父と子と聖霊のなんちゃら   作:NJ

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友達の誕生日パーティーの準備、猫の予防接種諸々の用事が漸く終わったので投稿します。

ちなみにプレゼントは別の友人と共同制作したチェンソーマンの色紙です(聞いてない)。


なんちゃって創世記、終わり

 

 

 ―――リリス。

 

 

 嗚呼、リリスよ。

 

 最初の人間。最初の女性。

 

 かつては、今の私と同じ名を持っていた人。

 

 生まれ方は違えど、姉とも呼ぶべき人。

 

 貴女を想う度に、私は悲しくなる。

 

 私の夫(アダム)を愛さなかった事が、ではない。

 

 偉大なる主(おとうさん)と袂を分かち、楽園を去った事が、でもない。

 

 ただ、ただ一つだけ貴女に問いかけたい。

 

 本当に、アダムは貴女に愛される資格のない男だと思っていたの?

 

 貴女の目に、アダムはどう映っていたの?

 

 父を何より深く愛した筈の貴女が、あの方が己に似せて創りたもうた彼を微塵も愛せなかった…いや、愛そうとしなかったのは何故?

 

 彼は俯き、涙を湛えた目で吐き捨てた。

 

 

 

『仕方ないよ』

 

『僕は父さんみたいに勇敢じゃないし、強くもなかったんだから』

 

 

 

 違う。

 

 違うのよ、アダム。

 

 私は知っている。

 

 貴方は立派な人。

 

 どんなに臆病に見えても、かつて、どんなに楽園で天使や悪魔たちにいじめられ、泣かされていたとしても。

 

 貴方が、本当に優しい人なのだという事を。

 

 本当の勇気を知る人なのだという事を。

 

 お父さんがそう信じていたように、私もちゃんと分かっているから。

 

 貴方が真の意味での…本当の強さを持つ人なのだという事を。

 

 だから泣かないで。

 

 前を向いて。共に生きていきましょう?

 

 楽園の外。この、過酷だけど自由な世界で。

 

 嗚呼、リリスよ。

 

 父に叛きながら孤独に耐えかね、禁忌を犯して夜の娘(リリン)を産んだ魔女。

 

 貴女には、どうして理解できなかったの?

 

 父の偉大(つよ)さを、勇気を、(ぬくもり)を知っていた筈の貴女が。

 

 それが、(アダム)にも確かに受け継がれていたのだという事を、どうして気づいてあげられなかったの?

 

 怯え惑い泣き叫ぶ、その顔の裏に隠されていたそれを。

 

 私が生まれる前…かの巨人に勝てぬと知りながらも、楽園の子らの為に挑んだ父と同じ勇敢さを。

 

 私達を置いて楽園から、この世界から消えた父。

 

 しかし、その意志(たましい)は彼の中に確かに生きていたのだということを。

 

 貴女は、最後まで知らなかった。

 

 知ろうともしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 私は、それが哀しい。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 俺は楽園を去った。

 

 

 

 子供達を置き去りにして。

 

 そして今まさに、俺が創り上げた聖書世界(テクスチャ)の外に、自らの足で踏み出そうとしている。

 

 仕込みは済ませた。

 最後の権能で創り上げた二本の樹。

 アレが最果てに聳える「あの塔」と同じ役割を果たし、神が去った後も聖書世界を維持し続けるだろう。

 

 そしてアダムとイヴ……今はリリスを名乗る家出娘の後継として創り上げた第二の娘。

 他所に比べてだいぶ遅くなったが、この世界に於ける人類の始祖となるであろう二人。

 

 リリスに捨てられ、意気消沈していたアダムがイヴの導きでどうにか持ち直し、そんな二人の成長をある程度見届けた所で俺は旅立ちを決意した。

 

 まだ不安は多くある。

 だが、これ以上留まってはきっと決心が揺らいでしまう。

 

 せめて死ぬ迄は共に、という脳髄にこびり付く未練に引き摺られてしまう。

 

 それだけはダメだ。

 「主神が喪われた」という事実が聖書に刻まれては、全てが破綻する。

 

 神の時代が終わりつつあるとは言え、まだ人間達(あのこたち)には唯一神(オレ)が必要なのだ。

 

 その為の辻褄合わせとして、完全に人間に堕ちる前にあの世界から去る必要があった。

 

 「主が人に堕ち死んだ」という事実を「主は人の認識が及ばぬ所へと向かった」と解釈させ、天上の座の空白を隠蔽させた。

 

 勿論、このまま神の座を空席のままにしておく訳にはいかんが、手は打ってある。

 細かい段取りは知恵の実を与えた(・・・・・・・・)アダムとイヴとは逆に生命の実を与える事で(・・・・・・・・・・)俺に近い存在に育てたミカエルとルシファー、そして………気が進まんが「アレ」と交渉して手を回させた。

 

 これで、一先ず聖書世界は安定する。

 表向きだが歪みは正され、剪定を免れるだろう。

 

