って廊下を歩いていたら、視聴覚室方面から走ってきた顔色の悪い不二咲とぶつかって――しかも謝りもせずに寄宿舎の方へ走り去るし――その後に石丸に出会って少し会話したわ。だから、エレベーターホールに着いたのは私が一番最初。これで以上よ!」
ぶつぶつと呟くような口調で語っていたのに、最後の「以上」と箇所だけ叩き付けるようにして腐川くんは言い切った。
それにしても、十神くんは随分と長いトイレだったようだ。腹痛だろうか? 少し心配だ。その証拠に周りも憐れむような視線を十神くんに向けている。当の本人といえば、ばつの悪そうな表情を浮かべ、何故か何処となくモノクマを気にしているようだった。
(あれ? この調子では【十神くんと腐川くん、双方とも碌な捜査をしていない】のでは?)
その弾みで、食堂にてセレスくんたちと会話したときに出てきた【単語コトダマ】の【非協力的なクロ】が脳裏に蘇る。【舞園くんと不二咲くんは少ししか捜査をしていない】し、【大神くんと朝比奈くんに至っては全く捜査をしていない】。それに加えて【十神くんと腐川くんは殆ど捜査をしていない】という捜査状況が明らかになった。つまり、【十一人中、四人は捜査をしていない】のだ。
(初動を誤っただろうか)
不安が押し寄せる。だが、くじけている場合ではない。赤くバッテンが描かれた今回の被害者の写真を見て、なけなしの気合を僕は取り戻したのだった。
45、十神白夜の発言
「次は俺の番だ」
四人目は十神くんだった。
「腐川に追われていたせいで【今回の】事件に関する捜査は出来なかった。腐川がいなくなったから廊下に出て、とっととエレベーターホールに行こうとしたら、寄宿舎の倉庫から声が聞こえてきて、覗き込んだら、プランクトン風情が二匹いたから少し口を聞いてやった。以上だ」
随分とあっけらかんと十神くんは【捜査が出来なかった】と言い放った。加えて、僕と兄弟を顎で指すという高慢不遜ぶりだ。僕はどうにか耐えたが、兄弟は耐えられなかったらしく「碌な捜査もしてない癖にエラソーに」と皮肉を送った。しかし、十神くんには通用しなかったらしく「【今回の】と言っただろう。聞こえなかったのか? 木偶の棒」と言い返したものだから、兄弟が「この野郎!」と台を乗り越えようとしたので、僕は慌てて「兄弟! 今は学級裁判中だ! 静粛に!」と叫んだ。
「次は舞園くんが発言してくれないだろうか?」
「わ、私ですか?」
声だけで兄弟を制しつつ、学級裁判を進ませるためにも僕は五人目の発言者として【超高校生級のアイドル】を名指ししたのだった。
46、舞園さやかの発言
「私は少しでも捜査に協力したくて、怖かったですが、石丸くんたちと一緒に【犯行現場】へ行きました。その……【女子更衣室前】は酷い状況で――、ああ、ごめんなさい。私は石丸くんの背中に隠れていたのですが【石丸くんは男子更衣室のプレートに触れていました】。【プレートは壁にしっかり固定されていて、とてもじゃないが外せそうにない】状態のようでした」
「つまり、【男子更衣室と女子更衣室のプレートは交換されていない】ってことは【確か】だな」
そこから導かれる解答を桑田くんが口にするのを聞きながら、僕はさくら色の小さなノートに記述する。
「昨日も女子更衣室に行ったと聞いておりますので、プレートを交換されたら霧切殿はすぐに気付くと思いますが……」
「うっせぇよ、ブーデー! ……あ、舞園ちゃん、つづきをどうぞ」
山田くんの呟きに桑田くんはいきり立ったように声を荒げたが、その後はすぐに優しい声色に変化してみせた――あまりの変わり身の速さに、思わず僕が器用だなと感心してしまう程には。
「その後は【皆さんと一緒に男子更衣室から中へ入って、石丸くんと一緒に女子更衣室内やプールを捜査しました】。でも、調子が悪くなってしまったので、石丸くんに自室に送ってもらって、休んでいました」
「その後は【ずっと自室に一人】で?」
「ええ」
