父と子と聖霊のなんちゃら   作:NJ

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あけましておめでとう…とはとても言えそうな雰囲気ではありませんが一先ず新年のご挨拶をば。

なんか初詣から帰って直ぐに大規模な津波速報が出てビビっている作者ですが、読者の皆様の中に現地の方はいらっしゃるのでしょうか?
いらっしゃるのでしたらせめてものご無事と1日でも早く日常へ復帰できるようお祈りします。

私は遠くでこうして小説を書くぐらいしか能がないので、避難生活の中でせめてもの楽しみになれば幸いに思います。

今後も皆様に納得のいく作品を作り出していきたいと意気込む新年。
どうか今後とも本作をよろしくお願い申し上げます。


長い前日譚、しつこいくらいの続き

 

 

 『スルト』

 

 それは北欧神話を締め括る終止符(ピリオド)の名そのもの。

 九つの世界で最も過酷な焔の国(ムスペルヘイム)の支配者であり、火山噴火が神格化したものとされる北欧の破壊神。

 

 ロキの姦計によるバルドルの死からの光の喪失。

 その次に予兆として訪れるフィンブルの冬を経て神々と巨人族の最終戦争たるラグナロクが勃発。

 

 天地を破壊し尽くす激闘の末に神と巨人が次々に倒れゆき、最後はスルトの炎が世界樹もろとも世界を焼き尽くす事で北欧神話は終結を迎える。

 

 そんなスルトの正体だが、実のところを言うと余りハッキリと明かされていない。

 

 ユミルの子とも噂され、或いは神々の親族とも噂されるが、何から生まれ、何処からやって来たのかは誰も分からない。

 

 そして───どこに行ってしまったのかさえも。

 

 世界に終末をもたらした後、かの巨人はどこに消えたのか?

 

 燃えゆく世界の中、神々に討ち果たされたのか?

 役目を終え、旧き神話の大地と共に燃え尽きたのか?

 はたまた、未だにどこかで破滅の炎を燻らせているのか?

 

 全ては闇の…いや、灰の中である。

 

 ただ、スルトを語る逸話の中で、面白いものが一つある。

 

 全てを焼き尽くす孤高の巨人王には、唯一共に侍る者が居たという。

 

 その者が何者であったのかを明かす文献は、スルトと共に古の灰に埋もれてしまっている。

 

 神であったのか、巨人であったのか、人間か────はたまた、『それ以外』だったのか。

 

 確かに言える事は、かの者が北欧の破壊神に唯一寵愛されし存在であったと言う事実のみ。

 

 炎の王がラグナロクに出陣する時、かの破滅の枝(レーヴァテイン)にその名を刻んで神々との戦に臨んだ程に愛された、ムスペルヘイムの至宝。

 

 終末の火に寄り添った妃。

 

 ラグナロクを越えた先も語り継がれた、数少ない生き残り。

 

 

 

 

 その者───名を『シンモラ』と言った。

 

 

◆◆◆

 

 

 あいあむ、巨人の鍛冶場、いず、ひあー。

 

 巨人(デカブツ)の隙間で狭くてむさ苦しくて暑苦しいの三重苦にナ◯アツ化しそうになるのを頬を全力で噛んで押さえ込みながらT◯KI◯さながらの重労働に励む元唯一神こと俺様と霜の巨人(ヨトゥン)の皆様。

 

 これがまたキッツイのなんの。

 

 巨人なら片手でヒョイといける石が、俺にはアフリカ象さながらのサイズと重量なのだ。

 上手くいくかどうかより、作業中に腰がまたバッキリいかないかが最大の不安だ。

 

 この石を運んでいると、()()()()の大きさだった頃のサンダルフォンをおぶいながらサリエルを泣かせるラファエルを追い回し、いつの間にか髪に潜り込んでモシャモシャしてきた()()()()のベルゼブブに四苦八苦していたあの頃がフラッシュバックした。

 

 ちなみにそれが原因で10円を通り越して500円ハゲになっていた時期があった。

 ついでにメスガキ(ラファエル)が爆笑したのでケツがトマトになるまで打楽器に(ドラミング)したのはいい思い出。

 

 アイツらが互いにまとめ役(ミカとルシ)を困らせてないか心配だな……。

 

 まー、サリエルとアスモデウスあたりがなんとかするだろ。多分。Maybe.

 

 えー?

 そんな事より何やってるかってー?

