天之河勇者伝   作:スカイハーツ・D・キングダム

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第一話 世界の命か身近の命

 

愛子「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」

 

クラスメイトから愛ちゃんの愛称で親しまれている畑山愛子がイシュタルに怒鳴り込む

 

なぜこのような状況になっているのかと言うと

このイシュタルという男は語る

曰く、このトータスには人間族、魔人族、亜人族の大きく分けた3種族が存在し、 人間族は北一帯、魔人族は南一帯を支配しており、亜人族は東の巨大な樹海の中でひっそりと生きており、人間族と魔人族は何百年も戦争を続けている。 魔人族は、数は人間に及ばないものの個人の持つ力が大きいらしく、その力の差に人間族は数で対抗して戦力は拮抗し大規模な戦争はここ数十年起きていないらしいが、最近になって魔人族側の力が増しておりこのまま行けば人間族は滅びの危機を迎える

そこで人間族が崇める神『エヒト』が人間族を救うために他世界からの勇者一行を召喚という名の誘拐をした

 

早い話が、『私達滅びそうだから他世界の者達よ、戦争に参加して我らをすくい給え』ということになる

 

そして愛子の言葉へ繋がる

 

イシュタル「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」

 

愛子「そ、そんな……」

 

愛子が脱力したようにストンと椅子に腰を落とす

周りの生徒達も口々に騒ぎ始めた

 

「うそだろ? 帰れないってなんだよ!」

 

「いやよ! なんでもいいから帰してよ!」

 

「戦争なんて冗談じゃねぇ! ふざけんなよ!」

 

「なんで、なんで、なんで……」

 

パニックになる生徒達

 

そんな中光輝が立ち上がりテーブルをバンッと叩いた

 

その音にビクッとなり注目する生徒達

光輝は全員の注目が集まったのを確認するとおもむろに話し始めた

 

光輝「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」

 

イシュタル 「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」

 

光輝「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

 

イシュタル 「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

 

光輝「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!俺がみんなを守る!!」

 

その言葉により光輝のカリスマは遺憾なく効果を発揮し、絶望の表情だった生徒達が活気と冷静さを取り戻し始めたのだ

 

龍太郎「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。……俺もやるぜ?」

 

雫「そうね…今のところ、それしかないわよね。……気に食わないけど……私もやるわ」

 

香織「え、えっと、雫ちゃん達がやるなら私も頑張るよ!」

 

いつものメンバーが光輝に賛同する。後は当然の流れというようにクラスメイト達が賛同していく。愛子はオロオロとした様子で「ダメですよ~」と涙目で訴えているが光輝の作った流れの前では無力だった。 結局、全員で戦争に参加することになってしまった。おそらく、クラスメイト達は本当の意味で戦争をするということがどういうことか理解してはいないだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光輝「よし、全員集まったな。これより『第一回トータス円卓集会』を始める」

 

トータスへ来たその日の夜

光輝に呼ばれたクラスメイト達全員が一室に集まった

 

香織「ね、ねえ光輝君。なんで龍太郎君と永山君は部屋の外にいるの?」

 

光輝「あのふたりは見張りだ。どこかで俺達の話を盗み聞きされるかわからないから念の為だ。一応ふたりには先に話しておいたし意見も聞いてきた……そして本題なんだがその前に……すまない……皆を戦争参加に巻き込んで…」

 

遠藤「な、何言ってんだよ天之河!!」

 

クラスメイトの一人にして影が薄……気配遮断が得意な遠藤浩介が口を開く

 

光輝「……真面目な話……この中で戦争に参加することが、どういうことかわかるやつ……手を上げてくれないか?」

 

光輝がそう言うと数名が手を上げてきた

 

光輝「……なら恵里……戦争参加する事がどういうことか言ってくれないか、変に言葉を選ばず正直に…」

 

クラスメイトの一人、中村恵里が口を開いた

 

恵里「……戦争に参加するってことは…僕たちが人を殺すことになるしこっちが死ぬかもしれない」

 

恵里の言葉にクラスメイト達の間で動揺が走る

 

遠藤「ま、待てよ!それじゃあ…天之河はそれをわかっていたのに戦争参加するって言ったのか!?なんでだ!!」

 