セレスくんからの質問に舞園くんは短く返事をすると「私からは以上です。あまりお力になれずにすみません」とか細い声で謝った。僕は何故、桑田くんが此方を睨んでくるのか、さっぱり分からなかった。
47、朝日奈葵の発言
「次は……私がするね」
そう言ったのは朝日奈くんであった。まだ顔色が悪い。大神くんも心配気に見ている。僕も内心ハラハラしながら、彼女の発言を待った。
「私は……霧切ちゃんの遺体をまともに見ちゃって気を失っちゃって、それから調子が悪くて――ごめんなさい、【捜査時間中は自室で休んでいた】の。【さくらちゃんはずっと私の側】にいてくれて、不二咲ちゃんもいたんだけど、見舞いにきてくれた石丸が出て行くときに『捜査を手伝ってくる』と言って【不二咲ちゃんは出て行ってしまった】けど、しばらくしたら不二咲ちゃんは戻って来てくれて、後は【三人一緒にいた】よ」
朝日奈くんは台に凭れ掛かりながら「これで以上だよ」と言った。
48,大神さくらの発言
「次は我だ」
七人目は大神くんだった。
「我はずっと朝日奈と共にいた為、すまぬが、捜査は出来ていない。朝日奈が目を覚ました時、不二咲が連れてきた石丸と少し会話をしたぐらいだ。その後、【不二咲は石丸と一緒に捜査をしに出掛けて、暫くして不二咲一人だけ戻ってきた】。それからは【三人でずっと一緒に居て、誰かが訪れることもなかった】。しいて言うならば、【昨夜は女子会で我と朝日奈、セレス、不二咲、霧切の五人で朝日奈の部屋でそのまま雑魚寝をしてしまった】から、その掃除をしていたくらいだ」
「【女子会】?」
食い付くように、胡乱な目付きで尋ねてきたのは十神くんだった。大神くんは彼の視線に、その堂々とした態度を崩さずに応えた。
「ああ、そうだ。二回目の動機により落ち込んだ我々を慰めるために朝日奈が提案してくれたのだ。【石丸が大和田を勉強会に誘った】のを見て、閃いたらしい。昨日の【午前中、不二咲以外の女子でプールで泳いだ】後、【午後からは腐川以外の女子で朝日奈の部屋で女子会を行った】。我は【プール後に、更衣室でトレーニングした後に女子会に参加】して、そして、そのまま【朝日奈の部屋で夜を過ごした】のだ。【電子生徒手帳】に載ってる【校則】にも【就寝は寄宿舎エリアに設けられた個室でのみ可能です。他の部屋での故意の就寝は居眠りとみなし罰します】とあるが、【個室】であって【自分の部屋】とは明記していないので問題はない」
大神くんの回答に、どうしてか十神くんは気に食わなそうな表情を浮かべている。女子会――即ち、女子で集まって勉強会をしたのに、一体何が気に入らないというのだろうか。不思議に思って十神くんを見詰めていると、彼は「どうして、どいつもこいつも前回と異なることをするのだ」と恨めしそうに、かつ早口で呟いているようであった。
「女子会中は特に言うことは無かった……が」
「無かったが?」
歯切れの悪い言い方に、僕が続きを促すように末尾の言葉を繰り返すと、大神くんは僕にそろりとアイコンタクトを飛ばしてきた。その理由と意味が分からずに「構わずに続けたまえ」と僕は言った。
「……うむ。女子会中、あれは夜の十時頃であったか、山田と桑田が朝日奈の部屋のインターフォンを鳴らしてきて『石丸がぶっ倒れた』と伝えに来たのだ。言われて石丸の部屋に行ってみれば、石丸が頭をのぼせて、顔を真っ赤にして倒れていたから【我と霧切が率先する形で女子で介抱した後、大和田に責任を以て石丸の眼が覚めるまで看ているように伝えた】のだ」
「ちょっとしたアクシデントでしたが、殿方たちが右往左往するのを見るのは少し楽しかったですわ」
大神くんが遠慮がちに話した後、セレスくんがニッコリと微笑みながら補足にもならない補足を行う。あの恥ずかしい醜態を見られてしまっていた事実に、僕は顔が真っ赤になりそうであった。どうして、女子会について十神くん以外のクラスメイトが聞かなかったのか。つまり、この一件で桑田くんと山田くんと兄弟が知ったからだ。黙り込んでしまう僕に大神くんは一言「すまん」と呟いて――あのアイコンタクトはこれを意味していたのだ――「質問が無いなら、我はこれで以上としよう」と発言を終わらせたのだった。
