バーテックスには蹴り入れとけ   作:邪魔者パラダイス

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この小説ゆゆゆ見返しながら書いてるんだけど、友奈ちゃんが可愛いってのとにぼっしー超ハイスペックってのが分かった。


ツンデレは二次元だからこそ許される

2度目の戦いから1ヶ月。

その間の勇者部は至って平和な日常そのものだった。

いつ敵がやってくるかわからないという緊張感はあったが、勇者部は普段通りに活動しつつ、各々が勇者の力の把握に努める時間を取っていた。

とはいえ本格的な訓練は行えなかったため、アプリのテキストを確認する程度だったが。

 

部室で皆が精霊を出せば、友奈の牛鬼が精霊たちを齧りだすという珍事件も起こった。

あまりの食欲旺盛さに全員が苦笑いを浮かべた。

 

概ね平和に過ごしていた勇者部であったが、遂に樹海化警報が鳴り響く。

5人は直ぐに変身する。

遠距離から攻撃できる東郷が狙撃しやすい位置に陣取り、他の4人は敵の元へと急ぐ。

アプリで確認すれば、今回の敵は山羊座と呼ばれるバーテックスだった。

 

「1ヶ月ぶりだからちゃんと出来るかな……」

 

最後に戦った日から間が空いているため、ブランクが響かないか心配な様子の友奈。

他の面々も友奈ほどではないにしろ、やや不安が残っている。

 

「えっと、ここをこうして……」

 

「ほうほう」

 

「で、この時はこうすれば良いんです」

 

「そうだったそうだった!」

 

「お前アプリの説明テキスト読み終わったとか言ってなかった?」

 

隣で2人のやり取りを見ていた光一郎が呆れたように呟いた直後、今度は風が一喝した。

 

「今回も勝つわよ!勇者部5ヶ条1つ、成せば大抵なんとかなる!勇者部ファイトぉ!」

 

『おー!』

 

全員が拳を突き上げたその時、上空から降って来た短刀が山羊座の頭部に突き刺さり、爆発した。

 

「え……!? 東郷さん!?」

 

「……私じゃないわ」

 

友奈の疑問の声を東郷が否定する。

そんな中、赤い勇者服を纏った少女が敵に向かって落下してきた。

 

「ちょろい!」

 

そう叫ぶ少女は短刀を山羊座の周囲に投げて突き刺し、封印の儀を1人で発動させる。

 

「思い知れ、私の力!」

 

山羊座の身体から御霊が現れる。

数秒の間を置き、御霊から毒々しい色の煙が噴き出した。

煙は御霊の姿を隠し、近くにいた4人を覆う。

 

「わっ!? 何この煙!?」

 

「見えない~…!」

 

友奈と樹がそんな声を上げ、光一郎が舌を打つ。

精霊バリアでダメージは無いものの、煙のせいで何も見えない。

 

「そんな目眩まし、気配で見えてんのよ!!」

 

少女はそう言うと両手で刀を持って跳躍する。

御霊目掛けて刀を振り下ろし、一刀両断。

破壊された御霊は消滅し、山羊座の身体も砂となって消えていった。

僅かな時間で撃破した彼女に勇者部の面々は呆けてしまう。

 

そんな彼女達に少女が近付いてきた。

少女は腰に手を当て、4人に目を向ける。

 

「えーっと……誰?」

 

「揃いも揃ってボーッとした顔をしてんのね」

 

「えっ」

 

「こんな連中が神樹様に選ばれた勇者ですって? ……はっ」

 

友奈の問いかけを無視し、少女はさらりと毒を吐く。

挑発するようなその態度に光一郎がイラついた。

おそるおそるながらも友奈が再度話しかける。

 

「あのー…」

 

「何よ、チンチクリン」

 

「チン!?」

 

唐突に吐かれた毒に、友奈は口ごもってしまう。

険悪になりつつある空気の中、赤い勇者服を纏う少女が自己紹介を始めた。

 

「私は三好夏凜。大赦から派遣された正真正銘の正式な勇者。つまりアンタ達はもう用済み。はいお疲れ様でしたー」

 

『えぇーーーーっ!!?』

 

女性陣がそんな声を上げる中。

あ、コイツぶっ飛ばそうと、光一郎は思った。

 

---

 

三好夏凛が讃州中学に転入してきたその日の放課後。

勇者部の部室に夏凛が訪れていた。

 

「転入生の振りなんて面倒くさい。ま、私が来たからにはもう安心ね。完全勝利よ!」

 