清水「……そうする他無かったからだろ?」

 

クラスメイトの一人であり、ハジメに匹敵するオタクである清水幸利が口を開いた

 

光輝「ああ…あのとき、俺達に戦争参加しないなんて選択……あってないようなものだった……お前らがさっき地球へ帰れないことでパニックになってたとき、イシュタルがどんなツラでこっちを見てたか気付いた奴いるか?まるで『エヒト様に選ばれておいてなぜ喜べないのか』とでも言いたそうな侮蔑な表情を浮かべていた……仮に戦争参加しないなんて選択した場合の最悪はなにか言ってみろ南雲」

 

ハジメ「それは……『エヒト様に選ばれておいて我々を救うという使命を放棄した愚か者共』として罰せられることかな?」

 

光輝「そうだ…そして俺が想定した最悪は『異端者として処刑』されることだ…まだ王国から追放されるとかだったらまだマシだが、俺達はこの世界の事を全く知らない。おまけにこの世界の人々よりも強いなんて言われたが俺達は自分がどの程度強く、どの程度やれるかの把握すらも出来ていない……今の現状で教会や王国に協力しない姿勢でいるのは危険だった。だからあのとき、パニックになっていたときに無理矢理協力する意思を見せてとりあえずこちらの信用を見せた……それと俺達を召喚してみせたエヒトって神のことにも疑惑がある……本当にこの世界の人々を救う意志があるならわざわざ俺達を召喚なんてせず直接自らの手で乱世を収めるんじゃないか?仮に理由があって直接的に干渉できずに異世界の住人である俺達に頼らざるを得ないにしても、前もって了承すらもせず、誘拐同然に異世界召喚するような神……俺は信用できないが……どう思う?」

 

光輝がそう言うとクラスメイト達も改めて思い返し疑心の表情を浮かべた

 

光輝「イシュタルの前じゃ協力する姿勢を見せるためにああ言ったが本音を言うと、俺はこの世界を救うつもりはない。誘拐同然に召喚し、俺たちに謝罪もしない。挙げ句の果ては俺達を戦争に勝つための道具くらいにしか見てない連中の為に戦うほど俺は善人じゃない……あらためて聞く……この中で、この世界の為に命を掛けたい、人々を救いたいと思う奴……手を上げてくれないか?」

 

光輝はそう言うが、誰も手を挙げなかった

 

光輝「……そうか…なら…これがこのクラスの総意ってことでいいな……それじゃあ今後の方針だ……俺達は戦争に参加し教会や王国に協力する……ただしそれは表向きだ……最終目的は地球への帰還……その為の方法を見つける……手に入り次第、さっさと帰る……その為には皆がそれぞれ協力する必要がある。でも無理にできないことをするんじゃない……皆がそれぞれできることをやっていけばいい。できないものがあればそれを他の誰かがフォローすればいい……明日になれば俺達に適性のある天職?って奴が判明するから、その時に役割分担しようか……そして最後に」

 

光輝は皆の前に立つと全員に頭を下げた

 

光輝「俺の考える最悪を回避するためとはいえ、皆を戦争に巻き込んでしまって、本当にすまなかった」

 

そんな光輝の姿にクラスメイト達は頭を上げるようにいう

 

香織「や、やめてよ光輝君!光輝君のせいじゃないから!!」

 

園部「そ、そうよ!天之河がああ言わなかったら私たちはどうなっていたか」

 

光輝「それでも!……俺が巻き込んでしまったことには変わりない………戦争に参加すれば……ここにいる誰かは死ぬかもしれない……もしかしたら…帰れないかもしれない……」

 

クラスメイト達「「「………」」」

 

光輝「絶対大丈夫……なんて簡単には言えない…でも…これだけは約束する………俺は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界の人々を見殺しにすることになったとしても、皆を……誰一人欠けることなく地球へ帰還させるまで、戦い続ける!!だから皆も、希望を捨てず、生き抜いて欲しい!!この残酷な世界を!!俺と一緒に!!