49、桑田怜恩の発言
「そろそろ一巡しそうだな。八人目は俺だぜ」
次の発言者は桑田くんだった。
「途中まではセレスたちと同じだ。更衣室を見た後、俺は大和田に引き摺られる形で二階の他の部屋を見ることにしたんだ」
何故か途中で大和田に向けて「けっ」と悪態を吐くと、桑田くんはそのまま続けた。
「セレスたちは一階へ捜査範囲を広げたみたいだが、俺たち二人は二階を捜索し続けたぜ。部屋の扉を開け放したまま家探ししていたが、捜査中【俺たちが更衣室を出た以降に更衣室へ入った奴は一人もいなかった】。捜査時間がそろそろ終わろうかって時になって、大和田が着替えに寄宿舎の倉庫に行ったから、もうちょっと調べてから俺は一人でエレベーターホールに向かった。そうしたら、イインチョ以外、みんなエレベーターホールに集まっていて、石丸だけいなかったから、一番足が速いであろう俺が迎えに行ったワケ」
「その説はすまなかった」
頭を垂れる。【超高校生級の風紀委員】でありながら、皆に迷惑を掛けるなんて本当に僕は情けない。桑田くんは「いいってことよ。ただ、騎士ナイト役は俺のモノだぜ」と後半ちんぷんかんぷんなことをいいながらも許してくれた。
「二階の捜査中、特に真新しいものは無かったぜ。俺からは以上だ」
50、大和田紋土の発言
「よっしゃ、最後から三番目は俺だな」
大和田くんの番がやってきた。手と手を合わせてパシンと音を鳴らしながら、兄弟が発言する。
「セレスたちと更衣室の捜査をした後、俺は桑田と一緒に二階の探索をしてたぜ。扉を開けたまましていたから、誰が二階に上がってきたか分かるようにしていたが、桑田の言う通り【俺たち以降で更衣室に入った奴はいなかった】のは確かだな。そんで、捜査時間が終わる前に着替えようと思って寄宿舎の倉庫に行ったら、兄弟に会ったぜ。そして、俺は其処で【キーアイテム】を兄弟に渡したんだ」
ニィと笑いながら、兄弟が僕の方を見た。【キーアイテム】とは十中八九【壊れた霧切響子の電子生徒手帳】のことだろう。さくら色の小さなノートとは逆のポケットに入れた【証拠品の重み】を感じながら、僕も兄弟に向かって諾と頷いた。
「【キーアイテム】だと?」
「おっと、その先は兄弟の発言を待つんだな、財閥眼鏡野郎」
十神くんからの質問に兄弟は煽るようにして返すと「その後は大神と合流してエレベーターホールに向かった……が、途中で兄弟が二階へ向かっちまってな、足の速い桑田に迎えに行って貰った。これで以上だ」と発言バトンを次へ回したのだった。
51、不二咲千尋の発言
「十人目は僕だね」
そんな風にか細い声で話し始めたのが不二咲くんだった。
「僕は遺体のある更衣室前に行くのが怖くて、大神さんと一緒に朝日奈さんを看ていたんだ。途中で朝日奈さんが目を覚ましたから、誰かを呼びに行こうとしたら石丸くんに出会ったから、彼と一緒に朝日奈さんの自室に戻ったよ。その後、少しでも捜査に協力したかったから、石丸くんと一緒に【霧切響子の部屋】に向かったんだ」
「何故、霧切の部屋に?」
十神くんが横やりを入れる。威圧的なそれに不二咲くんは一瞬、身を強張らせたが「捜査や推理方法のメモがあるかどうか探しに行ったんだよ」と更に小さな声で答えた。
「でも、そんな捜査の極意が書かれたメモなんて無くて……。代わりに【霧切響子の日記】を見付けたけど、その日記には苗木くんが亡くなった悲しみが主に綴られていただけだったんだ」
「ところで、なんで、アンタは【視聴覚室の方角から飛び出してきた】のよ? 【霧切響子の部屋】とは、まるで別方向じゃない?」
次に質問を入れたのは腐川くんだった。そういえば、腐川くんは視聴覚室から飛び出してきた不二咲くんにぶつかられていたのだった。不二咲くんは「えっと……」と目を泳がせた後、僕を見てきたので「言ってしまった方が良い」という意味を込めて、僕は静かに大きく頷いた。