「なぜこのタイミングで? 最初から居てくれても良かったんじゃ……」

 

堂々とした態度の少女に東郷が尋ねた。

 

「私だって直ぐに出撃したかったわよ。でも大赦は二重三重に万全を期しているの。最強の勇者を完成させる為にね」

 

彼女の勇者システムは、先遣隊である勇者部の面々のデータを元に調整され、対バーテックス用に最新の改良を施されているとのこと。

 

「その上、あんたたちトーシロとは違って、戦闘のための訓練を長年受けてきている!」

 

堂々と宣言する夏凜が、狭い部室でモップを手に取り振り回す。

柄が黒板に直撃するも特に気にしたそぶりは見せなかった。

 

「躾けがいがありそう子ね」

 

「なんですって!」

 

「あわわ、ケンカしないで!」

 

風と夏凜の一触即発な空気を樹が止めに入る。

やがて夏凛が一歩下がり、鼻を鳴らす。

 

「まぁ良いわ。とにかく大船に乗ったつもりでいなさい」

 

すると、おもむろに立ち上がった友奈が満面の笑みを見せる。 

 

「そっか! じゃあよろしくね、夏凜ちゃん!」

 

「いきなり下の名前!?」

 

「嫌だった…?」

 

「……フン、どうでも良い。名前なんて好きに呼べば良いわ」

 

「お?なんでもいいの?じゃあツインテ侍って呼んでいい?」

 

「良いわけないでしょ!?」

 

光一郎の茶々入れに夏凛が声を張り上げる。

やがて、友奈は穏やかな表情を夏凛に向けて告げた。

 

「ようこそ、勇者部へ!」

 

「……は? 誰が?」

 

「夏凛ちゃん」

 

さも当然といった表情を浮かべる友奈に対し、夏凜は噛みつくような勢いで詰め寄る。

 

「部員になるなんて話、一言もしてないわよ!」

 

「え、違うの?」

 

「違うわ! 私達は、あなた達を監視する為にここに来ただけよ」

 

「じゃあ、もう来ないの?」

 

「また来るわよ。お役目だからね」

 

友奈の問いかけに仕方なしといった表情で言う夏凛。

それを聞いた友奈が、安心した表情を見せる。

 

「じゃあ、部員になっちゃった方が話が早いよね?」

 

「確かにそうね」

 

友奈の提案に東郷が同意する。納得はいってないが、やれやれといった様子で夏凛が開き直る。

 

「まぁいいわ。そういう事にしておきましょうか。その方が監視しやすいでしょうしね!」

 

「監視監視ってあんたねぇ…見張ってないと私達がサボるみたいな言い方やめてくれない?」

 

「偶然適当に選ばれたトーシロが、大きな顔するんじゃないわよ」

 

度を超えた上から目線の発言に風がムッとした表情を見せる。

その横で今にも襲い掛かりそうな光一郎を友奈と東郷が抑え込んでいた。

 

「大赦のお役目はね! おままごとじゃな――――ぁああああっ!!?ななな、何してんのよ!この腐れ畜生!」

 

「外道メ!」

 

そう言いながら視線を周りに向けると、夏凜の精霊である義輝が牛鬼に齧られていた。

悲鳴を上げながら義輝を救出する夏凛。義輝も涙目で抗議した。

 

「外道じゃないよ、牛鬼だよ。ちょっと食いしん坊君なんだよね」

 

「もう腹減ったんか。オラ、このビーフジャーキーを……あれ、無ぇ。東郷さん知らない?」

 

「確かそこの戸棚に入ってた筈よ」

 

「マジ?あ、マジだ。ほれ牛鬼、こっちゃ来-い」

 

カバンの中に目当ての物が見つからなかった光一郎が東郷へ問いかける。

東郷が指さした戸棚を漁り、手に入れたビーフジャーキーを食べさせた。

 

「じ、自分の精霊のしつけもできないようじゃ、やっぱりトーシロね!」

 

「牛鬼にかじられてしまうから、精霊を外に出しておけないの」

 

「じゃあそいつを引っ込めなさいよ!」

 

「この子勝手に出てきちゃうんだー」

 

「ハァ!?あんたのシステム壊れてるんじゃない!?」

 

「外道メ!」

 

いよいよ頭を抱える夏凜。被害に遭った義輝も同じ心情のようだ。

 

「そういえば、この子喋れるんだね!」

 

ふと思い出したように友奈が義輝を撫でた。

 

