3人が出会って幾ばかの時間が経ち。
讃州中学校の入学式を終え、3人はめでたく中学生となった。
3人のうち光一郎だけが別のクラスになってしまった時は少し寂しく感じたが、事あるごとに2人が顔を見せに来るので「クラス分かれても変わんねーな」と光一郎は思った。
そして彼らが入学して大体1週間くらいの頃、突如としてそれは起きた。
「世のため人のため活動する――――それが勇者部なのよ!」
「ね、凄いよねこういっちゃん!特に響きがカッコいい!」
「俺に人権ってモンはねぇのか?」
「光一郎君、大人しく諦めた方が身のためよ」
「お前は俺に何する気なの?」
時刻は放課後。
突如教室へと襲来した友奈に拉致されたのだ。
あまりの手際の良さに教室が拍手喝采が巻き起こった。
連れてこられたのは勇者部の部室。そこに待ち受けていた勇者部の部長を名乗る先輩に勇者部とは何かを聞かされていた。
東郷の方もかなり乗り気なようで、誘拐の計画・立案を担ったのは東郷だったそうだ。
「どう?入る気になったでしょ?」
先輩が光一郎にそう話しかける。
その眼は期待に満ち溢れていて、断るのは忍びないと感じた。
入部の是非について考えてみるが、特に断る理由も無かった。
「うん、まぁ…良いですよ。入ります。よろしくお願いします、先輩。」
「本当!?やったー!」
喜びのあまり胸に飛び込んでくる友奈をしっかり受け止める。
友奈は身体で感情を表現するようで、昔は受け止めきれずに毎回後頭部から地面に叩きつけられていた。
こうして、3人の新入生が勇者部へと入部することになったのだった。
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勇者部が4人になってから数ヵ月が経過した。
友奈は元々乗り気なだけあって常にやる気十分な様子で、東郷の方もやるからには手は抜かないと真剣に取り組んでいた。
光一郎は何となく入部という形だったため最初はそこまでやる気は無かったが、時が経つにつれ段々と己のスキルを惜しみなく発揮するようになった。
「風先輩、早速依頼が来ています」
最近立ち上げられた勇者部のホームページを確認する東郷。
彼女がここ数ヵ月で身に着けたというパソコンのスキルは、勇者部へ多大に貢献していた。
東郷の呼びかけを聞いた風がそちらへ視線を向ける。
「んー?どれどれー?どんな依頼?」
「他の部活からの依頼ですね。それぞれ皆を指名してるみたいです」
「よーし、頑張るぞー!勇者は根性!」
そう言って意欲を燃やす友奈。
指名された依頼をこなすべく友奈達が部室を出る中、ふと思い出したように光一郎が風へと問いかけた。
「先輩先輩。そういや何で勇者部って名前なんですか?」
「何?アタシの女子力溢れるネーミングにケチつけるわけ?」
「いや、先輩ってメルヘンな厨二病だったりすんのかなって」
その後、光一郎が叩かれたのは言うまでもないだろう。
事の顛末を聞いた友奈と東郷にも小突かれたことも言うまでもないだろう。
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そうして春夏秋冬を超え、神世紀300年。
勇者部の面々は無事に進学を果たした。
そんな彼女達は今、新たな出会いに直面していた。
どことなく風の面影を感じる、まるで小動物のような印象の少女が、ガチガチに緊張した状態で友奈達を前に自己紹介を始めた。
「樹、緊張しすぎよ」
「い、犬吠埼樹です…!よ、よろしくお願いします!」
あまりの緊張具合に風が苦笑いを浮かべる。
そんな彼女に友奈が話しかけた。
「よろしくね、樹ちゃん!」
「よろしくお願いするわね、樹ちゃん」
「はっ、はい!」
友奈に続く東郷にも、緊張しながらもしっかりと挨拶を返す樹。
そんな彼女に代わり、風が紹介を始めた。
「あたしの妹にしては女子力低いけど、それ以外は中々よ。占いとか出来るし」
「おぉ! 凄いや!」
「た、タロット占いなら、少しほど…」
友奈に褒められ、嬉しいのかはたまた恥ずかしいのか顔を赤く染める樹。
そこでふと、風が部室内を見回して首を傾げた。
「…?そういえば光一郎は?」
「あら?確かさっきまでここに…」
その言葉に友奈達も部室内へと視線を向けるが、そこに光一郎の姿は無かった。
困惑する一同を他所に、友奈が何かに気づいたように口を開いた。
「皆ごめんね、ちょっとだけ待ってて貰えるかな?」
それだけ告げると、友奈は部室から駆け足で出て行った。
それから約数分後。部室の外から一組の男女の声が聞こえてきた。
「こういっちゃん!なんで毎回自己紹介のたびに逃げるの!新入生に挨拶くらいしようよ!」
「いややっぱさぁ!女所帯に一人だけ男混ざってんのはアレかなぁって思うんだよ俺は!」
「そんなことないよ!ほらはーやーくー!」
「ちょっ、オイ!?どっから出てんのその膂力!?」
全員が廊下の方へと目を向ければ、友奈に両腕を引っ張られる光一郎の姿が見えた。
床を踏ん張り抵抗はしている様子だが、友奈の方が力が強いようでズルズルと引き摺られている。
そのまま部室へと連れ込まれ、即座に扉が閉められた。
「さぁこういっちゃん!観念して樹ちゃんに挨拶して!」
「えぇい!なんで毎回速攻で捕まるんだ畜生!」
本人達は至って真面目である。
しかし傍から見れば突然謎の寸劇が始まったとしか思えない光景が広がっていた。
樹は入部早々、マトモな学園生活を送れるのか不安を覚えたのだった。