「【霧切響子の部屋】で、僕と石丸くんは彼女の日記帳以外で【苗木誠の第一の動機の映像が入ったディスク】を見付けたんだ。きっと、霧切さんはなんでもいいから苗木くんを想起させるものを持っておきたかったんだと思う。そのディスクの中身を確認しに、僕と石丸くんは【視聴覚室】へ行ったんだ。ディスクの中身は【苗木くんの御両親】と【苗木くんの妹さん】だと思われる【ショートカットの黒に近い茶色の髪の女の子】がいなくなっちゃう映像が入っていて――なんかそれを見たら、僕、怖くなってしまって、捜査を切り上げて、朝日奈さんの部屋に一人で戻ったんだ」
スカートの裾を握り締めながら、今にも泣きだしそうに告白した彼女は「後は捜査時間が終わるまで大神さんたちと一緒にいたよ。僕はこれで以上だよ」と言ったのだった。
52、石丸清多夏の発言、及び、論争のスタート
「最後は僕だ」
十一人目として、僕は発言した。
「【僕は舞園くんと大和田くんとセレスくんと山田くんと桑田くんの六人で犯行現場の女子更衣室前に行った。男子更衣室から中へ入ったが、ブーツの紐を解くのに時間が掛かってしまって、僕一人だけ探索が遅れてしまい、気が付けば、舞園くんと二人きりになっていた。彼女と捜査について話した後、気分の悪くなった舞園くんを部屋へ送った後に不二咲くんに呼び止められ、朝日奈くんの部屋にて、大神くんと朝日奈くんと少しお話をした。次に不二咲くんの提案で霧切くんの個室を調べた後、苗木くんの動機ディスクを調べるため、視聴覚室へ向かった。視聴覚室でディスクの中身を確認してから不二咲くんと別れた僕は水を飲みに食堂へ向かった。其処で今度はセレスくんと山田くんに出会い、捜査の進展について会話した。僕一人で食堂へ出た後は腐川くんに出会った。腐川くんから服の汚れを指摘されたので、着替えに寄宿舎の倉庫へ行くと、其処で兄弟がいた。倉庫に立ち寄った十神くんとも少しだけお話した。大神くんが迎えに来たから、僕たちはエレベーターホールに向かったが、気になることがあったので僕だけ捜査をしに】――」
「おい、貴様一人だけ長すぎるぞ。いい加減に【キーアイテム】とやらを見せろ」
まだ人が話している最中だというのに、十神くんが口を挟んでくる。人の話を最後まで聞くように、と習わなかったのだろうか。少しムッとしたぼくだったが、小さく息を吐くことで自らを落ち着かせると「これだ」とまるで印籠のように兄弟から託された【キーアイテム】こと【壊れた霧切響子の電子生徒手帳】を掲げた。
「石丸清多夏殿! そ、それは――?!」
「【霧切響子の電子生徒手帳】だ。僕の兄弟こと大和田くんが【霧切響子の遺体の側に落ちている】のを見付けて、僕に渡してくれたのだ」
山田くんの驚きの問い掛けに、僕は冷静に解説する。
霧切くんのスポーツバックを舞園くんと一緒に検分したとき、中には【ジャージ】【タオル】【スポーツ用のシューズ】【ペットボトルのスポーツドリンク】【ルームキー】が入っていた。何かが足りない、とは感じていたが、その違和感の正体は【電子生徒手帳】の不在だったのだ。
「血が……、穴が……っ!!」
「つまり――やはりというべきでしょうか――霧切さんは【女子更衣室に入ろうとして、タッチパネルにこの電子生徒手帳を合わせたときにマシンガンで撃ち抜かれてしまった】のでしょうね」
顔を真っ青にする腐川くんとは対照的に、セレスくんが淡々と推察を舌に乗せる。
「それにしても、酷い威力だぜ。あの硬い電子生徒手帳をここまで割っちまうなんて」
桑田くんの感想に、僕は決まりが悪い気分に陥った。確かに最初から電子生徒手帳の損傷は凄まじかった。しかし、そのトドメを刺したのは僕自身である。
「すまない。【霧切響子の電子生徒手帳】は最初から損傷は激しかったが、真っ二つに折れたのは僕のせいなのだ」
持って生まれた気性故に嘘が吐けない僕は【素直】に白状することにした。
「石丸、どういうことだよ?」
「俺が手渡す時にうっかり落としちまったのよ」
「兄弟の言う通り、僕の不注意故に割ってしまった。この通り、電池カバーの蓋まで完全に取れてしまう始末だ」
