父と子と聖霊のなんちゃら   作:NJ

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最新章の矛盾を自分なりに解釈して辻褄合わせしてみたり

太陽の件はなかった。いいね?


終わりに近づく前日譚 その断章

 

 

 ───さて、続きといこうかビルガメシュ。

 

 

 いや…ギルガメスか?

 それともビルガメスだったか?

 

 あぁそうだったな。

 また“道”で見えたものと混同してしまった。

 もう「どこ」が「いつ」だったのかも曖昧になってしまったな。

 

 それで…前回はどこまで話したかな?

 

 ……あぁそうだった。

 ありがとう、この歳になると忘れっぽくていかんな。

 

 聖書(こちら)(リリス)メソポタミア(そちら)のリリス…いやリリートゥ(・・・・・)の話だったな。

 

 楽園を去った上に意趣返しに(オレ)の与えた(イヴ)まで捨てた困り者の我が娘と。

 

 夜の風の化身であり、悪霊達の母とされたシュメルの魔女だ。

 

 これは中東だけの話ではないが…

 何故、異なる神話(せかい)でここまで似た名前、性質を持った存在が現れるか…という事を聞きたいのだったな。

 

 一言で言い表すならば…人理の奴めによる「辻褄合わせ」の一環だ。

 

 前回、今我々が立つ世界の構造については説明したな?

 

 そうだな…この積み重なった粘土板(しょもつ)で例えると分かりやすいか。

 

 同じ場所に置かれているが、それぞれ刻まれた絵も異なり、違う物語という世界が記され、紡がれている。

 

 これが置かれた机を土地とするなら…粘土板というテクスチャが地球上で同じ地域の上に重なって存在するのだ。

 

 これが、神代(われわれ)の世界なのだ。

 

 だからこそギリシアとエジプトのような事例も成り立つのだが…。

 

 しかしだ。

 しかしだぞギルガメスよ。

 

 西暦以降(ここから)は、これが成り立たなくなる。

 

 いずれ、世界は変わる。

 新たなテクスチャで地球は覆われ、その上で我らの末裔(にんげん)達はみな同じ大地を踏み締めて生きる事を余儀なくされる。

 

 各々の世界で我々が定めた摂理は失われ、物理法則で統合された世界で新たな歴史が紡がれるのだ。

 

 そして、その更新の過程で最も不都合な事象こそ…「過去の矛盾」だ。

 

 これまで同じ地域に重なって存在した異なる神話、物語。

 

 これまでは矛盾しなかったこれらが、新時代では「不都合なもの」として改竄されてしまうのだ。

 

 西暦では、世界は球でなくてはならない。

 大地が下で空が上でなくてはならない。

 太陽は東から上り西に沈まなくてはならない。

 空の上は天界でなく宇宙でなくてはならない。

 

 そして───世界は初めから一つでなくてはならない。

 

 神々(オレたち)などもとからいなかった。

 人類は猿から進化し、知恵は神が与えたのではなく狩猟による肉食の始まりが脳を発達させた事で得た結果である。

 

 この真理で、過去の全てが塗り潰される。

 

 世界は矛盾を嫌うのだよ。

 

 さて、話を戻そう。

 何故、同じ名前…似た存在が異なる神話で現れるのか、という話だが…。

 

 今説明した全てが答えだ。

 

 世界が我らの存在を(かく)せても、我らが遺した痕跡(つめあと)の全てを(かく)すことはできない。

 

 遺跡なり、物語は残り語り継がれゆく。

 

 だからこそ、世界はさらに改竄を重ねる。

 

「この神話は、同じ地域のもっと古い神話から派生したものだ」

 

 と、いう事にするわけだ。

 

「リリスはリリートゥから派生した存在」

「アスタロスはイシュタルから」

「バベルの都はバビロンの都から」

「ノアはアトラ・ハシースから」

 

 似たような存在が生まれるよう因果を調整し、同じ場所に異なるテクスチャ…世界の痕跡があるという矛盾の答え合わせをしていくのだよ。

 

 ………ちなみに言っておくが、リリスを名乗ったのは娘が先だからな?

 

 バアルやアスタロスもそうだ。

 

 いいか?西暦ではそう(・・)でも、実際はこっちが先だ!

 

 パクリはあちらだからな!?覚えておけよ!

 

 分かったならいいが…。

 まぁ、さっき話したように…いずれ、こちらの世界でもアダムと似た存在も生まれるのだろうな。

 

 会ってみたかったが…それは叶わないだろうな。

 

 何故か?

 分かっているだろうビルガメス。

 

 もう、お前に教えることは何もないからだ。

 

 つまるところ、免許皆伝だ。

 

 ケイローン以外でお前が初めてだよ。

 オレの知恵に最後までついていけたのはな。

 

 

 

 

 いや、あの子の(・・・・)…知恵かな?

 

 いや、違うな…。

 今教えたのは、どの子の知恵だったか…あぁ、また道順(・・)が分からなくなってきた。

 

 あの子かな?いやこの子だったか……

 

 

 

 

 …あぁスマンスマン、また“道”を迷っていた。

 歳をとるとボケが酷くなっていかんな。

 オレ自身の“権能”だというのに、もうマトモに制御もきかん。

 

 とにかく、だ…。

 そういう意味では、お前は奴らの数少ない成功とも言えるかもしれんな…。

 

 そして、これから現れるだろうこちらの泥人形(アダム)も、な…。

 

 まぁ、その子にはお前がよろしく言っておいてくれ。

 

 大丈夫、きっと仲良くなれる。

 

 …あぁそうだ。

 また忘れるところだった。

 

 コレと…それとコレを置いていくぞ。

 

 なぁに、免許皆伝の証のようなものだ。

 

 ちゃんと蔵の奥に収めておけ、いずれ必要になる時が来る。

 

 「槍」の方は死んでから必要になるが…この珠は生きているうちに使い道が分かるだろう。

 

 いいか?中身はまだ見るなよ?

 見たら死ぬぞ?

 

 見たお前が、笑い死ぬ(・・・・)からな。

 

 オレはもう去る。

 もといた粘土板(せかい)へ、帰らなくてはならないのでな。

 

 そろそろオレ自身の役目を終わらせなくてはならない。

 

 西暦(そのあと)の事はミカエルとルシファーと…エホーシュアに委ねよう。

 

 あの子達なら、きっと自分の選択を貫き通せると信じている。

 

 たとえそれがオレにとって善いものでなかったとしても…オレはあの子達の選択を誇りに思う。

 

 バアルとアザゼルの時と同じようにな…。

 

 …気にするな、こちらの話だ。

 

 ではな、もう会うことはないだろう。

 

 さらばだ、我が最後の弟子────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────ギルガメッシュ

 





さりげなくイシュタルが崩したエビフ山にベヒモスの古い牙と抜け毛を埋めておいたヤハウェなのであった。
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