Dr.Stone_聖   作:MaxCoffee好き

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二話

 

「...もしかして、君は聖かい」

人間が最低限生きていく上で必要不可欠なもの『塩』を作りに南下して向かった先に長髪で細マッチョな男性に声を掛けられた。男性の方は私のことをどこかの知り合いと重ねている様だが、私の記憶の中に会った覚えはない。

「はい、そうですが」

とりあえず名前を呼ばれたので返事してみる。よく目の前にいる男性の容姿を観察すると、筋肉の付き方や足運びなどが一般の人と比べると研ぎ澄まされ過ぎている...この時点で武力では敵わないと確信する。彼が誰もいない世界だから襲うような野蛮人ではないことを祈りながら返答を待つ。

「俺のこと、覚えてないかい?」

うーん。全くもって思い出せない。台詞だけ聞けば街中とかでナンパしてくる輩の様だが、浮かべている表情は切羽詰まっており、そこに一切の軽薄さはない。問題は目の前にいる彼について一切思い出せないことだ。

「そうですね。貴方は私を殺せる人間であることしか知らない」

ここは素直に話すとしよう。変に誤魔化して変な空気にするよりかはいいだろう。

「殺しはしないさ。ただ...覚えているものだと思ってたけど、あれから六年も経っているんだ。仕方ないことかもしれないね」

本当に彼_獅子王司と何かあったようだが、六年前というと私が小学六年生だった頃だ。あの時の私は何をしてたっけな。丁度どっかのクソ記者によって祭り上げられる前の年だったのは分かるのだけど、他に何かあったかな。

 

とりあえず話の流れを変える為に声を掛けた理由を聞くとしよう。

「それで私に何か用でも?」

「いや、このStoneWorldで石化してない人間は珍しいからね」

「StoneWorld?」

「ああ、それは」

私と会うまでの経緯を理路整然と聞き取りやすい声で話してくれた。

「ふむ、石神千空か」

宇宙飛行士の石神百夜の方なら知っているが...千空は知らないな。石器時代と言っても過言でもないこの世界でゼロから文明を築くのは幅広いの知識量と行動力を持っていないとまず無理だ。現代は情報がそこかしこにあるから火の起こし方ぐらいはわかるが、そこから先の『木の実以外の食料の確保』『安全な場所の見分け方』等といった専門...まではいかないが、興味を持って調べないと知ることはほぼないと言っていい。

「そこで、だ。どうだい僕と一緒に来ないかい?」

「と、いますと?」

「それは言わなくても君なら分かっている筈さ」

これは遠回しに「深く聞くな、黙ってついてこい」と言ってるね。抵抗したとしても赤子の手を捻るかのように抑え込まれるだろう。

 

ここは____

 

「分かったよ。ついて行くよ」

 

石神千空に掛けるとしよう。

 

 

 

 

 

閑話休題

 

 

ハッタリの鉄砲音で司帝国を退かせ、一息入れているとゲンがこそこそと近づいて耳打ちする。

「さっき言いそびれちゃったけど、あっちにあの麒麟寺聖ちゃんもいるんだよね」

このStoneWorldで一番敵にしたくない相手の名前を聞いて思わずため息が零れる。

「それは本当か」

「マジもマジ、ジ~マ~よ」

ゲンも口調では明るいが浮かべる表情は暗い。それもその筈、彼女_麒麟寺聖は最年少で新元素『ヒジリニウム』を発見したとして一躍有名となり、地上波に出ると彼はのあらゆる分野で万能性を遺憾なく発揮し、一度(ひとたび)絵画を描いたら億はくだらない程の名画を生み出し、人類が勝つことがほぼ不可能とされたAIとのチェスで10:0で圧勝と、上げれば限りないバケモノ染みた偉業の数々。到底一人の人間が成したと信じるには難しい。

「千空ちゃん、ただね。彼女、そこまで積極的に動いてないのよ」

「ッ!それはどういうことだ」

「というのもね。彼女が齎したのは衣服と住処だけなのよ。他にもあるけど、大きく関わったのはこの二つだけ」

「要するに、だ。こっち側の人間ということだな?」

「そういうこと♪」

「ま、そこだけわかりゃいい。嵐が来る前にやる終わらないといけねぇもんがたくさんあるからな!」

そんな彼女が司帝国いるというのだ。打倒司帝国のロードマップを一度練り直しなくてはならない、がまずは目の前の危機を乗り越えなければ捕らぬ狸の皮算用ってな。

 

獅子王司について半年。私が齎したのは武力に直結しないもの_食料の毒の有無、衣服の作り方といったことに重きを置て、必要な時に教えるだけで特に私が何か行動を起こすことはしない。何せ近いうちに石神千空がこの状況を打破してくれるからだ。そしたら......