桑田くんからの問いに兄弟が回答し、僕が肯定する。ここまでくれば【正直】でいるべきだろう。こんなにまで壊してしまった、と示すように僕は電池カバーの裏まで皆に見せた。
「折角の【証拠品】に傷を付けるとは。あまりにも愚か過ぎて、声が出ないな」
十神くんからの正論たる指摘に僕は思わず黙り込んでしまった。
「おや? 【電池カバーの裏に写真】が貼り付けてあるようですな。穴だらけで判別できませんが、どうやら【四人程度の男女を撮った写真】と思われます」
「電池カバーの裏に恋人や友達の写真を貼るのが流行していたから、それだと思うよ。唯一顔が無事だった【この濃い茶色の短髪の少女】は霧切ちゃんが希望ヶ峰学園に編入する前の高校の友人なのかな?」
モノクマによって、巨大スクリーンに拡大された【電子生徒手帳の電池カバーの裏の写真】を見ながら、山田くんと朝日奈くんが考察を述べている。
「あれ? でも、僕、【この濃い茶色の短髪の少女】に見覚えがあるよ」
「不二咲、アンタ、霧切と同じ中学校だったわけ?」
「ううん、そうじゃないんだけど。何処だろう、何処かで見たことがあるんだ」
不二咲くんの発言に、腐川くんが問い掛ける。不二咲くんは【霧切くんとは同じ中学校ではない】で言いながら、【この濃い茶色の短髪の少女】に見覚えがあるようだ。そして偶然にも、僕も【この少女】に見覚えがあった。
(僕も不二咲くんも霧切くんと同じ中学校では無かったのにも関わらず、二人とも【この濃い茶色の短髪の少女】に見覚えがある。つまり、僕と不二咲くんは【同じもの】を見て、この解答に至っている訳だ。……思い出せ、石丸清多夏。不二咲くんと一緒の行動時に見たモノを。きっと、其処に答えはある!)
さくら色の小さなノートを捲る。すると、答えの輪郭が見えてきた。
「でもよ、これ、事件に関係なくね? だって、【霧切の電子生徒手帳】の電池カバーの裏に【霧切の中学校時代のダチの写真】が貼ってあるだけだろ」
「【それは違うぞ】」
桑田くんの発言に、僕ははっきりと【否定の言霊コトダマの弾丸ダンガン】を撃ち込む。クラスメイトの視線が一斉に僕へと逆に撃ち込まれるなか、僕は心して言った。
「その電池カバーの裏に貼られている写真の【この濃い茶色の短髪の少女】は【霧切響子の中学校時代の友人ではない】」
「じゃあ、イインチョ、いったい誰なんだよ?」
「【苗木誠くんの妹】だ」
僕の発言にクラスメイトがどよめいた。
「僕は【苗木くんの動機ディスク】を一度見ている。其の映像に【この濃い茶色の短髪の少女】は映っていた。そして、この子は苗木くんのことを『お兄ちゃん』と呼んでいた。つまり、その子は【苗木誠の妹】であって、この電池カバーの裏の写真は【霧切響子の中学校時代の友人たちの集合写真】ではなくて【苗木家の家族写真】だ。不二咲くんに見覚えがあったのは、僕と一緒に動機映像を見たからだ」
そして、僕は更なる推察を追撃させた。
「朝日奈くんは【電池カバーの裏に恋人や友達の写真を貼るのが流行していた】と言っていた。だが――男女を超えた強い友義で結ばれていたとはいえ――他人の家族写真を貼るなんて、可笑しな話だ。【自分の家族写真を貼るならともかく】」
「え? それでは、石丸くん、これは――」
「これは【霧切響子の電子生徒手帳ではない】。第一の事件で亡くなった【苗木誠の電子生徒手帳】だ」
舞園くんからの質問に回答する形となった僕の発言に、クラスメイト内のどよめきが増す。知らず知らずのうちに握り締めていた拳の力を抜いていると、兄弟と目が合った。兄弟は唇だけで「よくやったぜ、兄弟」と言ってくれたので、僕は嬉しく思った。
「道理で【苗木誠の電子生徒手帳】が見付からない訳ですわ」
「セレス殿。これは即ち、霧切響子殿は御自身の電子生徒手帳と思い込んで【苗木誠の電子生徒手帳】を女子更衣室に入るときに使用してしまった、ということでしょうか」