 

 いやさー、俺考えたんだよね。

 拗らせたぼっちもとい彼女いない歴=年齢の童◯クンを矯正するにはどうしたらいいかってサー。

 

 空想(にじげん)の女しか愛せなくなって、現実(さんじげん)の女と向き合う勇気を持てなくなった悲しきモンスターを救うにはどうしたらいいのかって。

 

 ………誰だ「自虐乙」って抜かした奴。

 怒らないから手をあげなさい。今なら軽くハルマゲるだけで済むから。

 

 まー話戻すけど、ヒッジョーに簡単な事なんですよ。

 

 無いなら作れば良いんです。

 理想の嫁って奴を。

 

 そんなこんなで、巨人の皆さんにこうしてご協力頂いてるってワケよ。

 

 色々と用意して貰った。

 

 まずは九つの世界で最も硬く丈夫な石、宝石類。

 

 ルーン等の心得を持つ巨人の石工達。

 

 次に腕利きの鍛冶妖精(ドワーフ)

 あの脳筋の槌(ミョルニル)の製作者さん達においでいただいた。

 

 最後に、ムスペルヘイムの燃え盛る炎そのもの。

 

 相手はムスペルヘイムの王。

 九つの世界において、かの巨人の側で生きていけるのはそこで生まれた存在のみ。

 

 だからこそ、これから生み(つくり)出すモノは、これから送り出す世界の炎の中で作り出さねばならない。

 

 全員おっかなびっくりで噴火寸前の火口さながらの炉に向き合って作業した。

 

 霜の巨人は氷の髭がチリチリになってた。

 

 俺の髭はもっとヤバかった。

 

 鍛冶屋の兄(ブロックル)は作業後、日焼けを通り越してガングロになった顔面に関して俺に終始愚痴りまくってた。

 

 悪かったよ。

 後でギリシャの酒神(ディオニュソス)からくすねた酒で打ち上げやるから機嫌なおせって。

 

 金リンゴもあるぞ。

 果汁を混ぜて飲んでみ、トぶぞ。

 

 孤児院のおやつに使おうとヘスペリデスから根こそぎ盗んできた奴なんだけど。

 

 ケイローンはアップルパイが大好きで、トリトンはジャムにして菓子パンに塗ってた。

 ヘスティアはツインテールを逆立ててブチ切れながらリンゴのタルトをうまうましていた。器用か。

 

 ちなみに一部は例の島の(・・・・)三姉妹(・・・)にお裾分けした。

 

 味を占めたみたいでまた末っ子(メドゥーサ)に取りに行かせようとしてたから、俺が同行して潜入ルートを教えておいた。

 

 俺もバレなかったし、多分大丈夫だろ。

 段ボール被ってたらなんか上手く行ったし。

 

 そんな事を思い返している内に、遂に作業が終わりを迎えた。

 

 神代の技術の粋を集めに集めて作り出された至高の一品。出来栄えに関してはオリュンポスの彫像や木馬にも負けんだろうな。

 

 まだ仕上げを済ませていないにも関わらず、既に動き出しても驚かないぐらいに生命(いのち)を感じる。

 

 流石アース神族と比肩し得る北欧の巨人の叡智。

 そしてあの知識ジャンキーの槍をはじめとした神々の武器を手がけたドワーフの技術力。

 

 未来のフィギュア製作者が見たら揃いも揃ってジャンピング五体投地するレベルである。

 

 感心してるとどっかで謎のドイツ軍人が「世界一ィィィ!」とか叫んだ気がした。疲れてんのかな。

 

 まー何はともあれ、後はコレに俺の肉と血を与えて心臓を作れば完成だ。

 

 名前どうしよう?

 

 俺が考えてもいいけど、やっぱ北欧風の名前が良いよな。

 って事で制作チームで酒飲みがてら話し合い、酔って話が脱線して夜通し一発芸大会を開いた結果、揃って二日酔いに苦しみながらも異邦の地で生まれた新たなる我が子の名前が決定した。

 

 後はこいつに一通り教育して、奴さんとお見合いさせるだけだが…。

 

 上手くいくといいんだが…。

 

 

 

 ───まっ、なんとかなるだろ。

 

 

 

 命を得た石の娘(シンモラ)の姿に親心が湧いた霜の巨人達が猫可愛がりを初め、それを見ていたドワーフ兄弟が手伝ったんだから俺達にも撫でさせろと騒ぐ姿を肴に、俺は神酒を呷るのだった。

 

 

◆◆◆

 

 

 時の針を現代まで進ませ───21世紀。

 

 北欧、スカンジナビア半島。

 

 場所はヨーロッパ北部の半島…そこに聳えるスカンジナビア山脈。

 山脈南部、ヨトゥンヘイム国立公園にてある歴史的発見が成された。

 

 今回語るのは、海外から訪れた登山家が偶然切り立った山脈の奥地で発見したモノだ。

 

 人が訪れる事などおよそ考えられない、そんな山奥で発見されたのは───彫像だった。

 

 それも女性の、非常に精巧な。

 著名なギリシャ彫刻すらも霞む、人間が作ったとは信じられない技術で彫られた……()()()()()()()()()()()()のではと錯覚させるほどの生気を発していた。

 

 後に調査の結果、紀元前8000〜9000年のものであると判明した彫像だが、異様なのは年代だけではなかった。

 

 『彼女』が寄り添う物体。

 

 それは────『手』だった。

 

 溶岩が冷え固まった物体である事だけは分かった。

 

 問題は、それが間違いなく人の手の形をしていた事だ。

 それも、幅だけで10mはゆうに超える…巨人から切り落とされたと言われても信じられるような明らかに不自然な岩の塊だった。

 

