奈落の国のグエル   作:PureFighter00

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音楽鳴ったり歌を歌うとくねくね身体を動かすオモチャがありました。


サボテンは踊るのをやめた 前編

【ノレアの日記から】

私たちは私物を余り持てない。ナジの方針で持ち物から身元や潜伏場所がバレない様にする配慮だと聞かされている。理由の半分……いや、7割ぐらいは本当だろう。残る3割は単純にお金が無いから。テロ屋は大金が入る大きな仕事だけど、それほど毎日テロの仕事があるわけじゃ無い。だから潜伏中のナジとオルコットは今日も清掃の仕事に行く。清掃って言ってもスイーパーとかそんな物語に出て来る格好良い物ではなくて……

 

 

「こうなると本当に人間なんてのはクソ袋だな」

「なーんでタマも飛んで来ない所でおっ死ぬかねぇ?」

「そいつはちげぇぜ若いの。人間なんてのはどこでも死ぬんだ、あっさりな」

いわゆる、特殊清掃である。

うっかり死んでたまたま死んだ事が暫く誰にも気付かれないと、人間の死体は腐るのだ。オルコットは「こんなに臭うのに周りの人間は気付かないものかね」と呆れているが、案外隣の住人も死んでいるかもしれない。

ポスティングのチラシがポストから溢れていたりしたら要注意だ。迂闊に管理人と部屋に向かうと事情聴取が待っている。

 

【特殊清掃】

腐乱死体出しちゃった時に、警察に相談すると業者紹介して貰えるよ!(役立てたくない豆知識) 案外孤独死とか多いのか、エアコン掃除頼まれて行ったら床板切り取られてたり、昆虫の蛹のカスがあちこちに着いてる無人のお宅は稀に見る。断りゃしないから正直に話してね。

 

それは街の臭気によりマスクされていた。道端で干からびている猫の皮。半分だけ齧られたネズミ、酔っ払って倒れているのか、死んでるのか、クスリでお楽しみ中なのか分からない人型(ひとがた) 全ては夜の帷の中に溶け込んで気配を薄く薄く、希薄にする。それがなくなった時が死んだ時なのだろう。生まれたものは必ず死ぬ。諸行無常は世の常だ。

 

行政担当企業は一通りの検死を済ませると、後の処理は下請けの業者に任せてしまう。いくら貧乏をしていても腐乱死体の処理が好きな奴はあまり居ない。よって割と儲けはデカいがこの業種にはライバルが少なく、死体に慣れてるテロ屋には良いバイトになっている。

二人がかりで死体を特殊バッグに詰めて匂いが漏れない様にする。遺体が寝ていた床は変色して腐っているのでレシプロソーで切って剥がす。壁や天井には蠅が羽化したウジの残り滓だらけだが、リフォーム屋がなんとかするだろう。この現状見たらアホでも分かる。ああ死体があった部屋か。今日はついてねぇな、と。

提供されたオゾン発生装置を置いて鍵をかける。ドアにはオゾン消臭中の注意書き。ナジはこの部屋から踊るサボテン人形をガメてきた。俺たちがヒイコラしてる時にバカみたいに踊ってた罰だ。グエルほどデカくないし、これぐらいならソフィへの土産に良かろうと。

 

 

「死体と刺身は新鮮なのが1番だな」

「クサヤだよクサヤ。人型のクサヤ。味見は勘弁だがな」

「タオル置いとくよー、出来たら皮一枚剥がして匂い落としてから来てねー」

「ソフィ、そこのサボテン要るかー?」シャカシャカ

「……何この変なの?」シャカ……

「音に反応して踊るオモチャだ、好きだろそういう変なの」

ドタバタという足音とともに、シャカシャカ音が遠ざかって行く。

「……まるで猫じゃらし貰った猫だな」

「で、ナジよ……まだ俺臭いか?」

「だいぶマシだが、キンタマ腐った感じかな?」

「マジか、金玉は不味いな」

「棒も大切にした方がいい」

 

 

翌日からソフィはサボテン抱えて、陰気な若い女たちとダンスレッスンに参加していた。割とサボテンはヤバい臭いを発しているけどソフィは全く気にしていない。久しぶりの「私のもの」だからかご機嫌だ。

どうせ陰気娘の誰もダンスなんか見ないんだし、股おっ広げる柔軟体操でもしたらいいのに。需要はそんな所に無いと思う。パンツ工夫した方が効果的じゃないかな。

「ほらぁ、サボちゃんみたいにちゃっちゃ踊りなよ! こうだよ、こう!」シャカシャカ シャララシャカシャカ♪

ソフィは運動神経がいい。動画サイトで見たご機嫌そうなバカのダンスも2〜3回見たらコピー出来る。

「はいはいハイHigh!」シャカシャカシャカシャカ♪

「ソフィちゃん上手いね! マジでウチで踊り子やらない?」

「こんなロリ使ったらすぐポリ来るよ!」

「こちとら本職よ! お前より若いの踊らせた事もあらぁ!」

「え〜、でもぉ〜。ダンスじゃトキメキ感じないしぃ〜☆」

バカばっかり。

ソフィは殺す為なら股も開くけど、組み伏せられるぐらいなら首筋にだって噛みつくよ。どちらにせよ入る金より出る金の方が多くなる。街じゃ飼えない山猫だ。

 

【山猫】

デカい犬は飼えるが、デカい猫は通常飼えない。ちょいと戯れたら人が死ぬからである。人間がギリ手元で飼育できる限界のサイズが家猫だ。犬類で最強は狼だが、ネコ類最強はプレデターキャットの皆々様だ。ネコ様を恐れよ。

 

今ではケツをフリフリご機嫌だけど、バディを組んでる私ですら偶に心配になる。この子死が目の前まで歩いてきても、余裕で猫じゃらしを追わないかしら? 本能に忠実というか、悟性や理性がストライキ起こしている様な気がする。




サボテン、ネコ、シャララシャカシャカ……妙だな?


(分かりやすい方が読者も身構えてショックに耐えやすいだろうという配慮)
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