「山田くん、物分かりが早いようですわね。モノクマがヒントとして《【クロ】は【異性が更衣室に入ろうとした場合、マシンガンで撃ち抜くプログラム】を【利用】した【罠】を張った》と言っていましたが、その【プログラム】の内容は【男子の電子生徒手帳で女子の更衣室の扉を開けようとした場合にマシンガンが発動する】ということでしょうか」
違いますか? と確認するように、セレスくんがモノクマを見上げる。すると、モノクマは今の今まで静かにしていたのが嘘のように「パンパカパーン! 大正解!!」と何処から飛んで来たのか知らぬ花吹雪と共に笑ってみせた。
「もしかすると【苗木誠の動機ディスク】みたいに【苗木誠の電子生徒手帳】を偶然見付けた霧切がそれを持っていて、間違って使っちまったとか、ねぇよな?」
「大和田くん、それは無いと思うよ。僕が石丸くんと一緒に霧切さんの部屋を捜索したけど、【霧切響子の電子生徒手帳】は見付からなかったから」
「なら、【霧切響子の電子生徒手帳】は何処にいっちまったんだ?」
「相変わらず、物分かりの悪いプランクトンだ」
「ああ? ンだと、十神?」
兄弟と不二咲くんの会話に、呼ばれてもいないのに十神くんが参入する。小声で「兄弟」と僕が苛付いた大和田くんを制していると、十神くんは生き生きとした様子で語った。
「モノクマは【罠トラップ】と言った。つまり、霧切が誤って使ったのではなく、【犯人が霧切を罠に嵌めるために電子生徒手帳を入れ替えた】ということだ!」
モノクマのことは信用するな、と初めてヒントが出たときは笑っていたのにこの時ばかりは信じるのだな。一瞬そんな呆れた感想が僕の胸の内に去来したが、この学級裁判には関係ないので黙っておく。今、大事なのは【いったい誰が霧切くんの電子生徒手帳を入れ替えたのか】ということだ。そして、この【入れ替えた人物】こそが霧切響子殺人事件の【犯人】となる。
「とうとう、事件の核心に近付きましたな。拙者、身震いが止まらなくなってきました」
「それで、入れ替えしたのは誰なんだよ!? 言っとくが、俺じゃねぇぜ! 霧切とは会話したこと全くねぇし、食堂の席すら近くじゃないんだからな!」
「せせせ拙者も違いますぞ! 僕が会話できる女性は、うさぎさんぐらいですからな!」
「そういえば、イインチョ、霧切と仲が良かったよな?!」
「仲が良かったどうかは別として、霧切くんと最後に会話したのは僕だ」
山田くんと桑田くんが早口で慌てて身の潔白を証明している。不意に桑田くんに水を向けられ、僕は正直に答えた。すると、周りが一気に僕から距離を取ろうとしたのが分かった。しまった、【疑われてしまっている】!
「なななナント! 仲が良いと見せかけて殺すとは、実に侮れませんな!」
「違う! 僕は彼女を殺していない!!」
「否! 石丸は犯人ではない!」
山田くんの決め付けに咄嗟に反論する僕を援護してくれたのは大神くんであった。
「【今朝、我は朝日奈と共にプールへ行こう】として、更衣室へ続く廊下で石丸と霧切が会話しているのを階段から目撃している。邪魔をしたくなかったから最初からずっと見守っていたが、途中で石丸に怪しげな動きは無かった」
「私も見ていたから証明できるよ!」
「そ、そうでありましたか。拙者としたら、とんだ早とちりを」
「大神くん、朝日奈くん、ありがとう」
朝日奈くんにまで加勢してもらい、僕の潔白が証明される。一息吐きそうになったが、守ると決めた相手(女子たち)に守られてしまったので、今度は僕が返さねばならない、と心に決めた。
「最後に霧切が電子生徒手帳を使用したのはいつだ?」
「びゃ、白夜様……た、確か、昨日の朝、プールに入るときは霧切の電子生徒手帳で入ったから、多分、それで最後だと思います。【個室はルームキー】だし、【備品倉庫に入ったりするのに電子生徒手帳は要らない】ので」
十神くんの質問に颯爽と腐川くんが答える。舌打ちしながらも回答を受け取る十神くんを見詰めている腐川くんは何処となく嬉しそうだ。
「それじゃあ、昨日の今朝以降――昨日の午後から霧切に接触した奴が【容疑者】ってヤツになるのか。なら、俺と兄弟、桑田と山田は違うぜ。桑田と山田は途中参加とはいえ、昨日の午後から俺は兄弟の部屋でずーっと【男子会】をしていたからな」
