奈落の国のグエル   作:PureFighter00

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劇中のストリップ小屋における「一部の表現」が、平成初期頃からストリップ劇場が激減した理由である。マジで暗黒、実際酷い。コロンビア辺りから連れられて来てるから、あれ麻薬カルテルとか絡んでる奴違うか……(ロック座とかは多分安牌)


小さな恋のメロディ 後編

ストリップ劇場にだって朝は漏れなくやって来る。

どこから紛れ込んだのか雀がちゅんちゅんと鳴きながら、昨夜の酔漢の吐瀉物に混じるラーメンの残骸を(つつ)き、人類が宇宙に進出しても尚、人類の傍には野良猫様が優雅に寛いでいた。

年齢不詳の踊り子達に混じり、ナジ達は朝飯を食っていた。ストリップ劇場の踊り子達は10日毎に劇場(ハコ)を渡り歩く。金のない者は劇場が用意した粗末な寝床で夜を越して、僅かな日銭を貯めるのだ。

年齢不詳の女の中に、若い娘が数人居る。身分も仕事も何もかも騙されて連れて来られた若い娼婦である。この娘たちは騙されて、或いは全て知りつつも「その筋の方」に従い、裸をライトの下で晒して舞台から降りたら客を取る。無論違法だ。この違法な稼業の元締めがいるからナジはこの劇場を選んだ。

「裸晒して金入るなら楽だよね、私も脱ごっかなー?」

「お子様体型じゃ客なんてつかないわよ」

「──いないことは無いぞ。客取るなら物好きは集まって来る」

「社長、やめてくれ。コイツ嫌な客来たら食いちぎるか絞め殺すぞ」

「……死体は困るな、金がかかる」

薄い塩味のスープ、硬いパン、極限まで薄く塩辛いベーコン。だが弾は飛んで来ない、平和な食卓だ。若い娘たちのコーナーは陰鬱だが、ソフィとノレアは「死なないだけマシ」と侮蔑の目を向ける。奴らは蹂躙されることを受け入れ、私たちは蹂躙することを選んだ。気合いが違う。

そこに元男が降りて来る。社長は下卑たハンドサインで「ヤったか?」と尋ねるも、元男はかぶりを振る。ナジは驚いた。

「なんだ、EDか?」

「何したのよデブ、エイリアンと寝るのはごめんよ!」

「……なーんにも、してねぇんだがなぁ。おじさん紳士なんだぜ?」

「レイプされた後の処女みたいな顔してたわ。誰よあの子のケツ掘った奴! 責任取りなさい!」

「──ヤったの?」

「俺は兄弟仲良くってのは好かん」オルコットはストレート(異性愛主義者)だと主張した。

「大方、童貞卒業が刺激的だったんだろ」ここでの童貞は刃牙的な意味合いでの──殺人という文脈だ。ナジはあまり気にしていない。殺しておかしくなるのは良くあることだ。続けてりゃ、慣れる。

「1発ヤれば、しゃんとすると思ったんだけどね、足手纏いだから始末する?」

「……金は払えよ。街では処理に金かかんだ」社長は親指と人差し指で円を作る。必要なのは、コレだ。

「──かね、金、カネ! 私たち街には住めないね」

「殺して金が手に入るんじゃなく、殺したら金払う。あべこべだぁ!」

「で、金は誰が払ってくれるの?」元男は当然の要求をした。

「え? あいつ、持ってないの?」

持っていませんでした(真顔)

 

 

「マジでか、こいつ……墨すら入ってねぇ!」

「ナジー、コイツのポケットネジしか入ってなーい!」

「私物ロッカーにしまうタイプか? 端末(スマホじみたアレ)すら持ってねぇぞ?!」

ドヤドヤとナジ達はグエルの部屋に押しかけて、彼の着衣をひっくり返して持ち物検査をした。アドステラの時代でも船乗り達は遺体の損傷を懸念して刺青(タトゥー)を入れる。身体に名前を書いておけば事故で何もかも……頭や手足を失っても……誰だか分かるって寸法だ。全く身寄りが分からないというのはあり得ない。

 

逆に、散々ミオリネの家出騒ぎに付き合わされたグエルとしては当然の理由だった。端末抱えて逃げるなんてナンセンス過ぎる。GPSで追跡してくれと大声で叫ぶ様なものだ。逃げるなら端末やデバイス類は外す、鉄則だろうが。

 

 

午前中の客が入る前のストリップ劇場に、悪ガキ達が楽器を抱えてやって来る。ライブハウスなんて洒落た物がないこの街では、ガキが借りる事が出来るステージは限られている。

 

 

「コノ ハゲシイ メロディヲサケブホドノ〜

イカリナド イーマーワーモウ ナーイーカーラー ネェ」

 

「うっさいな下の連中……」

「下手だなぁ……」

「おい、オルコット。これ本当にグエルか?」

「間違いない、ガキの頃の面影が残ってる」

 

「メロディ、メロディ、メロディ、アノフタリガ

メロディ、メロディ、メロディ、ドコエーイッタカー

メロディ、メロディ、メロディ、アナタ 分かる?

メロディ、メロディ、メロディ きっと地獄なんだわぁーっ!」

 

「ぶっ飛ばして来るか」

「──やめてくれ」

「──はぁ?」

「ゾンビが喋った!」

「やめてくれぇっっっ!!!」

 

 

メロディ メロディ メロディ 「恋も人も」

メロディ メロディ メロディ 「ねぇ、消えるでッしょ?」

メロディ メロディ メロディ 「だから私ィ」

メロディ メロディ メロディ 「早く死んで消えるのぉーっ!」

 

メロディ メロディ メロディ 聞いてくれよ

メロディ メロディ メロディ そう 夢のように

メロディ メロディ メロディ 何もかもが

メロディ メロディ メロディ そう 消えていく

メロディ メロディ メロディ 消えることは

メロディ メロディ メロディ でも コワク無い

メロディ メロディ メロディ 聞いてくれよ

メロディ メロディ メロディ ただ 消えるだけなのさ

 

「……嫌な、歌だな」

「──ただ、消えるだけ──」

 

メロディ メロディ メロディ 「あの二人が」

メロディ メロディ メロディ 「どこへ行ったか」

メロディ メロディ メロディ 「あなた、わかる?」

メロディ メロディ メロディ 「きっと地獄なんだわ」

 

 

 

「ここが地獄だよ。スペーシアンども……」

「やめてくれ、やめてくれ……」

 

 

朝っぱらから筋肉少女帯の「小さな恋のメロディ」が流れる街は、ちょっと嫌だな(筆者談)




意図的にフォルドの連中の表情などの描写は省きました。ご想像にお任せします。彼らは最後のセンテンスは聞いていません。
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