「ゆっくりと、文明が復興していく様子を物見遊山してればいいからね」

いやぁ、長かったね!このStoneWorldに来てから早5年か。最初はスタートダッシュを上手く決めれたから冬場、夏場を凌げたのはいいけど、マンパワーが足りない足りない。3人ぐらいいれば一日で終わる作業も食料の確保する時間もあるから一週間も掛かる。やっと軌道に乗り始めた時に有無を言わさない司スカウトに捕まるという間の悪さがあったからね。塩が切れるのがもう少し前後してくれればなぁ。

ま、そんなことよりも石神千空に全て任して、私のモットーである『そこそこ楽しくノれる人生を送れればいい』を存分にやってもいいという理想郷がすぐそばまでやって来てることを喜ぼうではないか!!

「あ、聖さん!司さんがお呼びです」

...............

「うん、分かった。今すぐ行くよ」

ふぅ。まぁ理想郷までの我慢我慢。でも、このタイミングで私を呼ぶのは嫌な予感がするな。

「それで私に用というのは?」

「急に呼び立てて済まない」

げ、氷月いるじゃん。こいつ苦手なんだよね。周りの人間を見て「脳みそが溶けてる」「ちゃんとしてない」とか痛いことをいう選民思想のロマンチスト。確かに使えない人間は存在するが、いないよりかはマシである程度のマンパワーになってくれるし、働きアリの法則でずーっと働くのは無理で適度に休みを取っていかないと物事が上手く回らなくなるのを理解してないんだろうなぁ。知的に見えて脳筋っぽいし。

「石神千空は生きていたそうだ。しかも鉄砲を作るほどまで文明を発達させて、ね」

「じゃあこっちも作ります?」

「「!!」」

そんな驚くこと?確かに銃弾をたくさん作るのは骨だけど、バンバン石像から人へと復活させているから100人近くのマンパワーがあるし、ちょちょいのちょいでしょ。

「い、いや辞めておこう。本題は食料の保存についてだったのだけど」

「ナメていたつもりではなかったですが、流石といった所でしょう」

やべ、思わず言っちゃた。断ってくれてよかったぁ。

とりあえず食料の保存だったら今から取り掛からないと大人数だし、復活した人間の殆どが体育会系だから食料の消費も激しい。いくら普段から保存食を作っているとはいえ、早めに行動を起こさないと餓死するぞ。

 

 

閑話休題

 

 

冬明けが間近になってから、周りの人たちの雰囲気が可笑しい。まるでクリスマス前の子供みたいなソワソワした感じ...例の二人_大木大樹、小川杠が石神千空サイドへ移るよう手を回し始めているようだ。

でも何故今になって?順を追って考えよう。ソワソワしている人たちの共通点はStoneWorldでの生活に不満を漏らすことが多かった人たちだ。そんな人たちを石神千空サイドへ誑し込めるには元の文明に溢れた生活に戻れるという確信を突き付けること。だが、そんなのは今復活している人間を集めて行っても100年単位、いやそれ以上に掛かる。そこまで行かずともその取っ掛かりさえあれば口の上手い人間...浅霧幻とかが口八丁で丸め込めそう。しかし彼は石神千空のもとにいるから無理だ。獅子王司拠点から石神千空拠点までの間の距離が離れているから、そこを埋める何かを使い引き込んでいると、その何かは例えば電話とか。

「!」

電話か!そこまで漕ぎ着けたか!流石だ。じゃあそろそろお暇する準備でもしとくか!

「ふふん♪」

「随分と機嫌がいいね」

「急に声を掛けないでくれる?びっくりするでしょ、羽京」

「いやぁ、ごめんごめん。麒麟寺さんが裏切るのかなと思ってさ」

おっと?そんな素振りは見せていないが、流石は自衛隊のソナーマンといったところかな。心音まで聞き分けるとは。

「...ここだけの話。みんなに内緒でベーコン作ってて、今日完成したからちょっと浮かれてね」

「なるほどね。そういうこと、にしておくよ。じゃ」

うん。全然疑われたままですね。彼も彼で自分なりの思惑があるっぽいし、その思惑も自衛隊ならではといった感じっぽいし、氷月よりかは羽京の方がマシか。それよりも準備準備!




PersonFile①-Ⅱ

麒麟寺聖が発見した元素である『ヒジリニウム』は人間の身体に必要な「糖質・脂質・たんぱく質」と組み合わせると、脳細胞が活性化し増殖を促すという失った脳細胞が回復するという反応が出ることが判明している。
どういったメカニズムでそうなっているかは未だ不明の状態とのこと。

発生条件は人の脊髄液とミネラル(リン・塩素)を一緒に圧縮することで発生する。

1グラムで10,000円もしているそうだ。
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