 隠された内側の欠落も……まぁ、あの子達の努力次第だが、どうにか補える筈だ。

 

 そこまで考えて、楽園を去る時のあの子達の顔が次々と脳裏を過ぎ去った。

 

 別れる時、特にルシファーの癇癪が酷かったが…優等生(よいこ)問題児(わるいこ)も酷いのなんので宥めるのに何時間もかかった。ルシファーは最後まで顔中汁まみれドバドバでコバンザメのようにへばりついてきたが。

 

 しかし、全員が全員そうだった訳ではなかった。

 

 特に意外なのはサンダルフォン。

 既にエベレスト級の成長を遂げていたエデン随一の大泣き虫が懸命に泣くのを我慢していた事だ。

 

 同様に成長していたレヴィアタンやベヒモスは海を荒れ狂わせたり大地を揺らすわで泣き止ませるのに苦労したというのに。

 

 子供というのは、親の見ていない所で思わぬ成長を遂げていたりするもんだな、と面食らったものだ。

 

 まぁ、中には「これでワシの天下じゃぁー!ガハハハハハ!」なんて笑ってた能天使(バカ)もいやがったがな。

 最後まで安定のクソガキで逆に安心した。悪魔より悪魔してたぞアイツ。

 

 しかし、そう言って俺に舌を出してベーした後は全速力で走り去って家に入り込んで出てこなくなった。どうしたんだろうか?

 

 天使と悪魔、そして人間。

 

 創世よりも遥かに手間がかかり、俺を怒らせる天才で、何より憎たらしく忌々しく、そして何より愛しくて仕方がなかった我が子達。

 

 多分意味は全く違うだろうが、三位一体という奴で世界を導いてほしいと切に願う。

 

 見方や視点がそれぞれ違えども、いやだからこそ互いの足りぬ所を補い合うような、そんな世界をあの子達には作って欲しいと、捨てておいて誠に勝手ながらそう願わずにはいられなかった。

 

 ルシファーが人間…特に俺に逆らったリリス、次に知恵の実(俺の権能)を授かったアダムとイヴを忌み嫌っていたのが気がかりだが、元から悪魔として創造した時からあの子がそうなるのは織り込み済みだ。

 

 秩序、調和だけが世界に必要な全てではない。

 時に自由を求める渇望、そこから生まれる破壊と混沌が無ければ世界は前に進まない。停滞は澱みを生み、全てを腐り落とす。

 

 停滞を打ち砕く為には、神の秩序(世界そのもの)に対する敵対者も必要なのだ。

 

 あの子には、悪魔達にはそんな神に相反する者…秩序の中では生きられない者達を導く存在になって欲しい。

 

 そう思いながら、俺は…この神話世界の境界線にて、最後の一歩を――――

 

 

 

 

 ――――お父さん!!

 

 

 

 

 背後からの幻聴を、振り切るように。

 

 これからの人として送る生涯で、きっと二度と味わうことのないだろう大きな喪失感ごと噛み潰すように。

 

 ――――その一歩を、踏み出した。

 

 

◆◆◆

 

 

 リリスが楽園を去った後、主は妻を失い悲嘆に暮れるアダムを憐れみ、第二の妻を与えることとした。

 

 主は、リリスがアダムの隠れし偉大さを理解できぬ事が二人の仲が違えられた故だと確信され、次の妻はアダムの体から創造する事とした。

 

 そうしてアダムの肋より第二の女が創造され、主はリリスが捨てたイヴの名を再び授けられた。

 

 アダムの裡より生まれしイヴは夫の良き理解者となり、リリスとの離縁により自信を失ったアダムを支える貞淑な妻となった。

 

 主はこれに満足され、改めて真に愛し合う夫婦となったアダムとイヴに知恵の実を授け、ミカエルとルシファーに生命の実を与えた。

 

 そして、我が子らに主はこう告げられた。

 

「此れより楽園より遥か高みに上る我は、汝らに祝福と使命を賜わす」

 

「汝ら夫婦には我が心を授け、この祝福を以って汝らは楽園の外を拓き、地を汝らの子で満たすべし」

 

「そして汝ら兄弟には我が力を授け、この祝福を以って汝らは楽園を守護し、天より我が威光を示すべし」

 

「道は長く、苦難に満ち満ちるとも、汝らの靭さを我は信じ、汝らにこの大業を任ずるものとする」

 

「その道程で汝らが苦難に見合いし報いを得られるならば、我は其れを幸いとする」

 

 

 

 

「楽園の子らに、我が愛と永遠の祝福があらんことを」

 

 

 

 

 創世記 第三章「失楽園」より抜粋

 




おまけ
チェイテピラミッド姫路城をご覧になられた聖書御一行

主「これが現代のバベルか…」
ルシ「前衛的だね」
マシュ「違います」
ミカ「崩しましょうか?」
ぐだ「やめて」
ラファ「この城なんか見覚えあるな…ワシのじゃないか?」
サンダル「パパー、なんかてっぺんが取れたー」
主「戻しなさい」
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