「ええ、私の能力に相応しい強力な精霊よ!」

 

「あ、でも東郷さんには3匹居るよ」

 

友奈がそう言うと、東郷がアプリを操作して精霊を出す。

その光景にあっけにとられるも、負けじと夏凛が反撃を試みる。

 

「わ、私の精霊は一体で最強なのよ! 言ってやんなさい!」

 

「諸行無常」

 

「達観してますね」

 

「そ、そこが良いのよ」

 

「ど、どうしよう夏凜さん…!」

 

今度は少し離れた場所に移動してタロット占いに興じていた樹が、深刻そうな口調で呼びかけた。

 

「今度は何よ!?」

 

「死神のカード…」

 

「勝手に占っておいて不吉な結果出さないでくれる!?」

 

樹が広げたタロットの結果を夏凛以外の全員が覗き込む。

 

「不吉だ…」

 

「不吉ですね…」

 

「ご愁傷様です」

 

「き、きっと良いことあるよ!」

 

「不吉じゃない!!」

 

全員の憐れむような言葉に夏凛が反論する。

 

「とにかく、これからのバーテックス討伐は私の監視の下で行うのよ!」

 

「部長がいるのに?」

 

「部長よりも偉いのよ!」

 

「ややこしいな」

 

「ややこしくないわよっ!!」

 

「まぁ、事情は分かったけど。学校にいる限りは上級生の言う言葉を聞くものよ。事情を隠すのも任務の中にあるでしょ?」

 

「フン!まぁいいわ。残りのバーテックスを殲滅したらお役目は終わりなんだし。それまでの我慢ね」

 

「うん!一緒に頑張ろうね!」

 

友奈が満足気に微笑みを浮かべた。

一瞬キョトンとした後、頬を赤らめた夏凜は背を向けた。

 

「が、頑張るのは当然! 私の足を引っ張るんじゃないわよ!」

 

夏凛の様子に全員が微笑ましそうに笑みを浮かべる。

彼女とのやり取りである程度の人間性が見えたためか、最初の険悪さは無くなっていた。

 

---

 

その後。

勇者部はかめやでそれぞれ好きなうどんを食べながら、三好夏凛についての感想を述べ合っていた。

 

「どうやったら仲良くなれるのかな…」

 

友奈が悲しそうな声を漏らす。

それに反応した勇者部一同が、うどんを啜る光一郎へと視線を向けた。

 

「光一郎、出番よ」

 

「光一郎君」

 

「檜森先輩」

 

「いや何故こっちを見るんスか。辞めろ、俺は出来るだけ責任は負いたくない」

 

「こういっちゃん、どうすればいいかな」

 

「ええい、とうとう友奈までもが裏切ってきやがった…!」

 

頭を抱えた光一郎が恨めしそうに唸る。

こうして光一郎監修による『夏凛と仲良くなろう大作戦』(命名:友奈)が始まったのだった。

 

---

 

翌日。

夏の日差しが降り注ぐ。

友奈達のクラスは男子がサッカー、女子が水泳の授業を受けていた。

そこには激しく水音を立てながら泳ぐ夏凜の姿が。

誰が見ても分かる俊敏な泳ぎに、観戦していた者達の目は釘付けになっている。

 

「凄いね夏凜ちゃん!みんなびっくりしてるよ!すっごいねーって!」

 

「結城友奈…」

 

泳ぎ終えてプールサイドに上がる夏凜に友奈が駆け寄る。

彼女の言葉に眉を潜め、夏凜は表情を歪める。

 

「良い?勇者はね、すっごくないと世界を救えないのよ。勇者の戦闘力は本人の基礎運動能力に大きく左右されるの。あんたも勇者だったら自覚を持ちなさい!」

 

「いや〜、先月勇者になったばかりだから…」

 

ポジティブに笑う友奈を見て、夏凜は心底呆れた表情を浮かべる。

 

「……あんた、よくバカだって言われるでしょ?」

 

「実はそうなんだよねー」

 

恥ずかしげにそう告げる友奈に夏凛は呆れ果てる。

その時、グラウンドの方から悲鳴に似た叫びが聞こえた。

 

「おい止めろ!ソイツ止めろ!」

 

「止めろっったってどうすんだアレ!?どうなってんだアレ!?マジック!?」

 

「イヤァァァコッチこないでぇぇぇぇ!!」

 