 それに、まるで愛おしむように身を預ける形で寄り添う『彼女』。

 さながら、最愛の夫と添い遂げる妻のような表情で目を閉じ、眠る姿には見る人の心を奪う魔力のような美しさすらあった。

 

『まるで火の巨人(スルト)石の妃(シンモラ)だ』

 

 後に観光名所として有名になった『彼女』のもとを訪れた人々はそう語り、『彼女』の美しさに息を呑んだ。

 

 ───だが、そうも言っていられなくなる事件が起きた。

 

 盗まれたのだ。

 他でもない『彼女』が。

 

 犯人は当時、現地を騒がせていた窃盗団だった。

 ノルウェー政府は当然、北欧全土が揺れた。

 

 犯人グループには懸賞金がかけられ、国を挙げて捜査網が敷かれた。

 

 ───が、それらは無為に終わった。

 

 盗難から数週間後、犯人が自首してきたのだ。

 たった一人…半ば正気を失った状態で。

 

 そして『彼女』の在処も洗いざらい警察に吐き捨て──自殺した。

 

 他のメンバーもすぐに見つかった──変わり果てた姿で。

 

 いずれも、自宅或いはその近くで変死体で発見された。

 

 更に奇妙な事に死因は全て焼死(・・)

 

 全て火の気が一切ない場所で炭化する程に焼けており、中には川に飛び込んで水中で焼け死んだ(・・・・・・・・)者すら居た。

 

 事件の調査に携わった者達は薄ら寒さを覚えながらも、国宝(かのじょ)が無事であったことに安堵し、事件は一先ず終息を迎えた。

 

 事件以降、政府は『彼女』が再び盗まれる事態を恐れ、国を挙げて設立した施設に保管。一般公開を禁じ、厳重に封印を施した。

 

 だが、事件は終わっていなかった。

 

 今度は施設の運営者に異変が起きたのだ。

 

 ある日の夜、『彼女』の状態を確認するべく確認した彼は驚愕し、腰を抜かした。

 

 泣いていたのだ。

 『彼女』の閉じた瞼から、確かに一筋の雫が落ちていくのを目の当たりにした。

 

 更に数日後、身の回りの物が突然発火し、灰となる事件が立て続けに起きた。

 

 酷い時はペットが焼け死に、彼の家族──最愛の妻までもが大火傷で入院した。

 

 更にそこから数日後、彼は『彼女』を手放す決意に至る体験をする事となる。

 

 夢の中で、彼は『焔』と会った。

 

 首を限界まで上に向けて漸く顔が見えるほどの、人型の焔。

 

 まさしく、世界を焼く破滅の具現そのものを。

 

 焔は、世界を震わせるような憤怒を秘めた声で彼に告げた。

 

 

我が愛(シンモラ)を二度も奪いしは──貴様か』

 

 

 彼は理解した。

 この『焔』だと。

 

 事件を引き起こしたのは、妻を奪われたこの厄災なのだと。

 

 彼は全力で平伏し、腹の底から詫びの言葉を叫び続けた。

 

 あなたの妻をお返しします。

 だからどうか、家族の、妻の命だけは、と。

 

 妻の命という部分が琴線に触れたのか、彼の返答を受けた巨人は霞のように夢から消え去った。

 

『傷一つでも付ければ───分かっているな』

 

 この一言を置き土産に。

 

 翌日、彼は無断で『彼女』を施設から持ち出し、発見された時と寸分違わぬ場所に設置し直した。

 

 無論、彼は即座に逮捕されたが、以降は不審火に悩まされる事はなく、火傷で意識不明の妻も回復に向かっていったという。

 

 その後、『彼女』を持ち出そうと言う試みは……お察しの通りというべきか何れも悲惨な形で失敗に終わっており、間もなく『彼女』が眠る土地は立入禁止区域に指定された。

 

 現地の人々はこの一連の事件を『スルトの呪い』と呼び恐れ、その山と山奥で眠る『彼女』を崇め奉るようになったという。

 

 

 

 ───誰かが歌った。

 

 

 

『シンモラ、石から生まれたシンモラよ』

 

『破滅に愛されし石の姫』

 

『終末を越え、神亡き世を生きる我が妻よ』

 

『汝の為に、我世を焼かん』

 

『妻の為、神の時代を終わらせん』

 

『嗚呼シンモラよ、我が色彩(あい)よ』

 

『汝が明日を生きるなら、我が終焉にも意味は有り』

 

『ただ明日を笑い生きる汝の為に、我破滅の枝を振るわん』

 

『人と共に、舞い踊れ』

 

『共に未来を、舞い踊れ』

 





魔術協会「秘匿しなきゃ…(使命感)」
SRTニキ「そんなことしなくていいから…(呪詛)」
魔術協会「アッツゥイ!?(焼死)」

この世界線のスルトの宝具名は「太陽を超えて耀け、我が愛よ(シンモラ・レーヴァテイン)
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