僕の正体――『石丸清多夏は最大最悪の汚職事件で総理大臣を失職した石丸寅之助の孫である』がバレたら、大和田くんとは兄弟でいなくなってしまう。ならば、最後に思い出を作ろうと思って企画した【勉強会】こと【男子会】が、まさかアリバイになるとは、思いも寄らない方向で役に立つ結果になっていた。
「昨日の午後から、俺はずっと図書室にいた。無論、霧切とは会っていない。アリバイの証明は、そこのストーカーがするだろうよ」
「は、はい! 白夜様はずっと一人で図書室にいらして、私はずっと影から見守っていたわ。夕飯後、白夜様はすぐに自室にこもってしまったから、私も自室に戻るしかなかったけれども」
皮肉にも、十神くんへの腐川くんのストーカーっぷりが彼のアリバイを証明したようだ。
「他の奴等はどうだ?」
十神くんが周りを見渡す。……と言っても、発言していない人物は、かなり絞られていたが。
「昨日、私たちはずっと霧切さんと一緒にいました」
「午前中のプールから午後の女子会。更にそのまま朝日奈さんの部屋で一夜を明かしましたから、霧切さんとは今朝まで一緒だった、と言っておきましょうか」
舞園君とセレスくんの何処か観念したかのような切り口に、ぼくは「え?」と声を漏らしそうになった。まるで、今の今まで目を逸らしていたものから急に目を合わせてしまったかのように、冷気のような怖気が僕の足元から這い寄ってくる。
「つまり、【舞園・セレス・不二咲・朝日奈・大神・腐川の六名は霧切の電子生徒手帳を取り換えるチャンスがあった】ということか」
「びゃ、白夜様!? どどどうして私まで!? 私は【女子会】に参加していないのに――」
「プールで泳ぐときに更衣室に全ての荷物を――電子生徒手帳を含めて置いていくからな。先に一人だけプールから上がれば取り換えるチャンスは生まれるだろう」
「そ、そんな……」
十神くんのアリバイを証明したのにも関わらず、彼の口から【容疑者】として含まされてしまった腐川くんが大きく肩を落とす。だが、肩を落としたいのは彼女だけではない。
(僕の無実は証明された。……だが、なんてことだ! 僕の守りたかった女子生徒たちこそが【容疑者】になってしまうなんて!!)
頭がクラクラする。僕が苗木くんと【女子生徒を守る】と約束した。だが、その女子生徒六名の中に今回の【犯人】がいるのだ。そして、此の中に霧切くんを殺害した【犯人】が間違いなく存在しているのだ。
思わず僕は、その女子生徒六名の顔を見た。
僕の無実の証明をしてくれた朝日奈くんの顔は青褪めていて、僕とは真逆に【女子会】を企画してしまったばかりに【容疑者】となってしまったことで自責の念に駆られているようであった。
同じように力強く否定してくれた大神くんは気難し気な顔を更に気難し気にして黙り込んでいる。
セレスくんはいつも通り涼し気な表情を浮かべているが、その内心は計り知れない。
腐川くんもいつも通り指先の爪を齧っていて「私じゃない、私は犯人じゃない」と頻りに呟いている。
不二咲くんは小動物のように体も唇も震わせていて、瞳をふらふらと漂わせていた。
舞園くんも同じように体を震わせていたが、視線は誰の顔も見たくないと言わんばかりに床へ向けられていた。
そんな舞園くんが不意に僕を見た。丁度、僕が舞園くんに視線を向けていた時だったので、視線が交差する。一瞬、僕は背けようとしてしまったが、彼女の唇が僕の名前を形作ったのを見てしまった以上は、そんな酷いことは出来なかった。
(僕は苗木くんと女子生徒を――ひいては舞園くんを守ると約束した。嗚呼、でも、霧切くんへ殺人罠キル・トラップを仕掛けた【犯人クロ】は間違いなくこの中にいる。僕はいったいどうすれば良いのだろうか)
思考が溶けてしまいそうになる錯覚を覚える。
さくら色の小さなノートに走らせていたペン先はいつの間にか止まっていて、カチリと制限時間を知らせる針の音が学級裁判所を支配していた。
…to be continued