友奈達がそちらを見れば、1人でゴール前まで攻めあがる光一郎の姿が見えた。

光一郎は蹴りを主体とするだけあって足技に自信があり、華麗なボールコントロールで次々と抜き去っていく。

良く見てみれば光一郎はつま先や踵、背中や頭と、身体全てを使ってリフティングしながら攻めあがっており、本来地面を転がるはずのボールが一切地面に触れていない。

そのまま最後のディフェンスの頭上をボールが飛び越え、それに気を取られた隙に抜き去る。

ボールに追いついた光一郎が放ったボレーシュートがゴールに突き刺さった。

 

「おー!こういっちゃんナイス―!」

 

友奈の声に気づいた光一郎が手を振ってくる。

同じく手を振り返す友奈。

2人のやり取りに、同級生の女性陣は黄色い悲鳴を上げる。

東郷は当然のように持っていた一眼レフカメラで2人を撮影していた。

 

「ったく……こんなんでよく勇者に選ばれたわね。少しはマシなのもいるみたいだけど」

 

あまりにも呑気すぎる勇者達を前に、夏凜は何故神樹が彼女達を選んだのか疑問を浮かべたのだった。

 

---

 

放課後。同じクラスの3人と共に夏凛が勇者部部室にやってきた。

 

「仕方ないから、情報交換と共有よ」

 

そう言う夏凛の手には煮干が入った袋があり、1つ取り出して齧る。

 

「分かってる? あんた達があんまりにも呑気だから、今日も来てあげたのよ?」

 

「……ニボシ?」

 

「なによ。ビタミン、ミネラル、カルシウム、タウリン、EPA、DHA……ニボシは完全食よ。あげないわよ?」

 

風が夏凜の持つニボシに疑問の声を上げると、彼女は怒涛の勢いでニボシの素晴らしさについて解説する。

 

「じゃあ始めるわよ」

 

その言葉を合図に、夏凛による講義が始まった。

夏凛以外の面々は東郷が作ったぼた餅を食べつつ、彼女の講義を聞いていた。

 

「いい? バーテックスの襲来は周期的なものと考えられていたけれども、これは異常な事態よ。よって帳尻を合わせるために、今後は相当な混戦が考えられるわ」

 

彼女の言う通り、これまでのバーテックスの襲来を思い返すと、大赦の言う周期の信憑性は相当薄いと考えられた。

 

「私ならどんな事態にも対処できるけれど、あなたたちは気をつけなさい。命を落とすわよ」

 

最強の勇者と自称するだけあって、その言葉には強みがあった。

そういった事態を想定して訓練を受けてきたのだろうことが分かる。

 

「あとはもう一つ。満開システムよ。戦闘経験値を溜めることでレベルが上がり、より強くなる。使えば使うほど強くなるとされているわ」

 

「そうだったんだ!」

 

「アプリの説明テキストにも書いてあるよ?」

 

「そうなんだ!」

 

「お前絶対ちゃんと読んでねぇな?」

 

説明テキストは読んだと言っていた友奈だが、これだと大分怪しい。

夏凜だけでなく、光一郎も呆れ顔を浮かべる。

 

「満開を繰り返す事で、より強力になる。これが大赦の作った勇者システム」

 

「三好さんは、満開経験済みなんですか?」

 

ふと、東郷が疑問に思ったことを質問する。

 

「い、いや、まだ……」

 

「なんだ、アンタもレベル1なんじゃアタシ達と変わりないじゃない」

 

「わ、私は基礎戦闘能力が桁違いに違うの! 一緒にしないで!」

 

「なら、私たちも朝練とかしますか!」

 

勇者部のほんわかとした雰囲気に夏凜が思わずため息を吐く。

 

「……緊張感のない奴ら」

 

そのうち勇者部内での話題が変わり、夏凛が日曜日の活動に参加することが決定したのだった。

 

---

 

そうして訪れた日曜日の夜。

 

予定通り子供達に劇を見せた後、連絡の付かなかった夏凛の部屋の前に集合していた。

友奈達の手にはお菓子やケーキなどが用意されている。

 

「パイセン、ここで合ってますよね?」

 

「間違いないわ。ここが奴の根城よ」

 

「よし。じゃあ行きましょう」

 

そう言って光一郎がチャイムを押した。

しかし出てこない。

 

「お?居留守か?」

 

出てこいと言わんばかりにチャイムを連打する光一郎。

インターホンの音が鳴り響く中、突然ドアが開け放たれ、木刀を携えた夏凜が現れた。

 

「あ、あんた達…?なんで…」

 