 

光輝の演説を聞き、クラスメイト達から歓声とともに賛同の声が並ぶ

 

清水「異世界を救う為でなく帰還するための一致団結か……世界見捨てることになるけど全員がそうなら怖く無いな」

 

鈴「エリリン!やろうよ一緒に!!」

 

恵里「うん!」

 

香織「光輝君!!頑張ろう!ハジメ君も!!地球に帰るために!」

 

ハジメ「うん!そうと決まれば張り切ってこの世界で色々と制作するか!!あ、この世界ならニトログリセリンよりも強力な爆薬作れるかもしれない」

 

光輝「いや南雲!お前は自重してくれ!!多少はっちゃけるのは許すが目をつけられない程度で抑えてくれ!」

 

こうして、彼らは戦争に参加しつつも地球へ帰るための方法を見つける為一致団結するのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《部屋のベランダ》

 

 

光輝「……」

 

無事集会を終えたその日の夜

光輝が眠れずにベランダで月を眺めていた

 

光輝「……(戦争に参加する以上……人を斬る機会も殺す機会も当然ある……でも……できることならクラスメイト達に人殺しをさせたくない……いざとなれば…)」

 

雫「光輝?」

 

そこへ、隣の部屋のあるベランダから雫が顔を出す

 

雫「……眠れないの?」

 

光輝「ん……ちょっとな……今後のことを考えると、眠るに眠れないからさ……雫のほうは?」

 

雫「うん…私もね……ねえ……そっち、来てもいい?」

 

光輝「……ご自由に」

 

光輝がそう言うと雫がベランダの間を超えて、光輝の隣りに降り立った

 

光輝「……多分この先…地球にいた時みたいに俺が皆を率いるリーダーになるだろうな……あのときのイシュタルも俺がクラスに大きく影響の与える存在って見抜いていたみたいだしな」

 

雫「……そうなるかもね……」

 

光輝「……そうなって来ると…俺一人でクラス全体をまとめ上げるのはきつくなるから……雫……女子の方は君に任せてもいいかな?」

 

雫「ええ……任せて……」

 

光輝「…ありがとう……君は本当に頼りになるな…」

 

雫「フフッ…貴方には負けるわ………ねえ光輝」

 

光輝「なに…」

 

雫「何でもかんでも……一人で背負わないで……私も居る……香織に龍太郎も南雲君に他の皆だって居るのよ………これから辛いことや大変な事があって、苦しむことがあるかも知れない……それでも……頼って欲しいわ……私は付き合うわ……愚痴でもなんでもね…」

 

光輝「……うん……わかった………それじゃあ雫に一つお願いしてもいいかな?」

 

雫「なに?光輝」

 

光輝「その……膝枕…」

 

雫「!!///」

 

光輝「い、いや…その…なんていうか……今日色々あって疲れてるんだけど眠れなくて……人肌が恋しいっていうか……多分やってくれれば……眠れそうだから………ああごめん!!変なこと言って!!今の忘れてくれしず!?」

 

最後まで言い切る前に雫が光輝の頭を両手で包み込むとそのまま膝に寝かしつけた

 

雫「こ///これでいい?///」

 

雫が頬を赤くしながら光輝に膝枕をした

 

光輝「ご、ごめん雫!!君に嫌な事させちゃって」

 

雫「嫌じゃないから!!」

 

光輝「!?」

 

雫「そ///その///光輝にこういうことするの……私嫌じゃないから///そ、それに///

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どんな形でアレ……貴方の役に立てるなら私が嬉しいから……」

 

光輝「……」

 

そこからはふたりともに無言になった

 

光輝は目を瞑りながら心臓がバクバクとしていたが雫が頭を優しく撫でていき、徐々に眠りへと誘っていった

 

光輝「(……俺は……皆を……そして…君のことも……守り…抜くためなら………)」

 

そしてしばらくして…光輝が眠りにつき、そんな光輝の寝顔を見て雫は

 

雫「おやすみなさい……光輝」

 

そう言って部屋に戻ろうとしたが光輝が動かなかったのでしばらく待とうと思ったが、やがて雫も眠くなり、光輝の頬に手を添える形で眠りについたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

光輝のことを起こしに来た龍太郎と香織が部屋に入るとベランダで眠るふたりに驚きの声を上げそれによりふたりは飛び起き、龍太郎から

 

龍太郎「え?お前らいつの間にデキていたのか!?」

 

と言われ、誤解を解くのにしばらく掛かったふたりであった

 

 

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