「なんでじゃないわよ。あんたね、何度も電話してるのに電源オフにしてんのよ! だから心配して見にきたのよ」

 

「心配…?」

 

「まぁ立ち話もなんだし上がらせてもらうわよー」

 

「ちょっ、ちょっと!?」

 

風を筆頭にゾロゾロと夏凛の家へと入っていく勇者部一同。

 

「殺風景な部屋……」

 

「見るんじゃないわよ!」

 

女子らしさを欠片も感じないような部屋に風が溜息を吐く。

部屋の内装での女子力は光一郎にすら負けている可能性が浮かんだ。

 

「ま、いいわ。ほら、座ってすわって」

 

「ちょ、ちょっと何言ってんのよ!?」

 

夏凛が抗議するが、特に気にした様子もない風達はテーブルにお菓子やジュースを広げている。

 

「これすごーい! プロのスポーツ選手みたい!」

 

「勝手に触らないで!」

 

樹が興味津々といった様子でランニングマシーンを見ている。一方で、キッチンから友奈の驚きの声が。

 

「わー! ……水しかない」

 

「勝手に開けないで!」

 

友奈が冷蔵庫の中身の少なさに目を見開いている。

 

「準備できたよー、集合ー」

 

光一郎がそう呼びかけると、好き勝手やっていた全員がテーブルに集まる。

突然の出来事に夏凛は困惑していた。

 

「何なのよ……いきなり来てなんなのよ!」

 

「あのね。……はい!ハッピーバースデイ、夏凛ちゃん!」

 

笑顔の友奈が白い箱を開けると、そこには白いケーキがあった。

上に『お誕生日おめでとう!』とチョコで書かれたチョコ板が乗っている。

いわゆるバースデーケーキだった。

そのまま一同から祝福の言葉をかけられて、夏凛は呆然としている。

 

「これ、どうして……」

 

「アンタ、今日が誕生日なんでしょ?入部届に書いてあったわ」

 

「本当は児童館で子供達と一緒にサプライズしようと思っていたの」

 

「当日に驚かそうと思ってたんだけどね」

 

ネタばらしを行う友奈達。

一応家に行くつもりではあったが、思った以上に子供達がヒートアップしすぎてしまったと語る。

特に友奈と光一郎の人気は尋常では無く、この時間まで解放されなかったのだと。

 

「……アホ。バカ、ボケ、オタンコナス……!」

 

「えっ?」

 

「何よそれ?」

 

罵詈雑言を浴びせられるとは思わず面喰らう一同。

しかし夏凛の顔は朱く染まっていて、見るからに嬉しいという感情を感じられる。

 

「誕生会なんてやったことがないから…どうしたらいいのか分からないのよ…!」

 

「うぇーいツンデレ―」

 

「うっさい!」

 

光一郎の茶化しを怒鳴りつける夏凛。

こうして、多少のアクシデントはあったものの、無事にサプライズパーティーを成功させたのだった。

 

---

 

「えっと、勇者部の予定と、私達の遊びの予定、それから後は……」

 

バースデーパーティで盛り上がる一同を他所に、友奈はカレンダーの日付に印を付けていた。

 

「コラーッ! 勝手に書き込まないで!」

 

「勇者部は土日に色々活動があるんだよ!」

 

「忙しくなるわよー」

 

「勝手に忙しくするな!」

 

勝手に次々と予定を埋められていく夏凜。

 

「そうだよ忙しいよ! 文化祭でやる演劇の練習とかもあるし!」

 

『え?』

 

「……あれ?」

 

友奈の不意の言葉に全員が疑問の声を上げる。

 

「演劇……?」

 

「いつ決まったんですか?」

 

「パイセン、そんなん決めましたっけ」

 

「いや、記憶にないわね」

 

「あ、あれれ? ひょっとして、私の中のアイデアを勝手に口走っちゃっただけかも……!」

 

「バカなの?」

 

「ようやく気付いたか、友奈はバカ――――あっ待ってウソウソ辞めて辞めてこっち来ないで!」

 

苦笑いを浮かべる友奈に間髪入れずに夏凛が告げる。

歩み寄ってくる友奈に掌を返して謝る光一郎を他所に、風が彼女の提案に賛同する。

 

「良いわね、演劇」

 

『へっ?』

 

「決まり!今年の文化祭の出し物は、演劇でいきましょう!」

 

こうして、その場のノリで文化祭の出し物が決まり。

頃合いとなったところで、宴はお開きとなった。

 

 

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